智也の人生
かなり久々に
なろう
を読んで、少し書いてみたくなりました。
と思って書いてたのが2カ月以上前、、、
地震やら台風やらでバタバタして、投稿前でストップしてました(ToT)
ちょっと落ち着いたので投稿してみます。
気が向いた時にゆっくり更新できたらなぁーって思ってます!
よろしくお願いしますm(_ _)m
キキキーーーっ
激しいブレーキ音と共に目の前に現れたトラック。
あ、死んだな
瞬間に頭に浮かんだのはそんな感情だった。
抱きかかえた猫をチラッと見てから、その衝撃に備えて目を閉じる。
辺りの雑音が消え、頭の中にいろんな出来事がフラッシュバックする。
少しの間が空いて、ノイズ混じりの白黒の映画の様な映像が浮かび上がってくる。
これが走馬灯ってやつか。
・
・・
・・・
奥原智也
生まれた時の俺の名前だ。
普通の家庭に生まれ、両親からも普通に愛情を与えられ育っていたはずだった。
専業主婦の母と、建設業の父。
仕事でほとんど家に居ないが、家に居るときは口うるさく怒る父。
俺はそんな父が苦手で、いつも一緒に居てくれる母が大好きだった。
「生まれてきてくれてありがとう。一生智也を離さないから」
何かある度に母は俺にそう言った。
もううっすらとしか顔も覚えてない母だけど、その言葉だけはしっかり覚えている。
口うるさく、厳しい父だったが母にだけは甘い父だった。
苦手だったけど、そんな父が嫌いではなかった。
そんな家庭が終わったのは俺が6歳の時。
突然の離婚。
原因は母の浮気だった。
父の友達と、俺が生まれた頃からずっと続いていたらしい。
まだ小さかった俺はそれがどうゆう事か理解できず、ただただ母と父とはもう一緒に暮らせない
それだけは理解していた。
「ごめんね、智也。あなたとはもう会えない。お父さんと一緒に暮らしなさい」
これが母からの最後の言葉。
俺が人生で受けた1度目の大きな裏切り。
小学2年の頃
父が再婚した。
母と離婚してからは仕事を変えたのか、父は毎日夕方には家に帰ってきて夕食を作ってくれていた。
父の頑張りと、慣れもあったのか。その頃にはもう母が居ない寂しさは感じなくなっていた。
新しく家族ができた。
新しい母と、初めての妹。
1つ年下の妹は陽といった。
ひなちゃん ひなちゃん
初めてできる妹に毎日そうやって話しかけて、遊んだ。
母も、よく笑う優しい人で、俺は何一つ不安に感じることもなく新しい家族が大好きになった。
俺が6年生になった時、2度目の裏切りが起きた。
ある夜中、目が覚めてトイレに行くと、陽の部屋が少し開いていて、ほんの少しだけボヤッと光が漏れていた。
何気なく覗いてみると、全裸の父と全裸の妹がベッドの上で向かい合って座っていた。
陽は泣いていた。声を殺していたが、確かに泣いていた。
何をしていたか、なんとなくわかってしまったが、怖くて声を出せなかった。
どうしていいかわからず、なるべく音を立てないように母を起こしに行った。
母に状況だけ説明すると、真っ赤な顔をして
「智也くんは寝てなさい。」
とだけ静かに言って、母が陽の部屋に行った。
次の日、朝起きて食卓に行くと、いつもと変わらない朝食、いつもと変わらない父と母、いつもより少し元気のない陽が居た。
母も父も普段と変わらなかったので、そんなに大した事じゃなかったのかな?と思って陽と一緒に学校に行った。
昨日見た事は陽には何も言えなかった。
帰りも陽と一緒に帰ってきて、自分の部屋に行くと、
ロープでぶら下がった父がいた。
酷い臭いがして、顔は父とわからないくらいパンパンに膨らんで、ズボンは何かで濡れていた。
意味がわからなかった。
駆けつけた母からは表情が無く、何を思ったのかわからなかった。
陽には見せられない。
そう思ったオレはただ陽を部屋に近づけないようにしていた。
父の自殺後、引越しをした。
新しい家は前の家より少し狭かった。
それから、母の俺に対する態度が明らかに変わっていった。
母、妹、俺の3人の生活が始まって2か月経つと、母は俺の分だけ食事を作らなくなった。
変わりに朝、昼、夜と毎食500円、お金をくれた。
陽と俺が何か会話すると、陽を叩くようになった。
俺は母の前で妹と話さなくなった。
朝家を出て学校に行き、学校から帰ってからの母が帰宅するまでの時間。
陽と話せるその時間が好きだった。
ある日学校から帰ると、1枚の紙が置いてあった。
『もう疲れた。探さないでください。智也くんの顔を見るとあの人を思い出し全身が痒くなります。陽の顔を見ると、どうしようもなくイライラします。もう一緒に暮らせません。あなた達の事は叔父さんに頼んでます。あなた達が大人になるまでに必要な充分すぎるお金を叔父さんに渡してます。』
そのたった1枚の紙で2度目の家族は終了した。
次の日に叔父さんが家にやってきた。
叔父さんの話をまとめると
自分にも家族が居るから一緒には暮らせない
住む所と毎月の生活費は用意する
定期的に様子は見に来るから自分達で生活しなさい
それが無理なら施設に入れ
との事だ。
その日から陽との二人での生活が始まった。
