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勇者諜報員(仮)の黙示録  作者:
第2章 イヴェール王国騒乱
55/135

勇者が諜報員

 続けてクロード周りの物語です。

 アレッサンドロとクロードの2人は王都シャトーへと、街道を使わずに海から船を使って戻っていた。


 小さい沿岸で釣りをやる際に使われるような小舟、もしくはボートとでも言うべき乗り物にのって、街道を使って連行されるセドリックよりも早く到着する速度で、王都へ進んでいた。ボートの後方には小型魔導機関がついており、鳥の羽のような形をした6枚の金属板が円形になる様に取り付いており、それをグルグルと水中内でまわす事で推進力を得ていた。

「魔導船ってこういうシステムなんですね」

「このスクリューと呼ばれる羽の形状はまだまだ進化の余地があるんだがな。俺のいた都市ではこの船によって西の大陸のさらなる西の果てへ行き、新大陸を探そうという者もいた」

「滅ぼされた…んですよね?フトゥーロ……でしたっけ」

「ああ………天界によって俺は家族も仲間も全て滅ぼされた。ただ空に憧れ、飛行艇を仲間達と共に作りたかっただけなのに。いつか俺は絶対に自由な空を手に入れる。天界が邪魔するなら、丁度いい、あの傲慢な天を落とす」

 恨み辛みを隠そうともせず、アレッサンドロは空を睨みつける。

 この位、憎しみを表に出せるほど強ければ、クロードも勇者と言う肩書きを受け入れて戦場へと向かえただろう。だがそんな精神力を持ち合わせてなどいない。人を斬った事さえ無いのだから。

「焼け出された俺を拾ったのがセイだ。残念ながら、奴には命の3つや4つくらいの恩義があってな。嫌な話だが、恩の1つも返さないで死なれると非常に目覚めが悪い」

「余裕ありそうでしたけど」

「余裕はあろうが、あいつはいつもあんな調子だったからなぁ。ただ、……今回は切羽詰っている状況だとは思う。オリハルコン時代はそういう厄介事は裏方で始末して、なんで敵が自滅したんだろう?っていうようなことを何度となくやって来ていたからな。基本対等な戦いで始まるが、宗教での攻撃ってのは想定外だったかもな。魔族も同胞としているラフィーラ教を使って魔族迫害政策を堂々とやってくるなんて思ってもいなかっただろう」

「神託が怪しいと思うんですけど」

「さあ、俺はラフィーラ教じゃなくて無宗教だからな」

 アレッサンドロはケラケラ笑って語る。

「無宗教?」

「神をよりどころにしないって所だ。そも、天界に家を焼かれた俺が神を崇めると思ってんのか?」

「あ、そうか」

 アレッサンドロの言葉に、説得力を感じたクロードは頷く。

「というか西の大陸の半数は無宗教と自然主義というか精霊信仰だ。北の方は神聖教団が強いがそこまで魔族排他主義を持つ国は少なく、ラフィーラ教に近い考え方の西方教会ってのがあって、東の大陸にある神聖教団と分けて考えてる」

「それは初耳です。神聖教団は世界最大宗教で、皆似たり寄ったりだと」

「意外とそうでもない」

「誤解がこじれてる感じなんでしょうか?北の大陸は他大陸の事情に疎いですし」

「それはあるだろうな。特に大陸の外に出ない宗教関係者や山奥の貴族達はそういう事に疎いそうだ」

 アレッサンドロは説明をする。



 2人が魔導船を降りると、まずは冒険者の館へと向かう。情報収集する必要があったからだ。

 聖白星騎士団と名乗っていた連中はここにもたくさんいて、次々と魔族を連行しているようだった。それは2人がこの街に戻ってからも頻繁に目撃したので確かな事である。

 反抗した事により殺されている人もいるらしく、恐怖によって歯向かう事も出来ずにいる…というのがこの街の状況だと知ったのは冒険者の館で聞いた話である。


 冒険者の館にて作戦会議をする事になるのだった。

「さて、今度のミッションはどうするかというと…まず…タイラントをお前がひきつけて」

「いや、あの、話が随分昔に戻ってますよ?」

 ちなみに、随分昔の時は、タイラントではなく蜥蜴という事で、話を進めていたのだが。

「冗談だよ。何でもお前は魔法無効化能力があるそうだな。ならば良い盾になる。タイラントのような物理攻撃特化のモンスターではなく宮廷魔導士と戦う際には是非とも盾の変わりに…」

