リリース初日
今では当たり前と日常にある感覚共有機能付きのゲーム機。医者の診断書があれば15歳以上から購入可能な身近な家庭用ゲームとなっている。
そんな中、40回にも渡るベータテストを終え本日リリースとなる作品がある。『10の大陸と散った宝物』これは元々手持ちサイズの時代からあった『幻獣の森』『妖魔の海』などの冒険シリーズを全てくっつけさらに豪華にしたというのだ。ベータテストは40回行われたが募集100人に対して少ない時でも2万人を超えてたという。
これだけの人気を踏まえてかソフトは初回から300万本も用意していると社長がCMで言っていた。
発売日を迎えたがソフト版、DL版2種類あるにも関わらず長蛇の列だ。何故ならソフト版には限定の装備が付くから、しかしこの物語の主人公は並ぶ時間を惜しんでなのかDL版を購入しスタートしていた。
「いやぁー幻獣の森も良かったけど妖魔の海に引き継げ無かったもんな、そういう意味ではベータテストやって両方行き来出来る今作は期待だらけだっと」
カチカチとパソコンに文字を打ち込みエンターを押してVRを被った。
「名前はどうしようかな……周りのヤツらとやる事考えると普通がいいかな」
名前欄に<ウォルフ>と入力して次に進む。
「アバか、やっぱRPGなら性別を変えて楽しむのも醍醐味なんだよなぁー。でも周りのヤツらとやる時に女だとな……っておっなんだ~後で変えれるのかならいっか」
アバターが決まり今度は初期ステータス設定画面に移る
「そうそうこれなんよね、これも忘れちゃいけない」
【記入してください】を【記入してください】出来る能力 代償【記入してください】
「ここは白紙でと」
次へを押す、本当に良いですか?と電子音で通告が来るがイイと進む。
【記入してください】と【記入してください】を装備できる
「こっちも白紙でと」
同じ工程を繰り返した後、今度は大陸選択画面が出る。
『幻獣の森』『妖魔の海』『龍神の空』『暗黒の大陸』
「んー、下にもまだあるのか。ベータテストでやった大陸の方が自由に動けるしアレも手に入るから『暗黒の大陸』で」
辺りがザザと言う音と共に変化する。
「さて、ここで開いてと」
スキルバーを開く、能力を作成してくださいと表記されている。
このゲームは少し独特で大陸事に初期ステータスが変化する。ステータスに関しては降りてから組まれる為問題ないが、問題なのは能力の方だ。能力の代償等も大陸によって異なる、つまり大陸に降りる前に作ると万能なだけで終わってしまう。
「よし、ここで【HP】を【10%消費する事が】出来る能力 代償【HPが30%回復する】と」
メインがマイナスだとサブはプラスになる。逆も然りなのだ。
例で見るなら【HP】を【○○回復する事が】出来る能力とした場合代償は【nを△△消費する】になる。
基本△△の数字が○○を越すことは無いが、『暗黒の大陸』の効果で能力効果と代償効果が大幅に上がる。しかしデメリットもある。能力効果を小さくしても代償効果だけは大きいままだ。そこで逆に利用するというのだ。
──称号<逆代償>──を入手しましたとワールドシステムが放送する。
「ちっ、称号なんて追加されたのか。ログ暦からどうやったんですかとか聞かれたら面倒だよな」
説明欄を押すと‹逆代償とは:暗黒の大陸にてその効果を上手く利用した能力をひとつ作成したプレイヤーに与えられる。ステータス欄の攻撃力が10%追加される›
「あと体防具の方もだが、こっちも称号出るのかね……【体防具】と【体防具】を装備できる。これでよし、事前に光量とかの説明でサングラスが言われてたけどアレ闇属性をメインに持ってる人は装備条件ないんだよなー」
光量とは0%から100%まであり闇属性の人は50%未満なら自動HP回復と潜伏がパッシブ化されるが、50%超だと継続ダメージと位置情報がパッシブ化される、そうなれば不利な為運営がデータテストを繰り返した結果生まれたアイテムがサングラスだ。サングラスを装備すれば80%以下の光量ならなんの効果も得ないという物だ。つまり付けてる間は継続ダメージ等を受けないかわり光量が50%未満でもHP回復は付かないという事だ。
「幻獣の森でも良かったけど食べて5分間しか能力補正ないんなら微妙だしな」
一通りの設定を終えた<ウォルフ>は辺りを見渡す。他にプレイヤーが居ないか
