十五☆【中編(中)】葬る思い……歴史に残る収穫……新しい日常……じゃおれ言っちゃうからね……。
ちぃの見た優しさ……。
「に〜!明日は何する〜?」
「そうだな明日も晴れるらしいからな。実は〜バーベキューの用意もあるんだぜ〜」
「いぇ〜い!」
「BBQきた〜!」
一際、反応が良いのは楓と邦正だった。
「バーベキューは昼だな。それまでは皆で朝ご飯作って〜。気が向いたら海行って〜〜。カードゲームも持ってきたし〜ううぅぅ……明日に備えて寝る?遅くまで遊んでるのとどっちが良いかな?」
話をするに連れ、遊びたいことが多く頭を抱え出すコウ。
「どっちも〜!」
「いやいや。それはおれもなんだけど……柊と柚葉は?」
先程の件もあったので学習し、慎重になっているコウ。なゆりが首を傾げながら、
「私も遊んでいたいけど、体調を考えると明日に備えて寝なきゃかな」
「わたしも休まないと美容に悪そうだわ」
なゆりと柚葉の美貌は日々の徹底からの賜物のようだ。
「なら明日に備えよう。楓ー。明日は何時に起きる?」
「五時!」
「早っ!マスターより起きるの早そうだな。うーん。二人は睡眠が必要だから……間をとって……七時くらい?」
「賛成!ちぃちゃんも大丈夫?」
「いつもより起きるの早いし、私、朝弱いんだけど。かのんが起こしてくれれば大丈夫だと思うわ」
やっぱりなゆりと仲良しなちぃ。そして柚葉が後に続く。
「七時ならわたしも大丈夫よ」
「よし!そうと決まれば寝る支度するぞ〜」
「おー!歯磨き歯磨き〜♪」
「早く寝ないと痩せちゃう痩せちゃう〜♪」
楓がスキップしながら支度に向かう。その後に邦正がいつも通りサラっとボケる。楓に便乗してスキップを真似ているが滞空時間の短さか一見スキップ出来ていない風だ。皆半笑いなだけでそこに触れずに放って置く。コウが『歯磨き』のワードに強い反応を示す。
「お?皆で歯磨きってなんか……新鮮でない?」
「そうね。一緒に住んでるみたい」
「だな」
なゆりが言った後に少しあたふたしているように見えた。その時のなゆりは視線を一旦コウへ向け、目が合った途端に逸らし、そのなゆりのコウへの気持ちを薄々勘付いているちぃは、なゆりの微妙な心境をほぼ見抜いていて、二人の反応をさり気無く伺っている。コウもそこまで意識をしていた訳ではなかったので変に意識をしてしまいそうだったので、意図的に無をイメージするようにしていた。
ちぃはこんな仲間がいたなら学校も楽しいのかな……と、いつからか考えていた。それからちぃはコス部の皆のことをじっくりと観察をし始めていた。それはこれからどうすればこんな仲間を作れるのかが分からなかったからだ。今迄は仲良くなれそうな相手が出来ても長く続かなかった。その原因もよく分からなかった。この輪の中で目を凝らしていればその手掛かりを掴めるのかも知れない……そう想っていたのだ。
目を凝らして見た視界からは一つの愛情が見えた。友達の中に好きな人がいればきっとそれは楽しくて仕方がないだろう。好意のある相手だからこそ友達になるのかもとも考えた。どちらが先なのかは分からない。でもかのんに聞いてみれば分かりそうだな……ちぃはそう想っていた。結果、ちぃはなゆりの後ばかりをついて歩いた。なゆりはその明らさまな行動に気付き、だが一切邪険にはせず、逆にそれを喜ぶような表情でちぃと接していた。ちぃは向かい合うなゆりの瞳の奥を覗く……心を覗こうと目を凝らした……しかしそこに映るのは曇りの無い優しさが見えていて、それ以上は何も分からなかった。その視線に気付いたなゆりがちぃに問い掛ける。
「もう。ちぃちゃんはぎゅってしたくなる程可愛んだから……ん?どうかした?」
それに応じるちぃ。
「教えて欲しいの……」
澄んだ瞳の幼気な少女の悩ましい声の方がなゆりの心をぎゅっと掴んだ。
「うん。いいわ。どうしたの?」
真剣な面持ちに変わるなゆり。ちぃは二人だけに聞こえる程の声量で話しを続けた。
「分からないの。上手くできないの」
「ん?そっか……二人っきりで寝る前に少し話さない?こんな時でないと中々話せないこともあると思うの」
なゆりは二人だけの方が話し易い内容かと察し、ちぃへ思いやる言葉を送った。そんななゆりがちぃには益々魅力的に映った。
「うん……」




