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勇者諜報員(仮)の黙示録  作者:
第1章 勇者誕生
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情報分析

 時間丁度になって集る一同。ハティとスコールはルーシュの言いつけを守ってちゃんとダンタリスとミレドに迷惑を掛からないように従って来たようだった。

「そろっているようじゃな」

 ダンタリウスが声を掛けると慌てて3人はひざまずこうとする。

「往来で畏まる必要は無い」

「はっ」

 3人は立ち上がる。ダンタリウスは3人を見て頷くとルーシュの方に振り返る。

「彼らはこの街に住む魔族で勇者の情報を貰っております。それぞれ紹介しましょう」

 もう自己紹介してもらったけどなぁとルーシュは思うのだが、ダンタリウスが勝手に始めてしまうので諦めるように話を聞く。

「まず、これがアラミ。この町の南の方にある小さいラフィーラ教会の神職を務めてます。この者を教会に紹介した魔族の神職者が直接ラフィーラ教の預言者の言葉を聞いて我々に情報が流れたという訳です」

「なるほどなるほど」

 とは言うものの、ルーシュは既にもっと情報通な幼女と知り合ってしまったので、今更その筋の情報は要らないような気がする。

「こちらは土木作業員のポルト。魔人なのに力持ちで魔力が弱いという変り種ですが、この町に家族もいて、こうして勇者の事を見かけたら情報を貰っているのです。まあ、一般人をかかわらせたくはありませんが、魔族の種族全体に関わる問題ですからな」

「私が4歳の頃、東の大陸で奴隷として酷い目にあっている所をダンタリウス様に助けられ、こうして普通に生活が出来ているのです。ちょっと見かけたら報告するという程度の事、どうという事ではありません」

 ポルトは首を横に振る。そういえばダンタリウスはそういう活動もしていると耳にしていた。見た目はよぼよぼの爺さんではあるが、古の魔公なので魔力も戦闘能力もレナ以上なのだ。

「で、こっちがアト。定職にも就かず博打で金をなくすバカ者ですが、外をふらふらしているので、まあ情報はそこそこ取れるといった所でしょうか」

 ルーシュとミレドから冷たい視線がアトへと飛ぶ。

「博打はダメだよ、おじさん。ウチのお父さんなんて私を売り払って逃亡したんだから」

 レナは真面目な顔でアトに説教を始める。アトはダンタリウスの手前文句も言えなくなってしまっていた。

「と、まあ、こんな所ですな。で、こっちは、今後、暗黒世界に向けて最終報告をする仕事をするルーシュ様だ。ルーシュ・バエラス閣下、魔王の血も引くバエラス家の現当主であらせられる。こっちはレナ・アシュタール。アシュタール家の元当主の娘だ」


 ……


「えーと…こちら様があのバエラス様の御曹司様で?」

 3人は目を丸くしてルーシュを差しながらダンタリウスに訊ねる。

「2代目が蒸発したから、ルーシュ様は現当主だ。暗黒世界の第二王位継承者でもあるので丁重に扱え」

「それ早く言ってくださいよ!」

 アトは涙目で訴える。既に殴った後だった。

「まあ、誰にでも間違いはあるよ。僕も前にダンタリウス先生を殴っちゃった事があったし。それでもゆるしてくれたもんね。だからドンマイだ」

「何という慈悲。今後は賭博もやめて真面目に働かせていただきます」

 ヘヘーとアトはルーシュにひざまずくのだが

「まあ、3日持てば御の字ですな」

 ダンタリウスは呆れたように言う。彼は賭博以前に真面目に働く人間にはどうあってもなれないらしい。

「ダンタリウス先生。こっちには何度も来ているの?勇者諜報活動は初めてだよね?」

 ルーシュは首を捻る。

「ふむ。私は年に半分ほどは暗黒世界ではなく地上界…ではないな。グランクラブで活動をしております」

「知ってるよ。レヴィア様とかお年寄りとか戦争で生き残った人達は地上魔族の救済をしているんだよね?」

「はい。私は地上の情報を集めると同時に東西で奴隷にされていたりする魔族達を解放しつつ、彼らをこの北の大陸へ移民させております。無論、ご存知でしょうが、望む者は暗黒世界にも移民させております」

