王様は捕まった
ルーシュは白い甲冑の騎士団に追いまわされていた。どうにかしようと町に出るが、街に出ると傷ついている人がたくさんいるのである。傷ついた人々を見捨てられないルーシュは、光の魔法で治しているのだが、やはり次から次へと白い甲冑の騎士団が現れて追いかけてくる。
結局、ルーシュは逃げて回復して逃げてを何度となく繰り返し続ける為に、毎日のように走り回る事になり、目的を見失い、何も出来ないでいた。
そのような理由で、ルーシュが健康的にランニングをしている頃、国王セドリック、勇者クロード、連れの技師アレッサンドロとロセッラらはサヴォワ領セルプラージュに辿り着いていた。
国内最大の都市セルプラージュは港町を大きく発展させており、見かけない商品群が並び、多くの人間が行き交っている。上品な雰囲気のシャトーとは逆に、活気がよく人が多い印象を受ける。
とはいえ、勇者は暇でも外に出かけさせてもらえないので、都市に入った間だけであり、都市の様子を見れたのは、入った時以来であったが。一人でプラプラと公爵邸の中に軟禁されているような状況である。
セドリックも国王で忙しそうなのだが、仕事の無い間はクロードの修行に付き合っていた。
その為、城内にある軍隊の練習場で、サヴォワ公爵軍に混ざって修行をさせてもらったりしている。そして何故か当然のように国王陛下も混ざっていた。
そんなわけで、クロードはセドリックと戦闘訓練と称した手合わせをしていた。
「つああああああああっ」
クロードは走ってセドリックへと木剣をもって襲い掛かる。
セドリックを剣で斬り付けたと思うのだが、全く感触が無くすり抜ける。振り終わると既に首元に、背後から伸びている木剣の刃先がクロードの首筋に突きつけられていた。
「なってないな。アレッサンドロに少しは手解きしてもらったんだろ?」
だがその戦闘訓練を横で見ていた軍人達も目を擦って、セドリックの姿を確認する。
「魔力運用方法ですが……才能が無いって言われました…」
「才能なんてものはやりこんだ奴が言う台詞だろ。魔力運用は魔力の大小で強度は大きく変わらない。スムーズに動かさないと固まってるだけの壁だ。平民は魔力が低く、幼い頃から魔法訓練をしていないし、魔力が貴族より少々低いから下手なのは仕方ない事だ」
セドリックはもう一度掛かって来いと木剣で促し、全く構える様子を見せずにクロードが攻撃するように促す。クロードは剣を打ち込むが、セドリックはそれを軽く受け流して首を触れる程度に木剣を掠らせて再び距離を取る。
クロードには既に死んでいるんだぞと示すような鮮やかな剣術である。
周りの軍人達もセドリックの流れるような華麗な動きに感嘆の声を漏らす。
クロードは何度も打ち込むが、セドリックはまるで柳のように叩かれてもフワリと受け流し剣を軽くいなしていた。
「貴族は大体魔族程度の魔力がある。だが一般人でも魔力は鍛えれば高くなる。宮廷魔導士達の魔力が高いのはその為だ。つまり一般人でも鍛えれば魔族より高い魔力になる」
セドリックは打ち込んでくるクロードを軽くいなしながら教える。
クロードは何度攻撃してもセドリックには全く攻撃が当たらず、やがて足をもつれさせて地面に自分から倒れてしまう。
「疲れるって事は魔力を体に上手く流せてないってことだな」
「ど、どういう事ですか?」
「どういう訳かお前は魔力が高い。だが魔力運用に関しては下手すぎる。まあ、不器用な奴の典型だな。1つの動きをする分には上手くできるが、他の動作と一緒にすると途端に下手になる奴がいるだろう。お前はそんな不器用なタイプだ」
「うっ」
セドリックの指摘にクロードは激しく引き攣る。
「西の大陸で出会った戦士に、普段は立てない病弱な男だが、魔力を手足に流す事で、凄まじい身体能力を発揮する男がいた。つまり魔力運用が完璧ならば、力を使わずに体を動かせるのだ。系統外魔法に傀儡<マリオネット>があっただろう。あれがまさに他人の体を魔力で乗っ取る魔法だ。この魔法の対抗策は魔力操作によって解放が可能で、そこに魔力差は大きく関係しない。人の体に流す魔力量はある程度限界があるからな。つまり、頑張れば出来るレベルと言うのが存在していて、お前はそこまで頑張って無いのだから、才能を語る以前の問題という事だ」
倒れているクロードにビシッと木剣を鼻面に差して言う。
「つまり、頑張ればルーシュみたいに強くなれると」
「いや、ありゃ、別格だろ。魔公ってのは魔神を食って神の力を頂いた種族だという話だ。あれは半神半人という領域の化物だ。生身で勝つとか無理だろ」
セドリックは呆れるように突っ込む。
「俺も昔、魔公って奴を見た事はあるが、あれは人知を超えている。魔力に関して言えば、努力でどうにかなるものじゃない。無論、奴らも人である事に変わりはないから、心臓を潰せば死ぬだろう。つまり近付いて刺せば勝てる。どんな生物でも同じ事が言えるだろう」