「なりませんよ。それとウチの国は宮廷魔導士の多くが魔族だったと記憶しているので、戦う機会さえないと思いますよ、今回の事態では」

「ちっ役に立たない奴だ」

「大体、何をするつもりだったんですか?アルサンドロさんは」

「貴族派と国王派の戦いで、貴族派は神託を使って国王を貶めてきた。恐らく貴族派は神託を捏造している。だが、神託のうそと言う証拠は出ないだろう。だが貴族が国王簒奪する為に手を組んでいるのは分かっている。恐らくだがコルベール伯爵家、メルクール公爵家、あるいはメルクール公爵の妹である皇太后の手元に、貴族達の血判状があるはずだ。神託はどうあれ、国王の退陣は貴族達の謀だという明確な証拠を手にすれば良い。いや、国民が怪しむ程度のものがあれば、簡単には国王を裁けなくなる。魔族を保護していたのは国王だが、そもそもそれは国民全体でやっていた事なのだから、国王に全ての罪を押し付けてしらばっくれようとしているのはおかしいだろう」

「なるほど。つまり神託は覆せなくても、国王様の無罪を晴らせば、いくらでも反撃ができるって訳ですね?」

「例えば、貴族達は神託の前に兵を集めていたらしいからな。神託と同時に国王の手勢である軍務卿を押さえ込んでることは一目瞭然だ。ならば必ず、神託と言う予測のつかないものに対して、あたかも予測をつけて動いていた証拠がたくさんあるはずなんだ。手早すぎるだろう、いくらなんでも」

「確かに、あんな白い甲冑の騎士団なんて見たことないです。ラフィーラ教における神聖な白を指し示すから軍隊が使う事を好ましくないと教会は言ってましたし」

「なるほど。ともなれば神託の前に白い甲冑を発注しているという証拠だって十分に疑惑の種になる訳だ」

「あ」

「言い訳なんて後付だろうが、国民に不信感を与えれば簡単に裁けないはずだろう」

 アレッサンドロは説明を続ける。

「ただ、その…そういうのを無視して国王様を殺してしまった場合は?」

「国が滅びるだけだろうな。そこまでバカとは思えないが…。この国はセイが施した教育制度によって、識字率は高いし、計算も出来る。そういう民は、悪徳な連中を許す国民性はないし、ここで一緒に仕事をして実感している。だから、悪徳貴族を許すような国民性はないんじゃないか?セイはこの国では人気もあったようだし」

「でも、この国の人気はラフィーラ教ですよ。何だかんだ言っても、ラフィーラ様の神託を預かる預言者様が最も人気が高いですし。120年前くらいに、ラフィーラ教の神聖教団化運動がされた際に、当時のイヴェール国王がユグドラシル自治区の預言者に対してへ軍を差し向けようとしたら民衆の暴動にあって、軍はシャトーの街の外にも出れず、民衆に押されて多くの貴族が国王を辞めさせるように訴えたという過去があったくらいです」

「なるほど。むしろ、今、セドリックがそういう状況にあるという事か。確かにそれはまずいな」

「ただ、結構無理やり感があるので、当時ほどには民衆にそういう思いは無さそうに感じますが」

「それには同感だ。つまりまだ情勢は引っ繰り返せる可能性はあるという事だろう。問題は神託を引っ繰り返せるかどうかって所か。手っ取り早いのは預言者が否定してくれる事だが」

 田舎育ちでもラフィーラ教を信仰する勇者の言葉には、一定の説得力は存在していた。

「それはないと思います」

「は?」

「この神託に僕が首を傾げてたのはそれですから。多分この国の民衆も首を傾げてたと思います。信託が変な方向で解釈されたんじゃないかって。かつてこれまで、神託が政治に絡んだことはありませんから。預言者様はラフィーラ教会の教祖であっても、政治的な関与をした事がないんです。国がどんな状況であろうと、国がラフィーラ教を棄てようと、一切関与しません。今回の事も多分関与しないかと」

