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ラブコメって!パラレルった?コスプレ部☆  作者: フォーシーズンス
 第一章 〜【春コス】ボーイミーツガールズ編〜
3/102

 三☆に、……入部させて頂きます……。

 とある部室で……。


 何故にこうなった……

 間違いなく執事姿になっているコウ。

 でも全てに不満がある訳ではない。


 とある部活動の一日体験へ……いや、素直にここはそのままを曝け出そう。ただただなゆりのコス姿が見たく、なゆりにコスプレ部の体験へ行こうと誘ったら……


「一人では無理だわ……」


 との返しだったので、コウは……うまく話しを進めれば写真だけではなく、実物を拝める。純粋にスペシャルな柊……ターイムっ!ここではこう呼ぶことにしよう。獣の耳を付けたメイド姿の柊……獣耳っこ柊を拝める!……そんなこんなでペテン師コウが脳みそフルスロットルで挑む。


「一人じゃない。楓が居るだろう。ならおれも一緒に体験へ参加すればいいのか?」


 ふふっ……完璧だ。さりげなーく、しかもしょうがなーく感がパない……満点だおれ。


「うーん。それなら……構わないけど……」


 なんかもうなゆりは洋服屋で試着をしたら、断れずにそれを買ってしまうくらいのいい子だ。ペテン師コウに罪悪感の重圧がのし掛かる。

 だが結局はSっ気と悪戯心が勝ってしまいそんなこんなでコスプレ部の見学に向かったコウとなゆり。


 予想を裏切らず、なゆりは心の葛藤との激闘の末に約一時間でやっと着替え終え、かなり短めのスカートの裾を伸ばし伸ばししながら、獣耳メイド姿で薄っすらと赤面している。


「どう……かな?」


 精一杯の声なので素の高い方の声になってしまっている。

 Sっ気の化身コウがまた中々答えず、その感覚を噛み締めるように空を仰いだり、口元に力を入れたりし、眉間にしわを寄せしょっぱい顔をしながら普通にただただ……時間を稼いでている。

 なゆりの視線と振る舞いが幼女がもじもじしてみせるそれと被る。

 多少さすがに良心が痛み始めやっとコウが口を開く。


「……てか、あれだな……やばい」

「どっちよ!」

「い、色々な意味で……」


「……」


 若干表情を緩ませるなゆりだが、恥ずかしさは倍増したらしく俯いてしまう。


「敢えて言葉にするならば……メイド服と獣耳が……柊と言うキャンバスで……結婚式をしている!」

「それ、下ネタやしー」

「おまえが言うかっ!」


 獣耳メイド楓がジト目で完全にどん引いている。


「あ、今のあれだな。デジャブだな。おれ今、パラレルワールドの尻尾を掴んだかも」

「詩人風でちっと分かりづらいし〜」

「お、楓。今日も冴えてるな」

「あははっ」


 この場の雰囲気に多少慣れて来たようでなゆりが片手で口の辺りを上品に隠しつつ、楽しそうに笑ってくれている。


「はーい。では始めるわよー」


 獣耳メイド柚葉が何やらこの場は仕切るらしい、きっと声がでかいとか、態度がでかいからとかそんな適当な理由だろう。


「では、先ずはわたしに続いて復唱してー。わかったー?」


「「「はーい」」」


「では行くわよ!お帰りなさいっ!御主人様っ!……はいっ!」


「「「……」」」


「な、何だこれ……コントか?」

「コントちゃうし〜」

「な……ななな、なに放置してんのよ!寂しいじゃない!!開始早々、心に風穴空いたわよっ!そうね……フフッ……今のわたしと同じ痛みを味あわせてあげるわ!!じゃぁ。一日体験の柊さんやってみて!」

