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ラブコメって!パラレルった?コスプレ部☆  作者: フォーシーズンス
 第一章 〜【春コス】ボーイミーツガールズ編〜
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 二☆絆……良い意味で……結婚?……。

 第一章OP詩  パラレルワールド


君とここでは無い世界へ……

うたた寝に微笑む君と

暖かい景色の中で眠りに落ちたなら

この不確かな現実さえも

書き換えてしまえるのだろう。



花も緑も空の色さえも

鮮明に見えて眩しくなった

大自然の中で深呼吸をするような

心に清々しい風が吹き抜けた


そうか……ここは別の世界

あの瞬間に他の世界線へ飛んでいたんだ



交わらない掌 滲んだ瞳に映す

歪んだ想いは今 優しさで翼になった

せめてここではないどこかの世界へ……と

想いに耽ることはあったけれど

春のような新しい風が吹き抜けた



parallel world×2

幾つかの困難を越えて

僕らは必ず辿り着ける世界がある


parallel world×2

実は何も変わってない

元の世界だったとしても

そんなこと……君が傍に居るならもう

どちらでも構わない


それは吹き抜けた……君との瞬間に。

 パーティー戦……。


 気が付くと……咆哮をあげ威嚇をしている魔物と対峙していたコウ。人の約三倍程の身の丈で、頭の側面のにはコウモリの翼のような耳を持ち、全身硬質の筋肉で覆われている二足歩行の魔物が大きな斧を持ち、今にも襲いかかって来そうな攻撃態勢で身構えている。

 なゆりが術式を組み始めている……


 パーティー全員の位置、体力、魔力、ステータス、相手の状態……

 状況を細かく整理しなゆりへの攻撃のガードを念頭に置く……ここは先陣を切りスピードを使い敵の意識を引き付けるか……。

 持ち前の策士としての無駄のない冷静な状況判断力が冴え渡る……遠距離から楓がスコープ越しに捉えている筈だ。ここは楓からでいける。瞬時にパーティーへ指示を出すコウ。


「楓っ!!奴の目を頼む!」

「あいあいさ〜!」


 楓は瞬時に目標を修正し、呼吸を整えるようとゆっくりと息を吐き切り、引き金を引いた。銃声とほぼ同時に魔物が苦しみの声をあげた。


「てきちゅ〜!」と、楓。


 コウに詠唱段階の術式を読み取れる能力はない。ただ、パーティーの癖や、この状況で詠唱に入っている流れや、詠唱に要している時間、なゆりの手堅く無難に攻めることを好む性格から、強力な攻撃補助魔法と推測する。


「柊っ!そいつを泰斗に!」


 その魔術発動の直前、敵のスキルらしき増援のウェアウルフ五匹がなゆりに襲い掛かる。重要な仕事を終えた楓がスコープ越しに見た危機に悲鳴に似た声で叫ぶ。


「なゆねー!逃げて!!多過ぎるー!」


 なゆりはその声に顔色も変えず、視線も逸らさずに全ての意識を魔法詠唱へ向かわせ続けている。


「柊は任せろ!ははっ。そんなことだろうと思ったけどなぁー!」


 コウは呆れながら、また、それでこそなゆりと言うように、危険予測の範囲内にあったこのイレギュラーのウェアウルフ五匹全てから先手を狙える順序を踏まえ、誰よりも先に気付き、一歩目を踏み出していた。


「遅い遅いっ!そんなんじゃかすり傷一つ付けられないぜ!犬っころ!」


 剣と体術でなゆりを危機から救い、上方からの攻撃を促すように空に向かって大声で叫んだ。


「泰斗ー!奴に止めを!!」


 竜にまたがる泰斗が空から急降下。その勢いに魔物は、もう片方の目で泰斗を目視確認し、空からの強力な攻撃を凌げるように両腕を交差し縮こまり完全な防御体勢。だが、その急降下の攻撃の前に魔物は地に顔を付け突っ伏した。


