オールドリンデン 2
人と人の出会いは一期一会と言う。
つまるところ、出会いは大切にしろ、ということだがなかなかそう上手くはいかない。
偏見から入るタイプの人間もいれば、相手を下に見ることから始めるタイプ、果てには相手を陥れようとして近づいてくるものまでいる。
まあ結論を言うならば、人を見る目を養いつつ、一期一会の精神で生きていくことが大事なのだろう。
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「おいにいちゃん! 今肩ぶつかったよなぁ!」
「いえぶつかってないですが」
全部避けたっての。隙間がないようで隙間空いてたし、〈大地流動〉であんたらの間隔が無意識のうちに開くようにしてたし。
「うおっ! 肩の骨がぁ!」
「あー、これは完全に折れてやがんなぁ!」
「「慰謝料! 慰謝料!」」
俺がすり抜けたルートにいた男が急にうめきだし、それに合わせて周りが囃し立てる。
お前ら、肩の当たり判定広すぎだろ。
どんだけ酷い当たり屋でも、当たってないヤツからは慰謝料取ろうとはしない。
てか誰だ慰謝料って言葉広めた奴!
しかし立ち止まってしまった以上、どうにか解決してから通るしかない。
なにせ、今の一瞬のやり取りで、一気に囲まれてしまったからだ。
……ものすごい統率力に感服いたしました。
「聞いてんのか、あ゛ぁ゛ん?」
さてどうしたものか。
こう言う場合通報するのがいいんだろうが、警察とかもいないわけだ。
かと言って周りに助けを求めようにも、増援が増えるだけのような気がしてならない。
……結果、解決(物理)になるのはしょうがないよな。
なんて結論が心の中で固まったときだ。
「おーい、そこのあんたら、さっきから見てたら当たってない奴に金をせびるってのはどうよ」
そんな声がかけられた。
見れば眉目秀麗、筋骨隆々、端的にいえばイケマッチョ、な男が腕を組んで立っていた。
腰には剣を差しているので剣士だろうか。
「なんだテメェ?」
「いやー……たまたま近道だったからここを通ろうとしたんだけど、目の前のお兄さんがうまーくみんなを躱すもんだから面白くて見てたんだけど」
見てないで止めてくれればよかったのに。
男はそこで言葉を切り、腰の剣を抜いて構えた。
「まあこの場所を通る洗礼のようなものだから、肩でも当たったらそのまま通り過ぎようと思ってたんだけど……当たってない人から金をせびるようなら、このマーリオン・ローゼンス、相手になるよ?」
「………っ! 剣士が怖くて当たり屋なんぞやってられるか! テメェら、やっちまえ!」
リーダーらしき男は一瞬引き腰になったが、それでもすぐに決意し、仲間をけしかけた。
「オラァァァァァァア!」
「死に晒せぇぇぇぇえ!」
「イケメンだからって調子乗んなよォォォォオ!」
男たちは罵声と共に勢いよく突っ込んでいく。
「はっ!」
それに対するマーリオンの対応は素早かった。
一人目の男を横に体を逸らして避け、剣の腹でうなじを叩き気絶させ、間髪入れずに姿勢を落とし二人目のパンチを避ける。
そのまま鳩尾に一撃を入れて落とすと、三人目の喉元に剣を突きつけた。
「たったの三人ぽっちじゃ相手になんねえぞ? 全員でこいよ」
「っ! 調子乗ってんじゃねえ! やっちまえ!」
「「「「「「ウォォォォォオ!」」」」」」
リーダーらしき男を先頭に全員がマーリオンを取り囲み、襲いかかった。
……えと、ありがたいけど少し申し訳ないから人数減らしておこうか。
「〈足場固定〉」
「うげっ! なんだこれ!?」
「足が……動かねえ!?」
単純にチンピラどもの足をセメントで固めてやっただけなのだが、超効果的だったようだ。
「ぐはっ!」
「つ、強い……強すぎる!」
「なんなんだこいつは!」
その間に向こうも片付いたようで、男たちは全員伸びているか、屈していた。
……やりますなぁ。
「っ、ずらかるぞっ!」
リーダーがそう言って、意識のある奴は全員撤退していった。
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「やあ、さっきは災難だったね」
「ありがとうございました」
礼を言うと、マーリオンは手を振った。
「いやいやいいんだ。ただ成り行きを見ていた俺にも少し悪いところはあったしね。それに、君一人でも大丈夫だったろう?」
あの戦闘の最中でも、俺が細工をしていたことには気付いていたようだ。
セメント固め以外に、いつでも便利〈大地流動〉で、マーリオンの戦いやすいように、チンピラどもの動きを誘導していたことがバレていた。
「君は冒険者かい? 俺はマーリオン・ローゼンス。見ての通りの剣士だ」
「俺はカズフミです。Cランク冒険者で、魔法使い。パーティじゃ支援役としてやってます」
「なるほどね、君と組んだら戦いやすそうだ」
お褒めに預かり光栄です。
そのままマーリオンにこの場所を抜ける案内をしてもらった。
……もう一つお世話になろうかな。
「ありがとうございました。ところで、助けてもらったついでにもう一ついいですか?」
「なんだい? 出来ることなら力になるよ?」
「冒険者ギルドに連れてって欲しいんです」