「……」
クロードはなるほどと納得してしまう。
「よし、次来い、次」
とはいえ、毎日のようにクロードはセドリックへ打ち込みをしているのだが、簡単に跳ね返されて地面に転がされる。恐ろしく剣術に長けているのだ。セドリックがアレッサンドロの師匠だったというのも頷けるものがある。
結局、小突き回されてこの日も終わる。一撃たりとも与える事が出来なかったのだ。
「アレッサンドロさんよりも強いんですか、やっぱり」
「あいつはある意味で特別だからなぁ。あいつは一種の化物だ。俺の方が強いだろうがやり方次第ではどうにでもなる程度の差だな。お前は200年前の英雄五傑を知ってるか?」
「英雄…勇者クラウディウス、西方皇帝アレックス、神聖教主アウロラと雷の巫女イザベラの姉妹、それに獣王キングスレイでしょうか?」
正確には預言を受けた勇者クラウディウスは、預言者の命を受けてアウロラとイザベラが見事して付き従った。クラウディウスは西方で魔公王子と戦っている獣王キングスレイと皇帝アレックスの2人と共に戦ったといわれている。クラウディウスの才能を見込んだアレックスの手解きを受けて魔公に対抗する能力を身につけたといわれた。
「そう、アレッサンドロは西方皇帝の血筋だからな。勇者に皇帝、それにアウロラらの義理の姉妹であるマリエッタ、さらに魔王の子孫だ。実は1人で玉座の上に座って、腹のそこでは『これはどんなカオスだ?』と笑っていた」
ニマニマするセドリックにクロードは一気に呆れた表情に変わる。
「最低だ。この人、最低だ。それを見て楽しむ為に呼びつけてましたね?」
クロードの問いに対して、セドリックはケラケラと笑う。どうやら図星らしい。それは、目の前にいる王様が、ただの快楽主義者だったことを理解するには十分だった。褒章の際にわざとアレッサンドロと同席させたのは、そこにあったのだ。
くだらなすぎる。
「忙しかったのも本当だ。面白半分も事実だが、折角俺が王様の時に、勇者の預言があったんだ。顔合わせさせておいてやろうと思っただけだよ」
「理屈は分かりますが、そもそも勇者になるつもりも無いのです」
クロードはうんざりと呻く。そこはいずれ、預言者に言葉の撤回をしてもらおうとさえ思っていることだ。自分に勇者なんて荷が重過ぎる。
「別にならなくても良い。与えられた力を、自由に振るう権利は個人にある事だ。それを自分の為に使うか、他人の為に使うかは自由だろう。俺なんて好きに権力振り回してるぞ」
最低な王様は最低な事を口にする。民衆に圧倒的な人気を誇る王様がこんな事を口にしていいのだろうかと思ってしまう程度に。
「はあ…」
クロードも生返事しか返せなかった。
「ラフィーラは神であるが、全知全能という訳でもないだろう?『皆、仲良くしましょう教会』の神様の預言した勇者は何をした?魔族を隷属し、人間を頂点とするシステム構築の主役になった。ラフィーラにとって最大の神敵だろうが。挙句、預言者の遣わした神官アウロラは未だに神聖教団の神輿に乗って魔族排斥運動をしている。この度、我が国にもその波が押し寄せた訳だが」
クロードは何とか体力を回復させて、上体だけを起こす。
「その波に刃向かうべく、陛下は勇者が必要だと」
クロードは恨みがましい視線をセドリックへ向ける。だがセドリックは目を丸くして、そして苦笑と共に首を横に振る。
「お前にだってどっちにつくかの権利はあろう。ただ、あそこにいたらマリエッタ同様に囚われる可能性もあったからな。何の意見も言えず、無理に従わされ、望まぬ結論に手を貸すか?俺はな、そういうやり方が大嫌いなんだよ」
「あ」
セドリックは信念に対して筋を通しているのだ。自分が自由にしているのに、相手は自由に出来ないというのが嫌なのだろう。つまり、民とも対等であろうとしている王だから、貴族制度を無くそうとしているのだ。それはラフィーラ教会の教えに近いものがあった。
「今回も、きっと民衆の是非も問わず、ラフィーラ教会によって魔族排斥を実行し、民衆にその光景を見せつけ、全員に恐怖と共犯意識を植えつけさせるだろう。飴と鞭さ。これをすればこんなに良い事がありますよと積極的に触れ回って、対して刃向かえば神敵扱い。そして俺を背教者として殺す姿を皆に見届けさせて、踏み絵代わりにさせるんだろうさ。国の代表者であっても魔族排斥に非を唱えてきた人間を裁けば、イヴェールは2度と元の姿には引き返せなくする」
「あ……だから国王様に破門宣言が…」
「破門宣言はどちらかというと、国民人気を落とす為だろうな。俺は、ほら、貴族より人気あるから」
ハハハハハとセドリックは笑いとばす。
「ラフィーラ教会も神聖教団みたいになってしまうのでしょうか?」
