第8話 夜と朝のハイバーチューン その3
翌朝、わずかとなったベトナム滞在時間を楽しむために早朝にフォーを食べに。その後、昨夜発見した市場の朝の賑やかさに触れ、心躍る2人
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翌日の朝は早く、5時30分に起床したかと思うと、すぐに出発できるように荷造りを終え、残りの滞在時間が4時間に迫ったベトナムを悔いの無いように楽しむためにホテルを出るのだった。
部屋をでると、恐らく日本人と思われる女性が、寝巻きを着たまま、タバコを吸っていたが、2人が出ていくのを見て少し慌てるしぐさが印象的であった。
まずは、本場のフォーを食べにタクシーで移動。PASTEUR通りを北上した。
ベトナムの住所は、その通りの端(どの方角が起点かは未確認)から順番に番号を付加する法則であった。
従って、その店の住所の通りにさえ出る事が出来れば、あとはその数字の店の方角(増減を確認して)に沿って進めば迷う事は無い。
これは、前回ハノイを待ち歩きした時に、理解でき、それ以降は格段にベトナムの街歩きがしやすくなったのだった。
従って、PASTEUR通りにあるフォーの店も、この通りに入ったことで、車窓から番号を見ながら大体の場所が特定でき、タクシーがわざと遠回りするために別の方向に行く事をも防ぐ効果にもなるのだった。
そうこうしているうちに到着。法則どおりそこには目的とするフォーの店が存在していた。
朝から出勤前の会社員で賑わっていた店で、牛肉入りのフォーボーを注文。
料理長が「勉強のためだ、ここにある具を全部入れろ!」と店の人に指示をするので、「いったい、いくらかかるのだろう?」とやや不安になる店長。
やがてやってきたフォーは、他のお客さんのどれよりも豪華なもので、様々な部位の肉が入っていた。
「やっぱり、フォーにいろいろなホルモンを入れたほうが美味しいね」料理長が、チャーン(ベトナムのライム)を絞りながらつぶやくと、「通常のフォーとは別にスペシャルバージョンも考えてみよう」と店長もうなづくのだった。
スペシャルフォーボーは全て込みで40,000ドンと予想通り高めになってしまったが、本場のフォーを確認するという意味では、決して高い金額ではなかった。
フォーを食べた後、腹ごなしに街を歩く、
PASTEUR通りがすぐに突き当たりになったので、右に曲がる「ここを曲がれば、ハイバーチュン通りに出ることができる」店長はこのあたりの地図の状況もほぼ把握できていた。
途中の通りも面白い店が軒を並べる。
特に気になったのは、スイーツのお店「帰りにもう一度ベトナムに来た時に買って帰ろう」と料理長は、場所を把握するため住所の番地を撮影する。
やがて、ハイバーチューン通りに出ると、
運よく、目の前に市場が広がっていた。
「これは、昨日の市場のようだ」店長がつぶやく。そのタンディン市場にたどり着くと、急に元気になった2人は、市場の中に飛び込んでいった。
市場には生鮮の品が、所狭しと並んでいた。
短期の旅人にとっては、これを持ち帰る事もできないし、ただ見る以外何も出来ないのが残念であった。
しかし、日本には無いような、不思議な形をした魚や蛙、あるいは考えられないほど大量に安く売られているハーブ類を見るだけで心が躍るような気持ちに浸った。
生鮮以外の売り場に行き、昨日買えなかった“チェー”の器を探したが、ここでも見つからなかった。
その後、布地を扱うお店を見つけたので、料理長がアオザイを仕立てようと試みたものの、1週間かかってしまうとのこと、その頃には既に日本にいる以上、これも断念せざるを得なかった。
市場を出て通りを歩くと、白いとうもろこしを使ったおやつが売られ、数名が買うために待っていた。
1袋5000ドン(25円)である事がわかると、早速それを購入。空港で食べてみる事にするのだった。
だが、昨日の夜見つけた、ブンボーフエの店が見つからない。「確か市場の横にあったのに・・・」と店長は悩んだが、時間も余り無いので半ば諦めて歩いていると、市場の先を曲がったところに昨夜の屋台街を見つけるのだった。