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勇者諜報員(仮)の黙示録  作者:
章外 イヴェール王国騒乱・前話
69/135

男爵令嬢の独り言

 クレマン王子の婚約者に収まった男爵令嬢のつぶやきです。

 おかしい!おかしい!おかしい!

 私は妃になって何もかもが自由になる予定だったのに!

 その為に多くの男達を袖にしてクレマン王子を選んだのよ!?

 なのに何でそのクレマン王子が今になって王太子に任命されないという状況が出来ているの!?皆、私こそが国母に相応しいって言っていたじゃない!?


 私は仲間や協力者達と上手くやって、クレマン王子を私のものにした。

 クレマン王子は何でも与えてくれた。欲しいものを訴えれば次期王太子の名の下に、絹の服も、宝石に散りばめられたネックレスも、黄金に輝くアクセサリーも、何もかも。


 最初に出会った時、クレマン王子は私を男爵令嬢と見下していた。

 でも少し肌を見せて誘惑すれば簡単にいう事を聞く様になった。

 彼は自分の婚約者に辟易としている事も分かった。王子である自分にああしろこうしろと意見をするらしく、小賢しい理屈を捏ね回して周りまで味方にするいやらしい女だそうだ。

 私も彼女の事は高校に入学して直に知る事になった。何せ学校で最も成績の良い優等生で、公爵家令嬢。しかもシャトーに匹敵する大都市セルプラージュを収めているサヴォワ家で、曽祖父は10代イヴェール国王と言う血筋です。

 彼女と最初に出会ったとき、こんな完璧な人間がいるのかと驚いたものだけど、私のような男爵令嬢など眼中に無い様子で非常に腹が立ちました。絶対に見返してやろうと彼女の悪評をばら撒き、周りの人間を削ぎ落とし、貶めてやろうと思っていた中です。

 王子は私にほれ込み、私はあの女を貶めて自分が妃になれるチャンスと確信して、周りの友達にも協力してもらって彼女を地面にひれ伏させたのです。

 追い詰めているにも関わらず、彼女は私の事なんて知らなかったと口にするのだから腹が立って仕方なかったのですが、地面に這いずり涙目の彼女を見下ろす事ほど、気持ちのよいことはありませんでいした。


 彼女を追い出して、私はクレマン様により貴族達に正式に正妻として発表してもらい、学校でも私は常に注目の的となりました。



 ですが、サヴォワ家は小癪な事に経済的には高く、貶めてやってにも関わらず、大貴族として周りに意見をしているようです。

 ならばと私はメルクール公爵様に進言したのです。

 その進言に大いに喜んだメルクール公爵様や王妃様は是非にと政治で取りあげてくださいました。

 サヴォワ領から王都にものを入れる時は通常の関税の十倍の額を掛け、税収も倍額に増やさせました。儲かっているのだからもっと寄越せといえば良いのです。

 サヴォワ領は貿易によって王国に品物を入れているから財を成しているというのは学校で習っているのですから、品物を入れても王国に売れなくすれば良いだけです。

 彼らが泣きついてくるのは目に見えてました。

 あのお高くとまったフランシーヌが、私に跪いて助けを請う姿を想像して、その日を待って学生の日々をすごしてました。

 ですがあの女は頑固な事に音沙汰がありません。



 学校を卒業して、私は正式にクレマン王子の正妻となり、派手な結婚式を挙げました。国王は病気で参加できなかったのですが、これで私も王族の一員という事です。

 ですがそれはめでたくもあります。国王が死ねば私はついに王妃になるのですから。


 しかし、何故でしょう。

 セルプラージュがつぶれるという話も無ければ、私が王妃になると言う話もありません。それどころか、周りも日増しに人が減っていくのです。


 いつものように取り巻きの友人達と共に街へとショッピングに繰り出しました。

 その時におかしなことが起こったのです。

「ちょっと店主。品揃えが悪くなっているんじゃないの?」

「全く、貴族御用達の高級店なのですからもう少しは整えていただきたいものですわ」

 文句を言う私の取り巻きたち。私も当然、商品が減っていて残念ですが、こんな所で文句を言って、評判を落としたくはないので涼しい顔で店を見ます。

「このダイヤの宝石のイヤリングとグランドシルクの服を3着、それにこのキラーフォックスの毛皮と…」

「あの、申し訳ございませんが、お代は現金でお願いできますでしょうか?」

 私は欲しいものを片っ端から注文をしていると、店主はおかしな事を言いました。

「現金?馬鹿な事を言わないでくれない?私は次期王妃よ。そんな金なんて持ち歩くわけが無いでしょう?」

「ですが100日以上も支払いが滞っているのです。高級ブランド店は皆そのような状況が続いております。申し難いのですが……クレマン殿下の名前では国庫は開かれないと噂が」

