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ラブコメって!パラレルった?コスプレ部☆  作者: フォーシーズンス
 第一章 〜【春コス】ボーイミーツガールズ編〜
18/102

 十☆【後編】じー……確定!……一番聞きたかった言葉……。

 続……病室にて……。


「ふぉっふぉっふぉっ!すーっかり元気のようじゃのう?」


 マスターが見舞いに来てくれた。私服姿の杏も一緒だ。水色のワンピースが金色の髪を引き立たせとても可愛らしい。


「マスター!杏も一緒か。なんかすみません……あああ!!そう言えば!ノルマは!」

「安心せい。この子らが頑張ってくれてのう。目標以上の売り上げで毎日忙しくて骨が折れるくらいでのう。新しくバイトも雇うつもりじゃ」

「っしゃー!さっすがおれ!」

「あんた何かやったかしら?」

「あ、あれ?……」

 一瞬で顔色を変え泣きそうになるコウ。


「ん?……お膳立て、色々やってたよね?おれの記憶……夢じゃないよね?」

「ふふっ。冗談よ。お蔭様で部の存続確定と夏合宿を出来ることになったわ。部費も今までよりは貰えるようになる予定よ」


 瞬時に百八十度顔色を変え鼻の下を伸ばしている。

「ってことは……きゃっきゃうふふ?」

「ええ。存分に楽しむわよ。なのでさっさと回復しなさい。でないと……置いてくわよ」

「それだけはやめて!!」

 なゆりが楽しそうな顔で喋り出した。

「あはは。私たちあれから結構忙しくて大変っだったけどね、とても充実していたわ。みんなとても楽しんでいたし、ちぃちゃんも可愛いし。純恋さんもとっても良くしてくれたの。みんな家族みたいに助け合って頑張れたのは桐宮くんの配慮のお蔭だと思うわ。楓も頑張ったよね?」

「お〜!に〜えらい?ほめてほめて〜」

「本当に良くやってくれた。柊も柚葉も色々フォローしてくれたり、頑張ってくれたんだろ?」


 極自然に楓の頭を撫でるコウ。はたから見たら本当の兄妹のように見えそうだ。


「そうじゃな。花音はキッチンの手伝いまでしてくれていたし、心愛も指名を取るのが上手だったのう……ジョセフは大口客を見分けるのが上手かった。これからも出れる時だけでも良いのでと頼んである」

「花音の料理上手はおれのお墨付きだからな。んふ……心愛も人懐っこいからいけると思っていた。ジ、んふっ……ジョセっははは!」

「ちょっと!!!あんたジョセフでツボってて途中で『んふ……』って言ってたのねっ!!あんたのつけた源氏名くらい責任持ってちゃんと愛しなさいよね!もう一度あの世界へ送り届けたくなったわ!」


 楓とコウが目配せをしている。

「やめてっ!あの世界はまじやめっはははっ!」

 話の途中で笑ってしまい最後まで喋れないコウ。

「こ〜に〜やめっひゃはははは!……笑い過ぎてっ、お腹いたい……」

「ジョセフはステキな名前よ!ミッシェルとも仲良しなんだから!」

「悪い。ちょっとこっちの世界の楽しさを懐かしんでいたんだ。あはは!腹筋まじやばい」

「もう。二人ともまたそうやってしおんをからかうんだから……しおん頑張ってちゃんと指名一番だったのに。可哀想だよ……」

「柊の言う通りだ……すまない。悪ふざけが過ぎるのはおれの悪いところだな。柚葉はやっぱり凄いな。その器用さは尊敬に値する」

「また急にガラッと変わったわね。それほどでもないわ」


「あー!!!」


「ちょっと!あんた急にまた何なのよ!びっくりするじゃない!」

「もう世の中って夏休み?今日っていつ?」

「今日は七月八日の日曜日よ。で、どうしたのよ?」

「こんなところで寝てる場合ではない!やばいぞ楓!夏っぽいことしなきゃ!」

「ふふっ。何かと思ったらそんなことね。やっとあんたらしくなったじゃない」

「そ〜だな〜こ〜に〜!今年の夏は連れ回してやるぞ!」

「望むところだ!えーと花火と〜、祭りと〜、海と〜、合宿と〜……」

「に〜世界進出したいっ!」

「お!楓それは夏なのか?スケールはおっきいけど〜。でもそれはマネー的な問題がありそうだな」

「では、先ずは合宿の案なんだけど、お祖父さんのちょっとした別荘があるの。そこで良いかしら?あと、おそらく同伴が必要ってことになるのが目に見えてるわ。マスター!わたし達の頑張りに免じて合宿に連れて行ってくれる同伴者になって欲しいわ!わたし達このメンバーはこれからも色々と交流はありそうなので、親睦を深めることはきっと良いことよ。ちぃちゃんも一緒に行くわよ!」


