二十☆【中編(下)】ねむりひめ……。
森の奥深くの古城……。
「うううう〜。しゃみしいぃ〜。ルシーしゃま〜ぁ……」
出窓にちょこんと座り泰斗の帰りを待つリーシャ。待ちきれない気持ちから立ち上がり外に出ようとするが立ち止まった。
「ダメよリーシャっ!待ちきれない気持ちに耐えかねて気分転換に外出し、他に気を紛らわせる物を探すぅ??……ダメよ!そんなのは浮気だわっ!!心の底からの強い思いだけが相手の心まで届き結ばれることができるの!今はこの苦しみと正面から向き合い、そして乗り越えなければルシー様を愛する資格なんかないわっ!」
初恋を予感させる潔癖さで邪念と奮闘しているが、数分すると表情が明らかに負けた表情に変わりボタっとした表情になる。
「うううう〜。つまらないぃ〜。ルシーしゃまぁ〜ぁ……あああぁぁぁ……」
脱力し倒れ込みしゅんとなるリーシャ。
「ああぁ……やっぱり隣にルシー様が居ないのは耐えられないぃ……従順なペットでも飼おうかしら……ってダメよ私っ!ペットを飼い始めれば寂しさを紛らわせることはできても、きっとルシー様への愛情も薄くなってしまうわ!この愛情でルシー様を想い続けていればきっと届くわ!諦めてはダメよ!」
再度初恋を予感をさせる潔癖さで邪念と奮闘している。また数分後に負けた表情に変わり肩を落とし失望中。
「うううう〜。ルシー様が居なくなってこのループを何度繰り返したかしら……好きすぎて心がこ〜わ〜れ〜る〜〜」
脱力からそのまま顎をつけ滑るようにうつ伏せになる。ふてくされて眠くなりそうになっていたその時。
下から物音がしてリーシャがハッと起き上がる。期待の表情でリーシャは立ち上がり入り口に向かおうとしたが立ち止まった。
「まちなさいっ!リーシャ、そんなに早くお迎えに行ってしまったら待ちに待ってました感が見え見えでルシー様に引かれてしまうかもしれないわ!危なかった……昨日あんなにアピールしてダメだったんだから少しは学習しなさい!私っ!」
と、言いつつ心の内で葛藤をしているのかしばらく立ち止まったまま静止して変な汗を流し続けていた。
「おい!お前はそんなところで何をやっている?」
「ぅわぁーっ!!ルシー様!もうお戻りでしたか。やましいことは何もしていません!お気になさらずにっ!」
「自分から言う奴ほど気になるな。まあいい」
泰斗はベッドに倒れるように横になる。普段の記憶が無い分平静を装うことも難しい。リーシャの反応を見ることで上手く演じれているのか答え合わせをする。
「ルシー様!今日は城に着くなり横になるなんてお疲れですか?」
「ああ。色々あってな……」
お喋りリーシャが黙っているだけで泰斗の日常をナビゲートしてくれる。
「いつもならばあの女を監視に行くと言い直ぐに城を離れてしまうのに……」
「今日はお前と少し話しをしていたくてな……」
リーシャは頭の中で幸せワードをリピート再生していた。
夢のようなワード過ぎて泰斗に背を向け固まりリピート再生をし続けるリーシャ。ふと我に帰るが邪念にとらわれ表情がだらしなくなっている。わったしのターンーきたーーーっ!!あ。まてリーシャ!……このチャンスを最後のチャンスと思い行動せよっ!……んっふふ。
慎重に冷静さを取り戻し表情をつくろうがちょいちょいだらしない表情になる。
「私とですか?そうですね。何から話しましょう」
リーシャが泰斗に背を向けだらしない表情に戻る。よしっ!いいスタートよ私っ!しおらしい感じが出てるわぁ!
泰斗が怠そうにさらっと告げる。怠そうにしているのは記憶を無くし普段の行動が出来ないことはリーシャに伝わってはいるが、疲れから普段通りのことも出来ない状態を装い、念の為にボロが出ないように装った守りの姿勢だ。
「いつも通り他愛の無い話しでいい」
「ソ、……そうですね。では。その無茶振りにはお笑い乙女担当のリーシャとしてはしっかりとお応えしなきゃですね……」
頭をフル回転させ必至に探すリーシャがボソッと話し始める。
「いっつもルシー様が私に要求するアレがあるじゃないですか?今日はアレをまだやっていないと思うんですが……」
「アレってなんだ?わからん」
「もう。そんなこと言って。いつものことですから本能的にしたくならないんですか?ルシー様の今考えてることをボソッと口に出せばきっと当たると思います」
リーシャは普段恋愛ドラマごっこを泰斗に要求していた。無論、毎回断られ一度も実際には恋愛ドラマごっこはやれていない。でも、もしかしたらそのことを体が覚えているかもと、泰斗の方から恋愛ドラマごっこをしたいと言ってほしい乙女心からの無茶振り返しだ。
「うーん。恋愛……」
「んぬぉはっ!!」
リーシャは期待のあまり泰斗が発した言葉に百の反応を示し、絵に描いたようなびっくり顔で瞳が飛び出そうになったまま数秒静止をしているリーシャがいた……。