俺と陽は奥原ではなく、叔父さんの(陽にとっては以前の)宮塚の名字になった。
中学2年になる頃にはもう完全に二人の生活に慣れていた。
叔父さんからの生活費も毎月しっかり貰っていた。
普通に生活して、普通に遊ぶ小遣いが残るくらいの金額だ。
吹奏楽部に入って毎日部活を頑張る陽の為に、俺は部活に入らず毎日夕食を作った。洗濯もやっていたが、この頃くらいからは陽が恥ずかしがって、洗濯は陽にやらして欲しいと言うので
炊事、掃除は俺の担当
洗濯は陽の担当
という感じで役割分担ができていた。
最初は不安で毎日バレないように泣いていたけど、その頃にはその生活が気に入っていた。
ただ、この頃にはもう俺は人を
いや、大人を信用できなくなっていた。
感情表現が上手くできず、周囲からは冷たい奴と言われていた。
中学に入った時からの大親友の悟と裕二、
その悟と裕二の幼馴染みの美樹
この3人と妹の陽。
本気でこいつら以外はどーでもいいと思えるくらい、別格に仲の良い人間。
他の人間とはほとんど話さなくなった。
それでも良かった。たとえ周りの人間が信用できなくても、誰に裏切られても、この4人だけは信用できたし、絶対に裏切られない。そんな気になっていた。
俺もそう思っていたし、みんなもそう思っていると信じていた。
その人間関係が崩れ始めたのは中2の終わり頃だった。
俺と美樹が付き合い始めたのだ。
ある日美樹に告白されて、まだ好きかわからなかったけど、美樹とゆう人間は好きだったので付き合う事にした。
それからしばらくした中学3年の夏休み
その頃の俺は暇を見つけては勉強とトレーニングをしていた。
勉強は、将来しっかりと稼いで陽に良い思いをさせてあげたいから。
トレーニングは、1度陽と歩いているときに不良に絡まれたのがキッカケで。陽を守れる男になりたかった。
ある日、吹奏楽部のコンサートを見に来て欲しいと陽に言われた。
コンサートと言っても、中学校の体育館でやる、地域演奏会のような物だ。
初めてソロ演奏があるから見に来て欲しいそうだ。
断る理由も無いので見に行く事にした。
いや、内心楽しみだった。
その週の日曜日、演奏会を見に行った。
それは俺が想像してたよりもずっと迫力のある、完成された演奏だった。
もちろん音楽に関心があるわけではないので、素人感覚だが。
保護者達は楽器や椅子の片付けを手伝わないといけないので、俺も手伝っていた。
楽器を運び終え、ふと教室に筆箱を忘れていたのを思い出した。
夏休みの間、筆箱が無くて不自由していたんだ。
夏休みって教室は鍵開いてるのかな?なんて考えながら教室に行くと、男女の2人組が居た。
なんとなく音を立てないように近づくと、よく見知った顔だった。
大親友の悟と、彼女である美樹だった。
よく見知った顔の二人は、全く知らない顔を俺に見せつけた。
二人は抱き合っていた。
そして、お互いに求め合うように唇を重ね合わせていた。
少し離して、また重ねて。
何度も、何度も。
段々と二人の息が荒くなる。
「もう、、ダメだよ、こんな所で」
「なんで?いつもしてるじゃん」
「人居ないからって、学校じゃダーメ」
「ふふ、じゃー続きは帰ってからな、、、え?」
その会話の途中で悟と目が合う。
必死に何か言っている美樹と、血の気のひいた顔の悟。
そんな2人を見ながら俺はこんな事を考えていた
(あ、そっか。いくら親友だからって、裏切らないわけ無いよな。そーだよな。)
この時からかな。なんだか全部がどーでも良くて、もう完全に人間とゆう生き物を理解した感覚。
信じるから裏切られる。
人間は裏切る生き物。
信じる奴がバカなんだ。
自分の心を開くな。
なんでその2人がそうなったとか、本当に悪かったとか、今でも俺の事が嫌いな訳じゃないとか、
何かいろんな事を言ってた気がするが、
「そーだよな。仕方ないよ。うん。みんなそーゆうもんだよ。」
俺はこの言葉を最高の笑顔で言うだけで、二人の言葉は全く耳に残らなかった。
そーなんだ。
大人は裏切る。
女も裏切る。
友人も裏切る。
なら、心を開かなければいい。
相手と深く関わらなければ裏切られる事も無いんだから。
それからは俺は極力人との関わりを避けた。
もちろん必要なコミュニケーションはとるし、笑いあったりもする。
ただ、心を動かすのをやめた。
形だけの会話。
表面上の笑顔。
もう一人の親友だった裕二にも、妹の陽にも。
どうせいつかは裏切られるんだから。
白黒の映像がここから一気にコマ送りのように早く流れた。
わかりやすくグレて荒れた高校生活。
女、酒、タバコ、薬物、ケンカ、恐喝、窃盗、、、
何度も警察の世話になった。
見兼ねた叔父に、妹を引き取られた。
高校を中退し、ヤクザ紛いの事もやった。
違法行為もしながら、さらに女、金に狂った。
そして今。
雨の中道路を渡る、見るからに足の悪い猫を何故か放っておけなかった。
凄いスピードで突っ込んできたトラックから助けようと抱きかかえて一緒にひかれるとか、、、。
まー、こんなしょーもない25年の人生。
なんの後悔も未練もなかった。