「うん!ミッシェルもいい?」

「勿論いいわ」

「ホームページ作成者の邦正も行っていいか?」

「そうね。あの子も貢献してくれてるもの。勿論問題無しよ!」

「マスターどう?問題無いかしら?」

「うむ。よかろう」

「やばい!地獄から天国のような楽園への急展開やー!上がってきた!!」

「に〜!いっぱい遊ぶぞ〜!」

「おー!!」

「とっても楽しみだわ」

「じゃ。あんたさっさと治すのよ。あたしは用があるのでそろそろ行くわ」

「そっか。しおんが帰るなら私も行こうかしら……」

「柊!楓!マスターと男だけの話があるんだ。悪い。少しだけ、二人きりにしてくれないか?」

「らじゃ〜!えっちな話で日中から盛り上がるなよ〜」

「はは。大丈夫だ!まだマスターとは下ネタトークはしたことがない」


 手を振りあって別れ病室の扉が閉まり、マスターと二人きりになった。騒がしかった病室も一変して表情を変えた。


「マスター。おれの苦悩を拭って欲しいって……奥さんに頼んでくれたんだろ?おれが寝てる時に……おれは奥さんに会ったんだ……」


 驚きを隠せないマスター。何かをまた思い返している表情になり遠くを見つめている……


「そうか……あいつに会ったのか……」


「そのお蔭でおれの苦悩は和らいでいる……おそらく時間が癒してやがて苦悩は薄れると思う。全てマスターと奥さんのお蔭だとおれは思ってる。奥さんから伝言を預かった。『あの時は近過ぎて分からなかったけど、私は誰よりもあの人に愛されていた……私も愛していた……あの人にもずっと愛してるわと……あの指輪はちゃんとしているわと伝えてね……』と、言われた」


「そうか……それは良かった……本当に良かった……良かった……」


 マスターが何度も頷きながら何度も言葉にした『良かった』が心を殴るように貫く……

 コウはもう他人事とは思えるわけもなくより深くを掘り下げる。

「奥さんとは何か辛い別れ方をしたのか?」

 コウは聞いていいのか分からなかったが声に出していた。

 遠くを見ていたマスターが俯いてしまう……。


 暫くしてマスターがゆっくりと口を開き始めた。


「あの指輪はのう……ずっと一緒にいると誓い合いそれぞれ相手の指に通し合ったものなんじゃ。ただあいつは先が長くないことを知り、そんな自分を責めていた……これではずっと一緒ではなくなってしまうと……その時に『この指輪は返すから他の人とこれからの幸せを探してほしい』と言われた……わしは『それは出来そうにない』と答えた……それでもあいつは指輪を外したままだった……きっとわしのことを思う優しさからの発言だったのだとわしはその時も今でも思っておる……わしはあいつの意識があるうちにまた指輪を通してやった。『向こうの世界に行っても一人にならないように持っていけ』とわしは言った。その時のあいつの笑いながら泣いている顔がずっと心に残っていた……そうか。今もまだ指輪をしてくれているのか……わしの一番聞きたかった言葉じゃ。二十年間わしが探していた言葉をお前さんが今、届けてくれた……ありがとう。本当にありがとう……」


 マスターは再度遠くを見ながら心の目で何かを探しているようだった。思い出を捲っているのかとも思った。


「そんな大切なこと、自分で伝えろと言ってやりたかったんだが……伝えられるならとっくに伝えてるよな。おれは馬鹿だった。お礼を言いたいのはこっちの方なんだ。ありがとう。奥さんにもお礼を言い忘れてしまった。今度は伝言をお願いしたいんだが……いいか?」


 マスターは多くを語らずに頷いた。


「『おれもこれからは愛情を信じて行こうと思う。難しそうだけど二人よりも素敵な男女の関係を目指し向かってみる。おれの苦悩は次第に消えて行く気がする。ありがとう』と、伝えて欲しい」

「確かに引き受けた」

「もう聞こえてたなら話が早いんだがな」

「確かにのう……」

「マスター良かったな。えんじぇる続けられそうで……」

「うむ。お前さんたちには頭が上がらないのう」

「何言ってんだ。それはこっちの台詞だ」


 二十年間の沈黙を経て届く言葉もある……

 その決して長くはない言葉が永遠と言う長い時間をより確実なものにした……

 マスターはいつになく優しい顔をしていた……

 そんな時はいつも奥さんのことを思っている筈だ……


 五十年過ぎた今日も変わらずに……あのいつもの場所で……

 えんじぇるの看板が微笑むようにまちを灯し続けていた……。

 第一章ED詩  咲く夢……幻   


優しい感触……足りない指先



上手くできなくて 目を伏せていた

やり切れなくて 心に留めた

迷いながら それでも何かを追った

音だけはいつも この胸を叩いていた


秘密がいつしか 孤独を連れて

閉じ込められて 悲鳴さえも届かない

想い……自由……偽りの世界

君に会うまでは……

「正しさ」の理由さえ探していた


  

縺れる心で……素直になれない

生まれた願いは……漂うばかりで



半分預けた不安も甘えも喜びも……

癖になる程の共感覚

君の言葉には幾千もの色が……

君の歌には哀しみを溶かしてゆく

温もりさえ在る


  

届けた気持ちに……高まる期待と

重なる願いに……咲く夢……幻


優しい感触……足りない指先

信じた思いが……明日へと願った

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