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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第五章 崩れ去る平和
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STAGE4:対談

「さすがNPC軍団。復興が早い」


3ヶ月ぶりにカルタゴに来てみたが、見違えるように綺麗になっている。


ボロボロに破壊された都市のガレキの山は綺麗さっぱり取り除かれ、血生臭かった道路は綺麗に補正されている。かつての大都市としての面影こそないが、つい最近までのスラム街としての面影もあまりない。


「おお、フィオナか。元気にしていたか?」


「クロ!!」


クロとはフィオナのクローデリアに対する愛称みたいなものである。

アガルタ共和国軍副指揮官をやった二人だけあって、仲が良い。


「はは~ん・・・・・そういうことね」


クローデリアは街並みを見て観察しているアスガを横目でちらりと見、状況を察する。


「そういうことって・・・どういうこと?」


「そのまんまさ。で、アスガ殿とは、どこまでいけたのだ?」


「!!」


顔を真っ赤にしてあたふたする仕草を見て、クローデリアの悪戯心は加速。

さらなる執拗ないじめが始まる。


「ほぅ・・・この顔を見る限り、なかなかいいところまでいったようだな。アスガ殿をイリヤ殿から寝取れたか?」


「仕える者がそんなことするわけありません!!」


「大人の嗜みという言葉で気付かなかった割には、寝取りなんて言葉知っているんだな」


「そ、それは・・・じょ、城内の・・・メイドに・・・」


「・・・成程。知識がなさすぎて教えてもらったのか。可愛いところもあるじゃないか」


「ば、馬鹿にしているのか!!」


「よう、クローデリア。二人とも仲良さそうじゃないか」


「ア、アスガ様!?」


不意を打たれたフィオナは急いで後ろを向く。


「あっ!!」


その勢いに足がついていけず、修復されていない道路に足をつまずく。


「おい!!大丈夫か?」


「え、あっ、はい・・・だ、大丈夫です」


倒れそうになったフィオナをアスガは抱きかかえる。

一方蚊帳の外のクローデリアはそっぽを向きながら口笛を吹いている。


(あーやだやだ・・・見てられない)


なんでフィオナはいつまでもウジウジしているのか・・・それがクローデリアには気に食わないのだ。


「あの、アスガ様」


「なんだ?」


「さっきの話を聞いておられましたか?」


「いや、全然。今来たばっかだ」


「良かった」


「何が良かったんだ?」


「いえ、なんでもありません」


「む?そうか・・・で、クローデリア。ウォルダーを呼んで4人で話をしたい。真面目な話だ」


クローデリアはアスガの目を見る。


先ほどとは違う。不抜けているとは言わないが、多少抜けた感じの目つきから、鋭い、戦闘モードまではいかずとも、真面目な話をする時の目だと悟り、ウォルダーを呼びに行く。


「この話はお預けね。残念。またの機会にするわ」


「しなくていい!!」


フィオナの抗議は虚しく終わった。





「成程ね・・・・実はな・・・何とも言えないのだが俺たちにも似たようなことがあって」


会ってそうそう話したことは、ついこの間起こったアガルタ管理局による襲撃事件についてだ。

話を出したとたん、カルタゴでも出てくる似たような事例。


「奇襲攻撃でも受けたのか?」


「いや・・・これなんだが・・・」


ウォルダーは一枚の紙を持ち出す。


「え~となになに・・・」


アスガはウォルダーから提示された一枚の紙を手に取る。


そこにはこう書かれていた。


“ウォルダーは元アガルタ管理局で働いていた工作員でクローデリアはアガルタ共和国のスパイである。この二人は危険であり、カルタゴを再び死の大地に変えようとする蛮人なり”