「馬鹿な事を言わないで!クレマン殿下は次期国王が決まっている方よ!王妃になる私の買い物を無視しようっていうの!?」

「いえ、代金さえいただければ……。ですが、クレマン殿下は既に12億ピースもの支払いが滞っていて、我等は商品の仕入れもままならない状況なのです」

「12億?馬鹿な事を言わないでくれない?あの程度の商品で12億もするはずが無いでしょう」

「冗談ではありません。とみに最近は商品の仕入れ値が5倍以上に跳ね上がっているのです。大陸外の最高級品はセルプラージュからしか入りませんが、関税額が高すぎて仕入れが厳しい状況になっているのはご存知無いのですか?陸路で入れようとするとニ級品が同じ額になってしまいます。シャトーにはもうセルプラージュにある最高級品は一切入らない状況にあります。当然でしょう?もっと安く大量に手に入れることが出来る商人に我々がかなう筈がありません…。しかも購入いただいた相手は支払いもしてくれないのですから」

「なっ」

 愚痴るように店主は口にする。

 まさかセルプラージュがそのような仕返しをしてくるとは思ってもいませんでした。

 これは早速、王太后様に話を通さねばなりません。




 王都にサヴォワ公爵を呼びつけて早速我々は、性根の捻じ曲がった彼に対して正当な家格でものを入れさせるように抗議をする事にしました。

「貴様、我々に対して嫌がらせをしているのは分かっているのだ。高級品を王都に回さず、貴族を笑いものにしようとしているとな!」

 どなりつけるクレマン様。私もサヴォワ公爵を睨みつけて圧力を掛けます。

 王太后様の視線も当然冷たいものです。

「そのような事はしておりません。間違いでは?」

 サヴォワ公爵は白々しく首を傾げる。

「バカをいうな!現にこうして我らは貴様らの領地から入ってきた商品にばかみたいな値段が掛けられて、シャトーの商店は立ち行かなくなっているのだぞ!」

「聞けば、セルプラージュから入って来ている商品が高くなって手に入らなくなっていると聞いていますよ。貴公が裏で手を回しているのは明確な証拠です。関税額を上げられた仕返しをしているのでしょう?」

 殿下も王太后様も証拠を明確に提示します。もはや彼も言い逃れが出来ない事でしょう。

「今、殿下たちが仰っていたではないですか。私はそもそも商人に対して大きい税を掛けてません。我が領地とシャトーの間にある関税を王国が上げているからでしょう?今まで、1万ピース相当の商品を2万ピースになるような関税額でしたが、今は10倍ほどになってます。つまり2万ピースが11万ピースの値段になっているのです。分かりますよね?」

「「???」」

 サヴォワ公爵の言葉に私は気付いてしまいました。

 騙されるまいと言う顔をしている殿下たちはわかっていないようですが。

「ですが、セルプラージュと他の港への仕入れ額を他国に高くさせているのではないのですか?」

 私は関税以外の問題を指摘します。

「そんな力は私にはありません。ダイヤクラブの幹部じゃあるまい。そもそも我が領は巨大な港があり、そこに大量の船が入って荷を降ろしてます。船は大きいほうが輸送する荷物を多く運べますので、輸送費は安くなります。輸送費はほとんどただになっている我が領と、輸送費に大きい金額の入っている領では価格が変わるのは当然でしょう?そもそも、なんで自分達でこうなるように仕向けていたのに私に文句を言うのか理解できません」