 ルーシュは頷く。

 暗黒世界への移民は絶対にバエゼルブ領を通過するので、領主をしていたこの1年はたくさんの魔族の名前を見聞きしていた。

「まあ、良い。そこの屋台にある椅子でも出して適当に情報交換でもしようか」

 ダンタリウスは周りに促す。



アト談

「冒険者の館をよく出入りする勇者を見ました。装備はボロボロだった鉄の剣が新しくなったくらいで実入りは良くないようです。駆け出し冒険者といった感じでしょう。この町に来てから1月になりますが、ずっと安い寝床を使ってますね。その前、荷物をたくさん持ってるおばあちゃんの荷物をもってあげているのを見ました。きっとあの後でおばあちゃんの荷物をひったくって逃げるのだろうと監視をしていたのですが、なんと普通におばあちゃんを家に送っただけなのです。何の見返りも無く。きっと奴はとんでもない年増が好きな鬼畜野郎なのでしょう」


ポルト談

「その前、街の外れで家を建てている途中、近くで勇者を見かけました。勇者は丁度、モンスター討伐の帰りだったようで、たくさんの荷物を持っていました。あれは結構な金額になりそうな感じでしたね。この日は黒い馬を連れてなかったので、歩いて近隣のモンスター狩りをしていたと思われます。そんな中、彼は荷物を持って寄り合い馬車を待っていました。流石に大荷物で街を歩くのは嫌だったのでしょう。しかし、そこで馬車が来ると太った女がやってきて、前に割り込んだのです。私ならばあのような不細工なブスならば怒鳴り散らす所でしたが、勇者は笑顔で前に譲って、結局歩いて去って行きました。きっと勇者はデブでブスが好きというマニアックな野郎なのでしょう」


アミラ談

「その前、教会本部に足を向けるとそこには勇者がいました。ラフィーラ教の教会は孤児院が一緒に付いている事が基本なのですが、勇者は彼らと遊んであげているようでした。その中でも修道服を着たエルフの美幼女に勇者様勇者様と呼ばれて鼻の下を伸ばしているようです。どうやら奴は幼女好きの変態野郎なのでしょう」



 そんな話をまとめてみてルーシュは首を捻る。

「別に勇者の女の趣味とかに興味はないんだけど。単純に親切なお人よしって事なのでは?」

「私も同意ですが、…まあこんなものですよ?情報を知らない第三者に怪しげな奴の情報をよこせと無理難題押し付けたら」

「確かにそうだね」

 ルーシュとてクロードの事を知らなければとんでもない変態さんだと思っていただろう。

「最後の幼女はマリエッタの事かな?」

「おそらくは」

「ふーむ。にしても…随分、モンスターを狩る成果を上げているみたいだけど、装備が変わってない。一体どこで浪費しているのだろう」

 ルーシュは不思議そうに首を傾げる。そこでアトが嫌らしい笑みを浮かべてルーシュにアドバイスを送ってくる。

「きっと女ですよ。金を浪費する男は、酒、賭博、女のいずれかです。賭博場に来ていないのは分かってますし、未成年の奴に酒は提供されない。とくると女で決まりですぜ」

 分かっているなら賭博はやめなさいと全員が冷たい視線でアトを見るが、アトはそれに気づいていないようだった。

 そんな中でもルーシュは真面目にアトの話を聞いていた。

「おんな?」

 ルーシュは不思議そうに首を傾げる。そこでレナと目が合う。レナは何だろうとルーシュの視線を感じて首を捻るのだが、そこでルーシュはポムと手を打つ。

「ああ、なるほど」

「いえ、ルーシュ様が考えた事とは別ですよ」

 レナの食費がバカにならないので、クロードも同じような苦労をしているのだろうと勝手に解釈したのだが、ダンタリウスはそれが勘違いであると突っ込みを入れる。食費がバカみたいにかかるのはレナだけだからだ。