「あら?まだ当たっとらんし〜?」と、楓。そこに魔物の背後から現れたもう一人の泰斗が吐き捨てるように告げる。

「ほんとお前、詐欺師になれるって……いい意味でな」


 コウも強敵をパーティー全員を無傷で討伐したことに、清々しい顔で泰斗と拳をコンっと合わせた。

「褒め言葉として前向きに受け取っとくよ……いい意味で〜を付ければ何でも良くなる訳ちゃうからね」


 倒れた敵の背後から泰斗が出てきたことで、止めは泰斗が背後からということはほぼ確定。


「ならあの上から飛んで来たのは?」


 なゆりが不思議そうに尋ねた。その声は勿論少し低い。


「泰斗の幻影魔法だよ。多分そろそろ消える……ほらな」


 段々と透け、最後は光の煌めきが風に流され消えた泰斗の幻影。首を傾げながら不思議そうななゆり。


「でも、私が攻撃補助したのは……」

「それはどっちでも大丈夫だったんだ。幻影の方でも、本体でも。実はこれが幻影魔法を扱う中での応用なんさ。気付いたのは最近のことだけどな」


 コウが思い出し、なゆりへ忠告をしようとする。


「それはそうとして、さっきのは柊らしいと言うか何というか……」

「どうせ貴方が来るとわかってたから」と、なゆり。

「うーん。まあ、いいんだけどな……」


 このパーティーでの信頼を預け会えているバランス感が、何よりも心地よく嬉しくこそばゆい……あ。もちろんいい意味で……。




 ……では、さっきから目を瞑りいい意味でを連呼してる桐宮。続きから読んでくれ。桐宮ー……桐宮っ!」


 邦正に揺さぶられ目を覚まし、薄い意識の中でコウが反応する。


「ぬお〜。やめて下さい〜。いい意味で」

「あはっ!コウそれ、使い方新しいな、あはは、うける」と、泰斗。


 そこでタイミング良く終わりのチャイムが鳴り、三十路手前で挑発的なスカートにはだけた胸元でジャケットを羽織る担任が締めくくる。


「今日はここまでー!桐宮。チャイムに救われたな」

「はぁ……」


 なんだその三下の悪役のセリフはと思いつつも、構うと長くなりそうなのでここは触れずにいく。どうやらこれから昼休みらしい。かなりリアルに感じた夢オチに、コウは逆に現実の方をまだ信じられずにいた……

 そうか……今日は『いつもより数時間早く起き家を出る』を遂げ、その為か睡魔に襲われ意識零で午前中の授業は終了……結果、日常へおかえりなさいな訳だな。その時……


「お〜い!こ〜にぃ〜!」


 廊下の方を振り向くと楓となゆりが見えた。普通に兄妹のように、いや、兄妹以上の甘えっぷりでコウに駆け寄る楓を、なゆりは困りながらも追い掛けていた。

 今朝の記憶が夢ではなく、現実だったことにホッとしていると、楓の天然えっちキャラが本領を発揮する。


「こ〜にぃ〜どうしたの?パラレルワールドにでもいってきたような顔して」


「……」


 鋭い……のか?……あながち間違ってはいないが……


「おい、こう!何だその世の中の男達が追い求め続け、やっとのこさ辿り着いた地の果てで、唯一の七色の輝きを放つ激レアな宝物みたいなキャラ達は!」


「あ……やば……忘れてた」


 邦正は暗闇に視界を奪われた世界で恐怖に怯え苦しみ続け、その光のない世界に一筋の光が降り注ぎその先に見つけた女神に安堵するような。そんなどうしようもない顔をしていて、無論両手は拝むように合わせている。邦正にはできることなら会わせたくはなかった……

 コウは正直、面倒なので取り敢えず好きなことを適当に言葉にしていた。


「実はな……さっきと言うか、朝か。空から落ちてきたから。拾ったんだ」


「……こ、こう……」


 邦正の表情は本気で切なさを表し始めた。


「○崎アニメではよくあることだろう」

「よくはない!一度だけだよねー!」

「そしてな邦正。その子はおれの妹らしい……そして最後に一つだけ。その時に天から誰かの声も降ってきて、『邦正と泰斗にだけには深入りさせるでない。フォッフォッフォッ〜……』と、言われた。じゃ、そう言うことで〜」

「まてよ!こう!何だよその感じ!こうーーぉぉぉおぉぉ!!」



 コウは取り敢えず二人を連れ教室を出た。


「まるで悲鳴だな」

「良いの?」と、なゆり。


 勿論、なゆりの声は低い。楓が表情豊かだった邦正の顔真似をして叫んで笑っている。


「後で上手いこと事情は説明しておく。正直、さっきの四人の会話のやり取りの中では、丸く収まる言い訳は思い付かなかった。今回は邦正が犠牲になった。笑いとストーリー進行を考えれば、適任だ。止むを得ないことだ。ところで……おれに何か用でもあったのか?」


「楓がこ〜に〜のところに行く!ってきかなくて」

 楓より先になゆりが答えた。心なしかなゆりも嫌がっているようには見えなかった。

「ああ。そう言うことか」


 想像は付く。好かれているのかは微妙だが、楓の中では良い感じに構ってくれる人を見つけた……みたいなものだろう。でも、悪い気は全くしない。


「こ〜に〜!飯くお〜!」

「そうだな」


 ごくごく自然と会話が流れる。不思議なものだ。


「お?それは弁当か?随分と大きいな」

「昨日楓の分と私の分とを作ってたら、作りすぎちゃって……一応、持ってきてたのが役に立ちそう。ちょうど良かった……て、いゃー!ま、まま……待って!異性に、手作りは始めてだったー!」


