新国王物語
長きにわたるイヴェール王国の成り立ちを描く物語は今回で終結。
セドリック視点の物語です。
そして2章にて第二王子派閥を掃討という形になります。
先日、ラフィーラ教会イヴェール総本部教会にて、国王陛下の国葬が行なわれた。しかし、その葬儀において多くの民が第1王子と第2王子に対して不満を持つ状況に陥る事になった。
何せ葬儀で献花をする順番は、喪主である王太后の次に、遺族となる。
第一王子と第二王子の2人が次の国王は自分だからとつかみ合いの口論を始めてしまい、葬儀を台無しにしてしまった。
しかも国を挙げて喪に服す期間だというのに、葬式の3日後に第一王子は結婚式をするという暴挙に出ている。普通はやらないが、サヴォワ公爵との結びつきを完璧なものにしようとする魂胆が目に見えていた。
第2王子は既に兵を挙げてその結婚式を壊そうと動かしていた。
俺は結婚式に備えて、サヴォワ公爵の依頼を受けて、第2王子の介入を止めるべく傭兵団を動かしていた。
「先生、貴族事情はどのような状況に?」
俺の問いにクリストフ・アングレーム名誉侯爵は状況を説明する。
「サヴォワ公爵は私を含め、殿下との話し合いの後に自派閥を集めて話を付けているようでした」
「なるほどな」
俺はサヴォワ公爵の動きを理解し頷く。
「本当に宜しいのでしょうか、殿下?後悔する事になりますぞ?」
「私が?冗談を言うな。8年前、俺はなんで国の外に出て、ダイヤクラブの幹部に上り詰めたと思っている。イヴェールの国家予算を遥かに凌駕する資金を手にしたんだ。こんな国の王になる為に、それを捨てるなどバカのする事だろ」
「…その通りです」
8年の放浪を続けて、この国に俺は戻ってきた。父上の死はあまりにも大きく、これにより祖国は絶望的な領主を向かえる事になるだろう。
兄達は8年の歳月で、愚かに過ぎる人間へと変貌していた。おそらくはネヴェルス家やメルクール家が上手く操れるようにと誉めそやし、甘やかし、上手く導いたのだろう。
「さてと…じゃあ、行くかな」
「殿下…」
先生は俺を見て、何かを訴えようとしていた。だがその言葉を飲み込み黙って、ただ頭を下げて見送ってくれた。
「またな、先生」
俺はシャトーにある冒険者の館に入ると、そこには親友が座っていた。
「1月ぶりか。久しいな、バスティアン」
「おお、久し振りだな。聞いたぞ、面白い事になっているようだな」
分厚い肉体を持った巨漢の男が手を振って俺を招く。バスティアン・ツァイヤー、傭兵王と謳われた最強の剣士だが、人懐こい笑みを浮かべてこちらを呼ぶ。立場や権力を握っても、いつまで経っても変わらない男だった。
「面白い事なんて無いぞ?親父が息子達の派閥に毒殺されて、その息子の片割れが明日結婚式を挙げる」
俺はジロリと睨む。
「すまないな。だが、葬式直後に行なうとはなぁ。ラフィーラ教と言うのはおかしい奴らだな。喪に服す期間が短すぎやしないか?」
「ラフィーラ教でもちょっとありえない事で、国民の不満はかなり溜まってそうだな」
俺は肩を竦めて笑い飛ばす。
「ここに来る途中でも耳にはした。サヴォワ公爵派閥を自派閥に入れた事をアピールする為に、無理やり結婚をするとか。セルプラージュの周りに第一王子派の軍隊が動いていたらしいな」
「先遣隊程度だ。戦争をする予定はなかっただろう。サヴォワ公爵が本気で戦ったら第一王子派閥は崩壊する」
「ほう。だが結婚式まで公爵令嬢を逃がさぬように、牢屋に入れているらしいぞ。どこかで漏れたらしい、国民の怒りはかなりのものだ。真実は知らぬが」
