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勇者諜報員(仮)の黙示録  作者:
第1章 勇者誕生
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諜報員集合

 ルーシュとレナはミレドのサポートを受けて、銀の林檎屋台という名前で、銀の林檎を使ってアップルパイを売る事にした。

 アップルパイのサイズは小さな菓子パン程度の大きさにしており、リンゴを薄くスライスして1つにつき2切れほど載せている。リンゴ1つにつき8つのアップルパイが出来る計算である。つまり、かなり薄切りだ。

 シルバーアップルパイ1でつ小銀貨1枚という、銀の林檎の値段からすれば安いのだが、アップルパイとしては1つで小銀貨1枚という値段で買う人間なんていない程の高価格で売り出したのだが、意外にもバカ売れだった。


 その原因はアップルパイの持つ魔力回復効果だった。魔力回復効果を持つアイテム、例えばマジックポーションなどと呼ばれるアイテムは金貨1枚である。ルーシュが最近知った王国の通貨『ピース』でいうと5万ピースもの金額をするらしい。銀の林檎は1万ピースでの買い取り価格だが、ギルドで交渉すると税金と上納金で5000ピースまで奪い取られてしまうのだ。実はこれはルーシュの交渉が下手なだけで8000ピースは残る筈である。

 銀の林檎屋台で売っているアップルパイは美味しい上にMPポーションの10分の1程度の回復量を持つ。費用対効果を考えた時に、シルバーアップルパイの方が遥かに効果が良い上に薬品臭くなく美味しいという事で激しく売れることとなった。


 ルーシュ達の銀の林檎1つの売値は


銀の林檎=10000(原価)-3000(ギルドの流通費&上納金)-2000(税金)=5000ピース

シルバーアップルパイ=1000(単価)×8個-500(他材料費)-1600(税金)=5900ピース


 という事で手間も時間も掛かるが、普通にこちらの方が儲かるのだった。

 元の発想は銀の林檎がいっぱいできて、食糧事情に問題がなくなったので、余った分をどうやって処分しようかという嬉しい問題が発生していたのだが、銀の林檎をアップルパイにすると凄く美味しいのでよそ様にお裾分けをしようという単純な発想から生まれたものであった。


 調理を始めて、店を出す準備をするまで5日間、売り出してから5日間。

 初日はあまり売れなかったが、その効果を試した冒険者の間から口コミで広がり、ここ4日間とも全部午前中に売れ切れてしまった。1日限定48個というのはルーシュとミレドの2人が協力して作れる程度の量である。

 毎日2万ピース以上の売り上げをしており、ピドの街は田舎で物価が安い事も手伝いかなりの金持ち街道へと突き進んでいた。



 和やかな日々を送っているルーシュは、仕事の無い午後はアジトで膝の上にハティとスコールを乗っけて日向ぼっこをしていた。

 そんな中、ダンタリウスはルーシュに新しい話を持ちかけてくる。

「そういえば、ルーシュ様。諜報員として我々に報告させている者達と、本日は会う予定があるのですが、直接お聞きになりますか?」


 ダンタリウスの言葉を右から左に流しそうになっていたが、そこでふと大事な事を思い出す。

 ルーシュは自分が勇者の諜報員として派遣されているのであり、諜報活動をする魔族達の話を聞いて今後の判断と魔王への報告書を書くのが仕事である事実を思い出す。

 けっしてアップルパイを売る事が仕事ではないのだ。


「も、勿論聞くよ。忘れてないからね?決して僕は勇者と仲良くなって、アップルパイを売ってれば取り敢えず満足とか思ってないよ?」

「心の声がダダ漏れですぞ?」

 ダンタリウスはルーシュに呆れて突っ込みを入れてしまう。

「でも…今更必要なのかなぁ」

 そんな所にレナが顔を出し、あきれたようにぼやく。それもその筈、ルーシュが一番勇者に近い位置にいる。既に友達面だ。今更諜報員でしたとは言いがたい距離間だ。

「友人には良い顔を見せるものですし、実はという事もありますよ。まあ、色々と話を聞くのはいいことだと思います。それにルーシュ様は彼らの上司になるのですから部下の顔を覚えなければ」

「新しい仲間ですね?」

「仲間って程、一緒にはいませんよ?この街限定の情報係ですし、勇者が来月違う町に行ったらさよならです」

「そりゃ寂しいねぇ」

 新しい仲間が出来ると喜んだ日には、あっさりと否定される。ルーシュは肩を落としていた。



 そんな訳で翌日も、ルーシュとレナはアップルパイを屋台で売りに公園へとやってきていた。

「いらっしゃい、銀の林檎屋台にようこそ!シルバーアップルパイは小銀貨1枚です」

「アップルパイ2つくれ」

「毎度ありがとうございまーす」

 基本的に客商売はレナがやる。人に触れられるのが嫌いなレナにこの仕事をやらせるのはどうかと思ったが、意外に上手くやれているようだった。

 ルーシュはというと、平行して屋台についている魔法窯でアップルパイを焼いていた。

 魔法窯とは温度調整に長けていて、今では家庭に一台はある優れものである。この世界において、人間達が魔力資源の確保をしているのは、一重に魔法道具の動力源の確保を差す。ルーシュ達のような食糧確保とは別物だった。この魔法窯の動力源は魔石と呼ばれるもので、魔石とは魔力を持つ結晶石である。