「アトはきっと風俗店に通っているのではないかと言っているのです」

「ウチの父親みたいに娼館とかキャバクラとかそういう場所に通っているのではないかと?ぶらりとこの町を見て回ったけど、淫魔族とかはいなかったけどなぁ?」

 ルーシュの中にある娼婦やホストやホステスというお仕事は、淫魔族や吸血鬼族がするものだという認識がある。彼らは生きた生物からしか魔力を得る事が出来ないので、生きている相手に食事や酒を出してもてなす代わりに、相手から魔力を頂くのだ。それ以外に、そんな仕事をする理由が分からなかった。

「あの、ルーシュはお子様なので、そこら辺の理解が今一です」

 レナは挙手して突っ込む。

「何でお子様扱い!?」

 ルーシュは頭を抱える。

「それでは最後に私からもお話をいたしましょう」

 最後とばかりにミレドが挙手をする。



ミレド談

「先日、冒険者の館に行ってレナ様と2人で情報を調査しに行って参りました。ええ、ルーシュ様はハティとスコールの2頭と一緒に遊びに行ってしまい、暇そうにしていたレナ様をお誘いしたのです。さて冒険者の館はとてもたくさんの人がいました。さすが大陸でも屈指の冒険者が集う町ですね。町の中でも冒険者の館が一番活気のある場所かもしれません。そんな折、とあるテーブルからギルドの職員と雑談をするベテラン冒険者がいらっしゃいました。ベテラン冒険者は職員に向かって『その前は随分と儲かったそうだな』などと話していたのです。ギルドの職員は嬉しそうに語っていました。『田舎から出てきた頭の悪そうな子供が2人ほどカモだった』と嬉しそうに笑っています。ギルドの上納金から税金が払われるのに、税金と上納金を別にして安値で相手のものを受け取ったそうです。相手の魔族の少年は値段と違う事に首を傾げたので少し困ったが、適当にあしらってやったのだと得意げに話してました。銀の林檎やらモンスターのドロップアイテムなどで最近では金貨50枚くらい懐に入っていて毎日娼館通いだと自慢げに話してました。どうにも胡散臭そうな男ですが、どうやら銀の林檎なんて持ち込んで安値で買い取られた人物の知り合いが隣に座っているとは気付いていなかったようですね。冒険者の師匠を持たない新人は良いカモなのだそうです。さて、そんな彼らは我々の方に声をかけてきました。ギルドの職員は、お嬢ちゃん達、彼らに酌をしろ、俺達は金持ちなんだぜ。好きなの頼んで良いぞと偉そうに語っています。一体、どこの誰から奪ったお金なのでしょうか、さすがに笑えません。そんな中いやらしそうな男の1人がレナ様の胸元を鼻の下を伸ばして肩を叩く振りして胸のほうへと手を伸ばしました。するとギルドの館に電撃が走り、魔法道具が全て壊れ、私とレナ様を除く館にいた全ての人が体を痙攣させて髪の毛をアフロヘアーにして倒れてしまいました。世の中ってのは色んな事があるのだなあと思いました。ちなみに、その事件は謎の落雷事件として現在の調査中ですが未だに分かっておりません」



「っていうか、僕とクロード、もしかしてギルドでぼったくられてたの!?」

 ルーシュはレナとミレドの武勇伝を聞いて頭を抱える。レナは人に触られるのが嫌いなので、電撃を食らったのはちょっとした事故だが、自分達が大幅に騙されていたとは気付いていなかった。

「とは言っても、そこで論理的にたてつくのはあまりよくありません。我々は魔族ですからな。騙されてあげた振りをするのが処世術かと。ベテランの優秀な冒険者が一緒にいるなら良いのですが、そうでもありませんし」