「真実だ。調査済みだし、密偵を忍ばせていたからな。堂々とその話を冒険者の館で報告させてたから、漏れたんだろ」
「なるほど。……貴族の割りに人気があるようだな、公爵令嬢は。普通は逆だろう?王族の方が人気で、貴族の人気が無い」
バスティアンは一般常識を口にする。
「この国でもそうだぞ?父上の人気は高かった。ただ…今の王子達は横暴で庶民の人気は圧倒的に悪い。第一王子も最近は化けの皮がはがれてきたな。少なくとも俺の知る第一王子はもうすこし良識のある人だったが……」
良識というよりは化けの皮が厚かったというべきか。
「ふうん」
面白いものを見るようにバスティアンは頷く。
「で、フランシーヌは景気のいいセルプラージュの令嬢で、庶民の味方だったからな。貴族の人気取りってのは得てして堂々と前面に出て善人面をするだろ?フランシーヌは隠れてコソコソ手伝いをしているような奴だったから、井戸端会議レベルで長年ジワジワッと人気が広がっていたようだな。あの奥様方の井戸端会議の広がりってのは冒険者の館での情報網に近い広がりがある」
バスティアンに国家事情を説明する。
「なるほど。人気の高い令嬢が、酷い扱いを受けると分かっている王族の下に戦争を止める為に嫁ぐ。美談になるな」
「そうだな。昔からあのバカは……貴族としての義務を果たそうと必死に生きてたからな。生まれてから、民の税のお陰で不自由もなく生きてこれたから、それを全て民に還元するのは当然だと思っている」
俺の言葉を聞いて唸る様にバスティアンは頷く。そもそも俺達の始まりはクズみたいな貴族を打倒する集団に買われて始まったのだ。
「そういう貴族の下に生まれたかったものだな」
「そんな奇特な人間ばかりなら、オレらのおまんまは食い下げだろう?」
「違いない」
カカと笑うバスティアンに、俺も苦笑する。傭兵は政治の悪い場所でしか食っていけない。ただのバカでは使われて戦場で捨てられるだろう。
オリハルコンの強みは、その能力の高さもあるが、俺という政治事情を把握し、傭兵団としての方針を打ち出せるアドバイザーがいた事が生き残れた秘訣と言っていいかもしれない。
「で、どうするんだ?」
「分かっているのだろう?」
今更何を聞いているのだと、逆にこちらが問いただしたい。
「まあな、何年の付き合いと思っている。時間にしてお前の幼馴染よりも付き合いは密で長いだろう」
「まあ、立ち位置的には俺が奥さんだがな」
散々好き放題するバスティアンの始末を俺がつけてきたのだ。内部分裂などの危機も何度となくあったが、俺がそれを納めてきたのだ。
家を守る妻の立ち位置であったのは間違いない事実だ。
「ははははっ………長く戦ったもんだ。俺は一国の王に相当する称号と力を手にした。俺達は出会った誓いを共に果たした」
「短いようで長かったな」
感慨深いものだ。初期メンバーの5人しか離していない俺の素性と俺の目的。
王になるというバスティアンは傭兵の王となり、西の大陸では俺と共に王の称号を手にした。そして俺は……
「じゃあ、行くか」
バスティアンの声に俺が立ち上がり、そして周りの傭兵達も全員が立ち上がる。
エリックとフランシーヌの結婚式は民衆の見ている前で大々的に行なわれていた。
だがこれを結婚式と呼ぶにはあまりにも酷いものだった。
花婿であるエリックは正妻を直近くに置いた上での結婚式を行なっており、サヴォワ公爵らは遠い位置に置かれていた。
花嫁の父親とは思えない場所で立って見学させられていた。
花嫁入場では、護衛の兵士に槍を突きつけられてウェディングドレスを着たフランシーヌが歩いてやってくる。