 クロードはラフィーラ教の教徒であるから、ラフィーラ教を知らないアレッサンドロに対して懇切丁寧に説明をする。

「……なるほどな。っていうか、関与しないからラフィーラ教が廃れたんじゃねえのか?」

「そうですね」

 そんな押し付けがましくない、奥ゆかしいラフィーラ神がこの国民の気質にあっていただけなのだが、強制されないと人間と言うのは話を聞いたりはしないものである。

「まあ、無宗教の俺からすれば……信仰自体が阿呆らしいと思ってしまうがな」

「そもそも預言者様はラフィーラ様の教え、つまり皆仲良くしましょうという言葉さえ伝われば別に他の神を信奉していても、一切問いませんし」

「ふーん。だけど…ラフィーラは天界にいるのだろう?」

「…………」

 アレッサンドロの言葉は、俺は天界の神などとは仲良く出来ない、という意味を含められた言葉によって、クロードも頷かざるを得なかった。

「城の中は王のものだ。証拠を城の中には隠さないだろう。中を見せろといわれたらその時点でアウトだし」

「後宮は?メルクール公爵の妹君はたしか皇太后なので、そういう…」

「女だらけの後宮へ忍び込む。男のロマンではあるが、俺にはちょっと荷が重いな。あとでばれたら同僚に『不潔』とゴミ虫のような目でにらまれてしまいそうだが」

 アレッサンドロの言葉に、クロードはアレッサンドロの相棒であるロセッラも苦労しているのだなぁ、と納得する。

「大体、男なら娼館くらい行くものだろう。会社の接待でクラブや女の子のいるバーなどに行くものだ。なのに、それだけで酷い扱いを受けるんだぞ」

 アレッサンドロの愚痴が始まってしまった。

 後宮に忍び込むのは無しの方向らしい。それ所ではないはずなのだが、クロードも本気で口にしたつもりはない。

「コルベール伯爵邸、大聖堂のコルベール枢機卿の私室、メルクール公爵邸といった所だな。さすがにメルクール公爵領まで駆け足で戻ってくる頃には何もかも終わってる可能性があるから今回はパスだ。何でもいいから貴族の足を引っ張れるものが見つかればいい」

「どういう算段で進めるんですか?」

「今日は情報収集、明日は外部からの観察とルートの確認、本格的に入るのは明後日だな」

「夜じゃないんですか?」

「夜より昼だ。何故かって言えば、夜は公爵が自分の護衛をつれて戻ってくる。怪しい場所は昼の方が空いてるし、護衛も少ないんだよ。夜は確かに寝ている人間が多いが、静かだから音がすると護衛に気付かれる。偉い人の家は、偉い人のいない昼の方が警備が杜撰なんだよ」

 夜に忍び込む怪盗というのは、クロードも小さい頃に呼んだ絵物語では定番であった。移動中にレナが読んでいた怪盗バエラス少年は自分も読んだ口である。

「何だか怪盗物語の情緒をぶち破りますよね」

「別に俺はバエラス少年ではないからな」

「一応、フィクションでお兄さんだか弟が存在する真のバエラス少年が実在してたりするんですが」

「そういえば、そんなのもいたなぁ」

 アレッサンドロもルーシュのことを思い出して苦笑を見せる。バエラス少年は有名な絵物語なので、バエラスの孫といわれたら世界的に彼を差す。冒険者でも魔族の中ではバエラスの子孫を自称する者もいて、バエラス3世を名乗る魔族が幾人か存在するのだ。本家本元はいい迷惑だろう。

 まさかルーシュも連行されているのではなかろうかと、クロードは魔族が連行されている姿を見て思い出す。




 翌日、クロードとアレッサンドロは移動中に、近くで悲鳴が上がる。聖白星騎士団が無理やり魔族を連れて行こうとし、それに反抗する男が刃によって斬られて倒れたのだった。

「魔族を庇う者は全て背教者である!これ以上の邪魔をするなら貴様も破門される事になるぞ!」

 聖白星騎士団の兵士は怒鳴りながら、斬って倒れた相手に言い放ち、救いを請う魔族を引き摺る様に去っていく。

 血塗れになって倒れている相手に誰も手を貸せずにいた。

 だが助けようにも、手を貸したら自分も背信者になるんじゃないかと手を出せずに街の人々は誰も彼もが困り果てていた。

 さすがにクロードとアレッサンドロはその恐ろしい状況を目撃して、恐怖を抱かざるを得なかった。この国はどこへ行くのか、王妃の心配が、国王の危機が、もはや現実として見えてきている。平和だった国が傾いてしまうのではないかと言う懸念は国外にいたアレッサンドロにはより顕著に見えているだろう。

