二十一☆【後編】泰斗の覚悟……。
青白いオーラ……。
「おれにも?……」
コウが体の周りを見渡すが何もそれらしき物は見当たらない。
「何なのよこれ、わたし達を護ろうとしているみたい……」
柚葉が左手の指で顎に触れ思いにふけっている。状況を整理しようとしているようだ。
「ねえコウ。助けたくて急ぐ気持ちも分かるけど、皆で話し合ってからの方が良いと思うわ」
放課後のコス部部室にて……。
「一体なんなのよ……」
柚葉が頭を抱えていた。コウと邦正、なゆり、楓の計五名で部室で話している。コウが独り言のように呟き状況整理をし始める。
「クラス全員に聞いた訳ではないが、皆泰斗を忘れちまっている。まるでこの世界には泰斗は居なかったかのように泰斗の机も無く、下駄箱にも泰斗の名前は無かった。泰斗を覚えているのはおれと柚葉と柊の三人だけ。担任すら泰斗のことを覚えていない。まるで、パラレルワールドに来てしまったような……いや、今となれば今までの世界の方が別の世界だったとでも言うような。クラスの皆にはおれが泰斗について聞き回ってることで微妙に変人扱いをされ始めたしな……」
椅子に座り椅子の後ろの脚二本を軸にバランスを取り、後ろに体重をかけロッキンチェアーのようにしながら柚葉が答える。
「少数派の意見ってこんなにも不安になるものなのね。まるで私たちが嘘でもついてるような目で皆は見てくるわ」
「だな……」
机にうつ伏せになって座るなゆりが頼りない声で呟く。
「でも私覚えてるもん。泰斗くん」
その後に楓も椅子に深く腰を掛け足をバタつかせながら答える。
「なゆね〜がそう言うならきっと居たんだろうね〜」
「さっき皆に話した泰斗に発信機を付けていたこと。その発信機の信号も土曜の夜迄でそれからは消滅したかのように全く反応は無い。発信機の軌跡が長く留まってた場所には古城があった。結構山奥だったがな。そこには誰も居なくもぬけの殻だった。ただ、気になるのは電気を点けたままの部屋があった。夜まではそこに誰かが居たとでも言うように。それを見に行ったのはまだ明るい昨日の昼過ぎだ」
考えるのが面倒だと言わんばかりに気だるそうに柚葉が零す。
「いつの間に推理モノに変わったのよ……」
部屋を歩き回り腕を組みながらのコウ。
「それがそうでも無いんだよな」
「何?どういうことよ」
「あいつが言ってたんだ……おそらくおれはもうお前の目の前に現れなくなる筈だ……何も言わなかったらお前は俺を助けようと捜し回る。お前はそういう奴だ。見つけるまで捜し回られても困るからな。詳しくは伝えられないが、俺はもうこの世界には存在しないんだ……わかったか?助けようにも存在しない。だから頼む。俺を追わないでくれ……と、な」
「なんなのよそれ。パラレルワールドにでも行ったって言うの?」
「そう考えてしまうよな。くそっ、泰斗の野郎。そんなこと言われても捜すにきまってっだろ……」
コウが壁にもたれながら八つ当たり苛立ちを示した。なゆりも戸惑いを隠せずにいた。
「桐宮くん……」
あても無く八方塞がりなコウ達。取り敢えず泰斗が行きそうな場所を手分けして捜したが手掛かりは何も掴めなかった……
泰斗を見つけられないまま時は無情にも数ヶ月が過ぎ去った……。
星と月と太陽から産まれた子★
十二★涙の告白
太陽の子が愛していたのは月の子と星の子の両方でした。
それは本当に仲が良がよかったから。親友、星の子への愛情のような友情も奪われていた。
月の子は誰も解けたことのない難問を解こうとしている時と同じで、矛盾に突破口を塞がれ続けていました。
最初に約束をした相手を守り続ける……『最初』と認めた相手が記憶の中に二人いる。冷静に考えればなんてことはない、単純にそれだけのことだと。
次の日の夕方、二人を呼び月の子は重い口を開きました。
「教えてほしい……僕はどうすればいい?何度考えても駄目なんだ。僕は最初に約束をした相手を守り続けると言う信念を守りたい。ただ、最初と認めた相手が二人いる。僕にはどちらかを選ぶことなんてできない。約束をした相手を悲しませたくないんだ……二人と離れれば良いのかとも思った。でもそれでは多くの悲しみを生むだけなのもわかっているんだ……本当にわからないんだ!ぅ、ぅうっ……教えてくれっ!教えてくれ……ぅうっ……」
月の子の押し殺しながらも溢れ出た泣き声と涙に釣られて、泣き出してしまう星の子。
ぶつかり合うわけではなく無言のプレッシャーが三人を蝕んで行く……
部屋の隅で頭を抱え込んでいる太陽の子……。
このまま何時間が経過したのだろう。ゴールの無い迷宮で動くことも出来ない。
動き出す理由を探しても探しても……分かるのは理由は無いと言うことだけ。
次に話を切り出したのもまた月の子だった。
「すまない……今は答えが出せない。そんな答えもあると思うんだ。魔王の関係で幾つか気になることがある。それを調べに行ってもいいかな?」
ここにも無言で示された意思表示が二人分在った……。
第四章ED詩 ko・ga・ra・shi
ko・ga・ra・shi……
冷たく乾いた
空気にならなければ
和らいだ日々は
まだ終わらなかったのかな
そこには
変わらない笑顔がいくつか在って
その中に特別な君が居るんだ
わからずに僕ら
掴めずに夢は
マーブル模様に滲んで
でも失いたくないと
僕の全てだと君へ伝えようと…
誓った。秋空に
木枯らし
夏を奪うなら 今
君の中に僕はいくつあるだろう
悲しみに
それが変わり果てる前に
届けよう。
例え朽ち果てようとも
ko・ga・ra・shi……行かなくちゃ……
木枯らし
吹き抜けていった…
君の側で雫になった願い
それでも
生まれては落ちる想いはただ…
君を望むよ。
二人の理由を探している
木枯らし
夏を奪うのなら 今
君の中を何が占めるのだろう
悲しみに
それが浸される前に
届けよう。
例え朽ち果てようとも…
凍えても
耐え忍ぶ木々の葉に
自分を重ねていた…
止まらない
戻らないあの時を
僕はいつまで
愛しく想い続けるのだろう……