 また、「いゃー!」の部分からは可愛い声になってしまていたなゆり。

 なんかくねくねな感じで、ピンクに頬を染め、相変わらずの百点な恥じらいっぷりをまたまた棚ぼたしたコウ。何故か楓もそんななゆりに喜んで抱き付く。


「むにゅ〜!なゆね〜たまらんし〜!」


 コウに眠る獅子のようなSっ気が牙を剥き出した。


「ぐへへ。今すぐにここで食らおうぞ。楓よ」

「だな〜。に〜よ!」


 そんなこんなでまさかの渡り廊下昼食。ただ人通りは丁度無く、たまたま見つけた穴場スポットとなった。

 三段の重箱を一つづつ開けると、視覚でも楽しめる彩りに数秒意識を奪わるコウ。


「ねぇ。ど……どうかな?」

「お、おう……おまえ、女子力やばいな」

「なゆね〜いつもだし〜」


 最初に手を付けたのは厚焼き玉子だ。なゆりは本気で緊張をしているらしく、コウは答えをためにため、伸ばしに伸ばし、中々答えようとしない。

 眉に力を込めたり、唸りながら空を仰いだりしていて、全く答えない。

 その間のなゆりの表情はとても愛らしく調子に乗り引っ張り続けるコウ。


 約三分経過し流石になゆりの視線が突き刺ささり続けていてあまりに痛く、良心まで痛み出したのでやっと口を開くコウ。


「……や、やばいぞ」

「どっちよ!」

「……口の中で……砂糖と玉子とだしの風味が……結婚式をしている!」


「……ぇ?」


 そのコメントになゆりは言葉にならない声を漏らし静止中……いや、きっと考えている。楓が今日一番の低く冷めた声で、

「それ下ネタやしー」

「お前が言うか!」


 コウは瞬時に突っ込み、楓の『下ネタ』のカテゴリー分けの概念が多少ずれていることに気づく。結婚式は一般的に使うワードだし、他に使った言葉は口、砂糖、玉子、結婚式。

 これらで作られた文章を下ネタにくくり、いつもの楓の発言は普通という考えが故に、あの悩殺レベルの天然えっち発言を生み出せるのだ。

 楓はジト目かつ、完全に引いているようだ……


「わかったよ。馴れないおれが全力のボキャブラリーを使い、食レポしようとしたのが悪かったです。柊!ホントに美味いよ。是非、明日もお願いしたいくらいだ」

「はぁ。良かったぁ……もう。寿命が縮まったよ」


 そう言ってなゆりは大きなため息を一つ吐き、そっと柔らかく微笑んだ。


「ちょっとあんた達、なんでこんなとこで食べてるのよ」

「なーんか、私ツンデレですー。みたいなキャラがきたぞ。どうする?」


 キャラの強そうな相手の対応に戸惑うコウ。


「楓しってるよ〜。スルーで喜ぶよ〜」

「喜ぶかっ!!」

「ほらね〜。これしおん〜」


 まさかの妹キャラの呼び捨ての紹介にコウがなゆりへ耳打ちをする。


「きっとあいつ……可哀想な奴なんだな」

「ちょっと、待ちなさいよ!あなた達のぱっとしない昼食トークに、華を添えてあげてるんだから感謝しなさいよね!」

「お!今の。ツンデレのテンプレだな」

「こらっ!喋りづらくなるわ!!なんかもう喉に微妙に痛みを感じて来たわ!心にも痛みが伴うわっ!!はぁ、はぁ……」

「おまえ……突っ込み担当なんだな。色々がんばれな。見た目可愛いんだし」


「ちょ、ちょっと……あんた急になんなのよ……」


「「「あ、デレた……」」」


「デレてないわ!!」

「やばいな。他意は無かったのに、デレを自然と引き出してしまった。悪い。楓!ツンデレって今の時代はネタなのか?」

「いや、きっとネタはしおんだけやし〜」

「二人共、もうやめてあげて」


 なゆりによって幕を閉じるツンデレタイム。


「悪い……冗談だ。おれは桐宮虹。楓の友達だろ?よろしくな」

「お、こ〜に〜さすが。丸く収めたな」

「私は柚葉しおん[ユズハ シオン]。でも、あまり気安くしないでよね」

「わかった。空気のように扱おう」

「それはダメよ!寂しいじゃない!」

「おい楓よ、おれにはツンデレの犠牲にならない最良な答え方が見つからん」

「ほめればいんじゃね?」と、楓。

「なるほど」と、コウ。

「ちょっと、一連の流れ全て聞こえてるじゃない!もう、楓、ほんっとあんたって……まぁいいわ。じゃあまた今度」


 そう言って柚葉はどこかへ去っていった。


 コウは今のこの感じや、さっきの夢の嬉しくこそばゆいバランス感を振り返っていた……

 今のこの感じも嬉しいものだった……

 昨日の自分と何が変わっているのだろう……

 分かるようで分からない微妙な違いに一つの仮定をした。

 その答えは近くにあるのか遠くにあるのかは分からない。

 けれどそれはきっと、『今日』の延長線上にある筈だと。


 コウ達から離れ見えなくなったところで、柚葉は腕を組み校舎に寄り掛かり不敵な笑みを浮かべ呟いた。


「フフッ……み〜つけた」

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