「えええぇぇぇ!私……まだ……心の準備が……うぅっ……そんなぁ……」

「お……おい!楓!ふつーこの展開から一日体験に振らんだろ!暴君をのさばらせたままでいいのかー!……ち、ちょっと見たいけど……」

「こ〜に〜本心あふれでとるし〜」


 ジト目の獣耳メイド楓。


「何、いたいけな少女ぶってんのよ!はい、三、二、一、きゅーっ!」

「大丈夫かあいつ、キャラに激しさ増してるだろ。今、きゅーっ!って言ったぞ!」


「お、お……お帰りなさい。ご……御主人様……」


「はい!これっ!ひゃぁくてんっ!あー。負けたわ!!」

「おい!楓!あいつ体験に負けを認めたぞ!部の存続的にいいのか?オヤジなのか?」

「これがしおんのいいとこやし〜。なんだかんだで皆も、しおんに任せたくなるんよ〜」

 まぁ確かに……柊の獣耳メイド姿での恥じらう姿は、別の意味の冥土に行ってしまいそうな破壊力だったけどね……

「はい、さっきのわたしのは忘れなさい!大事な初心を忘れていたわ。『これからどんな要求が待ち受けているのだろう……一つ要求をのんだらその先へ先へとどんどんエスカレートしそうだわ……だから何も言わないで……言わないでーーー!』と、言う気持ちを込めてやるのよ!いい?各自、イメトレした後に自主練ーっ!」


 やり切った感と共に柚葉が近づいて来た。


「おまえ凄いな。メイド経験者なのか?」

「あんたバカじゃない!一度もないわ!イマジネーション百パーセントよ!」

「無いんかい!……それでいてその指導者としての入りっぷりはある意味尊敬するぞ」


「ち、ちょっと……」

「おまえ……やっぱり基本、突っ込み担当なんだな。色々、がんばれな。お前指導者も適任だと思うぞ。おまえいいとこあるんだし、おれはおまえを応援するぞ」


「ち、ちょ、ちょっとあんた急になんなのよ……」


「「「あ、デレた……」」」


「あれだよな……何で柚葉の場合、デレたら負けみたいになってるのかな?何かおれ柚葉が可哀想な人に思えてきたから、ちょっとだけこれから柚葉にはオトナ対応しよ」

「あ〜楓にもしてして〜」


 左腕をゆさゆさと揺さぶったり抱き締めたりで、仕草が幼稚園児級の天然えっち楓。ロリ顔の割に大きい胸が勿論しっかりと当たっていると言う、期待を裏切らない天然えっちキャラの徹底っぷりだ。


「あー。楓にこれ以上オトナ対応をしたらラブコメの域を越えてしまいそうで……おれの理性的にもユーザー的にも色々とアレだろ」

「え〜。しおんだけい〜な〜」

「そもそもおれのオトナ対応なんてたかが知れている。今見せてやるから目ん玉かっぽじって見ていてくれ」

「おおお〜!らじゃ〜!」

「びっくりするくらい楓、懐いたわね。あんた何もしてないでしょうね?」


 コウは精一杯のイマジネーションで答える。先ずは何となく……険しい表情を作ってみた。


「うむ……案ずるな」

「んんん?ちょっと!武士なの?」


 ぶれると説得力に欠けるので取り敢えず……険しい顔のまま続けてみたコウ。


「大丈夫だ。少し……夕陽が目に沁みただけだ……」

「何?あんたギャップ萌え狙いにしては遠いわ!」

「悪かった。今のは細やかなちゃめっ気だ。ではこの大人のたけ◯この里をやろう。おれって……オトナだろ〜?」

「何?オトナと言うよりあんたOLね!一応貰うわ!」

「なゆね〜今、こ〜に〜二回オトナって言っちゃてたよね?」

「う、うん……でもこれからがきっと凄いんだよ」


 コウの脳裏に迷いが飛び交う……すまぬ楓。今、オトナ対応を探して探して……大人のたけ◯この里に辿り着いてしまった。自分のオトナボキャブラリーの低さには驚いた。柊さん?今ハードル上げませんでした?そうだなぁ。なんとかして辻褄を合わせねば……


 コウは得意なポーカーフェイスを解き、今度は何かを企んだ笑顔と共に唐突に始めた。


「ふぉっふぉっふぉっ!やはりそうか。どうだった?柚葉よ?いつもよりツッコミ甲斐があっただろ〜う?」

「そう言われてみればそうね。色んな変化球来たから一球も逃さず打ちたくなったわ!」

「では今の気持ちを思う存分に表現してくれ!いつもより……良かったか?」


「んんん?……何か意味深ね。でもテンションは上がったからまぁ良かったわ」


「これだぞ!かーえで〜!一見あら……?コウくんちょっと塩対応されてるし、ちゃんとオトナ対応出来てるのかなぁ?あ、しかもオトナって言っちゃってるぅー。大丈夫かなぁ……と、思わせつつ!実際は柚葉を優しく包む羽毛布団のような抱擁力!これだ!これこそがオトナたいおーぅだっ!」


