新たなる勇者が現れた
ついに始まります第三章
構想は出来てますが、話が全然できてません。スローペースですが更新続けられるよう頑張ります。
イヴェール王国は冬になっていた。シャトーより西にある山岳地帯は雪化粧を見せている。
毎日、アップルパイ売っているルーシュはこの日も昼になる前に売り切って、ティモとレナの2人と一緒に店仕舞をしていた。
10代半ばの黒髪黒目の魔族の少年と青髪青目のエルフに見える魔族の少女、それに10歳ほどの白髪赤目の獣人族兎人種の少年という組み合わせは珍しいが、この界隈では見慣れたものだった。
そんな、平和な日々をすごすルーシュの前に1人の勇者が現れたのだった。
屋台を片付けているルーシュの前に、さっそうと一人の騎士の風貌をした女性が現れたのだった。
「我が名はソフィア・ロサ・ディ・モンテゼモーロ!西の大陸リヴェルタより来た神聖教団の勇者だ!北の大陸に侵入し、人心を惑わす悪しき魔王ルーシュとは貴様だな!」
長い銀髪を靡かせ、碧の眼を美しく輝かした麗しき女性だった。
女性的なふくらみを強調した鉄の胸当てを装備し、白金色に輝くレイピアをルーシュに向けて高らかに己の名を告げたのだった。
ルーシュは首を傾げる。
レナとティモも同時に首を傾げる。
そこでルーシュはポムと手を打つ。何かを察したようだった。
「ふはははははっ!我は魔公王子ルーシュ・バエラス3世!我が銀の林檎屋台へようこそ。だが、しかし、今日は既に売切れで店仕舞である!」
バサッと黒い翼を広げ、何となく魔王っぽい仕草、というよりはガオーとでも言うように両手を広げて相手に返す。
それは魔王じゃないとレナは心の中で突っ込んでいた。
「む、店仕舞か。それは失礼した。ではまた…」
「またのお越しを~」
勇者を名乗った女性は腰の鞘にレイピアを戻して引き返していき、ルーシュは頭を下げて去って行く女性を送る。
………
「って、ちっがーう!」
町中に消えそうなところで、勇者を名乗った女性ソフィアは我に返り、走って戻ってくる。
そして、再びルーシュの前に立ち、レイピアを抜き放ち構えるのだった。
「「「?」」」
ルーシュとレナとティモの3人は首をかしげて再び女性を見上げる。
貴族か騎士かといった女性。真紅のマントが背中でたなびいいていた。何となく勇者っぽい格好だ。
「勇者ボリス・ノイバウアーを倒し、イヴェールを乗っ取ろうとする魔王め!成敗してやる!」
ソフィアはルーシュを睨み、そしてなんだか必死に追及をして叫ぶ。
アップルパイが売り切れるとお客がいなくなり、周りはのどかな公園になってしまうので、周りの人も視界には入っているが、声を掛けようとはしてなかった。
「…ぼりすの・いぼいぼー?誰だっけ?」
ルーシュは首を傾げてレナを見る。当然、ティモは知らないので首を傾げる。
レナはうーんと考えて、そしてポムと両手を撃つ。
「詐欺だよ!」
レナははっきりと断言する。
「「「?」」」
ルーシュとティモ、そして勇者を名乗るソフィアの3人は同時に首を傾げる。
「勇者勇者詐欺だよ!ほら、勇者だからちょっとやっつけさせろよ、とか言って近付いてきて私達からお金とか毟り取っていく詐欺だよ!丁度、店仕舞のタイミングで私達は小金持ちだから間違いないよ!」
レナはビシッと女を指差して断言する。
「ちちちちちちっ、違う!ちゃ、ちゃんとした勇者だから!ほら、これ、冒険者カードを見てください」
女は慌てて道具袋からカードを取り出す。
出てきたカードは世界最大商社ダイヤクラブ系列のポイントカード、通称『だいやくんカード』だった。
「とりあえず112ピース分のポイントがあるのは分かったけど、僕らはダイヤクラブ系列のお店じゃないし、112ピースじゃアップルパイも買えないよ?」
ルーシュは可哀想な子を見るような目で女を見る。
「え?…いや、違う!それじゃない!」
女は慌ててカードを奪い返して新しいカードを取り出す。
そのカードはルーシュも持っているカードだ。冒険者になると貰える、冒険者の身分証明書、通称冒険者カードであった。
氏名:ソフィア・ロサ・ディ・モンテゼモーロ
冒険者ランク:S
ジョブ:勇者
所属:神聖教団団自由派<西方教団>
称号:千の魔物を斬る者、白銀の聖騎士
「おお、本当にジョブの欄って勇者の称号があったんだ」
「ウチのなんちゃって勇者は、普通に戦士だもんね」
「都市伝説じゃなかったんだねぇ」
ルーシュは感心し、レナは知り合いの他称勇者クロードをなんちゃって勇者と口にする。
実際、ルーシュ達は暗黒世界より魔王の命によって勇者クロードの間諜を行う事になったが、当人が勇者疑惑を否定している。