 ダンタリウスはあまり事を荒立てるのを抑えようとする。目立つ任務ではないのだ。そもそもそこまで金を求めてもいない。

「そっかー。でも悔しいなぁ。悔しいなったら悔しいな。そうだ、誰にも分からないようにレナの電撃で一網打尽に」

「もうしちゃったけど」

「そっかー」

 がっくりとルーシュは頭を垂れる。

「そういえば近々大きい調査任務があるみたいな事を聞いたよ。多分クロードも出るんじゃないのかなぁ、ラフィーラ教の調査員さん達が冒険者を募って調査任務に向かうって話だったから、クロードの方にも話が行ってると思うんだよね」

 レナは新しい情報をもたらす。どうやら冒険者の館の謎の落雷事件はつい最近のはなしのようだった。

「しかし、あの者は本当に勇者なのか、こちらの方が謎なのですが?」

 アトがダンタリウスに訊ねる。ポルトとアラミも同時に頷く。

「ラフィーラ教の神職者としてはどう思う?」

 ダンタリウスはアラミの方を見る。

「わかりません。そもそも預言者様は多くを語らないので。王侯貴族に利用される事を良しとしない預言者様は完全に距離を置いてますし」

 アラミは首を横に振る。

「ふむ」

 ダンタリウスは不思議そうに首を捻る。ラフィーラ教も庶民ではともかく、上層部になると本当に愛だけを解いているような宗教ではなく、神聖教団と同様に、政治と癒着している。宗教は王侯貴族と密接なパイプが存在し、大きい権勢を誇っている。

「まあ、ご苦労だった。また何か報告してもらう事になるか、移動していなくなるかは分からぬが、諸君らの協力に感謝する」

 ダンタリウスは3人を見て礼を言う。

「いえいえ、ダンタリウス様のいなければ我々はどうなった事か」

「この位、些細な事です、はい」

 ダンタリウスは孫にお小遣いをあげるように、それなりに大きい金額を3人に渡す。3人はペコペコと頭を下げながら去っていく。



「あんまり役に立っていないような」

「ルーシュ様、それは言わぬ約束じゃよ。相手に魔族が諜報活動されているとばれてしまっては元も子もない。人によって様々な感想を持つもの。それにルーシュ様も分かったでしょう?たった勇者というキーワード1つで、これだけ人間の見る目が違うのです。200年前の勇者がおぞましい怪物のように勘違いするのも同様に、他人の言葉がどれだけ当てにならないかも」

「むう、確かにそうだねぇ。1つ大人になってしまった気がするのだ」

ルーシュは感慨深く口にする。本物の勇者はとっても良い人で、きっと親切でお人よし名だけなのに、偉い言われようだったのだ。彼ら3人も悪気があった訳じゃない。それだけに人の見る目が変わるだけで与える印象が異なるという事なのだろう。

「という事は…本当の勇者がこんなのだって可能性もあるんだよね?」

 ルーシュは目を輝かせて、以前、地面に描いた終末に現れそうな神造兵器オメガゾンビが描かれたメモ帳を見せる

「ありません。そんな生物は絶対に存在しません!」

 だが、ダンタリウスは即答で否定する。

「まあまあ、でも情報ゲットしてきたんだよ。私達もラフィーラ教が出してるクエストをやってみようよ。きっとクロードいるよ」

 ピョコピョコ飛び跳ねてレナが訴える。ピョコピョコ飛び跳ねると同時に胸が激しく揺れている。重くないのだろうかとルーシュはレナを見て不憫に思う。

 だが、ミレドは羨ましそうに年下の少女を眺め、そして自分の胸元を見て溜息をついていた。

「まあ、いいか。じゃあ、早速冒険者の館にゴーだ。ふふふふ、こっちがわざと騙されてやっているとも知らず、哀れな奴らだ」

「いや、わざと騙されてなかったじゃない」

「レナさんや、それは言わないお約束じゃよ」

 ルーシュはダンタリウス風に返した積もりだが、それでは姑さんに介護されるおじいちゃんである。


 そんな訳で報告とは関係無しにルーシュとレナの2人は新たな冒険へと向かう事になるのだった。


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