2.家族
ブックマーク、評価してくださった読者様ありがとうございます。
すみません!!一話目に二話を入れてました!!申し訳ありません。
変更してます。
カファロ家の屋敷は、小高い丘の上にある。規模だけで言えば、それなりに大きなものだが、修繕が追い付かず使っていない部屋も多い。
そんな屋敷の地下にある厨房でルチアともう1人の女性が食事を作っていた。
「お母様、味付けはこれでいいかしら?」
「…うーん、そうねぇ。いいと思うわ」
ルチアと同じ黄金色の髪を編み込んで纏めている女性は、彼女の母親のマグリットだ。
40歳を過ぎた年齢ではあるが、ルチアと並ぶとまるで姉妹のように若々しい女性である。
カファロ家には使用人が1人しか居らず、掃除洗濯料理などの家事は家族で分担している為、このように親子で並んで料理をするのはいつもの事だった。
「ねぇ、ルチア。結婚のこと、本当にいいの?」
心配そうに聞いてくるマグリットにルチアはニコリと微笑む。
「大丈夫。良いお話だと思うし」
「…家の為にと、無理をしてないかしら?」
「無理なんてしてないわ。不安がないと言えば嘘になるけど、結婚が決まった女性はみんな多かれ少なかれ不安に思うんじゃない?」
「それは、そうだけれど」
ルチアの言葉に、マグリットは不安げだ。
「結婚なんて無理かなって思っていたから、それが家の為になるなら、私は嬉しい」
「ルチア…」
「私、ちゃんと上手くやるわ。心配しないで」
「…何かあったら、直ぐに相談するのよ?」
「分かってるわ」
マグリットの優しさをルチアは嬉しく思う。
「お母様、今日の夕食は何!?」
そう言って扉から顔を出したのは10歳くらいの少年だ。
ルチアと同じ黄金色の髪は少し長めで、クリッとした目元の愛らしい少年。
少年はルチアがオタマで混ぜている鍋を覗き込む。
「今日はシチューよ。エリク好きでしょう?」
「うん。好き!」
「じゃあ、食器とか準備してくれる?」
「分かった!」
会話が終わると、エリクはそそくさと準備を始める。
エリクはルチアの大切な弟で、将来はこの伯爵家を継ぐ大切な跡取りだ。
「ああ、坊っちゃま。私もお手伝い致します」
そう言いながら、厨房に入って来たのは白髪混じりの年配の細身の男性。
「マウロ、ありがとう」
マウロと呼ばれた彼は、この家唯一の使用人で執事である。
彼を含めた4人がルチアにとって大切な家族だ。
ルチアの家族は仲がいい。
朝食と夕食は必ず5人で食卓を囲むし、夕食後に皆で会話を楽しんだりする。
偶にみんなでピクニックに行ったり、買い物に行ったり、貧乏だがそこそこ領民にも慕われていた。
だからルチアは家族や領民の為になるなら、老人の後妻でも商家の嫁にでも何でもなるつもりだった。
ただ思い描いていた結婚相手とは全く違う人物に、ルチアはどうしたら良いのか分からない。
噂だけでもレオポルト・コンスタンツィは、貴族令嬢からすれば結婚相手としてかなりの優良物件だ。
何故自分が選ばれたのかさっぱり分からないから、余計に困惑してしまう。
どんなに考えてみてもルチアにはレオポルトとの接点が見つからなかった。
顔を見れば何か思い出す事もあるのだろうかとも思ったが、そもそもルチアは若い男性と親しくした覚えがなかった。
幼い頃に一緒に遊んだ貴族の少年の記憶もないし、道端でバッタリ運命的な出逢いをしたなんて事もない。
だからこそ、一週間後レオポルト本人がここに訪れるとヴィーゴに聞かされたルチアは憂鬱な気分になった。
今日の夜には、3話を公開します。