「現在の教会がコルベールにそこまで権力を強めていたのは想定外だ。ディディエ大司教は平民上がりの真っ当な神官だから安心していたのもあったな。2月ほど前に体調を崩したとは聞いていたが、次の大司教選挙に備えてどうも教会の権力争いはコルベールが着実に頭角を現していたようだ。知ってれば介入したのだが」
チッとセドリックは舌打ちして悔しそうな顔をしていた。
「介入って…コルベール枢機卿は、仮にも聖職者なのですが…」
「あ?貴族が金を使って枢機卿になり、教会権力を利用するのはよくある話だぞ。今の大司教は聖職者だが、コルベールは政職者だ。しかも貴族派とグルだ。コルベール伯爵でもあるからな。元第2王子クレマン派のメルクール家の寄り子だったはずだ。皇太后もメルクール公爵の妹だしな」
生々しい話にクロードは凄く悲しそうに肩を落とす。
「僕らの信じていた信仰は何だったんでしょう?」
枢機卿と呼ばれるような人は、凄い敬虔なラフィーラ教の信徒とばかりに思っていた。しかし、そうではないらしい。薄々、感じていたが、国王自ら口にしてしまうと説得力が増すというものだった。
「言っておくが腐ってるのは上だけだぞ。政治に利用されて金儲けしている連中ばかりだ。神聖教団だって、下っ端の神官は真っ当だからな。西部は魔族差別も無くなりつつあったし、魔族だからって足蹴にして笑うようなくずはほとんどいない。『祈りなさい、いずれ罪が許される時まで』とか魔族に優しく声を掛けるものだ」
セドリックはさらなる自身の経験談を語る。クロードもそれに関しては初耳だったので驚いていた。
「……陛下は何でも知ってるんですね」
「昔から知識欲が強くてな。本ばっかり読んでた。お前らを呼びに行かせたクリストフ・アングレーム名誉侯爵は俺の元教師だ」
説明好きで質問魔の名誉侯爵を思い出してクロードは少し納得する。この陛下は口が良く回るのだが、どうやら師匠譲りらしい。
「数少ない理解者だったし、信用できる先生だから、色々と動いてもらってるんだ。まあ、ボリスの野郎に殺されかけたと聞いた時には、あの腕もないエセ勇者の首をはねてやろうかと思ったが。私怨で国を傾かせる訳にも行かないからな」
クロードから見たボリスの腕は遥か上のレベルだったのだが、どうやらこの国王様から見ると、勇者の腕前をもってしても大した事がないらしい。大言壮語なのか、本気なのか聞きたいような聞きたくないような気分だった。
「さてと、休憩は終了。訓練に入るぞ。勇者以前に、冒険者が一国の王より弱いとか恥ずかしいし、これも顔見知りになった誼だ。ありがたく指導を受けていけ」
「ううう、この王様スパルタだ…」
「阿呆。俺がオリハルコンにいた頃はこの10倍の訓練をしていたわ」
どうやら手加減されているらしいとクロードは知る事になる。
ただ、この訓練を受けていてクロードも流石に気づいてくる。ここに来る前、アレッサンドロはセドリック国王が勇者の神託を受けても不思議に思わないと口にしていたが、何でも受け入れられる包容力と、それを支える強さと経験値はクロードなど足元にも及ばないものだった。
セドリックと共にいた経験のあるアレッサンドロも恐らく同じような経験をしたのだろう。何せ神託された勇者の自分が、自分よりも遥に相応しいと思えるような男が王様なのだから。
(メチャクチャで破天荒な人だけど、やっぱり凄い冒険者だったんだなぁ)
クロードは何度と無くセドリックに剣の訓練を受けて倒される。
倒されるたびに理論的に説明して技術を教えてくれる。
結局、訓練では散々にボコボコにされて、用意された自室のベッドに倒れこむように体を横たえる。
「あの人は化物だ」
クロードは訓練の中で、セドリックから物理的なものだけではなく、揺るがない信念を感じた。軍人の中に王として混ざったのに、気付けば一緒に肩を並べて楽しそうに会話を交わし、人を惹き付けていく。だが自然と対等に立っても皆が心から敬意を表す姿が見える。
出てくる言葉は、宮廷におらず、世界を見てきたからいえる言葉で、非常に視野が広く、皆が自分の無知に驚く事になる。
「そういえば…」
ルーシュもまた適当な感じで生きているが、人の為に簡単に命を投げ出し、魔族の事を第一に考えるのが当たり前になっていたが、それは魔族が他民族を滅ぼすのではなく、魔族が他民族の輪の中に入っていけるように考えている事だ。
どちらも民を導く立場にあって、だけどどうしようもなく世界は彼らと相容れていないようにも感じる。貴族に疎まれて波紋された国王と、魔族と言うだけで蔑視される魔王の子孫。
「陛下は周りの目さえなければ、ルーシュとの講和を踏み切っても良いんだろうな。暗黒世界との友好は可能だけど、神聖教団の目があるから。ルーシュが恐れて、陛下は彼らに対して強行できない。……でも…そうか、神聖教団がどういう信仰なのかは知らない。僕は何も知らないんだなぁ」
折角、冒険者になったのだから、世界をもう少し見てみたい、そんな気持ちが国王と接触した事で膨れ上がり始めたのだった。
