1・世界一の船長
巨大な肉まんの形をした島に、れみは住んでいる。巨大といっても、普通の肉まん百個分なので、島としてはあまり大きくない。できることといえば、尖った頂上で逆立ちをしてバランスを取るか、斜面を滑り落ちないように気をつけながら歌謡曲を歌うことくらいだった。
周りは海に囲まれており、海水はお茶でできている。茶しぶだらけになってしまうので、本土から船を出す人はほとんどいない。ただし、戸松号の船長だけは別だ。
「俺は出航回数世界一を目指している。そして今日は記念すべき千回目!」
戸松船長とれみは、肉まんの皮をちぎって食べ、お祝いをした。船長はとにかく大きな数字が好きなので、巨大な肉まんをとても気に入っていた。
「なあれみ、俺の船とこの島を交換しないか?」
船長は来るたびに言った。本土の港には同じ船が百艘あるので、一つくらい手放しても困らないのだ。
「そうね。一万艘なら考えてもいいわ」
「わかった。次は用意してくる」
船長は帰り際、れみに土産の桃まんじゅうを渡して言った。
「九千九百九十九艘じゃだめか? 俺はでかい数字が好きだが、ぞろ目はもっと好きなんだ」
れみは桃まんじゅうを一口で食べ、口の周りをなめた。
「これと同じのを六兆六百六十六万六千六百六十六個つけてくれたらいいわ」