旅行気分と束の間スローライフ 1
『未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である』
これは、日本人で初めてノーベル賞を取った湯川秀樹の言葉だが、前世では理解すらできなかった。
今になると良くわかると言うべきか、全くその通りと言うべきか。
死んで初めて分かることもあると言うことだ。
……勿論死なないのが一番なのだが。
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アルドベルを出て早くも3日がたった。
相変わらず石畳で舗装された道路が続いていて、これはこれで異世界感はあるものの、どうもしっくりこない感じである。
まあ舗装されない道は雨が降ったらぐちゃぐちゃするし、馬車が通ったら轍跡が残るしで、だいぶ厄介だから贅沢言えないんだけどね。
「ローグセルはあとどのくらい?」
「分かんないわよ。アルドベルで地図が売ってなかったのが痛いわ」
そう、厄介といえばこの旅には地図がない。
エレナの話では、勇者は地図を作ろうと頑張ったらしいが、あまりの大陸の広さに断念したそうだ。
その結果地図は大都市の領主が、有志で自分の街の周囲の地図を作るだけに留まったらしい。
そしてマーリオンはそれをしなかったようだ。
「ま、しょうがないところはあるわよね」
「そうだな」
どの政策を先に進めるかは領主の大事な選択だ。
アルドベルを見るに、マーリオンが何か失敗をしているという様子はなかった。
地図を作っていないのも、先にやることがあったからだろう。
「まあローグセルまで多分もう少しよ」
エレナがそう言うならそうなのかもしれない。
とにかく旅に関してはエレナの5歩くらい後をいくわけで、それはちゃんと尊敬してる。
……ただ負けた気分になるので、戦闘に関しては俺が3歩くらい先を行っていると言っておく。
器が小さいなんて言わないでよジョニー。
しかしそろそろ野宿も疲れたな。
ローグセルに着いたら1日くらい休ませてもらうとするか。
………
「で、あっさりとローグセルに着いてしまうわけだ」
「不満なの?」
「いや別に……」
旅につきものの右往左往に四苦八苦がないのはそれはそれでどうなのか。
スムーズに行くことが美学だと思っているなら、それは大きな間違いだ。
間違える道、襲いかかってくる野生の猛獣、バラけるメンバー、張られる伏線、見えてくる過去、そして最後には深まる絆。
これぞ少年J◯MP魂。さすが週刊誌の王様だぜ。
「くだらないことを考えてそうな顔になってるわよ」
「失礼な」
ともかくローグセルの街をぶらり。
アルドベルとは打って変わって小さい街だが、オールドリンデン、アルドベルと共通するのは海だろう。
「ローグセルは小さい田舎の街だけど、お金持ちの別荘なんかが多いのよ。割と涼しいし、砂浜もあって夏は賑わうのよ」
……軽井沢みたいだな。
あそこもたしか避暑地じゃなかったっけ?
海はないけど。
しかし移動に数日かかるのはいただけない。
30日ある夏休みをローグセルで過ごそうと思ったら、行き帰りで1週間ほど無駄にすることになる。
早急に車を発明して欲しい。
馬車はあるだろうけど、実際にはそんなに速度出ないし。
まあそんな他力本願な願いが叶うことは滅多にないので、ローグセルを訪れるお金持ちの方々にはご愁傷様と言うほかない。
「小リゾート地なのは分かったけど、エレナって海に興味とかあるの?」
「ないわね。水着なんて荷物だから持ってないし」
「でしょうね」
これがもしゲームや漫画だったらここらで水着回が入り、キャッキャウフフのハーレム海水浴が開かれたに違いない。
たぶんハヤトとかそうだったんじゃないかな?
そういう星のもとに生まれてそうだし。
やってること主人公感出てるし。
しかしそんな幻想をぶち壊して行くのがこのエレナ・ベルモントという女性である。
ちなみにエレナ・ベルモントという名前を漢字に直すと上◯当麻になるらしい。
……嘘だけど。
「まあ水着回は次回にするとして、宿は……」
「私が決めるわよ?」
勿論断る。
「ジャンケンってのはどうだ?」
「剣士にジャンケンを挑むなんて無謀ね」
エレナが鼻で笑う。
しかし俺も引き下がるわけにはいかない。
「動体視力で負けるつもりはないけどな」
「そんな生半可なものじゃないわよ? 読み合いを制さなきゃ行けないんだから」
……ま、まあ読み合いはそこまで得意にしてないけど、ハッタリの可能性もあるし?
「後で泣き言言うなよ!」
「カズフミもね?」
「「ジャンケン、ポン!」」
結果は言うまい。
ただまあ、一つ言うとするなら。
……最近俺の負けキャラ感強くね?
一泊した後、俺たちはローグセルを旅立った。
どこかでカズフミを勝たせたい……
こんな感じのダイジェストを4、5話入れる感じでいきます。




