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星の見えない空  作者: 榎本あきな
えぴろーぐ~見えた星~
37/37

37.こうま座α星

2月6日【キタルファ】(こうま座α星)

遥か遠くを見つめる瞳


 人気のないキャンプ場の端に、小さな墓標が立っている。

 その場所に、1人の男性が歩いてくる。


 灰色の髪の毛を持った以外は、至って平凡なその男性は、墓標に近づくと、無表情だった顔を緩めて、微笑んだ。

 そして、色も種類もバラバラで、統一の取れていない花束を、墓標へと置いた。


「ワスレナグサ、ミモザアカシア、アイビー、ローダンセ、ゼラニウム、ライラック、日々草。……頭の良いお前なら、この意味、わかるよな」


 そういって笑った男性の顔は、今にも泣き出しそうだったけれど、涙はこぼさなかった。


「お前が死んで、10年。……もう10年も経ってるんだ。早いもんだな。……特殊能力を持った子供が生まれるようになって、世界は変わった。犯罪も、増えた。……だから、お前の言葉を叶えるために。……この場所で、お前と、平和な世界で、星を見るために、今まで頑張ってきた。……平和になるまで、お前には、絶対合わないって誓った」


 しゃがみこみ、墓標を手で、まるで人の頭でもなでているかのように、優しく触れた。


「……10年経って、ようやく、平和って言えるようになった。まだまだ、俺たちの13年前には遠く及ばないけど、それでも、平和になった。……悪食も、鷲も、亮も、俺を手伝ってくれた。自分の、いなくなった、大切な人の為に。……俺も、お前の為に、頑張ってきたんだ」


 立ち上がり、流星群が降る星空を、見つめる。


「灰色の空は、消えた。まるで、そこに存在していなかったかのように。……でも、お前が生きていた、あの灰色の空の下の世界が、俺は好きだった。……戻りたいとは、もう、思ってないけど」


 三つの足音と人影が、男性のもとへと近づいていく。

 茶色い髪の毛の男性と、目つきの鋭い男性と、背の低い男性は、同じタイミングで墓標にお辞儀をしてから、灰色の男性へと話しかけた。


「そろそろ時間だ。行くぞ」

「なんとか俺たちで分担して時間作ったけど、これ以上は無理だからな!」

「すいません。親友さんの傍を離れるのは、名残惜しいでしょうけど……」

「別にいい。無理言ったのは俺だからな。むしろ、お前たちには感謝してる」


 そういうと、一人は微笑み、一人はそっぽを向き、一人は笑顔で、「どういたしまして」と声を揃えた。

 その言葉に微笑みながら、先に歩く3人の後ろを、ついていく。




「まこ」




 男性は振り向いたが、何も、いなかった。

 そのことに目を細めながら、墓標を……いや、その、遥か遠くの、誰かを、見つめた。


「……またな。しゅん」


 そういって、再び、墓標へ背を向け、歩き出した。






 空には、星が瞬き、流星群が、降り注いでいた。


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