それから数日後、クロードは軍隊に混ざっての剣術の訓練が終わると、セドリックに伴われて城の外に出る事になるのだが…
「かんぱーい!」
冒険者の館に集っている数多の種族が杯を交わす中に放り込まれたのだった。
「何だ、兄ちゃん。Eランクなのか?」
隣に座っている髭の生やした体の大きいドワーフが訊ねてくる。
「最近、大きい仕事を処理してDランクになりました」
「冒険者はCランクになって1人前だ。もっと精進しろ」
ドワーフに大きな手でバシバシと背中を叩かれる。
「小父さんは何ランクなんですか?」
「俺は鍛冶屋よ。10年も前にオリハルコンに入団して、手先が器用だったから武器の調整なんかをしていたんだ。去年、Bランク冒険者になって、この町で鍛冶を始めて、今はサヴォワで鍛冶屋をしてるって訳よ」
「じゃあ、現役じゃないんですか?」
チラリとクロードは隣で正面の魔族と笑いながら飲んでいるセドリックを見る。
「ま、ここの国は住み良いからな。特にサヴォワはどんどん開発が進んで行くから毎日が面白い。人種差別もないしな」
ドワーフは笑ってエールを飲み干す。
「僕は小さい頃からイヴェール国民だったのですけど、そんなに人種差別ってあるんですか?」
人種差別は神聖教団の勇者が来て始めてその存在に気付き、今回の魔族捕縛騒動で世界的なものだと感じ始めたのだが、そもそもクロードは人種差別とは無縁の世界で生きていたのでピンときてなかった。恐らく、イヴェール王国民の大半がそうだと思っている。
「俺の生まれた場所は同じ亜人種でもエルフにさえもバカにされていた場所だ。ドワーフはこんな場所で食事なんてとんでもない。椅子に座ることさえ許されない。椅子が穢れるってな」
「椅子に座れないんじゃ、どこに座るんですか?」
ドワーフの発言に、クロードは激しく驚く。
「まず飯屋の中に入れない。食事は外の門で待って、残り物を倍の値段で買う。ま、魔族よりマシだ。魔族は殺されたって法律上問題ない国だった。魔族の死体を放置されると面倒だから、魔族を殺したら殺した奴が処分しないと罪に問われる。そんな国だ。ドワーフも似たようなもんだ。人間は何をしても許されるんだ。恐ろしい事この上ない」
「そ、そんな国が…」
「潰れちまったけどな。オリハルコンを雇い入れた敵国が国の王様を殺した。その時、オリハルコンに入団したんだよ。国を出て行きたかったんだ」
「へえ…人に歴史ありですね」
クロードとドワーフは話していると
「何~、オリハルコンだぁ?」
セドリックはいきなり割って入ってくる。
「何だ、兄ちゃん。アンタはオリハルコンに恨みでもあるのか?」
「否!俺はオリハルコンには10歳ちょっとの頃からいた古参だぞ!つまり、お前は俺の後輩だ!年下だけどな!どこの所属だ!?」
「え、ああ、この大陸の第3旅団だ」
「スティードの所か!ガイスラーの貴族になったバカ野郎の部下か!?」
思い出すようにセドリックは笑いながら酒臭い息をはいてクロードの首に腕を回して、ドワーフの男の方に顔を向ける。
「し、知ってるのか?」
ドワーフは驚いた顔をしてセドリックを見る。まさかこの国の王だとは思うまいとクロードは目を細めてセドリックを見る。
「知ってるも何も、あのバカに剣を教えた師匠だぞ、俺は!あの女好きが帝国貴族なんて世の破滅だ!ガイスラー帝国はバカか!?アイツの子供で国が溢れるぞ!」
「はははははっ!違いない!」
ゲラゲラ笑うセドリックとドワーフ。
「えと、スティードさんとはどのような方なんですか?」
クロードは目を丸くしてセドリックとドワーフの男を交互に見る。
「一言で言うと野獣だ!犬人族なんだがな、春でもないのに常に盛ってる!」
「だが強い!俺が鍛冶の腕を磨いたのはあの人が刃を直に駄目にするからだ。総大将の癖に撤退する部隊のシンガリを務めて敵軍1万を1人で食い止めた!ワイバーンに襲われた際には自分の背よりでかい槍を空に投げてワイバーンを刺し殺した!あれは人類じゃない!」
「下半身も人類じゃなかった!驕ってやるからと娼館に行った際には20人指名して20人ノックアウトして惚れさせた。褒章のほとんどを大量にいる妻を養うのに使ってる!あんな痛快なバカは後にも先にもアイツだけだった!いや、あいつだけじゃないと世界中がスティードの子供になっちまう!」
「クハハハハッ!そうそう、隊長は下半身だけなら伝説の四天王を越える!」
ゲラゲラと共通の知り合いを思い出して笑いあうセドリックとドワーフの男。
「よし、気に入った。今日は先輩が驕ってやる!大いに飲め!」
「ドワーフにそんな事を言っても良いのか?俺は飲むぞ?」
「自慢じゃないが、酒自慢ならあのスティードを先に潰した事がある酒豪だぞ、俺は」
「それは、アンタも人類じゃねえよ!」
ゲラゲラ笑いあう二人。これが軍隊の乗りなのだろうかと、クロードは少し入りこめないでいた。っていうか、スティードさんって何者!?
