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第1話「2年4ヶ月ぶりに関空を経つ

この小説は、実際の話を小説として記述している

「ノンフィクション小説」です。

第一話 2年4ヶ月ぶりに関空を経つ



2009年5月6日の早朝、大阪の中心部、本町から南に向か

って続く、この時間はほとんどの店がシャッターを閉じたまま

になっているアーケードの商店街を、難波方向に向かって歩い

ている1組の男女がいた。


この2人は、アジアごはん麦酒食堂の店長と料理長。海外へ研

修に向かう最中であった。


2人は難波駅の手前のコンビニで軽い朝食を買った後、南海電

車で関空に向かった。


昔は、タクシーで難波駅まで移動したり、特急に乗ったり、あ

るいは空港で高い “うどん”などを食べたりしていた。


だが、研修に出る度、出国前に無意味な経費をかけるのは良く

ないとの思いで、出国までの経費は最小限に抑えているように

するのだった。


関空に向かう直前の橋の上でいつもなら、田尻漁協の漁業体験

の話になるのがお決まりだったが、この日はその話題は一切無

かった。


理由は、2年前の8月に、その漁業体験そのものに参加したか

らであった。

その時漁船の上から、滑走路を飛び立つベトナム航空機の写真

などを撮りながら2人で「またいつか乗りたいね」などと言っ

ていた。


その時をふと思い出すと、それに乗り込むことになっているた

めか、静かに2人の今まで我慢していた、何かが燃え上がり、

テンションも上がっていくのだった。


到着後、GW最終日のため帰国ラッシュを想定してか、テレビ

カメラが到着の場所に張っていた。

例のインフルエンザ関連のインタビューを取るためのようであ

ったが、しばらく眺めていると、全体の4分の1位しかいなか

ったマスクをしている人にしかテレビカメラを向けない。


なんとなくマスコミのやらせっぽい一面をこんなところでも見

えてしまうのだった。


いつもとは違う団体窓口でチケットをもらい、後はいつものよ

うにチェックイン。

今回はいつもより、テンションが高いためか、料理長が無意識

に、担当者に旅の自慢をしてしまった。


入国審査の前に先ほど、購入した朝食を食べながら、店長はV

IPの待合室から出てきたツアー客を覗きながら、頭の中で旅

の計画を頭に描くのだったのだった。


入国審査を終え、カード会社のキャンペーンでペンを貰い、普

段はつけないものの、何かと便利と言う事で、腕時計も購入。

これは3000円近くしたものの、デザインもよく、研修後も

使えそうなものであった。


空港内のシャトルに乗り、いよいよ搭乗口で待つ間、店長は、

乗る予定のベトナム航空の機体を筆ペンでスケッチを始めた。


店長は元々、ヘタウマの絵を描いていたが、書き上げるスピー

ドが遅く、どうしても事後に写真から絵をかくことしかできな

かったが、店の開業記の漫画を描くなどしたせいか、早く絵を

描くコツをつかんでいた。


「いつか、旅先で絵を描いてみたい」そう思っていた店長の思

いも、2年近くのときを経てようやく実現したこの日、約5分

でベトナム航空の機体を書き上げるのだった。


この日の他の乗客はいつもよりやや少なめであった。ビジネス

クラスに乗り込む、20年位前のバブル時代を髣髴させる老夫

婦は、別格の雰囲気を醸し出していたが、その他、旅馴れた旅

行者が、ネットで現地の地図を確認していた姿や、逆に胸にバ

ッチをつける典型的な初心者ツアー客の団体が目立った。


HCM便は曼谷便とは違うのか、朝からはしゃぐゴルフ親父の

姿を見る事は無く、みんな比較的大人しかった。


フライトの時間になり、2人を含めた乗客は淡々と機内に乗り

込むと、ベトナム航空の機体は、恐らく2年前の日差し厳しか

った、田尻の漁船から見たときと寸分の狂いも無く、晴れた関

空の滑走路を灼熱とバイクの音が鳴り響くベトナムを目指して

飛び立つのだった。


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