大海の賢者 3
「それでその賢者会議って、いつ開かれるんだ?」
「今回の議長の開きたいタイミングで開かれますからな……把握できないのです」
ノルドが答えた。
なんだそれ。もし今回の議長が深夜に開きたいとか思ったらどうするんだ?
「まあいつ開かれても、夢の空間なので全く問題ないのですぞ。都合が悪ければ拒否することもできますしな」
なるほどな。
わざわざ「夢幻の賢者」が空間を作ったのには、そういう理由もあったわけか。
「まあでも近々開かれることは間違いありませんぞ」
「私は行けないんですよね?」
エレナが聞く。エレナにしてみれば、伝説でしか聞いたことのない賢者に一気に会えるのはすごいことなんだろう。
……たとえその先に辛い現実が待っていても。
ん? 待てよ? 賢者に一気に会える、だと……?
「つまり賢者会議で全ての賢者に手紙渡したら、俺はスローライフできるんじゃないか!?」
「それは無理でありますぞ」
「なぜ、だ……!」
「まあこれは少し複雑な事情がありましてな? 賢者会議が始まってからしばらくして、賢者会議で口論した賢者同士の中が悪くなる、という事態が起こったのです」
まあそうだろう。
激闘をした後に、にっこり笑って握手するような青春漫画の世界ではないのだ。
「で、それを防ぐために、『夢幻の賢者』がらもう一つ魔法をかけたのです」
夢幻の賢者、優秀すぎるだろ。
夢ってそんなになんでもありな感じだったっけ?
「そして『賢者会議に出席した者は、結果のみが記憶に残り、その過程は記憶されない』ということになったわけですな」
ほう、つまり俺が賢者会議に出て手紙を渡しても誰もそのことを覚えていないと。
けっ! 流石にズルはできないってわけか。
「それで、俺を推薦してくれるのか?」
「うーん……まあそれはもちろん推薦しようと思っているのですがな?」
どうもノルドの歯切れが悪い。
何か言いたいことがあるようだ。
「何か他にございますでしょうか?」
エレナの敬語もキレッキレだ。
まあ先輩みたいな小物感ある敬語じゃなくて、心から尊敬してる感じの敬語だけどね。
……別に先輩を悪く言ってるわけじゃない。
「あのですな……推薦する代わりと言ってはなんなのですが……一つ、頼みごとを聞いて欲しいのです」
頼みごとか。
まあ無理のない範囲で手伝うことはできるが……
「ああでもその前に、頼みごとをするに値するか、少し腕試しをさせてもらってもいいですかな?」
結局、バトルになるのか。
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「えっと、本当に二人がかりでいいんですか?」
「もちろんですぞ! この依頼はお二人にするのであって、片方にするわけではありませんからな!」
俺たちから三十歩ほど離れたところから、ノルドが叫ぶ。
まあ確かに、理にかなってはいる。
エレナを見ると、だいぶやる気に燃えている。
弱いというだけで相手にされなかったナージャの時とは違い、相手にされていることが嬉しいようだ。
「ああそうでした! 固有魔法については知っておりますか!?」
「はい」
ナージャから……いやエレナから聞いたからな。
結果ナージャのは説明になってなかったし。
「私の固有魔法は【置換】ですぞ! 効果は対象と対象を置換することですぞ!」
……不謹慎かもしれないが、お前が置換とかいうと、犯罪臭がしてならない。
もっと違う魔法にできなかったんだろうか?
まあ選べるものでもないようだが……
「わかった!」
「じゃあいきますぞ!」
そう言うとノルドは杖を空中から取り出した。
杖、だと!? 伝説の……ちゃんと魔法を使う賢者さんだ! やった!
「〈共鳴する水泡〉」
ノルドの周囲に、十数個の水泡が現れた。
「カズフミ、どうする?」
「うーん、とりあえず基本中の基本から行くか」
「分かったわ」
そう言うとエレナが地面を蹴って、ノルドに向かっていった。
するとノルドも魔法で迎撃しようとする。
「〈水砲〉」
「〈石弾砲〉」
俺はそれに合わせて魔法を発動し、ノルドの魔法を打ち消した。
連携の基本。
それは剣士の近接攻撃役を魔法使いの遠距離支援役が支援して攻撃すること。
ここに壁役がいると本格なのだが、今回はいないのでしょうがない。
さらに勢いよく進むエレナを阻もうと、ノルドは「〈水壁〉」を発動した。
「はっ!」
エレナがそれを飛び越えようと、地面を蹴る。
「甘いですぞ! 〈水砲〉」
空中にいるエレナの目の前に〈水砲〉が現れた。
「……っ!」
「〈浮遊する足場〉」
間髪入れずにエレナの足元に足場を作る。
エレナはそれを蹴ってさらに飛び上がり、エレナに当たるはずだった〈水砲〉は誰もいない宙を通り過ぎた。
そのままエレナはノルドに向かって飛んでいき、
「〈太陽剣〉!」
エレナの剣が光る。
そしてそのまま、ノルドに向かって剣を振り下ろそうとする。
「〈置換〉」
その瞬間、大海の賢者が固有魔法を発動した。