「俺も元オルハルコンだぞ!俺にも驕れ!」
遠くの方で巨大なビールジョッキを持ってる猫人族が大きい声で訴える。
「よっしゃ!良かろう!その代わりそこのお前、この国の悪口を言ってみろ!この俺様が、王様に代わって許す!」
王様が誰の変わりに許しているのかと、クロードはこの隣の人物が王様なのを知っていて顔を顰める。
「戦争すくねえから、傭兵業を潰されたんだ!不満なんて腐るほどあらぁ!」
「それは逆恨みだろう!」
すると周りから笑いながら指摘する声が上がる。酒場中が笑いに包まれる。
「その前、森のモンスターの巣を潰したら、貴族の奴らにちょろまかされたぞ!死ね、くそ貴族!」
「そうだ!」
「あとここの王妃が美人過ぎて気にいらねえ!あんな良い女と毎晩やってる王様を殺してえ!」
「下品な事言ってんじゃないよ!」
そこに口出ししてくるのは近くにいた朱の髪の色をしたエルフの女性だった。右手にはビールジョッキを持っており周りにも種族は違えど女性冒険者がたくさんいた。
「あーん、冒険者に下品も上品もあるか!どこのエルフのお嬢様だ!」
「寂しいなら、今晩相手になるぞ!」
「Aランクに上がってから言いな、Cランカー!」
女性冒険者のパーティーもゲラゲラ笑って男達をあしらう。
あちこちでセドリックが囃し立て、不満や怒りの声を出させてやんややんやと冒険者達は祭りのように盛り上がる。
クロードは散々飲まされてグッタリしながらセドリックと一緒に4軒目の飲み屋を出る。
大衆の酒場だったり、キャバクラだったり色々連れまわされて、クロードは本当に気持ち悪くてグッタリしてた。
「うえっ……気持ち悪い…」
「冒険者は飲めて何ぼだ」
「それ、自分が酒が強いからって…」
クロードは青い顔でふらつきながら、セドリックと一緒に滞在しているサヴォワ公爵邸の方へと向かう。
「大体、なんであんな……」
「体裁を整えた報告も大事だが、一番ほしいのは民の声だ。より良い国にするには、忌憚ない庶民の声が聞ける場所が必要だ。本音でぶつかり合えば、どこの領地のどの領主が良くて、どの領主がどういうズルをしているか大体分かる。俺は行く先々で飲んで色んな話を聞きだしてきた。技術職の奴らは自分の知識をひけらかしたいから、結構話し出すとすげー重要な情報を簡単に教えてくれるんだぜ。コンプライアンス的にどうなのよと突っ込みたいがな」
それを大声で話す貴方もどうなのよと突っ込みたいクロードだった。ただ、バカをやってるようで、必要なものを掴んでる所は掴む辺りが
「王様は王様なんですねえ」
クロードの口から思わず出てしまう。
「王様王様言うんじゃねえ!今度、王様って言ったら、俺はお前を勇者様と呼んでやる!」
「酷い!」
眉根を顰めてクロードは呻く。だがここまで勇者らしくない勇者はいないと自負していたが、ここまで王様らしくない王様はいないと思ってしまう。
「大体、俺は王様なん座になりたく無かったんだよ」
セドリックは面倒くさげに語る。
「え?」
「幼馴染のフランシーヌは真面目な女でな、いつだって民を気にかけていた。水の魔法が得意で、市井に出向いて医者の手伝いをしていた。イヴェールにおいてサヴォワ公爵はもっとも力を持っている。彼女は次の国王の妻になる事が義務付けられていた。そして当時、正妃であったメルクール家の血を引く第2王子がフランシーヌと婚約が決められていた」
「む、難しい話ですね」
「駆け落ち…しようとしても、フランシーヌは民の為に、嫌っている男に嫁ぐのは仕方ないと笑っていたよ。阿呆が少しは賢くなるように、そして正妃として阿呆から民を守るのは義務だとな」
セドリックは苦笑しながら語る。
「!」
「だから俺は国を出た。国家以上の力を手に入れる為に、学んだ知識を動員して、世界中を回った。一人の女を手に入れる為に、莫大な私財を稼ぐ為に、傭兵として成り上がろうとしたってわけだ。最初の3年は酷い地獄さ。生きていたことが不思議なくらいだ。だが本の虫だったから頭が良かったな。顔を繋ぎ、金を回し、力をつけて…。冒険者から王様になったなんて笑い話だろう?」
「他に方法は無かったんですか?」
クロードからすれば、王族から冒険者に身をやつす方法というのはどちらかと言えば玉座から遠ざかる方法のように感じる。