「いらっしゃいませ、銀の林檎屋台へようこそ、商品はシルバーアップルパイのみとなります。混み合っておりますので、お1人様2つまででご容赦下さい。ご注文承りまーす」

 レナは大きく声を張り上げて、既に行列を作ろうとしているお客に声を掛ける。

「アップルパイ2つー」

「シルバーアップルパイ2つですね。小銀貨2枚になりまーす。毎度ありがとーございまーす」

 レナは普通に対応していた。人に触れられるのを極端に嫌うレナにしては、お金と商品のやり取りくらいであれば、問題ないようだった

「いらっしゃいませ、銀の林檎屋台へようこそ、商品はシルバーアップルパイのみとなります。混み合っておりますので、お1人様2つまででご容赦下さい。ご注文承りまーす」

「アップルパイと君のスマイル1をお持ち帰りで」

「スマイルはお持ち帰りできません。一昨日来やがれでございまーす」

「お嬢ちゃん、可愛いね。仕事が終わったらお兄さんと遊びに行かないかい?」

「嫌でーす。はーい、次の方どうぞー」

「レナちゃん、今度僕とデートを」

「ナンパはお断りします。はーい、次の方どうぞー」

「お嬢ちゃん、そんな所でアップルパイなんて売ってないで俺と一緒に…」

「冷やかしならお帰り下さい、次の方~」

 笑顔でばっさりと切り落としていくレナ。がっくりと肩を落として去るナンパ男の方が、アップルパイを持って去っていく者よりも多かったりする。

 ルーシュは不思議そうに首を傾げて、仕事をしながら横目でその様子を見ていた。男に声をかけられた際の断り方に若干の慣れているように見えるからだ。



 48個も売るとなると1人辺り1~2分取られるとしても1時間程度の時間がかかる。行列になっている理由は、どちらかというとナンパ男の所為じゃないかと言う疑惑が強まる。

とはいえ、この日も早々と午前中にすべてを売り切ってしまっていた。

「今日も午前中に終了ー!」

「じゃあ、今日やってくるって言う諜報員の仲間達を待てばいいんだね?」

 ルーシュとレナは2人で並んで自作したアップルパイを食べながら待つ事にする。レナは嬉しそうに、もしゃもしゃとアップルパイを食べていた。この林檎のお陰でどうにか生命線を繋いだ身としては銀の林檎は本当にシャイターン様の恩恵を感じてしまう。



 暫くして3人の魔族がやってくる。

「ダンタリウス様が仰っていた新しい諜報員とはお前達だな」

 3人の男の中の1人がジロリとルーシュとレナを見る。30代くらいでチョビ髭の生えた男だ。

「我こそは諜報隊の隊長、酒と博打が大好きなアト!」

「我こそは諜報隊のキャプテン、力持ちな土木作業員ポルト!」

「我こそは諜報隊のリーダー、知能派のラフィーラ教神父アラミ!」

 アトが真ん中で鷲の荒ぶるようなポーズを取り、左の恰幅のいいポルトが海から顎を広げて飛び出す鮫のようなポーズを取り、右の坊主頭のひょろ長いアラミが獲物に襲い掛かる豹ようなポーズをとる。

 何か著作権的にいけない気もするが。

 ポカーンとしてしまうレナ。公園に一陣の夏の終わりを感じさせる風が通り過ぎ、草木がたなびく。

「はい!先輩、質問です!」

 そんなレナを尻目に、ルーシュは挙手する。

「ほう、中々良い心がけだ新入り。何だ、言って見ろ」

 と偉そうに語るのはアト。

「ポルトキャプテンが土木作業員、アラミリーダーはラフィーラ教の神父さん。アト隊長はなんの職業の人でしょうか?」


 …………


 ルーシュの質問にその場が一瞬にして凍りつく。もう冬が訪れたかのような状況だった。

 ルーシュは聞いてはいけないことなのだろうかと首を傾げる。一応、諜報員なのだから、上司として何をしているのか知っておくべきだとルーシュは当然の質問をしたつもりだった。

 そこでルーシュはアトからポルトの方へ視線を送る。仲間は知っている筈だと思ったのだろう。だがポルトは気まずげにルーシュから視線を外してそっぽ向く。それではとルーシュは逆となりにいるアラミを見る。アラミはラフィーラ教徒独特の白い修道服を着ておりきっと優しく教えてくれると思うのだが、アラミは気まずそうに俯いてそれを聞いてはいけないとばかりに小さく首を横に振る。

 どうやら職を聞くのは禁句らしいとルーシュは察する。だが、同時に、立ち直ったアトはルーシュを殴る。

「このバカチンがー!」

「ひにゃっ」

 アトに殴られたルーシュは地面に転がる。

「ぶ、ぶったな!父さんにもぶたれた事ないのに!」

 ルーシュは頬を押さえて叫ぶ。

 だが、レナは遠くを見るように視線を上げ、「お母さんには会う度に殴られていたような気がするけど」と小さくぼやく。

「良いか!女性の年齢を聞くのと、男性に職業を聞くのはご法度だ!」

 アトはとんでもない嘘を吐く。ポルトとアラミの2人は両サイドで子供にとんでもない事を教えやがったと驚愕した表情を見せる。

「そ、そーなの………?」

 なんだか収拾のつかない雰囲気になっていると、集合予定だった最後の2人、ダンタリウスとミレドがハティとスコールの2頭を連れてやってくる。集合時間丁度であった。


 ピドの町にいる諜報員こそが本当の意味で仮の諜報員、パートタイム諜報員(笑)ですね。

 諜報員+メイドの4名の名前はとある古典文学の名前を参考にいただいてます。ですが、魔公の皆々様は基本的に某グリモワールから名前を取っているので、ダンタリウスの元の名前はダルタニ●ンじゃありませんので悪しからず。

 ちなみに諜報員3名の登場もとある戦隊ものの登場から取っております。基本的にこの作品はボケ役が多すぎて、勇者と作者、時々レナによって共同で突っ込むことになっています。

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