本物の勇者にも一度会った事があるのだが、とんでもない怪物を呼び起こして逃亡した挙句逮捕されたような男で、その部下は偽バエラスがいた。勇者と聞くと怪しげな印象しかルーシュ達には存在しなかったのだ。
「じゃあ、僕も自己紹介を」
ルーシュは冒険者カードを取り出して相手の勇者ソフィアに見せる。
それは世界最大商社ダイヤクラブのビジネスマンが自身のビジネスカードを渡すような丁寧に提示する。
氏名:ルーシュ
冒険者ランク:E
ジョブ:商人
所属:銀の林檎屋台
称号:千の人を救う者、本物のバエラス3世
「って、ジョブが商人に変わってる!?しかも、いつの間にか称号がついてる!?本物のバエラス3世って何さ!?偽者が氾濫しすぎて僕が胡散臭くなってる!?」
「あははははははは。本物のバエラス3世って何!?」
ルーシュは自分でいつの間にか冒険者カードの中身が変わっているのを見て驚愕していた。
レナはあまりに酷い称号に腹を抱えて大笑いしていた。地上には偽者がいたり、フィクションの世界にいたりと、バエラス3世は溢れていた。バエラスを祖父に持ち、暗黒世界公式のバエラス3世であるルーシュだが、なぜか本物と名乗って怪しまれていた。かなりカオスな酷い状況だった。
とはいえ、ルーシュが気づいていなかったのは、更新しても中身をあまり見て無かったためだろう。受け持つ冒険者としての仕事や儲けからジョブが変わってしまう。例えばどんなに優秀な戦士でもマギテックのエンジニアをやっていれば勝手に技士になってしまう。銀の林檎屋台で生計を立てているルーシュが勝手に商人にされてしまうのは仕方ないのである。
例えばルーシュが銀の林檎屋台をやる際に銀の林檎を冒険で手に入れてくるのであれば狩人みたいな称号もついていただろう。
だが、当の勇者はその称号欄を見て、大きく震わせる。
「何で私の称号が千の魔物を斬る者なのに、倒す魔族の悪者が千人救った者!?明らかに私の方が悪役っぽい!?」
冒険者カードの称号はよほどじゃないとつかないので、虚偽ではないことが明らかだった。
「本当だ!勇者のほうが悪役っぽい!」
レナのダイレクトな物言いに傷ついた勇者は頭を抱えてふらつく。
「じゃあ、余興も終わったし帰ろうか」
「余興!?」
レナの更なる突込みに、ソフィアは愕然として膝をつく。
そんな勇者を残して、ルーシュとレナは帰途に着く。ティモを孤児院に送ってから自分の家へと帰るのだった。
家に帰ると、レヴィアはハティとスコールと並んで、炬燵から首だけ出してぬくぬくしていた。
「おかえりなのじゃ」
「レヴィアたん、完全にニート臭いんですけど」
ニートとはこの世界における勉強も訓練も仕事もしない無職を指す言葉である。
「ふっ…我の仕事はルー君の補佐じゃからの。いつものように人助けをしたり魔族難民を救ったりしなくて良いのじゃ」
レヴィアは冬の寒さに負けて、炬燵の中でまったりしていた。
「し、仕事だからやってたのかぁ…」
だが、言われてみれば、グランクラブの北方における冬頃の季節はいつもレヴィアは暗黒世界にいたと思い出す。寒いのを避けていたのかと突っ込みを入れたくなったのはルーシュだけではないだろう。
スコールがビシッと右前脚でレヴィアの方に前脚の甲で突っ込みを入れる振りをしていた。
とはいえ、レヴィア達中立派魔族は、グランクラブに住む魔族達を奴隷から解放するべく活動をしていたのだが、まさか善意ではなく仕事でやっていたとは思っていなかった。
「グランクラブは酷い所じゃからの。救いたくてもどうしようもない事がある。仕事だと割り切らねばやっていられぬわ。モンスター相手ならいかようにもなろうが、万の敵を殺さずに1人守るなんて神でも難しい事じゃ。それを神の身ならぬ我らがやるのだからのう」
レヴィアは炬燵の中から出ずに、少し悲しげに口にする。
「……そんな酷いんだぁ」
「くーん」
ルーシュは荷物を置いていると、ハティは右前脚でこっちにおいでと招くので、ルーシュも炬燵の方へと向かう。
「そういえば、炬燵ってグランクラブに無いんだってね」
レナはすこし驚いたように口にする。
「ふふふ、この炬燵、どうやらグランクラブにはないらしい。暗黒世界における文明の利器だね」
ルーシュは炬燵の中に脚を入れるとレナも隣に座って足を入れる。
ハティとスコールはもぞもぞと布団の中に潜ると、ルーシュの懐から出てくる。
「そういえば、レヴィア様。今日、勇者と出会ったけど。なんか、ルーシュを退治してやるーって意気込んでたよ」
「勇者?」
レヴィアは少し考えて、口振りからしてその勇者がクロードではない方の勇者だと感じて、首をひねる。
「もしかして神聖教団の勇者か?」
「うん」
レナは首を縦に振る。
