STAGE6:最終戦争
「俺たちはアガルタ管理局防衛線へと進行する」
横一列にずらりと並んだ軍団。数はメンティフィスの指揮下だけで15万人。他にも北方面ではシルヴィア率いる25万。南部方面では東オーレリシア帝国将軍ブルクハルト中将率いる40万。北部、中部、南部の三方向から一斉にアガルタ管理局の防衛線へと攻撃を仕掛ける予定だ。
長さ数百キロに及ぶ巨大な塹壕から打ち出される牽引式大砲やガトリングガン。そして一番厄介な重装甲兵に搭載された魔粒子砲だ。
「だが、これだけの軍勢での進行は所詮囮に過ぎない。本作戦の目標はアガルタ管理局本拠地」
80万の軍勢は囮なのだ。アガルタ管理局がこれで手間取っているあいだに手薄になった本拠地をアスガ率いるレベル3桁台で総攻撃するというわけだ。
「俺たちはこの作戦にすべてをかける。全軍ステルスモード移行!!進軍開始」
ステルス性能追加装備の部隊を先頭に、進軍を開始。後方では長射程の大砲がバコスカと砲撃をしている。
「あとは任せたぞ・・・・アスガ!!」
その頃・・・
―――――――――アガルタ管理局本拠地
「本作戦の目標はアガルタ管理局本拠地占拠、そして現実世界との融合阻止だ」
既にアスガ一行は本拠地から北5km先に到着している。メンバーはアスガ、フィオナ、ユーマ、ソーマに加えてカルタゴのクローデリアとウォルダーの6名。
「ここは俺に任せな」
ウォルダーは腰にしまってあった回転式擲弾銃を手に取る。
「何する気だ?」
「要は、あいつらを気絶か寝かせりゃいいんだろ?俺は砲兵だぜ?それぐらいの弾薬ならいくらでもある」
自慢げに語るウォルダーは回転式擲弾銃のマガジンに6発の睡眠弾を入れる。
遠距離からうまい具合の位置を思考錯誤して探し、睡眠弾を放つ。
放たれた睡眠弾は着弾と同時に睡眠ガスを放射。兵士たちは強烈な睡眠薬を投入されたかのようにバタバタと倒れていく。
「ウォルダー。本当に睡眠なのか?お前のえぐさは知っている。毒ガスの間違いじゃないのか?」
「失礼なやつだ。いつになったらその毒舌を直してくれるんだ?」
「それ、私からもお願いしておきます」
「そんなこと言っていいのかな、フィオナ?」
「静かにしておけ・・・緊張ほぐすのもいいが、ほぐれすぎると死ぬぞ」
兵士が完全に睡眠に入ったことを確認するとアスガは洞窟の奥へと侵入していく。
「誰もいないな・・・・」
暗い道が続く中、突然目の前に現れた鉄の扉。
「これが裏口か・・・」
壁に取り付けられたレバーを引き扉が開く。
洞窟が永遠と続く中、扉の中は信じられない光景だった。
「まじかよ・・・・・」
そこは現実世界の軍事基地といっても過言ではない。いやそれ以上の設備だろう。奥に広がる巨大なスペースの中央部にある巨大なアクリル版のカプセルから抽出される地下のMET。上へと続くMET供給パイプ。すべてがコンクリート、もしくは金属により舗装された壁。
「この世界じゃ作れないですよね・・・・」
ユーマは魔導機の進化形態である魔導炉をツンツン触りながら、驚きを隠せないでいる。
無理もない。現実世界ですらこんな大規模な設備を見たことはない。
「こりゃ・・・この世界のためにかなりの人数の高須ホールディングス社員が送られたのだろう。現にあれだけの強力な魔粒子砲を装備するデーモンデリーターや、考古学者のゲオルグだとかいう奴もいるという話だ。これを作ったのもそいつらだろう」
そういう話にしなければつじつまが合わない。技術者でもいない限りこんな設備、世界を構成した際に作ってなければあるはずがない。現実に今、この目の前に存在するのだから、逆算して技術者が何人もいたということだろう。
「しっかし・・・MET供給施設に誰ひとりとしていないのはおかしい」
「それもそうですね。METを供給できなければ現実世界と仮想世界を融合させるためのエネルギーが取れない。どういうことでしょうか?」
「取り敢えず上に行ってみましょう。探した限りここが最下層のようですから」
「ああ」
6人は階段を上り上へ上へと上がっていく。
「侵入者確認しました」
アガルタ管理局警備室のモニターで6人は確認されていた。
ありとあらゆるところに偽装して隠された監視カメラ。彼らはそれに気づいていない。
「本当にこいつらはちょうど良いタイミングで出てくるな」
「どうしますか?」
「エネルギーの確保は完了した。あとは現実世界と融合するための時間稼ぎだ。奴らが最上階に到達する前に全滅させろ」
「了解です。各員に通達。施設内に侵入者を確認。各員は上り階段に集結し、侵入者を撃破せよ」
警備室からのアナウンスと同時にあらゆるところでサイレンが鳴り響き、アガルタ中央議会で本拠地に残ったものが階段へと集まる。
それに気づいたアスガ達は急いで階段を駆け上がる。
「追いついたぞ!!侵入者め!?」
「もう来たか」
アスガは後ろから登ってきた二人組の兵士をサーチする。
「レベル131と147か」
「それなら俺たちが相手をしよう!!」
ソーマはユーマと目線を合わせ、突然振り返った。
「これぐらいのレベルなら、俺たちでも大丈夫です。先に行ってください」
「・・・わかった。先を急ぐぞ」
アスガはソーマとユーマに追ってを任せ振り向くことなく先へ急ぐ。
そして後ろも向かずにアスガは走り出す。右手は親指を突き出した。
二人にはそれだけで十分だった。
「それに最初の敵は大抵一番弱いってのがお馴染みのパターンだからな」
ユーマはソーマにガッツポーズを取る。
「これぐらいしか俺たちはあの人にしてやれることはない」
「ちょっと、私たち舐められてない?」
「いや・・・・むしろ的確に指摘されたのが怖い・・・」
アガルタ管理局の二人は何やらがっくりとテンションを落としている。
「もしかして・・・こいつら」
「アガルタ中央議会最弱じゃ・・・・」
「「最弱で悪かったな!!」」
「最弱だろうが・・・どうせ同じ3桁台だ。自己紹介と行こうぜ。俺はソーマ。こいつはユーマだ」
「私はアガルタ中央議会No.11のフィリアよ」
「俺はアガルタ中央議会最弱のレージ」
「No.12か・・・・・よほどコンプレックスなんだなろうな」
「まあ・・・俺らもあの人たちに比べたら」
「人のことは言えぬか・・・まあ、弱い者通し仲良くしましょうか!!」
こうしてソーマVSフィリア。ユーマVSレージの戦いが火蓋を切って落とされた。