「おおお〜!に〜よ。深い!深いぞ〜!」

「わぁ。気付けなかったわ!凄い凄い!」


 目をキラキラ輝かせる獣耳メイド楓と、手を叩きながら称賛する獣耳メイドなゆり。

 そんなこんなでなんとか威厳を保てたコウにびっくり発言をする柚葉。


「はーい。さぁ!じゃーそろそろ行くわよ!」

「え?今度は何?」

「何言ってんのよあんた!喫茶店に決まってるじゃない」

「へ?色々と疑問が浮かぶのですが……」

「愚問ね。それには答えないわ!とにかくみんなで行くわよ!支度して!!」

「あの……体験の……」

「聞こえなかった?みーんーなーでーよっ♡!」

 と、被せ気味に答えた柚葉。


「あの……許可とかは……」

「当たり前じゃない!ちゃんと取ってあるわ」


 末広がりの暴君を唯一、歯止めをかけれそうなコウも現在は羽毛布団キャンペーン中につき、今回には必要の無い抱擁力が包んでしまい、暴君を突き放せずにいたコウ。


「柚葉の強引さには感動するな」

「しおんいつもやし〜」

「私この格好で移動するのかな……」

「良いんじゃない?何か楽しそうだし。おれも何気に執事姿だしな」

「皆でやると何事もおもろいし〜」

「ではしゅっぱーつ!」


 先ずは校舎の廊下を歩く獣耳メイド三名と執事一名。他の部活生が付いて来てもおかしくない程のディープインパクトだ。そして勿論そのまま街を歩く獣耳メイド三名と執事一名。その移動中のトーク。


「柊って前向きだな。でもおまえのそういうところ良いよな」

「え!そ、そう?……そんなことないよ。まだ本当は恥ずかしくて……」

「あ〜なゆね〜だけズルい!楓の良いところは〜?」

「ん?楓か?楓もいっぱいあるから大丈夫だぞ」

「え〜どこか言って〜」

「なんか今、真面目に楓が家族?いや、実の妹に思えて来た」


——ブオーーーーーーーン!

「なら本当のに〜になって……」


 まちの一番の大きな通りを行く大型車の騒音にかき消されてその後の楓の言葉が聞きとれなかった。いや……正確にはギリギリ聞こえていたが、聞こえないフリをしてしまった。何かを抱えているようなただならぬ表情の楓がそこには居た。コウは勘が良い方だ。いつもはこのような時に、知らぬフリのまま面倒を避けるように過ごして来た。でも今日は何かが違っていた。

 楓の耳元で囁くコウ。


「楓……話したいことがあるんだろう?これが終わってからちゃんと聞くから……もう少し待ってられるか?」


 楓の眼差しには切なささえ感じられた。少女のようにこくりと頷く楓がとても愛らしく思えた。そうこうしているうちに目的地へ到着したらしく暴君が息巻く。


「さぁここよ!この取り組みはこの部の部費が以後豊かになるかどうかが掛かってるの!この部の運命はあなた達が背負っているわ!単純に下手したら廃部で、逆なら楽しいきゃっきゃうふふの夏合宿もありなだけよ!さあコウ。頑張れそうかしら?」


「に、……入部させて頂きます……」

「えええぇぇぇ!何で!良いの?」


 急に部の存続の危機判明。その後にまさかのコウの発言に驚きのなゆり。


「まぁ……妥当よね」


 それが当然の如く末広がりっぱなしの暴君。コウに響いたワードは確実に『きゃっきゃうふふ』だ。

 それに楓のことも気にかかる……コウは自分が入部をすればなゆりも断り辛くなり、流れで入部をしてくれるだろうという寸法だ。


「よし……何か力がみなぎってきたぞ。柚葉!今回のミッションは要するには何なんだ?」


「そうね……このメイド喫茶でナンバーワンになりなさい!もちろん既に働いているベテランさんも居るわ。そこをコウ。あなたの指揮力と采配でなんとかすればいいわ!それだけのことよ。どう?出来る?」


