表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の見えない空  作者: 榎本あきな
さいしゅうしょう~閉じた卵~
33/37

33.てんびん座τ星

11月19日【タウ・リーブラエ】(てんびん座τ星)

プライド内の信念


 瞬間移動したかのように現れた、しゅんの姿をしたシャラーヤを半身で避け、その勢いのまま蹴り飛ばす。

 俺を狩る為に振り上げていた大鎌を、瞬時に俺が蹴ろうとしたところへ持っていき、ガードしたシャラーヤは、吹っ飛ばされたあと綺麗に地面へと両足をついた。

 大鎌をくるりと回して肩にかけたシャラーヤは、怖さを感じるあの笑顔で、言い放った。


「ゲームってね、いかにルールの穴を掻い潜って相手を消耗させるかが鍵なんだ。……この世界は、イメージが全てだ」


 不思議なことを言い放ったシャラーヤは、無邪気な笑顔で笑った。

 その笑みに悪い予感がして、俺はその場から横に跳んで転がる。

 それと同時に、床からトゲのような形をした水が、突き出してきた。


「ひゅ~!やっるねー。まぁ、そんな簡単にゲームオーバーされちゃあ、僕が楽しくないんだけど……ねっ!!」


 そういって、空中に水を浮かべ、四角く固まった水の上を飛び移り、シャラーヤは高く上った。

 そして、高いところから大鎌を振り上げながら俺のもとへと降ってきた。


 転がっていた体を既で起こし、半身でよけると、大鎌が俺の目の前を通った。

 振り下ろされ、地面に刺さった大鎌の持ち手に飛び乗り、短刀を両手でもって振り上げる。

 けれど、軽々と大鎌を持ち上げたシャラーヤは、大鎌を振り回して俺を振り落とした。


 受身をとり、しゃがんだ体勢で前を見ると、大鎌を反転させ、持ち手で突きを繰り出してくる。

 水が張っている床に張り付くぐらい体勢を低くすると、頭上を通り過ぎる風切り音が聞こえる。

 その音と同時に横に転がると、ガンッという音とともに、持ち手が振り下ろされていた。


「どうしたの~?防戦一方だね!」


 向こうの方がリーチが長く、俺は懐に飛び込まなければ、貫通させることはできない。

 さらには、俺の負ける条件は頭であり、あいつは左脇腹だ。

 どっちが狙いやすいかなんて、わかりきったことだった。


 この世界は、イメージが全てだ。


 そういったシャラーヤの言葉を思い出した。

 ……俺に出来るかどうかはわからないが、賭けてみるしかないな。

 俺はそう思って、目を瞑った。



 瞼の裏に映るのは、昔、俺の家族としゅんとともに行った、キャンプ場でみた満点の星空。

 そこで寝転がって2人でみた、大量の流れ星。

 その流星群は、まるで、俺らに降ってこようとしているみたいで、俺ら2人は、笑いながら手を伸ばした。



 目を開くと、目の前には、大鎌を振り上げるシャラーヤの姿。

 その姿を見つめながら、俺は、動かなかった。

 きっと、俺の考えたとおりになるって、俺は、昔の俺とあいつの思い出を、信じていたから。


 ピタリと、動きを止めた。


 瞬時に後ろへ飛びず去るとともに、俺の目の前……シャラーヤが先ほどまでいた場所に降ってきた、人1人を潰すには十分な大きさの隕石。

 空を見上げると、星空には流星群が降り注ぎ、その流星群は、大地にまでも降り落ちる。

 シャラーヤは、先ほどとは違い苦しそうな顔で降り注ぐ隕石を避け、大鎌で砕き、半身を翻しながら逃げ続ける。


 苦しそうなシャラーヤのもとへと走る。

 流星群は、まるで俺を避けているかのように、俺のもとには、降ってこなかった。


 隕石をシャラーヤが大鎌で砕いた瞬間、隕石に阻まれて見えなかった互いの顔が、見えた。

 驚愕に目を見開くシャラーヤに微笑みながら、俺は短刀を突き出した。


「あ、……が、ああ…………はぁっ……っ!」


 流星群は収まり、シャラーヤと俺だけが立つ場所で、シャラーヤは左の脇腹を抑えた。

 苦しそうに俯いたシャラーヤは、次の瞬間、俺に飛びかかってきた。


 押し倒された俺の上で、シャラーヤは怒りのこもった瞳で、俺を睨みつける。


「僕が……僕が、負けるはずないっ!お前なんかに!僕が見えない、お前なんかに!!……まだ、負けてない。貫通、してない。裂けた、だけ。……僕は負けない。負けない負けない負けない負けない負けない」


 そういって、狂ったように笑い出す。

 その顔は笑顔なのに、その瞳は、少し悲しそうな気がした。


「はっはっはっはははははははははは!!!……僕は負けない。君が負ける。それが、決まった未来。それが、覆せない未来。……だから、君にいいものをあげるよ」


 そういって、シャラーヤは俺の心臓のところに片手を置き……俺の体の中に、手を突っ込んだ。

 途端、俺の体が、槍にでも貫かれたような熱さと痛みを感じた。

 その感覚は、俺の口から、悲鳴へと変換されて出てきた。


「あがぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

「あははは!いい悲鳴!!もっともっと、声を上げてよ!……今から、君たち人間が、僕のお気に入りにどんなことをしたのか、見せてあげるから。苦痛を、感じなよ」


 シャラーヤがそういったとたん、何かが頭の中へと流れ込んできた。

 それは、ある一人の少年の、痛みと苦しみと憎しみの記憶だった。

 その記憶の中へと、俺の意識が引っ張られ、持っていかれる。


 体が、痛い。

 思考が、曇る。

 視界が、眩む。




「まこと」




 あいつの声が、聞こえた気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