これは結婚式ではない。第一王子にサヴォワが組すると言う事を、サヴォワがネヴェルスの下である事を明確に示す為の政治的な婚儀なのである。
民衆に対して、王族以上に人気のあるフランシーヌを貶めるという意味もあるのだろう。
俺は遠くの塔でその様子を眺め、塔を飛び降りて地面に魔法で着地すると、塔の下に置いておいた白馬に乗る。仲間達も既にそこにいて、甲冑を纏い騎馬に乗って待っていた。
「さあ、行くぞ」
1人だけタキシードに白い馬という場違いな様相だが、それは問題ない。何せ突入先に行けば、浮くのはむしろ仲間達だからだ。
「俺は振られるほうに賭けた」
「いや、さすがにここで振られたら、もう副団長でいられないんじゃ」
「いや、もう辞めてるから良いんじゃね?」
「金だけ出してくれれば」
相変わらずウチの団員達はどうしようもない連中ばかりだった。
「終わったら良い給料でここのゴタゴタが終わるまで雇ってやるし、良ければそのまま兵隊として雇ってやろうと思ってたが、OKだ。お前らは一生傭兵でいろ」
「何言ってるんですか!俺はいつだって副団長の下僕っすよ!」
慌てて前言を翻す部下の1人に周りは大笑いする。
「あー、俺の国にガサツな傭兵とか要らないし」
「ははは、そろそろ行こうか、セイ」
俺は騎馬に跨った仲間たちに囲まれて白い馬に乗ってそのまま貴族街に向かう道を駆け抜ける。途中で兵士などがいたが、静止を振り切って仲間達と共に駆け抜ける。
ヴァージンロードとなっている貴族街のメインストリートを、傭兵団オリハルコンの騎馬隊が蹂躙する。
結婚式は誓約の段階へと突入しており、ラフィーラ教会の枢機卿の1人が神父として新郎新婦に問うていた。
「貧しき時も富める時も、病める時も健やかなる時も、いついかなる時も苦楽を共にし、夫を愛する事を誓いますか?」
などという定型文章を読んでいる中、俺は場違いにも白馬に乗って結婚式へ乱入する。兵士達が慌てて止めに入ろうとするが、部下達もまた同様に騎馬に乗って、立ちはだかる護衛を叩きのめし、道を切り開く。
白いタキシードを着たエリックと白いウェディングドレスを着たフランシーヌは傭兵団オリハルコンの乱入に驚き、神父も結婚式の途中である事を忘れたかのように俺達を見て凍り付いていた。
「フラン!フランシーヌ・サヴォワ!」
階段の上で永遠の愛を誓おうとする二人の男女のを見上げて俺は大きい声を張り上げ、幼馴染の名を呼ぶ。
フランは驚いた表情で俺を見下ろしていた。
「ぶ、無礼者!ここは我がイヴェール王家の結婚式の場だぞ!そこの下賎の庶民を排除しろ!」
大きい声でエリックは叫び、周りに指示を出すのだが、周りの兵士達は動こうと思っても動けなくなる。俺の両脇には2人の男がいる。
傭兵王バスティアン・レ・ツァイヤー
鬼神スティード
いずれも一騎当千の2つ名を持つ猛者であり、片や相棒で親友、片や部下で弟分である。
2人の睨みだけで、並の兵士達は竦みあがって動けなくなっていた。
「我が名はアドルフ・イヴェールの三男セドリック・イヴェール!フランシーヌ、俺と結婚しよう!もう、三度も言うつもりはないぞ!」
俺の言葉に周りの人間達は大きくざわつく。
サヴォワ公爵も慌てて群集を掻き分けて前に出てくる。
「セ……セイ…?」
フランシーヌは驚きに目を大きく開く。
彼女は直にその言葉を聞いてセイ・レ・ビスコンティがセドリック・イヴェールだったと察したのだろう。
だが、悲しげな顔で俺を見る。
今更そんな事を言わないでくれ、私はもう国の為にどんな扱いにも耐えて生きると決めた。
