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初依頼は薬草採取? 14

 

 渾身のネタはそもそもここでは通用しないのだが、調子に乗って言ってしまった。

 それはまあいい。


 間一髪。


 エレナが力尽きた時点で、エレナの敵討ちは終わったと判断した。

 これで文句を言われるようなら、もうどうしようもない。


「我を倒す者とは、また大きく出たな」


 ヘカトンケイルだけど、実際こうやって対峙するとやっぱりでかいな。

 杖が折れないか心配だったけど、リジェルの杖がすごいのか、はたまたヘカトンケイルがたいしたことないのかは分からないが、折れることはなかった。


「ふんっ!」


 ヘカトンケイルが蹴りを放ってきた。

 もちろん杖で受け止める。


「〈地割れ(グランドクラック)〉」


「むっ!?」


 ヘカトンケイルの片足が地割れに()()()()

 そのすきにエレナを回収して、後ろにさがる。

 エレナの服を漁って完全回復魔法(グランドヒール)のスクロールを取り出し、エレナを回復した。


「カズフミ、なんで……」


「とりあえず、そこでじっとしてて」


 エレナが不思議そうに質問しようとするけど、正直それに構ってる暇はない。

 せっかく俺と互角に近い実力のモンスターが出てきたんだ。

 早く戦ってみたい。


 見ると、ヘカトンケイルも地割れから脱出できたようだ。

 再びヘカトンケイルの前に立った。


「俺はカズフミ。魔法使いだ」


「なぜ魔法使いのくせに我と打ち合える?」


「さてね。魔法使いが物理で戦えないって誰が決めたんだよ」


「それもそうであるな!」


 ヘカトンケイルが残りの腕で殴りかかってきた。

 杖で弾き返すけど衝撃は十分。

 リジェルと闘って以来、久しぶりに殴り合いの戦いをしている実感がある。


 とりあえず、どんどん試してみよう。


「〈石弾(ストーン・バレット)〉」


「何をしている?」


「蚊でも止まったのか?」という表情をするヘカトンケイル。

 どうやら毛ほども効いていないようだ。

 威力にはなかなか定評があったんだけどなあ。

 どうもSランクからはモンスターもランクとランクの間に絶対的な差があるようだ。

 キュクロプスはこれを何発かで倒せたが、ヘカトンケイルには何発撃っても倒せる気がしない。


「〈石砲弾(ストーン・キャノン)〉」


「む?」


 今度はハエが止まったくらいの衝撃はあったようだ。

 まあ特に気にするほどのことはないようで、相変わらず拳の嵐は続いている。


 ところで。

 杖がなくても魔法の威力はたいして変わらないのだが、この杖は何のためにあるんだろうか。

 まさか見た目が大事、とかそんな理由で持ってるだけの杖なのか?

 その割には無駄に頑丈というか、もはやメイスに近い何かを感じてならない。


「はっ!」


 そんな余計なことを考えていたら、ヘカトンケイルにふっとばされた。

 あんまり戦闘中に余計なことを考えるのはよくないな。


「〈大地のゆりかご(マザー・クレイドル)〉」


 後ろの地面が俺を柔らかく受け止める。

 ほとんどダメージを受けずに着地することができた。


「うーん、あんまり弱い技だと通用しないのかなあ」


「はあっ!」


 ヘカトンケイルが土を蹴って、俺に向かってくる。

 速さはまあまあ、正直なところリジェルの方がまだ速いくらい。

 ヘカトンケイルですらリジェルに劣るんだから、十賢人と勇者ってのはどんな化け物が揃ってるんだろうか。


 さて、思い切って魔法の強さを2段階くらい飛ばしたやつを撃ってみよう。


「〈流石群(メテオ)〉」


 無数の岩石が宙空に現れ、一斉にヘカトンケイルにものすごい勢いで放たれた。


 それをヘカトンケイルは、手で受け止めた。


 正確には手で触れた、という表現が正しいだろうか。


「先ほどからちょこまかと魔法を放っていたようだが、俺の手は土を自由に操ることができる。貴様の得意属性が土なら我には絶対に勝てぬぞ」


 なるほどたしかに神話でもヘカトンケイルは、山を千切って投げたという伝説を持っている。

 それならば手で自由に土を操るというのは、至極当然のことなんだろうけど。


 ………だからってここまで向こうの世界と忠実にしなくてもよくないか!?


