二十三☆【後編(上)】突然パパから告げられた真実……山奥の古城……。
繋がる閃き……。
次の日、柚葉がコウを呼び出した。それはコウへなゆりと話したことを伝えるのではなく、泰斗のことだった。
コウが柚葉の言葉を思い出していた……何なのこれ……わたし達を護ろうとしている……そしてコウ何かを閃く。
「柚葉!!お前が言っていたオーラが発生したタイミングはいつだった?」
「そうね……泰斗と別れた日の夜頃だった筈よ」
「繋がる……因みにそのオーラまだあるのか?」
「あるわ。コウに言ってなかったと思うけど、そのオーラなゆりにもあるのよね」
「おれと柚葉と柊に……そうか。なあ柚葉!オーラが見えるのなら泰斗が話していたサキュバスも柚葉なら見えるかも知れない」
「何よそれ?」
「ちっきしょう……なんでおれは気づけなかったんだ……今迄一人で泰斗を捜していた。『泰斗が言っていた詳しくは伝えられない』の部分と『助けようにも存在しない』の部分とオーラの発生のタイミング……泰斗消失の理由には魔術が関係していると思うんだ」
「また魔術なの?根拠はあるの?」
「確証は無い……あまり当たっていて欲しくないおれの勘だが……とにかく今回は柊も連れてく。一緒にお前も来てくれ!GPSの消えた地点へ再度捜しに行く、その前に柚葉の掛かっていた魔術を詳しく聞いていいか?」
「いいけど……なんなのよ。もう……」
泰斗がいなくなってから柚葉に掛けられた記憶を奪う魔術を細かく調べていたコウ。柚葉が受けた術の作用を確認していた……この魔術で間違いない。ただ何故柚葉を狙ったのかがずっと不明のままだった。
確認するように再度深く考えるコウ……
あのタイミングでの発動……
辻褄が合うある一つの推測に辿り着くことができていた……
であれば三人でなら……と、今度は古城まで三人で向かった。
そして古城前……。
「ちょっとコウ。これって……明らかに不自然じゃない……この建物の造りもそうだけど……こんな所にこんな大きな城なんてなかった筈だわ。こんなのディ○ニーランドじゃない……」
「やっぱりそうか……おかしいとは思ってたが……」
「何だろう……少し怖いね……」
「気味悪いよな……ただ、その分、これ以上に怪しいもんはないよなぁ……」
この国の建造物としては不自然な造りに三人の不安が募る。コウの表情だけは期待が含まれているようにも見えた。
コウが古城の重い扉を開ける……。
すると柚葉の視界に広がるのは広い空間を埋め尽くす燃えるような赤に、金の刺繍と装飾がされている絨毯。石造りの黒色の壁。その奥の左右にある大きな台座の上には邪悪な気味の悪い像が立ち構えている。その間の三段程高い位置に王の椅子と呼ぶに相応しい、神々しく豪華に飾られた王座があった。
息づかいさえ聞こえてきそうな程に静かで物悲しさが取り巻く空間……
「あんた……だれなの……」
「どうした柚葉!何が見えるんだ!」
柚葉にだけは神々しく豪華に飾られた王座に座り頬杖を突きこちらを睨む禍々しい存在が見えていた。黒い炎のような姿で揺らめく禍々しい存在は何も問わず語らず王座から腰を上げた……
「わからない……魂のような炎のような黒い影みたいなものがあるわ」
「黒い影?……柚葉!近くに小さなサキュバスはいないか?」
「サキュバス?なんかコウモリみたいなのならいるけど……」
「やはりそうか……」
黒い影は頭の中から直接語り掛けるような……テレパシーのような声で問う……
「……我に何の用だ……」
柚葉が聞こえた声を二人に伝えようとする……
「何の用か聞かれたわ」
「そうか……手合わせしてもらうぜ」
「我は汝には負けぬ……」
「我は汝には負けぬって言ってる」