その決心を揺らがすような事をしないで欲しいと困惑した表情を見せていた。長く離れていたが、やはり表情を見れば何を考えているか分かるものだ。
ギュッと彼女は唇を結び視線を下へと向ける。
彼女は俺を拒むだろう。
だが、俺は8年掛けたのは決して拒まれる為じゃない。8年前、拒まれた理由が何なのか理解している。そして、それを打ち破る方法を手に入れてきたのだ。
「8年だ!8年掛けてここまできた!俺はお前の願いを全てかなえてやる!イヴェール国王であっても出来ない事を俺は出来る!その力を手に入れて戻ってきた!お前の救いたい民を全て俺が救ってやる!俺の資産はこの国の年間予算を遥かに上回る!その為にオリハルコンを踏み台にして、ダイヤクラブの幹部に上り詰めた!お前のやりたいこと、やりたくても叶えられなかった事、この国の国民に笑顔を与える事を、いや、お前さえも手の届かない遥かな未来を俺が導く!これからもずっと俺がお前の願いを叶えてやる!だから…だから俺の手を取れ!フラン!」
「…」
フランは俺の言葉に強く揺れる。信じがたい誘惑、民の為に全てを叶えてくれるという言葉にフランは大きく揺れる。
8年前、俺は自分の事しか考えていなかった。しかし、フランはあの頃から民の為だけを考えていた。だからこそ指し示すのだ。
俺こそが誰よりも民を救える力を持っていると。
フランは自分の父親を一瞥する。
サヴォワ公爵は俺との会話で全て理解していた筈だ。
そして、今日の結婚式前にその為の全てを整えていた筈だ。彼は笑顔でフランシーヌに好きに選ぶように大きく頷く。
「セイ………セイ!」
フランは階段を駆け降りて、俺に抱きつく。
「本当に、セイなのね?ずっと…ずっと会いたかった。ずっと待ってた!」
泣いて再会を祝う予定はない。
「さ、サヴォワ!貴様!我らを謀ったか!許さぬぞ!」
ネヴェルス公爵が怒り狂い、地団太を踏んで怒鳴り散らす。
「国王エリック・イヴェールの名において命じる!その反逆者共を皆殺しにしろ!」
エリックは怒りで顔を朱に染めて、周りの兵士に命令を出す。
「兄上…反逆者はアンタだよ!」
俺は懐から一枚の文書を取り出す。
「病床の父上の耳元で、王太子に任命しろと脅す息子達には愛想がついていたみたいでな!父上は、8年ぶりに再会した三男坊に、国王の座を任命してたんだよ!」
父上の遺言となった文書を取り出す。しっかりと玉璽が推された正式文書である。
「!」
「そ、そんな…まさか」
貴族達はその文書を見て激しく動揺する。
そこでクリストフが俺の横に立つ。懐から玉璽を取り出して
「国王陛下は己の死期を悟り、第1王子と第2王子に愛想を尽かし、セドリック様を任命した後、かつて国王陛下の教育係だった私に、この玉璽を託しました」
クリストフの説明に貴族達はもはや頭が追いついていないようだった。
突然現れた大富豪が失踪していた第三王子で、国王はどちらの王子も任命しないで亡くなったと思えば、失踪から帰ってきた第三王子を国王に任命していたという。
「故に、父の遺言に従い、イヴェール王国第12代国王に、セドリック・イヴェールが即位する事をここに宣言する!」
サヴォワ派の貴族達は全員が俺の足元に跪く。
「サヴォワ公爵家はセドリック陛下を支持いたします!」
少々予定外だが8年かけて準備してきた事だ。
俺はフランシーヌを抱きかかえると白馬に跨って逃げる方向へと駆け抜ける。
「バスティアン!時間稼ぎは任せた!良いか、この国の民は全て俺のものだ!一切傷つけるな!兵士は殺さない程度に叩き伏せろ!ネヴェルス公爵家とエリック王兄はイヴェール国王に刃を向けた 反逆者だ!始末してよし!」