「あっただろうが、俺は血筋が悪く、権力闘争に不利だった。俺にとって最高の形はフランシーヌと共にこの国を出て平和に暮らす事だ。王様なんて格下げもいい所だ。だがな、俺の惚れた女は本当に立派な貴族様なんだよ。自分の意思より、好きな男より、民を守る事が大事だそうだ」
立派な貴族様をあまり見た事がなかったので、クロードは苦笑する。だが、このサヴォワ領は非常に明るく活気があり、良い領主によって栄えた良い町なのだろうと分かる。
格下げ……王様になりたく無かった男にとってはそうなのだろう。
「サヴォワをバックに3公爵家で俺達3人の王子で王座の奪い合いをしても良かったようにも思うが、国を割る事をサヴォワ公爵は否定的だった。内乱だってずっと中立だったしな」
そんな都市でも監査をするのかとクロードは不思議に思うが、どうも監査を受け入れる貴族がサヴォワを含めた一部しかいなかったらしいというのが実情だったとか。
こうして平和で賑やかな街の夜は更けていく。
サヴォワ領で行なわれる王国の監査も終わろうかしている頃、情報が入ってきていた。
「王国軍3万がゾロゾロゾロゾロと行軍して来ているらしい」
セドリックは何の気なしに多くの面々がいる中で口にする。
監査団の面々だけでなく、軟禁されているクロード、同行していたアレッサンドロ、ロセッラに対しても聞こえる様にである。
「それはいつから察知していた?」
アレッサンドロは国王様に対して半眼で睨みながら質問をする。回りの家臣はいい顔をして無かったが、セドリックは手で制して答える。
「査察団が国を出て直に貴族派が軍隊の編成が始め、翌日には宮廷内での神託の発表、即日に国王への破門状、そして3日前に出発し、今は目と鼻の先に軍隊が近付いてきている」
「普通は神託を受けてから軍隊の編成を始めないだろうか?」
呆れる様にぼやくのはアレッサンドロで、それは査察団の面々もあからさまな行動に呆れてしまう。
「だがそれをいう事は出来ない。軍事演習を行なうとかそういう理由を使えば良いからな」
セドリックは自身の妻フランシーヌの方へ視線を移す。
「父は大丈夫でしょうか?宰相ですし、こんな無茶を許されると思えませんが…」
「ま、いきなり殺すって事はないだろう。国王派は牢獄にでもぶち込んで、後で穏便に爵位剥奪などで済ますんじゃないのか?少なくとも有力貴族の悲報はまだ聞いてない。ダビド殿にも変な事が起こったら、素直に相手に従えと伝えてある」
その言葉にフランシーヌは安堵するのだが、
「だが、民は何人か使者がで照るらしい。魔族を連行する際に彼らを守ろうとしたり、彼ら自信が連行を拒絶した際に被害にあった」
「な、何てことを…」
セドリックの言葉に、フランシーヌは真っ青になる。
「…陛下は戦うお積りで?」
「戦う予定はない」
セドリックはキッパリと言い切る。だがこれは明らかに国王に対する反乱である。
政治に宗教を絡めた強引なやり口である。宗教上で破門されたからと言って、この国の国王はラフィーラ教徒でなければいけないという法律はないのだから。
「最悪、二人で国の外にでも出よう。アレッサンドロに船を用意させているから大丈夫だ」
セドリックは笑ってフランシーヌに話すが、フランシーヌは険しい顔をする。
「民を見捨てるくらいなら私はここで死にます」
「……そうか」
フランシーヌの言葉にセドリックは諦める様に肩を落とす。
そんな中、アレッサンドロが口を開く。
「こっちに無理やりつれてこられて、報酬やるからってポンコツ魔導機関を帆船にくっつけさせられた気も知れってんだ。ちゃんと動くかは保証しないからな」
そっぽ向いて文句を言うアレッサンドロの姿は明らかに怒っていた。
クロードは一緒に来ていた筈なのに、アレッサンドロとロセッラをずっと見ないと思えば、そんな事をやらされていたのかと初めて知る。
「現場作業は私達の分野じゃないので本来はこのご依頼は受けないのですが…」
ロセッラは抗議するようにセドリックを見る。
マギテックは基本的に設計者集団であって現場作業者ではない。その為、冒険者のジョブでは技士であるが、実際に実物を作るのは工兵の仕事で、技師は技術や頭脳を提供するだけで、決して突貫で船を作ったりはしないのだ。
無論、そんな住み分けをクロードには知る由も無いのだが。
