STAGE7:アガルタ軍侵攻
「これで、この国ともおさらばだな・・・」
イリヤの住む城から出た後、しばらくアガルタ共和国の街並みや人々の生活を見て行くのにぶらぶらしていた所為かかなりの時間がかかってしまった。
遅くなりすぎると泊って行けとか言われそうだからきりがいいところで撤収を開始した。
「まあ、色々あったが久しぶりに人と話しをした気がする」
とんでもないことを言ってのける彼だが、本人に自覚は無い。
久しぶりに人と話したなど、普段人が口走るようなセリフではない。
「次はどの国へ行こうか・・・」
一番近いプトレマイオス共和国へ行こうか・・・そう考えていた時だった。
「!!」
感じる。感じるぞ・・・・・・
アスガの索敵能力。レーダーに感知された大量の人間。
数にして数えられない軍団。それも隊列を崩さずに並んだ姿勢。間違いない。
「アガルタ軍か・・・」
装備能力蘭にステルスとシャドーを追加し、草むらに隠れる。
彼らの姿を確認しアスガは確信する。
「間違いない。俺の読みは正しかった」
こんな小国。いや、微国とでも呼ぼう。こんな国家一日で滅ぼせるものをなぜ滅ぼさなかったか・・・ただ単に泳がせていただけだ。
たった一つの通路を何分もかけて進んでいった軍団はアガルタ共和国までもう数100mと言ったところだ。
「・・・もう、俺には関係ない」
そう言い聞かせ、アスガは歩きだした。
――――――アガルタ共和国 砦
「敵襲!!敵襲!!」
「民間人はまだ完成途中のアガルタ城へ避難してください」
「厄介な連中だぜ・・・俺達は非常招集をかけた予備役をいれても2000人なのに向こうは5000人以上だ。大砲までもってきてるぜ・・・」
ユーマは砦の上から眺めて呆れる。勝てるわけがない。
「アスガさんがいてくれたら・・・」
レベル211。俺のレベル51。話にならない。レベル200相手にレベル50のプレイヤーが4人と対戦したとして見よう。人数において勝り合計レベルは同じになる。
だが、そんな数の話ではない。レベル50差もできれば人数など関係ないに等しいという。
50のレベル差がある相手に勝とうとするならば、自分と同じレベルを100人用意しないといけないほど差が開く。レベルが1違うだけでも2人掛かりで勝つのは厳しい。レベル差が2になれば4人は必要。レベルが一つ上がるごとにレベルの差×2と必要な人数が増えて行くのだ。それほどレベル1つ上がるだけでステータスに差が出るのだ。
「これは最終勧告だ!!この門を開けよ!!開けなければ宣戦布告と見なし、軍・民間人関係なく抹殺する」
はじめてであったのにもかかわらず放った言葉はこれ。明らか降伏しろと言っている。
「あの先頭の奴・・・殺していいか?」
ボルトアクション式のライフルを持ち5千の軍勢の先頭に立つ男に標準を向ける。
「ソーマか・・・・・お前の射撃なら一発で死ぬだろう。こいつらに交渉権などない。やっちまえ」
「御意」
パァンと重い音が響きそれと同時に先頭に立つ男の頭がぶちぬかれた。
あっけにとられたアガルタ軍を我先にと、砦から一斉射撃するアガルタ共和国軍。更に便乗して魔法攻撃や投石機による攻撃を行う。
指揮系統が乱れたアガルタ軍は混乱し、体制が整わないまま次々に死んでいく。
アガルタ軍の兵士一人死ねばアガルタ共和国軍の士気は上がる。
アガルタ軍の死者は数十秒で100人を超え4ケタに近付いていた。
そんな時だった。
「ええい!!怯えるな!!」
新たに軍勢の先頭に立った男が剣を一振り。
“シュン”
風を切り裂く音。
それと同時にひびの入る鋼鉄の門。
その衝撃によりアガルタ共和国軍の攻撃は止む。そのすきを見て大砲を装備している部隊が次々に発砲。砦は数分で火の海と化し、アガルタ共和国軍は初戦でこそ善戦したがあっけなく撤退し、作りかけのアガルタ城で籠城する事となった。
だが、防壁もない城でどう籠城しろというのだ?答えは無理だ。多分1日持たないだろう。
唯一の救いは先の砦の戦闘で死者が出ていないということだ。
「くくく・・・我々アガルタ管理局に逆らうとは・・・その罪・・・その命で償ってもらおう」
高笑いする男を先頭に4000ぐらいになった軍勢はアガルタ城へと向かう。
「あの砦がこんなに燃えて・・・・」
俺には関係ないそう考えていた。
「くそっ!!どうにでもなれ!!」
アスガは進む。その先は―――――アガルタ城