「二つ確認する。いつまでにだ?あともう一つ、細かい評価の基準はあるのか?」


「今月の末までよ。お客が指名できるプチイベントが在るの。その指名数が一番多い人がうちにいればいいってことよ」


「オーケーよーくわかった!……柊!ちょっといいか?」


 建物の陰になゆりを連れて行くコウ。


「と言う按配らしい。おれの中で幾つかのシュミレーションをし、そんなに難しいことではないと考えている。それには単純におまえが必要だ。お客の行き過ぎた要望からはおれが必ず守ってやる。おれはおまえと一緒にいることで幾つかの成長を感じている。それはおれの今までにはなかったことでとても貴重なことなんだ。勿論おまえが選択することだ。おれはただおまえにいて欲しい。逆におまえ無しならかなり厳しい条件になると考えている。一緒にこの部に入部をしないか?」


「うーん。でも……私にできるかしら……」

「大丈夫だ!そのままの柊でいい。声も低い方でいいんだ」

「不安だけれど……そこまで必要としてくれると私……正直……弱いのよね……」


 暫く考え中……

 うーん。と言う声が聞こえてきそうな表情だ。一体、なゆりは何と闘っているのだろう。コウが追い討ちをかける。


「ここで一つ!柊!全てに言えることだ。プラスにするのもマイナスにするのも自分次第だと言うこと。楽しみ方次第、考え方次第なんだ。残り少ない学園生活、おれは本気になれそうな物を探していた。まさかこんなとこにあるとは思わなかったがな。自分達で前に向い進んで行く。そんな楽しみの見つけ方を!そのほんの少しのサポートを!おれに任せてくれないか?」


「……何か不思議……あなたに言われると悪い気はしないし、既に期待さえ感じるわ。わかった。私も入部するわ」

「っしゃあー!ってことは〜。おれこれ言ってみたかったんだよ〜。おい!柚葉!どうせなら皆で言わないか?」

「ははーん。ってことは。そういうことよね〜まぁ、うちはウェルカムだけど……」

「ここに来て急に増えとるし〜。なゆね〜と、に〜なら大歓迎!」

「柊もおれに向けて言ってるていにすれば意味的には通じるんじゃね?意味なんてなくてもこう言うのは一体感こそに意味があるもんだろ。よし!じゃ行くぞ〜!」


「「「「せぇーのぉー!」」」」


「「「「ようこそ!!!コスプレ部へ!!!」」」」



 きっと難しいことではなくて……

 難しくしてしまうのかどうかは自分達次第で……

 幾重にも重なっていくそれぞれの想いの線を……できることなら真っ直ぐに……

 複雑に絡み合うことのないように……一つ一つ重ねていくことができれば……

 いつか僕達が振り返った時に……記憶の中に映すこの日やこれからの季節を……

 より素晴らしい日々として……脳裏に飾り続けて行ける……


 そう信じて向かおうと決めた……六月の夕暮れ。



 星と月と太陽から産まれた子★


 

 二★旅立ち


 街を出て暫くすると、そこには女の子が倒れていました。その子を見て月の子は問います。

「大丈夫ですか?……どこか痛むの?」

 横たわる太陽から産まれた子は言いました。

「とても大切なものを奪われてしまったの……」

「それは大変だ」

 星の子が問います。

「一体何を奪われてしまったの?」

 俯いたまま答える太陽の子。

「それはあなた達にとっても大切なものよ。ただ……ごめんなさい。これ以上はどうしても言えないの」

「わかったわ……」


 今にもスコールのような夕立が漏れ出してしまいそうな空の下……

 吹き付ける湿った風に揺らされて頬を覆う髪もそのままで……

 俯き目を伏せた表情はあまりに可憐で儚く映っていた……

 僕達は話し合い、ただならぬ理由があるようだった太陽の子の手を引いて、その雨に打たれないようにと……

 太陽の子を連れて旅をすることを決めたんだ。


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