「本社とは開発設計だけでなく、一品物の試作作業品を納める事も込みで契約したからな!」
キラリとセドリックは白い歯を輝かせて、親指を立てて答える。
「この王様、本当に先輩とそっくりですね。無茶で無理やりなところが兄弟のようです」
「ロセッラ。俺はそれを侮辱罪として法廷に持っていく準備があるぞ」
アレッサンドロはロセッラの言葉に酷くショックを受けた表情で訴える。この王様、どれだけ嫌われているのだろうと皆が思う。
そんな中、王妃フランシーヌは強い視線をセドリックへと向けていた。
「このままでは、王国はどうなってしまうのでしょう?民だけが気がかりです」
皆には心配そうにするフランシーヌのほうがよほど良識ある国王に見えるのだった。
「…俺もまさかそこまではすまいと思っていたが、魔族狩りを始めて犠牲者も出ていると聞く。とは言え、これにストップをかけれるような立場の人間がいない。破門されていて、むしろ敵に上げ足を取られる事になる」
「!…宮廷魔導士団の半数は魔族の方ですよ!?」
「真っ先に囚われたそうだ。教会の神父も数人いたはずだ。刃向かう住民も、連行されるのを嫌がった魔族も何人か殺されているらしい。だが、こっちには準備が無い。周りに声掛けをしていたが、果たして破門された俺の声に耳を傾けるやつがいるかどうか」
セドリックは渋い顔をする。
「こんな所でグダグダしている暇無いじゃないですか!何でこのような事を放置しているんですか!?」
クロードはセドリックの姿をずっと見ていただけに驚きを禁じえなかった。まさか、もう国を棄てて逃げるつもりなのかとも思ってしまう。
「神託なんて嘘といえる証拠もない。覆しうるマリエッタを公爵が圧力をかけて無理やり親権を自分のものにしてしまった。こういう時に貴族は無理やり公文書を書き換えるから最悪なんだ。だから、俺は貴族の強権力を無くすようにしていた。サヴォワ領は絶対に反抗するな。反抗すれば、俺の進退如何ではダビド・サヴォワ公爵の首が飛ぶ。彼は国の主権がどうあれ、必要な人材だよ」
セドリックは淡々と話す。
何よりこの領地の領主である。シャトーがどんなに力を入れようと、最大都市の領主は重要人物となるのは当然だった。
「父の事はどうでも良いのです。国家は?民は?我々は彼らを守る為にあるのですよ!?……貴方は王なのでしょう?既に…多くの民を失って、それで何で…」
強い瞳でセドリックに訴えるフランシーヌはそれこそ国家を誰よりも案じているように見える。そんなフランシーヌの姿にセドリックは真面目な顔になる。
「フラン。俺は何も棄てちゃいない。予定外の行動で多くの民を失わせたのは俺の落ち度かもしれない。だが、お前にもはっきりと言っておくぞ?」
「?」
「俺が国政の頂点に立って9年、おれはあいつらがそこまで柔じゃないって思ってるよ。これは1つの機会だ。導いてきた積もりだ。お前の愛する民は、そんなに弱くないって信じてる。だから、俺はそれを導けるように動くしかない。信じて待て」
セドリックは心配しているフランシーヌに対して、彼女の頭を撫でて優しく笑いかける。
暫くして、このサヴォワ公爵領の中心都市セルプラージュの門前に軍隊が到着する。20人ほどの白い甲冑を着た男達とそれらに帯同する3万人近い軍隊であった。
セドリックは珍しく王らしい衣を纏い、彼らを歓待する事となる。
白い騎士団の群れから表れるのは、ヒキガエルを連想させるメルクール公爵の嫡男シリルであった。
「我々はラフィーラ教会において、聖騎士の位を賜った聖白星騎士団、そして騎士団長の位を賜ったシリル・メルクールである。セドリック・イヴェールに対して、我等がラフィーラ教会は、貴様に対して破門を言い渡すことを宣言する」
白い甲冑の騎士団は聖白星騎士団と名乗る。ラフィーラ教を象徴する、白と六芒星からきているのだろう。シリルは上からの物言いで国王に対してキッパリと破門を言い渡す。
「私が破門と?それはまた急なお話ですな」
すっとぼけて驚いた様子を見せるセドリックに、前もって当人から知らされていたサヴォワにいる面々は驚く表情を見せる。その驚いた表情は決して破門の事ではなく、セドリックの見事な演技に対してであったが、それにやってきた騎士団が気付いた様子は全く見られなかった。