「くっ」

 クロードはポケットにあったポーションを取り出す。深い傷だが、ポーションであれば命はつなげるだろうと駆け寄ろうとする。

 だがさらに何やらバタバタバタバタと走ってくる一団が存在した。


 クロードが駆け寄ろうとした先の倒れている男に魔族の少年が駆け寄る。

「あああ、また、倒れてる。この町は怪我人が多すぎるよぉ!何が起きてるのおおおおおっ!」

 嘆きの声を共に少年は怪我人に手を当てると暖かな光が輝き、青年の怪我が一瞬で治る。

 すると背後から凄まじい人数の足音が聞こえてくる。

「って、ぎゃあああああああああっ!まだ追って来てる!もう、なんなのさあ!」

 魔族の少年は泣き言を言って、道の隅に倒れていた男をどけると、慌てて逃げ出す。そう、少年の背後からは10人以上もの白い甲冑の騎士達が追いかけてきていたのだ。甲冑を着ているので、追いつかれる様子もなく、ルーシュは走って逃げているようだ。

「る、ルーシュ、まだ連行されていないのは分かったけど、追い回されてたんだ」

 クロードは引き攣ってルーシュの去る姿を見送る。

 街の人達は去って行くルーシュの背中に両手を合わせて祈っていた。

「なんだろうな。無辜の民を傷つける騎士団がラフィーラ教公認の騎士団で、人助けをして逃げ回る魔族が背教者なのか。面白い宗教だな」

「やっぱり…神託なんて関係ない。正しいことは正しくあるべきだ」

「セイは出来ればそれを国民から言って欲しいんだろうな。そうすればあいつは積極的に王として動くだろう。だが、王と傭兵団の統率者とでは別物だ。契約で従わせる訳には行かない。それが、まあ、法律なんだろうが、その法律も貴族が邪魔で上手く整備できてないらしいし」

「あんだけ好き勝手やってても、王様となると大変なんでしょうね」

「ぶっちゃけ、随分老けたとは思ったがな。昔はあんな落ち着いて無かったぜ。悪の支配者って面で何もかも手に入れられるのが当然って奴だった」

 今でもあの聖白星騎士団に捕まった王様が、悪の支配者って面に見えるのは気のせいだろうか、とクロードは思うがそれは口にしなかった。

「それにしても……追われるのが分かってて外に出るなんてバカなのか、あの魔族は」

「ルーシュは基本、ちょっと残念な子なので。まあ、良いじゃないですか、ランニングは健康的で」

 聖白星騎士団も、まさか自分達の追っている魔族が、その気になったら一瞬で王都を灰に出来るような魔族だとは思ってないだろう。




 ルーシュが消えると、再び2人は貴族街のメルクール邸の周りを見回しどこから侵入するかなどを実際の場所を確認しながら調査する。大きい壁で中は見えないが、貴族街にある背の高い教会の上に登って、メルクール公爵邸の外環を観察する。冒険者の館の裏ルートで手に入れた公爵邸の見取り図から侵入経路を打ち合わせる。

 打ち合わせるといっても、アレッサンドロが一方的に意見を言って、クロードは追従するというだけであるが。


 クロードとアレッサンドロは、一日掛けてメルクール邸の周りを何度も歩いて、高い公共施設に登って上から覗き込み、手に入れた見取り図を確認して、どこに何が配置しているか等をくまなく推測を含めて調べる。アレッサンドロがかつてオリハルコン時代に斥候をしていたと聞くが、これは斥候と言うよりも諜報である。

「こんな事が傭兵業に必要なんですか?」

「オリハルコンは傭兵だが、軍よりも遥かに頭のいい指揮官を持ってたからな。特にセイのやり口は悪辣だ。俺は斥候というのは名ばかりで暗部といった方が分かりやすい立場だった。アイツの汚いやり口にとことん付き合わされたからな。こういうのはむしろ専門だ。俺は幼い頃から技術者として生きてきたが、こっちの方が向いているなんて言われていた程だ」