「居ないな、よし狩場行くかー!チュートリアルはどうでもいいや」
本来チュートリアル用のイベントが始まるが何故か起きない為、<ウォルフ>は気にせず狩場に向かった。
チュートリアル自体自動ではなく人工知能によってほぼ人間状態の為、個々に意思があり自由奔放しているのだ
「えっと狩場は、確かここら辺だったよな」
『暗黒の大陸』と呼ばれるだけあって薄暗い、それに微かに冷気が漂っている。
ガサガサと茂みが揺れる。
「そこだっ!!!」
ジャンプして茂みの中の獲物を捕獲した。
「ギャゥ!ギャゥ!」
「可愛げのねぇウサギだな、ていっ!」
地面に叩き落とすとドロップ品に変わった。
「ベータテストの時にはこんな魔物居なかったんだけどな、おっナイフあるじゃん」
<暗黒の大陸ウサギの肉>×3
<古びた冒険者のナイフ>×1
<体装備:ビーストアーマー【闇】>×1
「うーん、いい素材なのか?」
装備欄にビーストアーマー【闇】を装着した。
「もう1匹、もう1匹!!」
<暗黒の大陸ウサギの肉>×3
<漆黒のナイフパーツ3>×1
<漆黒のナイフパーツ2>×1
<体装備:ビーストアーマー【闇】>×1
「とりあえずこれでダブル防具だ。あとは漆黒のナイフの欠片?なのか4つ集めるとナイフか。よーしレベリングついでに!」
2時間後
<暗黒の大陸ウサギの肉>×243
<古びた冒険者のナイフ>×201
<漆黒のナイフパーツ4>×13
<漆黒のナイフパーツ3>×16
<漆黒のナイフパーツ2>×10
<漆黒のナイフパーツ1>×19
<体装備:ビーストアーマー【闇】>×63
「これ売れんのかァー、とりあえず新能力で……【全ての能力】を【自由に使う事が】出来る能力って普通にありなのかねえ、代償も光耐性だけだったし」
使う度光耐性がマイナス15%と言う代償だけだ。
「よし、合成能力で漆黒のナイフ11本をくっ付けて<漆黒のナイフLv3>と、いやーベータテストとは違うもののやってるかやってないかはおっきいな」
<ウォルフ>自体のLvも4から42となっていた。
「んと、今はLv42でHPは420か。暗黒の大陸ってステータス微妙なんだよなぁー。そろそろ別大陸に行くのもありかもな、それに」
チロっと辺りを見渡すとチラホラと初期アバターの人達があたふたと歩いている。
「あ、あの」
少年アバターの子が近付いてきた
「ん?どうしたんだ」
「僕、さっき始めたんだけど!みんなパーティー組んでてレベル上げてたから、僕も誰かとって」
「パーティーか、乗る気じゃないがなぁ。まぁいいよ、君初心者?テストやった?」
「いえ!コンシューマーゲームの方ではやりましたが感覚共有型は初めてです!」
「んー、そうだな初心者を俺好みに育てるってのもありだな!!」
「ひっ」
「ジョークだよ、ほらパーティーを」
「はいっ!」
<ルルア>と横に表示されるようになった。
「ルルアってのかウルフってんだよろしく」
「よろしくねウルフさん?」
「あぁ、で。さっそくだがもう能力は取ったか?」
「まだです!何すればいいかわからなかったから全部飛ばしました!」
「丁度いい、こうこうこうして、こうすれば」
「おぉ!!こんな裏技が」
──称号<逆代償>──を入手しました。
「ほへー、こんなのでるんだ」
「あぁ、今の所称号は6回しか見てない。そのうち2人はここに居るからある種レアだ」
「おぉ!ウルフの姉ちゃんなんでも知ってんだね!」
「お、おうよ」
<ウォルフ>は女性アバで始めた事を忘れていた。
「ってうおぉあぁ!モンスター来てるよ!!」
「ナイフで切れ!っても最初持ってないか。ほらよ!」
<ルルア>に<漆黒のナイフ>を譲渡しました
「あ、ありがと!」
<ルルア>が、ナイフを振るいウサギを倒した。
「腕がいいな、なんかやってたのか?」
「ん?ピアノなら習ってたよ!」
「はぁ……ピアノがどうそのセンスに繋がるんだか」
「よーし!目指せLv100」
「50まではいいけどそれ以降は大変だぞ」
「あ、そっか……それに明日学校もあるし」
「だろ?とりあえずフレンドも送っとくから、毎日ちょくちょく上げるってスタンスでどうだ?無理に凝ってリアルで体調とか崩してもなんだしな」
「そうする!ありがとね!」
「おう、で?今日はいつまで出来るんだ?」
「今日は23時まで!」
