第15話 「新旧市場対決」その2
店長と料理長の2人は、ハイパーマーケット”マクロ”に到着。今回の研修のメインとも言える”買付け”を敢行した。
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マクロは、今回始めていくハイパーマーケット。
アジアの市場のイメージは、ベトナムのベンタンやタンディンあるいは、先ほど見学したクロントゥーイのようなところをイメージするものである。
だが、常に発展し続けているアジアの市場事情も大きく変わり、特にタイ・バンコクの場合は、それら伝統的な古い市場よりも、カルフールやロータス、ビックCというような日本にもあるスーパーマーケットのようなものが、次々と増えている事実があった。
店長と料理長2人の海外研修でも主に最終日には、これら新しいマーケットのきれいな店内をカートで次々と必要な商品を買い漁り、
一括で清算してもらう事が多い。
クレジットカードが使えるのも大きな特徴で、海外研修全体の中でも非常に重要な位置を占めている存在でもあった。
今回は、特に買い付けを重視した研修だったので、料理長は事前に、より“業務用”に適したマーケットを探していたところ、このマクロの存在を見つけるのだった。
もはやアメリカなどにあるようなハイパーマーケットともいえるこのマクロへ向かうために、
事前に用意したのタイ語での地図をタクシーの運転手に見せると、あっさり車を動かしてくれた。
15分ほどでマクロに到着。
少し中心部から離れているのか、1階は全て駐車場で、やや殺風景に感じたが、2階に上がると、巨大な売り場が目の前に現れるのだった。
2人は、端から順番に見に行く。
電化製品は、電圧が違う関係上(タイは200V)、購入は出来ないが、日本には無いが、タイだからあると思われるものが何点かあった。
次に椅子やテーブルが販売されているエリアへ。
椅子についてはどうするか迷ったが、今回は送らずに全て持ち帰る方向で考えたので、椅子は買わなかった。
食器売り場では、屋台などで使われているプラスティックの器が沢山安い値段で売られていた。
前回までは、陶器がメインであったが、どうしても割れやすい問題があった。
その上、センスの関係上、欠けている食器も捨てる場合が多いので、すぐに減ってしまうのだった。
イメージも、“屋台 ”の感覚で行く事にしたので、ちょうど良く大量に購入するのだった。
その他にも鍋などの厨房道具を次々と買い、荷物を入れるための袋も購入した。
カート一杯になった後、清算すると6000B。この量なら安いのだろう。
しかし、クレジットカードが使えず、慌ててATMから現金を卸すと言う、ちょっとしたアクシデントがあった。
いままで、この手のマーケットではありえなかっただけに、少し慌てたが、恐らく今までと違い、より業務色が強い店だからだろう。
何しろ、香港で余りにも見かけるので思わず買ってしまった “小心地滑”(トイレ清掃中などで搭乗する黄色い看板)のタイ語バージョンを見つけ、
今回も思わず買ってしまったのだから...。
のどが渇いたので、思わずビールを1本飲んで一息を付きながら、いま購入したカラフルな袋に、荷物を次々と入れていく。
建物を出て、タクシーを使って一旦宿に戻る事にしたのだが、ここで止まっていたタクシーにホテルの名刺を見せると、手を横に振って乗車拒否をしてきた。
仕方なく、次のタクシーが入ってきたので、お願いするものの、乗車拒否したタクシーが未だにいるので
載せる事ができないと言い張る。
タクシー業界では義理を重視するシキタリがあるらしい。
その義理堅いタクシーがそのまま道路へ出て走った直後、乗車拒否ののタクシーがやってきて「200バーツで行ってやる」などと言ってきた。
気の弱い旅行者ならこれで乗るのかもしれないが、何度も海外を経験している2人には通用するはずも無い。「何をバカな事を!」と言わんばかりに料理長が追い払うと、さっさと諦めてとっと道路上に立ち去っていった。
その後、1分も経たないうちに別のタクシーがやってきて、通常通りホテルを目指して動き出した。結果はメーターで、50バーツもかからない程度でホテルに到着。
店長はこのあたりのエリアの場所を大体把握していたので、大まかな予想通りの金額に、安心し、ホテルに戻る事が出来るのだった。
だが、今回の件で油断するととんでもない事になるものだと、海外での警戒感を今一度思い出させる結果となるのだった。