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勇者諜報員(仮)の黙示録  作者:
章外 イヴェール王国騒乱・前話
68/135

公爵令嬢物語③

イヴェール王国編になりつつある番外編。たまにスコールを挟みつつ、まだまだ続きます。

第三章も徐々に形作っているので、これが終わる頃には本編再開できそうです。

 私が領地に帰ってから都市部を歩き回ってみますが、非常に賑わっていました。いつも通りといえばいつも通りですが。

 幼い頃は、よく、ラフィーラ教会のボランティアに参加させて貰ったり、セルプラージュに来たセイと城を抜け出して、二人で出かけ、街で様々な事件に首を突っ込んだりしたものです。


 さすが北の大陸最大都市ともよばれる父の領地は非常に栄えてます。恐らく王都よりも規模も賑わいも人も多いでしょう。

 これは父の手柄ではなく亡き曽祖父の手柄であり、非常に優秀な方と聞きます。その為、我がサヴォワ公爵家は、王族の血が多く入っています。亡き母は国王様の従妹にあたり、父と国王様は非常に仲が良かったそうです。

 私もクレマン王子の妻になるというよりは、国王様の娘になるというイメージが強かったのです。


 さて、我が領ですが、曽祖父の代に起こった大陸間戦争で莫大な借金を作ってしまったのですが、その借金を返すような案で領地を一気に太らせたのです。それが海軍の為に作った巨大港を、そのまま商業港へと転換したことです。

 ちなみに大陸間戦争とは、多国籍軍がイヴェール王国の肥沃な土地を奪う為に行なわれた戦争で、口実は我が国のラフィーラ教徒が多い為に、背信国家として侵略を開始した戦争です。

 この陸間戦争を救ってくれたのは、実は魔族だったと言われています。


 我が国の港には必ずと言って良いほど、海の守り神として我が国に飾ってある石像があります。その像には名前は無いのですが、皆は親愛を込めてレヴィアたん像と呼んでいます。

 本名がレヴィアでレヴィアたんと呼べと言っていたらしいからとか。幼女の姿なので本当にこのような魔族の方が国を救った英雄なのか真実は謎に包まれておりますが。当時の様子を見ていたご老人方はありがたそうに拝んでいるので嘘ではないそうです。

 ただ、独身中年男性が石像にレヴィアたんハアハアとかやってると正直怖いのでやめてほしいです、はい。


 閑話休題、大陸間戦争で膨大な港と船を軍事から商業へ転換した事で、シャトーを超える都市になったのですが、冒険者協会という組織を支配する世界最大商社ダイヤクラブと提携したからです。

 大陸間貿易において、東大陸と西大陸の間で物を動かすには、北の大陸東部と中央大陸を分断する海峡を経由しているので、非常に大陸東部は潤ってました。ですが、当然大陸西部にも貿易する場所はあります。魔導船が主流になりつつあり、海上貿易が盛んになったこの時代において、真っ先に巨大な貿易港を開いた事から、我が領は一気に潤いました。現在、人口は首都シャトーに負けますが、領民総生産は遥に越えています。


 活気のある港を私はポーラと一緒に歩いていました。港で多くの商品を購入して、ベビーカー程度の大きさの荷車を押している所、レヴィアたん像の上に、黒髪黒目で石像と同じ格好をした魔族が登っていました。

 私とポーラはあまりの様子に驚いて、つい振り向いてそれを凝視していました。

 丁度、その黒髪の幼女と目がバチリとあってしまったのです。コスプレという奴でしょうか?有名な人物の服装をして、その人物になりきると言う。

「魔公★女王!レヴィアたん!参上!…なのじゃ」

 石像どおりに背中に翼を生やしパタパタと空を飛んで私達の前に綺麗に着地をしました。

「ええと……コスプレ的な?」

「お嬢様いけません、このような怪しい者!」

 私は好奇心に駆られて近寄ろうとするのですが、ポーラは慌てて私と自称レヴィアたんの間に入ってきました。

「オジョーサマ?くんくん、くんくん、お主、もしかしてバルザックの子孫か?微妙に同じ臭いがするのじゃ」

「!」

 なんと臭いで私が曽祖父である偉大なるバルザック元公爵閣下の子孫と見抜いたのでしょうか?だとするとこの方は嗅覚に優れているのでしょうか?