見えない敵を相手に何故か強気なコウ。柚葉無しでは会話すらもままならない相手とのやり取りだ。
「はは……そうかもな。ただなぁ……柚葉も居るんだぜ」
「ぬぅおおおおおお!!!痛む……その名を呼ぶな。や、やめろおおおおおお!!!」
「え?何なの?黒い影が苦しみ始めたわ!」
「やはりな……」
「ちょっと、どう言うことか説明しなさいよ!」
「奪われていた記憶の中で……中一の頃のおれと柚葉が約束をした日から数日後……これまでの穏やかだった関係に、亀裂を入れることになる儀式が行われていたんだ。苦しみや悲しみから我を忘れた幼馴染み……泰斗が行った魔術の作用は……」
「——『愛する思い』と『愛する思いに関わる記憶全てを奪う』——
——奪われたもの甲は奪われた自覚はある。ただし、奪われたものが愛した相手側乙は、愛された思いに関わる記憶だけを奪われていてその自覚はない。乙は誰かを愛することは可能——
——奪われたもの甲が『愛する思い』だということを他のものに明かすと、二度と戻ることは無い——
——奪われたもの甲が愛した相手に会ったとしても、互いに何も解らなく初対面と同等——
——『愛する思い』と『愛する思いに関わる記憶全て』を戻す条件は、術者の消滅又は、奪われた愛する想いの相手乙との真の接吻——」
「ただこれには!予想外の副作用もあった……柚葉!!おまえは柊に抱いていた愛情のような友情を泰斗にも抱いてた筈だ、魔術に手を染めてしまった泰斗自身も柚葉への記憶を奪われてしまっていた筈なんだ!ここからは憶測だが、我を忘れ、魔術に手を染め、生きる目的だった柚葉への思いまで失った泰斗は、行くあても無く、孤独に耐え切れずに、邪な王に心と生命を利用されてしまい黒い影となり、おそらく……既に命までも奪われている……」
「目の前に居る黒い影は一人の女……柚葉を愛した一人の男!泰斗だったんだ!!柚葉!!あいつの名前を呼んでやってくれーーー!!!」
「う、うそ……そんな……う、うっ…………」
「泰斗を止められるのはお前しかいないんだ!頼むーーー!!!」
「もう何なのよ……あなたは何を見てたのよ!ぅ、うっ……わたしはずっとあなたと一緒だった!急に居なくなったら寂しいに決まってるじゃない!!んっ……返事をしなさいバカ泰斗ーーーっ!!!」
柚葉が泣きながら叫び、悲鳴のような声で黒い影へ呼び掛けると、黒い影は柚葉に想われていたことを改めて知り嘆き苦しんだ……。
黒い影は眩しく穏やかな光を放ち、元の男の意識や表情に戻っていた……。
「……泰斗?……泰斗なの?」
「……ああ。こうなるとは思わなかった……俺はなんて馬鹿なことをしたんだ……しおんを悲しませてしまっただけだった……この責任は俺が取る。もう俺の命はここには存在しないんだ……黒い影は孤独の悲しみから生まれた心の迷いに巣食う。しおんは俺のことも想っていてくれてたんだな……もう俺にその迷いはなくなった……本当にすまなかった……しおんと……みんなともっと共に居たかった……俺はしおんのことをずっと好き……だった……ん……だ…………」
柚葉に想いを伝えながら消えてゆく黒い影泰斗。泰斗と同時に眷属のサキュバスのリーシャも消えてゆく……柚葉は地に座り込み消滅してゆく泰斗に縋り付き倒れ込み叫んだ。
「泰斗ぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」
絨毯の上に座り込んで泣き噦る柚葉。一瞬で辺りの景色は変わり、そこに古城があったことが幻だったかのように、柚葉の足元ですら草原になった……。
コウとなゆりが歩み寄り、なゆりが柚葉を抱き締める。柚葉の涙が枯れるまでずっとずっと……二人は側から離れなかった。




