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これがゲームの内容だったはず

 ゲームに出てくる攻略対象は四人。


 王太子であり、学園の生徒会長である第一王子、アルフレッド・ダイヤモンド。


 成績優秀ながらも体力面ではイマイチな副会長カイル・アメジスト。


 魔法ではアルフレッドを凌ぐらしい魔法バカなランドルフ・メノウ。


 近衛騎士団を目指している脳筋のタッセル・ターコイズだ。


 ヒロインの名前は〇〇・ルビー。

 この〇〇にユーザーの名前を入れることになっていた。

 そういやヒロインらしくピンク頭だったのが、地味にユーザーに叩かれていたな。

 光魔法を使えるということで落ち目な男爵家に拾われ、養女になり学園に入学してくるのだが、勿論ユーザーはヒロインとしてプレイするので全員攻略である逆ハーレムを全力で目指す。

 難易度的には脳筋→魔法バカ→体力無し→王太子だったろうか。


 全員クリアすれば隠し攻略キャラが出てくる。

 まぁ、この隠しキャラは担任のマイケル・ラピスラズリなのだが、五人全員超が付く美形設定だった。


 この最後のマイケル先生の好感度がなかなか上がらず、かなり苦労したのは苦い思い出だ。


 そしてミステラル・サファイアの最初のライバルにしてメインの悪役令嬢、リリアナ・エメラルドは、このゲームの舞台であるジュエリー王国の宰相の娘だ。

 因みにミステラルの父親、サファイア公爵閣下は魔法騎士団の団長だ。

 国王のダイヤモンド陛下、エメラルド公爵閣下、サファイア公爵閣下は幼馴染みという設定で、この三人は堅い絆で結ばれているとか何とか。


 悪役令嬢のリリアナ・エメラルドは美しくはあるものの、悪役令嬢らしく少々ツリ目気味でプライドが富士山に及ぶ程高いくせにヒロインに対する虐めが陰湿だった。

 王太子の婚約者の座を守ろうとするあまり、彼女は最終的にヒロインをある場所に閉じ込め、男子生徒に襲わせるという非常に汚い手を使う。

 そこを攻略対象に助けられ、その場で断罪シーンに移る。

 勿論攻略対象の好感度が上がってないと助けに来ないので、その場合は暗転してBAD ENDとなる。


 しかし、私が今回攻略したいのは攻略対象キャラでは無い。


 私はこのゲームにログインして、彼を一目見て、何故この方が攻略対象では無いのかと嘆いた。

 そう思う程、彼は私の好みにドンピシャだったのだ。

 彼の名前はリチャード・エメラルド。

 そう、リリアナの父親、ジュエリー王国の宰相だ。


 前世の私と同じ36歳という歳にも関わらず、20代の様な容姿。

 少し長めの前髪を7:3に分け、顎のラインまで伸ばした銀色の髪は少しウェーブがあり、サラサラと音がするぐらい軽やかに(私にはそう見えた)揺れ、青紫色の瞳は涼し気な目元を煌めかせていた。


 ハッキリ言おう。

 攻略対象キャラより私はこの宰相閣下に一目惚れしてしまったのだ。


 残念なことに、リリアナの性格形成にはこのリチャード様の態度が大きく影響する。


 リチャード様の妻であり、リリアナの母親は、リリアナを出産する際に命を落とす。

 愛妻家だったリチャード様はそのことを長いこと受け止められず、仕事を理由にリリアナに極力接触しない道を選んでしまうのだ。

 母親を失い、父親の愛も失ったリリアナは、自分の出生を呪うようになるが、王太子の婚約者になることで父親に認めて貰おうと気持ちを切り替えていく。


 そういう背景があった為か、リリアナに同情するユーザーが一定数居た。


 リリアナと私は同じ歳。既にリリアナの母親は亡くなっていることになる。


 ならば私のすることは、リチャード様とリリアナの仲を復旧し、尚且つリリアナの性格がひん曲がらないようにし、最終的にはリチャード様の再婚相手の座をゲットすることだ。


 それを行うには即座にフェードアウトするような令嬢にならなければいい。

 魔法が重宝されるこの国で誰もが目を見張る様な令嬢になるのだ。

 それこそ魔法バカのランドルフに負けないぐらいに。


「うおおおおぉ!!光の玉を回すなんて、うちの子天才!」


「ご主人様、お嬢様は珍しい光魔法だけでなく、水、風、火、土魔法も既に習得されています」


「なんだって!? やっぱりうちの子天才か!」


 サファイア公爵閣下であるお父様が、ガクリと膝を着き両手で顔を覆ったまま天を仰いでいる。

 その横ではサファイア公爵夫人であるお母様が呆れた顔で溜息を吐いている。


「あなた、親バカを発揮するのは宜しいのですが、ミスティに及ぶ危険も考えて頂きませんと」


 ミスティとはミステラルの略称だ。

 魔法騎士団団長で強面のお父様はお母様にベタ惚れの為、頭が上がらない。


「わ、わかってるよ。こんな魔力を持っているとバレたら教会が引き渡せとうるさく言ってくるだろう。学園に入学する年齢になれば本人の意向が最優先されるがな」


「本当に教会は……。法律か何かで取り締まれませんの?」


「あくまで教会はイノール聖国の管轄で、各国の教会は出向という形で異国扱いなんだよ。特に光魔法は聖魔法に成長するものとされるから、幼い内から聖国で教育を受ける義務があると主張してくる」


「そんな教会、この国から追い出してしまえばいいのですわ」


 ええええ

 そんな情報、ゲームにあったか??

 そうなるとヒロインは光魔法が使えるのを隠してたことになる。

 だとしたら引き取った男爵家との接点は?


「国王陛下も私もそうしたいのが山々だが、世界一神教の女神への背信行為だと聖国にレッテルを貼られるだろうな」


「各国も教会のやり方には不満があると聞きますが。聖魔法である治癒魔法を独占したいだけでしょう?」


「アリシア、落ち着いてくれ。ミスティは必ず俺が守るから。それに君は笑っていた方が美しい」


「あら、では今は美しくないと?」


「い、いや、違う!君はいつでも美しいが、笑顔は輪を掛けて美しいという意味で……」


「この前、あなたの軍服に長い毛が付いていましたわ。ワタクシとは違う色の」


 ええええ、お父様、それアカンやつです。


「し、知らんぞ!俺は君一筋なんだから!頼む!信じてくれ!」


 お母様の足元に膝まづくお父様。


「奥様、あれは馬の毛だったかと」


 公爵夫婦の不穏な空気を裂くようにメイド長が眼鏡を持ち上げながら答える。


「ええ、知ってるわ。ワタクシは長い髪の毛とは言っておりません。長い毛と言ったのです」


「アリシア~ 俺は本当に君だけなんだ!」


「わかっておりますわ、あなた」


「アリシア!愛してるよ!」


 そんな二人をメイド長は慣れた様に、私は遠い目で見ていた。


 既に私のことはお父様の頭からスッカリ消えていることだろう。


 イノール聖国か。

 ゲームの説明書には他国情報は載っていなかったと思ったが、ヒロインと攻略対象は教会で式を上げていた。

 全キャラのスチルがあったが、全て教会だった。


 治癒魔法を独占しているとなると、この国や他の国々でも病気や怪我の治療は教会に行くのだろうか。

 魔法関係の本を中心に読んでいたが、国際情勢関連も探してみよう。


 そして早々にエメラルド公爵家と接触しなければ。

メイド長「……………(いつものことですね)」



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