 そんな俺の心の声を知ってか知らずか、ヘカトンケイルは残った腕の全てに巨大な石を出現させた。


「貴様はあの女よりもずっと強い。我も遠慮せず、魔法も使わせてもらうとしよう」


 ………まじか。





「〈石壁(ストーンウォール)〉〈石壁(ストーンウォール)〉〈石壁(ストーンウォール)〉〈石壁(ストーンウォール)〉〈石壁(ストーンウォール)〉〈石壁(ストーンウォール)〉!」


 ヘカトンケイルの魔法使う宣言から約10分後。

 俺は〈石壁(ストーンウォール)〉をひたすら連呼していた。


 魔物というのは本体のほとんどが魔力で構成されているからか、詠唱と魔法陣を必要としない。

 強いて言うならその体こそ魔法陣であると言える。

 ゆえに魔法を使う魔物は、俺やリジェルと同じように無詠唱かつノーモーションで魔法を使ってくる。


「……なんてことは先に言っといて欲しかったなあ!」


「どうしたのだ! 先程から〈石壁(ストーン・ウォール)〉と叫ぶわりになんの魔法も使えておらんぞ!」


 さらに言えば肉弾戦の最中にもしっかり魔法を発動できる。

 もちろん俺もそれは可能だが、魔物に可能だとは思ってなかったから、その対策もしておらず苦戦を強いられていた。


「うっせぇ! 〈石槍(ストーン・ランス)〉!」


 そして今回の苦戦の最大の要因。

 それは、ヘカトンケイルの土属性魔法無効である。


 〈地割れ(グランドクラック)〉が発動できて、それにハマったということは、手以外は土属性魔法無効というわけではないのだろうが、それでも攻撃魔法がことごとく無効化されているとなかなかこたえる。


 ともかく、現在俺は為すすべなくこのフィールドを〈石壁(ストーンウォール)〉を展開しながら逃げ回っている。


「はっ!」


 ヘカトンケイルがまた大量の岩を俺に向けて投げる。


「くっそ、がぁ……っ!」


 体をねじり、ヘカトンケイルの投げた岩を視界に捉える。

 その岩を土に戻して、その上で方向性と内容を変質させて再構築し、ヘカトンケイルに向けて放つ。

 当然、ヘカトンケイルによって無力化されるのだが、少しの時間は稼げる。

 俺の魔法の性質上、岩を視界に捉えないとイメージが難しいところが苦戦に拍車をかけている。


 しばらくはそんな単調な攻撃が続いたが、ヘカトンケイルも学習する。


「ふむ………」


 ヘカトンケイルから大量の岩が飛んでくる。


「さっきから同じ攻撃ばっ……かはぁ!?」


 すぐには何が起こったのか理解できなかったが、数秒後に頭が追いつく。


 ヘカトンケイルは岩を投げた直後、俺が体をひねってこちらを向く間の隙を狙って俺の横に移動し、俺の脇腹を蹴り上げたようだ。


 遥か上空へと吹っ飛ばされる。

 ものすごい威力だ。


「くっ……思考するタイプの魔物にゃ出会ってなかったからな………!」


 そう、ヘカトンケイルは強い。

 考えなしに突っ込んでくる猿共や、でかくて数がいるだけの鬼とは違う。

 あれは考えて戦い、俺を倒すだけの身体能力も持っている。

 リジェルと戦っていると思って戦わなければ、すぐにのまれてしまう。


「………っ!」


 体が震える。心臓の鼓動がはやくなる。


 ……恐怖しているのか?