「へえ…」

 何でもやらされていたんだなぁとクロードは感じ取る。

「なあ、クロード、戦争が起こった際にどうなれば勝利だと思う?」

 アレッサンドロの質問にクロードは首を傾げる。そもそも戦争のほとんどない国に、戦争を全く関与しない山奥育ちのクロードには知る由も無かった。

「ちゃんと勝利条件があるんだよ。セイは傭兵団の指導者の癖に、そこら辺を理解している。受けた依頼をまともにこなさない。戦うのではなく、その先にある目的を奪い取るのさ。あの悪辣な男に散々仕込まれたからな。そうして考える事で、次の指揮官はセイのように悪辣な奴が上に上がってくる」

「その悪辣なのがウチの王様なのですが」

 クロードとしてはあまり悪辣を連呼しないで欲しかった。気持ちは分かるが。

「そ。で、今回の勝利条件は非常に難しいと思っている」

「どうしてですか?」

「バカ。国民が神託に踊らされてるんだぞ。国王様が国民を皆殺しにして勝利な訳ないだろうが。だからアイツは戦いって選択を一切取らなかったんだろうが」

「そうか。でも、勝利条件が…あ」

 クロードは話していてやっと気付く。勝利条件は国民の意思がどこに向くかで決まるのだと理解する。つまり国民が背教者である国王を見殺しにしたら負けで、彼ら貴族に対して不審を抱けば勝利になる。

 だからセドリックは戦をせず国民が愚かでない事を信じて逮捕されたのだ。いざとなったら逃亡する手筈を整え、負けないように貴族に不審を持たせるような手段を根回していたのだ。

「普通の王様なら普通に戦争しちゃいそうですね」

「勝っても神敵だ。国を追い出された状態で、新しい国王とそれを支持する国民と戦争なんて狂気の沙汰だ。アイツはそこら辺を最初から分かっていた。エンジニアの俺から見ても、あいつの頭は天才的としか言いようがない。」

「………」

 クロードは流石に絶句する。

「それにしても…逃亡用のボートを作ったは良いが、結局こっちに運ぶのは俺の仕事。試し乗りまでさせられた。本当にむかつく奴だ」

 アレッサンドロはセドリックの愚痴ばかりを言うのだが、当人は気付いているのだろうか?半分くらいは賞賛しているという事実に。


 だが2人が調査を進める中で、メルクール邸の中を外からのぞいて間取りを把握していたクロードだが、そこで不思議さを感じる。

「そういえば、マリーがあの家の中にいない」

「何?幼女を外から覗く趣味でもあったのか?」

 アレッサンドロは露骨に距離を取って、汚い物でも見るような視線を向けてくる。

「ないですよ!ただ、あの家にいるはずで、あの家の中を何度も覗いていて、多くの使用人や人間が出入りしているのを見ているのに、マリーが見かけられないんです」

 クロードは慌てて訴える。

 クロードは基本的お淑やかでスタイルに選り好みが多少はあり、幼女は趣味の範疇にない。何せレナの胸元に視線が移動してしまうような男である。

「地下の倉庫か何かじゃないか?牢屋みたいのもあるらしいし」

「…ち、小さい子供ですよ!?それを牢屋なんか…」

「だんだん、気付いてきたが、お前は山奥の農村にいたが、良い所に住んでいたんだな」

「良い所?」

「妾にうませたガキが邪魔だから監禁してんだろ?殺されていないだけマシだろうが」

「!」

 アレッサンドロの言葉に、クロードは暗い感情が腹の奥から沸き立つ。

 そう、最初から分かっていたはずだ。どこかで目をそらしていた。メルクール公爵はマリーを引き取る際にこう言ったのだ。

 そこのそれ、と。

 娘に掛ける言葉ではない。クロードはその時、珍しくルーシュからも苛立ちを感じたように見えた。以降、ルーシュは公爵らをヒキガエル呼ばわりしたままだ。

「あの、マリーを助けるのは…」

「騒ぎになる。それは無理だ。事が終われば開放できるさ。一日でも早く開放できるように頑張るしかないだろうな」

「はい」

 クロードは一度会っただけのメルクール公爵という男がとても腹立たしかった。


 だがその日の昼頃、街の中に一斉にあちこちに立て札が聖白星騎士団に立てられていくのを見る。


 明日正午、刻の音と同時に、南方大広場にて魔族一同を火刑に処す


 立て札に書かれていた言葉は魔族への処刑宣告だった。

 ルーシュもアレッサンドロに弟子入りした方が良いのでは?

 そんな一幕でした。そして今度は勇者は盗賊へ転身します。ルーシュよりも勇者の方が諜報員っぽい事になっています。

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