「おぅおぅ、幾つだよ、23時だと寝る時間だろ」
「お父さんとお母さんの帰りが遅いから」
「そうか、そりゃ大変だな。なら23時まで頑張るか」
そして23時。
「じゃぁ落ちるねー」
「おう乙様」
<ルルア>がログアウトした後、<ウォルフ>は1人ぼけーとしていた。
「おっと、明日は18時からだもんな……ルアには悪いが無理かもしれねぇ」
18歳から24歳は職業体験期間といい出来るだけ多くの経験を積む期間として国が定めたものだ。
大学はこれの免除対象に入らず、1日3時間は義務として職業体験しなければいけない。<ウォルフ>は学業に身を置いていない為、1日6時間~8時間の義務がある。
「バイト、朝起きれないから夕方からにしてたけど朝からのに変えるか」
<ウォルフ>はログアウトしてゲーム前に打ち込んでいたサイトを開く。
『10の大陸と散った宝物』語り部
6「期待してない訳でも無いが、どうだろう俺としては50%かな。何故なら俺は医者から診断書貰えなかった!!」
7「↑文章的にも当たり前だろ笑」
8「全部くっつけるのは無理あるのでは」
9「いやぁー幻獣の森も良かったけど妖魔の海に引き継げ無かったもんな、そういう意味ではベータテストやって両方行き来出来る今作は期待だらけだ」
10「あー超共感」
11「超共感」
12「マルチシステムって沢山増えたんだよね?」
13「増えたらしいね、どーせ出会い厨が増えるだけなんに」
14「そうですね、まずパーティーシステム。説明しなくても分かると思いますが、一時的に組んで泥品や経験値を共有するシステム。次にクランシステム。前前作の『這いずる偽虫』から追加された擬似家族みたいな物でハウスの共有等が可能。次にギルドシステム。CPU達が勝手に作って経営するらしいが、自分らでも造る事が出来るらしい。詳細はクエスト委託等。あと他にもフレンド機能や実装しようとしたけど揉めそうになって開発中にされた結婚システム。」
14「能力システムが今作にもあるのは良いがLv10事に一個だから作りかた間違えると弱弱らしい」
15「そういえばさっき別のまとめサイトに称号とやらがあるって書いてあったな」
16「長文説明千九」
17「もう取ってる人居たね、確か<ウォルフ>って言うプレイヤーと<プア>ってプレイヤー」
18「<ウォルフ>ってあいつテストプレイ用の時にランキング1位だった奴じゃん」
19「投稿内容がガイドラインに反する為削除しました」
20「<プア>は確か自称プロって」
21「称号の条件って発表されてないんだよね?なのに取れるってマグレ?それともチーター?」
22「グリッチかもしれん」
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369「みんな大陸ってちゃんと見て選んだ?詳細押すと能力とかステータスについて表記あるけど」
370「見てない」
371「はよ言えやー、作り直そかな」
372「ちなみに1番人気は『閃光の花妖精』でパッシブとかもえぐいらしい」
373「どんな?」
374「最下位は?」
375「まぁ落ち着け、パッシブは闇キラー20%と自動HP回復と自動異常検知及び解除。1番不人気は『暗黒の大陸』」
376「暗黒の大陸行くやついるのかよwベータテストの時に厨二感覚で入ったけど狩場無いしほかの大陸に行く為のクエストも中々ムズいし」
377「パッシブ効果があるのか、そのうちインフレしそうだな」
378「『暗黒の大陸』で1番レベル高いの<ウォルフ>らしいがLv36だってさ」
379「早くね?」
380「いや、普通だろ。ってかLIVE見てみろ、有名配信者みんなLv65とかだぞ」
381「仮歯のない『暗黒の大陸』、有名配信者はパーティーで。<ウォルフ>はソロで」
382「狩場な」
383「<プア>も『灼熱の森林』にてトップ。Lv82ソロ」
384「そのうち有名配信者そっちのけで<ウォルフ>と<プア>に迫るとかの方が伸びそうだよな」
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「めっちゃ噂されてる。明日辺りフレンド申請で溢れそうだ。まぁ何はともあれ早く寝るか、久々に熱い意志のやつにあったもんな。かつて育成でヘマして辞める人を続出させたからトラウマだったが、あいつならあるいは」