第16話 トンローとエカマイ その1
メインの予定である”買い付け”を終えた2人は、一旦宿に戻り着替えてから再び灼熱のバンコクの街中に出た。行き先は”トンロー”腹ごしらえに向かった昼食の場所は、昨夜と同じ...。
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ホテルに荷物を置いて着替えると、店長と料理長の2人は、次の目的のために、日差しの最も強くなるバンコクの街中に再び出た。
と言っても、ホテルからタクシーでBTSのチットロムの駅までお願いしたのだが、冷房の効いたタクシーの中でも強力な日差しの前では、なすすべも無く、暑さが体にしみるのだった。
もはや“名物”となりつつあるバンコクの渋滞。
駅近くになり、その傾向が現れ出したので、手前でタクシーを降りて、歩く事にした。
たった、2・3分で駅に到着したものの、この短時間の間に、早くも汗をかいてしまい、
BTSに乗り込んだ瞬間、強力な冷気が違った意味での感動を2人に与える結果となった。
BTSでの行き先は5駅先のトンロー。
このエリアには、バンコクに来た時には意外にも必ずと言っていいほど来ていた。
実は、非常に相性のよいタイ古式マッサージのお店がこのトンロー駅前にあったからであり、BTSに乗ってでも他のマッサージの店に行く事は考えられなかった。
トンロー駅に到着後、そのマッサージに行く前に、軽い昼食を取る事になった。
場所は、これもトンローの駅前で、マッサージの店とは、道路を挟んで反対側にある“カオマンガイ”のお店。
昨日もカオマンガイを食べたのだが、トンローで食事をするところを考えたときに、ふと思いついた店であった。
実は、一番最初にバンコクに来た時に“カオマンガイ”なる料理を初めて食べたお店で、“辛い”印象が先行するタイ料理のイメージを根底から変えたほど、食べやすい料理の印象が強かった。
しょうがとにんにくで炊いたごはんの上に蒸した鶏肉が乗っているだけの料理と言えばそれまでであるが、このシンプルさが日本でも受けているのも事実であった。
例えば当店の近所にもこの料理の専門店が出来たり、食材屋さんが、独自の簡単に出来るセットを作っていたりしている。
あるいはこれに似た料理として、シンガポールの海南チキンライスという料理がある。
噂では昨年テレビなどで流行った影響なのか、当店のお客様の要望が重なったこともあって、ランチメニューに加える結果となった。
ベトナムでも“コムガー”と言う料理はある意味似ているし、いずれにせよ、比較的シンプルで食べやすいのがいいのかもしれない。
個人的にも非常に好きなこの “カオマンガイ”を料理長が、「昨日の夜の店と食べ比べをして見よう」といったので、店長も同意し、その店に向かった。
店はちょうどアイドルタイムだったためか、
他に人がおらず、カオマンガイと少し変形バージョンの揚げている鶏肉載せごはんを注文。
程なく出てきたが、タレもなんとなく違うようで、味は昨日と比べると・・・。
しかし、空腹だった事もあって、全てを平らげることができた。
店の人が新しいペットボトルの水も用意していたが、それは持っていたので、使わなかった。
清算の時やや不機嫌な表情だったのは、その水を飲まなかったからかもしれない。
(水代を請求できなかったため)
「こんなに味が落ちたとは」料理長がつぶやく。
味そのものが落ちたのか、もしくはさらに旨いカオマンガイの店に行ったから、比較対象としてそう思えるのだろうか?
時代の流れを思わず感じるひと時であった。
お腹を満たした2人は、BTSの駅の陸橋を越えて反対側へ。タイ古式マッサージの店に入った。
2人とも大好きなのだが、日本では1人1時間5000円もするタイ古式マッサージ。
高いので中々利用できない。
ここタイでは、2時間400バーツ(1,200円)と非常に安いので、タイに来ると何度もマッサージを受けるのだった。
だが今回は時間が無く、このとき一度だけになってしまうのが口惜しい気がするのだった。