「ふざけるな!我々を欺こうとして小難しい事を言って逃げるつもりだろう!次期国王たる私に対して無礼な!国家反逆罪として処罰するぞ!」

 クレマン殿下は打破を狙って位を振りかざします。そう、彼こそが次期国王なのです。細かいことは下々が聞けば良いのですから。下々は言う通りにすべきなのです。

「次期国王?初耳ですね。国王様はまだ誰も任命していなかったと存じてますが」

「……だ、だが、私が最も高貴であるのだから当然であろう!あの侯爵家の腹から生まれたエリックなど論外よ!」

「そうであれば良いのですが。ここに来る途中、ネヴェルス公爵に会いましたが、どうもこのまま国王様が王位継承権を明確にせずに亡くなるようであれば、順番どおり長男が国王になると貴族会合で決まりつつあると聞いていますよ?」

「!…な、ふざけるな!」

「私に言われましても、私は貴族会合には……娘がこの界隈から追い出されてからは、全く出席していませんので何が起こっているかは知りませんから」

 サヴォワ公爵はしれっと口にする。

 いつの間にかエリック王子殿下が盛り返していたという事なのでしょうか?

「あの女が私に嫌がらせをしているのね!」

「あの女?」

 サヴォワ公爵が鋭く眼光を光らせ私を見ました。背筋が凍る思いをして口を閉ざすしかありませんでした。日和見と思っていましたが、やはり大領地の貴族という事でしょうか。

「何か勘違いしているようなのではっきりと仰いましょう。我々サヴォワは国王様のご意思に従います。国王様が指名した王位に従います。万一にも国王様が指名しないで次期国王選定という話になったならば、私達は貴族会議で決定した国王に従います。それまでは一切口出しはしませんよ」

「むっ」

「それと王太后様は存じていると思いますが……この国の序列では国王様の次が我ら公爵位であり、王族は尊重しても、私を呼びつけるような権利は一切ないのです。今回は目を瞑りますが、国王様の印璽もなく私を呼びつけるなど、国家の法では殿下達を監獄送りにしかねない無法です。お気をつけ下さい」

「!」

 サヴォワ公爵は最後に厳しく指摘して去って行きます。




 何でこのように酷い状況になっているのでしょう。私はあのいけ好かない優等生面した公爵令嬢を貶めて、次期王妃の座を手に入れたのに!

 そもそもクレマン様は頭が悪すぎるのです。

 最初は言う事を聞かせるにはちょろいと思ってましたが、あまりにも策謀に弱すぎです。

 私が通路を歩いていると、侍従たちの控え室から声が聞こえてきます。

「次の王陛下?こんな場所でそんな話をしていたら首が飛ぶわよ?」

「でも、宮廷じゃ第一王子派と第二王子派で真っ二つなのでしょう?どっちに付くかで貴族の方々は持ちきりと聞きますよ?」

「ええ。まあ、どっちがなっても国王様のように良い待遇は無いでしょうね。我々を見下してどちらもゴミのように扱うのですから」

「国王様の体調が戻れば…」

「そうね」

「でも、私は第2王子様が王太子になると聞いていたと思ってましたが、何で未だに決まっていないのですか?」

「バカね。今、この国で最も力があるのはサヴォワ公爵よ。国王様は頭を下げてクレマン殿下の婚約者にしたのじゃない。フランシーヌ様の聡明さは国王様もいたく買っていたのですから。フランシーヌ様が婚約者だったからクレマン殿下は王太子候補筆頭だったのですよ」

「それじゃ、フランシーヌ様の相手が王位に付くのであってお2人のどちらかという訳では無かったと?」

「ええ。国王様も失望なさってました。第一王子派が盛り返してしまうのは当然でしょうね。サヴォワ公爵はどちらの陣営にも付かないと言ってますが、第二王子派はサヴォワ公爵を切り捨ててますから。貴族の方々もそのまま第二王子派に付いている方々と、第二王子派に見切りをつけてしまっている方々とで別れてしまったんでしょうね」


 くだらない談笑をしていましたが、聞き捨てにならない話でした。

 フランシーヌの婚約者だったから第二王子が王太子候補筆頭だったというの?それでは私はあの女を蹴落とした意味は一体なんだって言うのよ!

 どうしてこうなったのでしょう?

 そろそろルーシュが恋しいので、次回、スコールの幼少期です。

 まあ、生まれて1年の子なので、どこの幼少期だって話ですけど。

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