「ふーむ、穏やかで無いの。勇者もピンキリじゃから何とも言えんが」
「そうなの?」
「例えば魔族とか関係なく正義の為に戦って正しき勇者になる者もいれば、自分の利益だけを追求して功績を積んで教会に寄付をして勇者になる者もいる。そしてどちらかというと後者の方が多いのは確かじゃな。稀に我等も知らぬ邪法をもっている怪しげな…そう、数多いる神の一柱メタトルスあたりの使者などが混ざっていたりする」
レヴィアはルーシュ達の全く知らない話も教えてくれる。
「ほへー。今日であった勇者さんはいきなり因縁つけてきたよ。何だかお人好しそうな感じだったけど」
何せ称号負けして、愕然としていたのだから。
「いきなり因縁つけてきたのにお人よしってどういうタイプじゃか、よく分からんの」
レヴィアのいう事ももっともだった。お人よしが因縁をつけるというの中々あるケースではない。
レナとレヴィアは仲良く話しているのだが、ルーシュは興味無さそうに2頭の子狼と戯れて遊んでいた。モフモフな毛並みをブラッシングして楽しんでいた。2頭とも目を細めて気持ちよさげだったのは言うまでもない。
「どこ出身か分かるかの?」
「うーんと…リヴェルタとか言ってような?」
レナは思い出すように口にするとレヴィアは納得と言った顔で頷く。
「リヴェルタなら心配も要らぬじゃろ」
「そうなの?」
「あの国は種族差別も多少残っておるが、公にすると差別主義者として社会的立場を失うような国家じゃ。その為、冒険者協会の本部、傭兵団オリハルコン、ファルコン便やマギテック、ダイヤクラブと早々たる有名な冒険者協会に関連する会社は、全てリヴェルタにある。文明は他国よりも進んでおり軍事力も高い。その者は、恐らく神聖教団から適当な事を吹き込まれてここにやってきただけじゃろ。ちゃんと説明すれば聞いてくれると思うぞ」
「ふーん。まあ、ルーシュが斬られるくらいなら別に困ることも無いかぁ」
レナは安心したように胸を撫で下ろす。
「なんだか、とっても物騒な話を聞いたような気がする」
「大丈夫じゃろう。ルー君はいざとなればあと変身を2つも残しておるからの」
「そんな変な仕様は僕に無いよ!」
レヴィアはいきなりとんでもない事を口走る。ルーシュはレヴィアの勝手な言葉に慌てて否定する。
「「ないの?」」
レナとレヴィアは同時に反応する。
おかしいな、僕と付き合いの長い二人が何で知らないのだろう?
逆にルーシュは困惑してしまっていた。
だが、残念ながら、ルーシュには、第2形態や第3形態と言う人間世界の古典文学にある魔王特有のあれやこれというものはないらしい。
魔王家を詳しく知っている筈のレナもレヴィアも随分とこの地上世界であるグランクラブに毒されているようだった。
そもそも、レナはそんなものがルーシュに無い事を知っている筈なのだ。生まれてから長らく一緒に育って兄妹にも等しい存在なのだから。
するとルーシュの頭の上にスコールがよじよじと乗り、両前脚を上に掲げて『合体!第2形態!』とでもいわんばかりにドヤ顔でポーズをとる。
スコールに乗じて、さらにハティがルーシュの首に体を巻きつけて、やはり前脚を持ち上げて『合体!第3形態!』とでも言わんばかりの姿を見せる。
「なっ……ぼ、僕に第3形態が存在したなんて…」
ルーシュは感動に打ち震えるのだが、スコールもハティは寒さに震えて、用事が済むとさっさと炬燵の中に戻っていく。
「もはや僕が魔王と言っても過言では無いのだろうか」
ルーシュは、その気になってしまった。
「寒い日は第2形態になれないくせに」
レナの突っ込みは相変わらずハードだった。
「がーん」
レナの言葉にルーシュは愕然とする。
「早く暖かくならないかなぁ。いや、まあ、君達の出番はないけどさ」
ルーシュはあったかさを求めながらも、炬燵の上で自分の出番かとばかりに踊りまわる火の精霊たちを追い払う。この場ではルーシュにしか見えていないが、こいつらがやる気になると滞在している都市が一瞬で灰燼に帰すので、迂闊に頼む何ていえないのだ。
「でも、このままだとクロードがピンチだから教えてやろう」
「勇者に内通する諜報員がおるぞ」
「おおう、言われてみれば」
このルーシュという名の諜報員は、クロードの事を調査するはずなのに、クロードの手助けばかりしていた。
そんなクロードだが、この国で勇者と呼ばれるようになってから、冒険者稼業も順調らしい。話によるとアレッサンドロに色々と習ったらしい。
何故、エンジニアから学んで強くなるのだろう?かしこくなるのでは?
そんな思いをルーシュは抱えていた。
新キャラ登場します。
勇者ソフィアです。この章だけのキャラになるか、今後も出るかはまだ不明です。