「コルベール枢機卿にラフィーラ様から神託が下ったのだ!破門された貴様に対して、貴族連盟は国王退陣を要求する!降伏せよ!我らは武力でこのセルプラージュを攻め入る準備は出来ている!無論、今貴様らがどんなに足掻こうと我が軍の前では…」
「分かった。降伏しよう。セルプラージュは私がたまたま滞在しているだけだ。別にラフィーラ様はこの公爵領を罰する訳では無いのだろう?」
両手を上げてセドリックは一切の反抗の意思も見せずに言い切る。
「え?は?」
あっさりと降伏するセドリックに対して、シリル・メルクールは鳩に豆鉄砲をくらったような顔でキョトンとする。
「何か問題でも」
「つ、つまり貴様はわれらが新国王クレマン・イヴェール王陛下の名の下にに処されると?」
背後の軍隊は隊列を組んで、いつでもこの領地の中に攻め入る準備をしていた。元々、反逆者に仕立て上げたセドリックを捕獲するという口実で、セルプラージュを攻め入ろうとしていたのは明らかである。それを理由に公爵領を召し上げようとでもしていると思われてもおかしくないほどに最初から戦闘する気満々だった。
だが、行軍が近付いても防衛する気配を見せず、国王がいきなり前に出てきて、あっさりと戦わずに降伏宣言するとは思ってもいなかった。肩透かしどころか、プランをぶち壊された気分だっただろう。
「ああ。破門されただけなのに、刑に処されるというのは意味が分からぬが、貴族派の言う事に従おうではないか。私は謂れ無き罪を王都で弁明しなければならない」
「正気か?」
「何がだ?」
あっさりとセドリックは投降をしてしまったので、全員が呆気にとられていた。
「そ、それでは我が騎士団は引き返す。兵糧を明け渡してもらおう」
「何故、私に問うのだ?この領地は宰相サヴォワ殿の領地だ。彼に許可をもらってきたのではないのか?」
「だが、貴様が国王だろうが!」
「何を仰っている。国王にそんな権限はない。サヴォワ公爵にお願いしたくても、ここに彼はいないではないか。それともメルクール領は税でもないのに俺が金を出せといえば出してくれるのか?それはまた初耳だな」
セドリックは不思議そうに首を傾げつつも相手の考えがあけすけ過ぎて呆れていた。
聖白星騎士団と名乗っておきながら、最初から国王を庇うサヴォワを荒らす事を前提にやってきているのだ。そして兵糧は最初からここで調達する予定だったようだ。なぜ、気付いていたか?やってくる彼らの持ち物を見れば一目瞭然だったからだ。
だが簡単に国王は前に出て降伏してしまった。攻め入る口実1つ与えさせなかった。
結局、聖白星騎士団はクレマン国王陛下の名の下で強制徴収を行ない、あちこちの商家の倉庫から無理やり食事を強奪していく。
そんな様子を見ていて、王国査察団の面々はセドリックが最初に自分が出てそのまま投降する旨を言った際には全員で反対していたが、今となっては正解だった事が分かる。最初から占領する気で攻めて来ていたのだ。
彼らが去った後、アレッサンドロは溜息をつく。
「さてと、俺は予定通り、王都の貴族派の屋敷に忍び込むかぁ。ったく、俺はもうオリハルコンの諜報員じゃねえっての。アイツ、10年前と同じ乗りで命令しやがって。いつか絶対に泣かす」
アレッサンドロは毒を吐きながら、後頭部を掻いてぼやく。いつの間にか、そういう密約が交わされていたらしい。
王妃フランシーヌはアレッサンドロを見て深々と頭を下げる。
「夫をお願いします」
「…全く、世話のかかる奴だよ、ホント。で、クロードはどうする?とりあえず王都からの追手は無さそうだし、国から去るなり、好きにできるだろ。セドリックは、お前が利用されたり、お前の身の危険を守る為につれてきたんだろうし、もう好きにしても良い筈だ」
アレンサンドロはお手上げとも言うように肩を竦めて両手を上げる。
「僕は……マリーの様子も気になるし、ロベールをそのままには出来ないので一緒に戻ります。手伝えられるかどうかは分かりませんが…」
クロードは自分の身の程を理解しているので、助けるにしても出来る事がないと思っている。
放浪していた第三皇子セドリック、かつてクレマンの婚約者でありセドリックの幼馴染だった公爵令嬢フランシーヌ。
かつて、もっとも玉座に近かった元第二王子にして現王弟クレマンを背後に、メルクール派が動き出す。




