STAGE9:途中経過III
「許せん!!もう我慢の限界だ」
「許してくれなんていつ俺が言った?我慢しろなんて誰が言った?俺がなんでお前の事配慮しねえていけねえんだ?」
“バキン”
ランスと短剣が触れ合う。火花が散り短剣が吹き飛ぶ。
「そして暗殺者の武器である短剣ごときで大型武装の突撃重槍に勝とうっていう考えが浅はかなんだよ」
「くっ!!」
“シュン”
風を切る音。エレボスの懐から出てきた投げナイフ。
“カキン”
だが、重装甲兵であるメンティフィスにそんな攻撃は効かなかった。重装甲兵の売りである重武装。大口径銃の弾丸ですら防ぐ屈強な鎧。安全性と引き換えに失う俊敏性もステータスを上げることにより幾らか改善できる。
「ならば!!」
懐から再び出す丸いもの。
「!!」
目がくらむ。鋭い閃光と響く騒音。
「せ、閃光弾か!!」
「当たりだ。暗殺者は身軽で俊敏性が高く、なにより暗殺者ゆえに使える装備が多い。そして何を持っているのか、何を隠しているのか、それが相手に分からない」
朦朧とする視界、ギンギンと脳みそに響き、使い物にならない耳。
(これが暗殺者だったな・・・)
久しぶりの相手にメンティフィスは対策を忘れていた。
「メ、メンティフィス様!!」
「増援だと!!」
メンティフィスとエレボスが一騎打ちをする中、魔粒子砲を装備した重装甲兵だらけの防戦しか想定していないアガルタ管理局軍はエレボスに当たるのではないかという不安の中、攻撃がおろそかになっていたのである。
其処をついて、連合軍の主に騎士部隊と槍騎兵部隊が馬による突撃を敢行して来たのである。まさに、メンティフィスの計画通り。
「怯むな!!全軍打てええ」
“パァン”“パァン”“パァン”“パァン”“パァン”
騎士の部隊がマッチロックの抱え大筒を距離わずかになった重装甲兵の背中にある魔導機へとめがけて放つ。
「ぐわあああああ!!」
魔導器に直撃し、炸裂した時に吹き出る鉄破片は重装甲兵といえど視界を確保するわずかな隙間に侵入し、視界を奪う。
アガルタ管理局軍の防衛線にわずかに空いた穴からどんどん連合軍は侵入していく。
この近接線。魔粒子砲は打てない。大軍に飲み込まれていくアガルタ管理局軍。
「て、撤退だ!!第二防衛戦まで退けぇぇぇ!!」
アガルタ管理局軍敗走。このニュースは遠くの部隊でもわずか30分を立たずとして広まった。
そして本拠地においても
―――――――アガルタ管理局本拠地
「アガルタ・・・・話がある」
「どうしたゲオルグ」
アガルタ管理局本拠地最上階に二人はいた。片方はA.S内唯一の魔道士セルファー。もう一人はA.S内最強レベル保有者。アスガと唯一渡りあえ、唯一勝てると自負している男である。
「第一防衛戦が突破された。第二防衛戦へとエレボスは撤退した」
「仕方がない。だが、もうすでにこの計画は止められない。いくら俺を殺そうがお前を殺そうが」
「ああ」
二人は後ろに置かれた巨大なプラズマ状の丸い何かが閉じ込められたガラス容器を見る。
「高須カンパニーも、日本も、アメリカもすべてが終わる。俺たちの絶望もな」
「この世界の民が生き残る。これしかないんだ」
“バァン”
二人の会話に横槍を入れる音。
扉が開く音だ。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・アガルタ共和国国王アスガ。アガルタ管理局中央議会No.1アガルタの首を取りにきた」
「威勢はいいなこのクソガキは」
「ホントだな。あの頃とは大違いだ」
遠くから二人を見て、アスガは目を天にした。
大型の男は顔を知らない。おそらくこれがNo.1のアガルタだろう。だが、もう一人はアスガが知っている男だった。
「お前は・・・エージ・・・・」