 私が悩んでいると彼女は何かに察したようで言葉を付け加えてくれる。

「すまぬすまぬ。別に臭いと言っても嗅覚的な臭いではないぞ?我は獣人じゃない故、そんな臭いで何かが分かるほどの鼻は持ち合わせておらぬ」

「臭いを嗅いでませんでした?」

 微妙にいぶかしむ顔でポーラが武器を構えたまま訊ねる。この子、いつの間に短剣なんて持っていたのだろうかと私もビックリしていた。一瞬、スカートがめくりあがって下着がちらりとみえたのですが、太ももにでも括りつけていたのでしょうか?難に影響を受けたのか問いただしたいところです。

「様式美と言う奴じゃな。許せ、人の子よ。そも、我が最後にバルザックと会ったのは、奴が加齢臭たっぷりの頃じゃ。お主のようにラベンダーの良い香りはせぬ。所でその香水はどこで手に入れたのじゃ?良い香りじゃの」

「これは港で購入したものです。貿易港なので偶にこういった良いものが手に入って、取り寄せているのです」

「そうかぁ。実は妹のような子に息子が出来たのじゃがの、これがまた凄く可愛いのじゃ。少々おバカじゃが賢くての。ルシフォーン4世の頭をとってルー君と呼んでおるのじゃ」

 レヴィアたんは自慢する様に語るのだが、ルシフォーン4世って、それは魔王では?という突込みをしてはいけないのでしょうか。ですが、親戚のお子さん自慢をするようなはしゃぎっぷりは、それに水を差すようで、言葉に窮してしまいます。

 ポーラも同じような顔をしています。まだ短剣を構えて警戒しているようですが。

「ところでご自分の像の上に乗るのはどうかと思うのですが?」

「おお、そうじゃった。いや何、どうもさっきから魔力をこの我の像につけて縄張りを主張しておるのじゃが、こちらに近付くモンスターの気配があっての。まあ、どうでも良いか。それでルー君の事じゃが」

「ルー君ですか。その子はいくつなのですか?」

 どう見てもお子様な幼女が子供扱いする子供とは一体何歳なのかと疑問に思う。

「もう4歳にもなるのじゃがな、とても素直で優しい子じゃ。ただのう、強すぎる魔力ゆえ母親を殺し兼ねないから中々母親に会えずとても寂しそうじゃったのじゃ。で、今、お主の匂いを嗅いで気付いたのじゃが、らべんだあという花をルー君の母親は愛でており、部屋にはその臭いがするのじゃ。エルフの娘が持ち込んだ花を毎日世話しているそうなのじゃ。で、その香水を譲ってほしいのじゃ。母親の臭いだと教えてやればきっと喜ぶじゃろう、そうじゃろう」

 自称レヴィアたんの幼女はピョコピョコ跳ねながらお願いをしてくる。

「……お母様は会えないのですか?」

「ふむ、もう1つ問題があるのは、ルー君と同時期に生まれた女の子は非常に死に易い体で生まれてしまったので、ルー君の母はその女の子に魔力を供給する役目があるのじゃ。対してルー君はその子と接すると間違えて殺し兼ねないのじゃ。ルー君はまだ己の持つ莫大な魔力を制御出来ていない故。ままなら無いのじゃ」

「親と子供が引き裂かれるのは確かに可哀想な話ですね」

 私も幼い頃に母が亡くなってしまったので、母に会えない気持ちは凄くわかります。

「そうじゃろう」

「では、この小瓶を差し上げましょう。実は先程、購入した中にあったのですが、貴女に差し上げます」

 私は自分の荷から香水の小瓶を取り出す。

「本当か!?おいくらじゃ?手持ちの金は……人間の金はこれしか無いのじゃが足りるか?」

 自称レヴィアたんは黒いローブの中に手を突っ込んでお金を取り出そうとするのですが…100年前に作られたような大金貨、1枚で公務員の月給分です。何ていうか突っ込みどころ満載な幼女でした。何でそんなレアな金貨を持っているのか、そんな大金はさすがに頂けないという事なのですが…。