「よっしゃーっ!」
スティードは背に抱えた巨大な鉄塊とも呼べそうなバスタードを抜き放ち馬に乗って突撃する。殿として時間稼ぎを任せた筈なのに特攻するスティードに、一同は頭を抱えるが、いつものことなので放って置く事とする。
「俺達の仕事は時間稼ぎだ!撤収しながらセイの背後を守り、足止めをする!成功の合図を出せ!」
バスティアンが大地を響かすような大きい声で部隊に指示を出す。同時に空に大きい花火が上がる。
俺にとって一番の難問はこの逃亡劇だった。俺が逃げる先で民が邪魔をしないかと言う問題だった。極力、起動性の高い馬を用意していた。
だが、予想外にも、俺は花嫁を連れ攫っているというのに、街道の周りにいて結婚式の様子を見ていた民はあろう事か、道を綺麗に開けて花弁を撒いて祝福をするのだった。
「フランシーヌ様、お幸せに!」
「後は私達に任せるんだよ!」
「あのエリックの顔、傑作だったぜ!」
「俺達のフランシーヌ様を連れ去るんだ!不幸にしたらぶっ殺すぞ!」
しかも、状況がわかっていないが、逃げているフランシーヌを応援し、あまつさえ俺に檄まで入れてくる始末。
どうやらフランシーヌの人気は並じゃなかったらしい。
俺は馬に乗りながら、併走する仲間の持っていた魔導拡声器をふんだくると、大きい声で町中に轟かせる。
『我が名はセドリック・イヴェール!そしてセイ・レ・ビスコンティを名乗っていた者だ!俺はアドルフ国王により任命され、第12代国王に即位した!傭兵団オリハルコンの諸君!契約通り、イヴェール国王の敵を駆逐せよ!但し、国民の一切を傷つける事を許さず、町を焼くなよ!良いか、俺がお前らに傷つけないような戦い方、国を乱さぬように倒すべき敵だけを倒す訓練を強いていたのは、全て今日この日の為だ!民の生命と資産を第一優先に!いつも通りだ!』
俺の声は町中に響き渡り、街のあちこちに配置していた仲間達が鬨を上げる。
俺は港に着くと、馬から下りて、フランシーヌを地面に下す。
「セイ。……本当に…大丈夫なの?」
「急すぎて不十分とは言い難いが……俺の育てたオリハルコンは俺の想像を上回るほど成長した。あいつらなら大丈夫だ」
「……いつか、貴方が誇るオリハルコンのように、私の誇るイヴェール王国の民が成長すると嬉しいわね」
「そうなるさ、きっとな」
戦争になりうる事態だというのに、自分達の愛する公爵令嬢を応援するような国民だ。いつかリヴェルタ連邦共和国のように、自分達の意思で自分達の国を形作れるようになれると信じられるだろう。
俺はそこで海のほうを見ながら、魔法の花火を打ち上げて合図を送る。
既に事は始まっている旨を報せる合図だ。
「ふっ…もう3~4時間掛かるかと思っていたが、速かったじゃないか」
俺は安堵して海を見る。海の水平線を越えて、我等がオリハルコンの大艦隊がやってくる。
全て鉄鋼で出来ている大型魔導軍艦が水平線を鉄色に染め上げていた。
「な…」
さすがのフランも驚いた表情で海を見る。余りの光景に声も出無いようだった。
俺達が港に立っていると、ネヴェルス軍らに追い立てられたオリハルコンの騎馬隊が、引きながらこちらにやって来ていた。
町に隠れていた連中が、俺達を守るように陣を組む。シャトーに滞在していた1000の正規軍と2000の非正規軍の3000が港に集結して陣を組む。
20人程の殿を勤めている騎馬を追いかけて、ネヴェルス軍100の集団は目の前の光景に対して一気に顔色を悪くする。少数と思って追い立てて、港に追い詰めたと思った。むしろ船で逃げられまいと一生懸命追いかけて縦長な陣形に崩れて追いかけていたのだろう。