 否、違う。

 これはもっと別の………


「………楽しいなあ……………」


 喜びだ。

 今から全力を出せることが嬉しいのだ。


「とりあえず、肋骨は数本いってるな。うん、腕も折れてる」


 宙空を舞いながら、思考を巡らす。

 おもむろに収納に手を突っ込み、エレナから抜き取ったスクロールを取り出した。


「〈完全回復魔法(グランドヒール)〉」


 全身に力がみなぎる。


 さて、そろそろ上昇の限界だろうか。


 ふと見ると、そこには広い世界があった。

 この大陸の果てまで見える。


 ………この広い世界全てを、冒険してやろう。


 そして、ものすごい勢いで落下が始まった。



「どーせなら、落下する間に倒してやるよ!」


 〈石槍雨(ランス・スコール)〉を発動し、上から思い切り降らせる。

 ヘカトンケイルは100の手でそれを消す。


「まだまだいくぞ! 〈流石群(メテオ)〉」


 絶え間なく降り注ぐ、隕石。


 これを交互に繰り返しながら、〈石壁(ストーン・ウォール)〉も密かに発動していく。


 ヘカトンケイルは上を向き、俺に向けて大量の岩を投げた。


「うわっ! やばいやばいやばい!」


 飛来する岩の側面をけって下降し、また次の岩を蹴っては下降しと、どんどん上昇していく岩をうまく使って少しずつ高度を下げていく。

 ぶつからなければたいしたことはない。


「しぶとい奴だ」


 ヘカトンケイルは岩を創造すると、それを一つにくっつけていく。

 どんどんどんどん大きくなっていき、ゆうにボス部屋の大きさを超えた岩を作り出した。


「待て待て待て待て! それ投げる気か!?」


 ヘカトンケイルはそれを思い切り大きく振りかぶって、投げた。


 ビュゴァァァァァア!


 と、自然界にあるまじき音をたてて飛んでくる大岩を直視する。

 これは正直当たったらやばいが、貫けるだろうか?


「土の成分をより分けて………アレを集めれば!」


 行き当たりばったりの発想だが、多分いける。


「〈掘削機(ドリル)〉!」


 先端には炭素を固めたもの。

 つまりはダイヤモンド。組成式なら高校生の時に習ったからいけると思ったが、なんとかなった。


 これで一気に!


「貫けぇぇぇええ!」


 ズガガガガガガガガガガガ!


 摩擦で周りの空気が熱せられ、めちゃめちゃ熱いが我慢する。突き抜けろ、あとはそう願うしかない。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!」


 ガッ!


 そしてついにぶち抜いた。

 巨大な岩はどんどんと飛翔していく。


「よっしゃあ!」


「なにっ!? そんなバカな!」


 ヘカトンケイルの驚く顔を見て、一気に爽快感が増す。

 やったか? と思ったらだいたい生きてんだよ!


「ちぃっ! 我の攻撃を耐えるなど、ありえん!」


 さらに岩を大きくしようとどんどん岩を集めていくヘカトンケイル。

 もはや冷静な判断力を失っていた。


 そうでなければ、気づいたはずだ。


「でもって、これでお前も終わりだよ! 〈石壁(ストーン・ウォール)〉」


 自分の足元に魔力が集まっていることを。


「我ながらなかなかうまい魔法陣だなぁ………」


 上空からだからこそ見える景色。

 それはヘカトンケイルを中心に作られた、とてつもなく小さな〈石壁(ストーン・ウォール)〉で描かれた魔法陣。

 上に注意を向けているヘカトンケイルにとってはただの起伏にしか感じないそれは、最後の〈石壁(ストーン・ウォール)〉で完成する。


 そして完成とともに、恐ろしいほどの魔力が渦巻き出した。


「な、なんなのだこれは!?」


 ヘカトンケイルも異常に渦巻く魔力を感じとり、怯え出した。だが、ヘカトンケイルほどの身長があってもなかなか事態を把握しきれていないようだ。


「これは………魔法陣か!? だがそんな気配どこにもなかったぞ!」


 魔法陣にせよ、無詠唱にせよ、魔法の発動時には魔力が術者から送り込まれる。

 魔法陣はその陣に、無詠唱であれば発動地点に。


 ヘカトンケイルはその予兆が全くなかったことに、ひどく違和感を感じているようだ。


 まあそれもそうだ。


 魔法陣が光り出す。


 ペンで書いた魔法陣ならいざ知らず。


石壁(それ)にはたっぷり俺の魔力がこもってるからな!」


「………!」


 ヘカトンケイルはそこから逃げ出そうとする。

 だがもう遅い。 


 SSSランク級の大魔法が発動する。


「〈大地が紡ぐ勝利の剣(アース・カリバーン)〉」


 瞬間、巨大な剣が足元からヘカトンケイルの体のちょうど真ん中を突き上げる。


「くそっ……! この我が! この我がぁ! 2度も人間にやられるなど………っ!

 あっていいものガァァァァァァァァア!」


 その剣は天高く伸び、俺のいる場所も通り越して、高く高く空を突いた。

 そうして根元の方のヘカトンケイルの体がボロボロと崩れ始める。


 ヘカトンケイルは消滅した。



 ――――――――――――――――――――――――



 アルエラ草、目標達成

 討伐対象

 アンタレス、残り?体

 キュクロプス、目標達成

 ヘカトンケイル、目標達成




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― 新着の感想 ―
[一言]  更新お疲れ様であります。 > 〈|流石群《メテオ》〉  同名称で〈|流星群《メテオ》〉がありますが、別魔法? それとも、あえて表記を変えているパターンですか?
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