「あの、では、これはお近付きの印と言う事でプレゼントしますので、お金は結構ですよ」

「おおー、太っ腹じゃな。……ふふふふ、さっきまで東の大陸に渡って人間達に剣だの槍だので追い回されながらも、どうにかこうにか同胞を連れてこの大陸に逃げてきたと思えば、同じ人間にこんな優しくされると涙が出そうなのじゃ」

 自称レヴィアたんは本当に感激したようで目元をローブの袖で拭く。どこまでこの人の言っている事が真実なのか本当に分からないが、悪い人では無さそうなので、土産として従者たちに上げる予定でしたが、申し訳ないけど我慢してもらおうと思います。


 そんな中、港の方から騒ぎが起こりました。

「大変だ!あんたら、直に避難しろ!丘の高台へ急げ!シーサーペントが襲ってきたぞ!」

「どうも海流にのった鰯の群を追っかけてきたみたいだ!」

「やばい!」

「港の船はもう諦めろ!」

 港の方で大きい騒ぎが起こり、持てるものだけを持って屈強な海の男達が慌てて港から丘の方へと走り出す。

 私とポーラはほぼ同時に海のほうを見ると、海の方から巨大な水飛沫を上げてでっかいドラゴンの背びれが近づいてくるのが分かる。

「ポーラ!逃げましょう!」

「は、はい!」

 慌てて逃げようとするが、さすがに荷車を押して陸へと続く階段の坂道を登るのは厳しかった。

「荷物は構わないわ!命あってのものだねよ!」

「で、ですが!」

「いいから早く!シーサーペントの襲撃は10年の1度はある話なのだから、海の街に生まれた人間は何をおいても諦めるのは仕方ないのよ!」

 私は従者として荷物も持って逃げようとするポーラを叱り飛ばして手を引っ張って逃げる事を訴える。ポーラは職務熱心なのだが、彼女の代わりはいないので、荷物なんかの為に死なれては困るのだ。荷物は金で買えても、人の命は金で買えないのだから。

 私は避難誘導を手伝いながら皆を逃がすように声を掛けます。


「まったく、運の悪い奴よの。基本的に我は人間とモンスターの争いには介入する積もりは無いのじゃが……まあ、よかろう。香水を貰った礼じゃな。我がここは助けてやろうぞ」

 自称レヴィアたんは翼を広げて空を飛んで水しぶきの方へと飛んで行く。

 まさかあの翼で本当に飛ぶとは思っていなかったので、私は心からビックリしました。

 空を飛ぶ魔族なんていたっけ?

 蝙蝠系獣人は聞いた事がないなぁなどと考えていると、そこからもっと驚く事が起こりました。



 自称レヴィアたんが手を掲げると水の精霊が実体化し、海に巨大な渦が巻き起こりました。

 さらに渦は巨大化し、竜巻のようになって空へと巻き上がっていき、それに巻き込まれるようにシーサーペントの巨体が空に浮かび上がり、それは濡れた服の水気を絞るかのように渦によってシーサーペントが絞り潰されたのです。


 海から来る天災とも呼ばれるモンスターが数秒で死体となって海の藻屑となって行くのでした。


「では、香水の件はありがとうなのじゃ。それではさらばじゃー」

 嬉しそうに去っていくレヴィアたん。

 どうやら彼女は間違い無く大陸間戦争の英雄レヴィアたん像の元となった魔族ご当人だったようです。というか、多国籍軍の艦隊を沈めたと言う伝説は、あのくらいでなければ作れないでしょう。伝説の人に


「世の中は不思議な事があるんですね」

「伝説を垣間見てしまったわ。ラベンダーの香水1つで、多くの人民の命と領地の港が救われるなんてね」

 ポーラと私はポカーンと彼女の去っていった先を見送ってぼやく。

「確かにあの像はどうやら海の守り神という点はたしかだったみたいね」

 以降、この領地では守り神様が助けてくれたと拝んでいる領民だけでなく、貿易商人達も拝んでいくようになりました。

 他大陸の人たちはアンチ魔族の神聖教団信仰が多かったと思っていたのですが、彼女を拝むのはありなのでしょうか?

サブストーリーにサブストーリーを挟んでいます。

その内、番外編の話の順番は整理しようかと思います。

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