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ラブコメって!パラレルった?コスプレ部☆  作者: フォーシーズンス
 第三章 〜【秋コス】学園祭編〜
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 十九☆【中編(上)】楠高祭……誇りの大翼……。

 ミスコンアピールタイム……。


「ちょ!まだ泣いちゃダメよっ!」

「でも……うぅっ、エルと一緒なら出来そうだけど。やっぱり視線が怖いよ……」

「それでいいわ。わたしもその手を考えていたの。斬新だし、なゆりのより良いアピールの仕方を考えたらそれしかないわ。サプライズでやるわよ!」

「う、うん……エルと一緒ならなんとか。壇上に出れる、かと……」


 そうこうしているうちに、柚葉の出番が近付いていた。柚葉はエントリーナンバー六番、なゆりが七番だ。


「それでは……エントリーナンバー六番!アピールやっちゃおうか〜ぁ!カマーーーん……なうっ!」


 カマーーーんでずっと後ろに反っていた体をなうっ!でピンっと伸ばす司会者。舞台裏から壇上を覗き込む二人。


「うわっ、あの司会者ぶっ飛んでるわね〜。かのん!行くわよ!」

「う、うん……」


 なゆりは俯きながら柚葉に強引に手を引かれ壇上中央につれていかれる。司会者がいっぱいに口を開き大袈裟なびっくり顔で視線は二人をロックオン。柚葉がスタンドマイクを口元に持ってきた。


「さあ、私からは二つあるわ!自己紹介なんて二の次よ!ここに居るかのんと私はコスプレ部をやってるの!見ての通りのコスチュームでこの楠高祭ではえんじぇると言う喫茶店をやってるわ!あー。不本意ではあるけど今日のみの限定販売の物もあるから気になったら来てみて。そしてもう一つ!隣にいるかのんは次のエントリーナンバー七番なの。一緒にアピールタイムに出てるんだからアピールタイムは二倍ってことでいいわよね?」


 柚葉はこういう時こそ、一際輝きを放つ強さを持っているようだ。絵に描いたようなびっくり顔の司会者が急な振りの勢いに負け、カクカクと頷いてしまう。


「ふふっ。ありがと!臨機応変な素敵な司会者さんと運営の方でとっても助かるわ。ここに集まった会場の皆が求めているのは心が震えるようなそんな瞬間だと思うの。今日と言う日はもう二度と訪れはしないわ。この楠高祭、心震える瞬間を探し回り心や体が疲れてしまったのなら……ちょっとした寄り道でも構わないから、喫茶えんじぇるに休息に来てみてはどうかしら?見つけようと必死に探している人だけに見える……そんな素敵なものも、目をつぶってしまえば確実に見えなくなってしまう。感じようとしなければ感じれなくなってしまうの。信じて行動をしていればきっと幸いが訪れる日は来る……えんじぇるには他では見つけられなかったものもきっと!何らかの形で見つけられるから!!」


 それは偶然だったのだろうか……柚葉が全身で表し振りかざした右手を合図に、木々にとまっていた鳥の群れが青空に向かい羽ばたいた。


 なゆりには柚葉が辺りの景色を鮮やかに輝かせる魔法をかけたように見え、心を鷲掴みにされていた。弾むように高らかな柚葉の声。真横で見ていたなゆりには柚葉の言動がカリスマ性を持った偉人のように突出して見え、なゆりは自分がエントリーをしていることなど忘れ柚葉の言葉に聞き惚れていた。心ここに在らずななゆりに柚葉が小声で話し掛ける。


「ちょっと!あんたも何か言ったら?」

「あ、ううん。私はいいの」


 そう告げたなゆりの顔色に満足感のようなものを感じた柚葉はそのなゆりを見て満たされていく思いを感じていた。にこっと笑い柚葉が告げる。


「隣にいるかのんはね、本当に欲の無い子なの。今の今までこの壇上に上がることですらも躊躇っていたわ。だからこのミスコンのアピールタイムにも沈黙を選べるの。これが出来るとか、これが上手とか、自分では言わない謙虚なところがあるの。あなた達がかのんを見て、話して、そして感じることがかのんの良いところよ。わたしはそんな自分で自分を売り込もうとしない、しおらしく控えめなかのんに多くの魅力を感じているわ!」


 柚葉がなゆりの方を向き微笑むと、なゆりは恥ずかしそうに俯く。何をしていいのかわからずに俯いたままで柚葉の手にしがみ付いているなゆり。


「まだ時間は余ってそうね。最後に!わたしはジョセフィーヌ・エルで隣がかのんよ。投票も良いけど、喫茶えんじぇるにも顔を出して欲しいわ。わたし達からは以上よ!」


 柚葉がなゆりの様子を伺い囁く。


「大丈夫?かのん」

「うん……」


 観客がざわざわと騒ぎ立てる……。


「あの子ポスターの子だろ?声を聞きたかったけど、まじで一言も喋んなかったな」

「コス部の喫茶に行けば聞けるだろ?」

「確かにな」

「俺、ツンデレの方に罵倒されたい!」

「さっきの二人レベル高すぎだろ……」

「わたし雰囲気好きだからあの子にしーよおっと〜」

「え?あの子ってどっちよ?」

「まだひ〜みつぅ〜」


 中々の高評価のようだ。柚葉の手に引かれ壇上を後にする二人。司会者が我に返り話し始める。


「あ……あー、類を見ないアピールっぷりに度肝を抜かれてしまった〜。では気を取り直して……お次はエントリーナンバー八番!アピールタイムぅ〜〜スターァッ!!!」


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