だが港に辿り着いてみれば先行した数人の騎馬が、目の前の3000の陣形を組む軍隊を目の当たりにして一気に尻込むのは仕方ないだろう。
「何をしている!さっさと奴らを仕留め…」
逃げるバスティアン達を追いかけて、港に追い詰めている気分で追いかけてきた兵士達の長やネヴェルス公爵の部下達は、この光景を見て凍りついていた。
準備は不十分であったが、それはあくまでも100%の勝利が95%程度に落ちると言う事だ。十分でないだけだ。
「さて……これより、国家に救うダニの殲滅をする!投降するならよし、刃向かうならば国家反逆罪として処刑する!これは、勅命である!」
俺の号令と共に傭兵団は大きい声を上げて、一気に殲滅を開始する。
相手が戸惑い逃げている間に、さらにこちらは水平線を埋め尽くす艦隊から、万の軍勢を港に降ろして攻め立てる。
シャトーはオリハルコンによって占拠される事となった。
こういった戦争は実に得意なものだった。弱者を解放する為に貴族を打ち倒すような戦争は多くあった。新政権からの勝利報酬を約束してもらって、敵を打ち倒すという報酬を得るという内乱である。実際、イヴェール王国シャトーよりも大きい都市でそれを実行して成功させた事がある。
国民に嫌われていた現政権が、親切な傭兵団による占拠によって崩壊し、国民は喝采を上げて異国民を迎え入れる事になる。
人気ある貴族令嬢を妻にしてこの国を乗っ取った第3王子を国民は喜んで迎え入れた。
こうして俺は、イヴェール王国を治めることとなった。
今回の事件を機に、第一王子派閥をこの内乱で完全に駆逐した。
内政の改善の前に国家の経済の安定をする為に様々な改革を行なった。
冒険者でなくなった俺は、ダイヤクラブの幹部の座から退き、ファルコン便の社長にその座を引き継がせてイヴェール王国の政務に集中する事となる。無論、ダイヤクラブの幹部の地位がなくなろうが、チケット制会社にしたので、手元のチケットは残っており経済力が失うわけではない。
農業改革、産業革命、学術改革、インフラ、人権や自由に関する思想の拡大、やることがありすぎて大変なのだが、国際知識の広いサヴォワ公爵や、中立を保っていた父上の臣下達の味方もあって駆け足で国の改革を進める事が可能になった。無論、それが可能なのは、極力国でどうにかしようとしていても、最後は俺のポケットマネー投入という武器があったからなのだが。
それから俺は、貴族の健全化という大問題に対して長きに渡って取り組む事になる。
内乱でメルクール派を一掃出来なかったのが大きいといえるだろう。そして貴族の健全化をする為に自分の権力を使う事を良しとしなかったが為に長きにわたってしまう事になったのは事実でもある。
俺が対抗勢力である貴族派を一層するに至ったのは実に9年の歳月に渡る政治闘争の末によるものであるが、それは別の話である。
次回、章外最後の話としては、レナ視点の物語です。あまりに奔放且つ女子に興味を持たない主人公であるため、お飾りヒロインになってしまっている報われないレナとルーシュの出会いを描きます。
ちなみに、この章外は見てなくても問題ない物語です。物語のバックボーンとして遊びを入れながら描いています。
別に公爵令嬢の婚約破棄とか必要ないし(笑)
本当は勇者クロードの物語を描きたいところですが、あまりにも濃い伏線過ぎて、これは章外で描くことが憚れるので書きません。いずれ本編で触れられるかもしれませんが、問題は私がそこまで書く元気があるかどうかという事でしょう。