「・・・・・なんだこのポスターは?」


「こんなもの信じるやつはあまりいないんだがな・・・・一部が」


「ほ、ホントなのですか?」


「一名いた・・・・」


何を勘違いしたのか・・・俺の参謀のフィオナだった。


「まあ、確かにあながち間違っちゃいないんだが・・・俺もどこぞのお姫様に会うまではアガルタ管理局の下請け仕事だったし・・・」


「スパイではないが私もカルタゴ奪還まではアスガ殿の下で働いていた者」


「とはいえ・・・・死の大地は嘘ですよね?」


「だから嘘だって察しろよ・・・でこれはやはり・・・」


完全に誤解の溶けたフィオナも含め全員満員一致の答え。


“アガルタ管理局”


この手の事はたとえ別勢力がやっても代名詞のようにアガルタ管理局の言葉が出てくるようになってしまったのも、まあ仕方がない。


実際のところ連邦側の可能性もあるが、この際アガルタ管理局でもいいだろう。


しかし、アスガはこんな被害報告の語り合いを望んでいたわけではない。


「この地味な嫌がらせはともかくだ。俺たちはかつてない規模の攻撃を受けた。レベル3桁台がいないにしろこの数は異常だ。ここで、俺はアガルタ管理局征伐をしようと思う」


「成程。アスガ殿らしい意見だ。そこで、これを持ちかけたのだから、私たちにも討伐を参加して欲しいということだな」


「簡潔に述べるとそういうことになる。だが、無理はしなくていい。そちらもそちらで大変なことがあると思う」


「ふっ・・・まさか、私たちがそんなことを言うとでもアスガ殿は思っているのか?」


薄笑いを浮かべながらアスガをたしなめ、ウォルダーに視線をちらつかせるクローデリア。

それに従い、ウォルダーも口をはさむ。


「恩をあだで返すなんてことはしないさ。困っているときはお互い様だ。そのための同盟だろ?今のカルタゴの下にはプトレマイオス兵士の屍と、そしてあんたが守ってくれた兵士、そしてクローデリアがいるんだ。協力を拒むことなんてない」


「そうか・・・なら話が早い。この話は一応協力関係になるわけであるから、あの男にも伝えなきゃならない」


「あの男ですか?」


「ああ。あの男だ」


あの男。これまた代名詞とかしているある人物の呼称だ。


プトレマイオス・メンティフィス


アガルタ内でもアスガと同じくらい有名で一部では英雄視されている。この国を占拠していたアガルタ管理局軍を討伐した連合軍の7割はプトレマイオス兵士だからである。


無視できぬ人物だ。




「八、ハハハハ、ハックシュン!!」


「どうしました?」


「いや、なに・・・・花粉症か?」


オーレリシア戦線にいるある男はくしゃみをしている。


オーレリシア戦線での戦況は芳しくない様子である。温存した精鋭10万人。合計レベルは700万を超えている。それに付け加えられた20万人近くのNPC兵。


それに対して不安定なサルデーニャ・ポートランド帝国軍24万人に壊滅状態のプトレマイオス共和国4万人。背後に潜む大国東オーレリシア帝国軍20万人の48万人。


さらに連邦化したおかげで、軍隊の命令中枢はしっかりとしている。


しかし、装備の差が激しいのも確かだ。


改革を推し進めたプトレマイオス軍は東オーレリシア帝国を学び軽装かつ、機動力のある歩兵を中心に、重武装の兵士を使えるものだけにした。


東オーレリシア帝国は雪に包まれており、重武装では雪に足がのしかかり動けないのだ。


だが、そこを見習ったのではない。軽装により、防御力は下がったが攻撃力および長期戦が可能になったのだ。


重装備では軽装の歩兵に比べ一日にすすめる距離も、スタミナも、何よりその重い荷物のせいで武器弾薬、食料が思うように運べないのである。


それに比べ軽装の歩兵は、刀剣の一撃で低レベルなら深刻なダメージを受けるが、代わりに強力な大型の装備と安定したメインウェポン。そして食料がより多く持てるのだ。


動きが早く、強力なダメージを与えられる武器を保有していれば、それは歩兵の方が強い。それは現代の戦略でも見直されている。


ゲリラは銃弾一発で当たり所によれば死ぬが、そのゲリラが保有する兵器で戦車が破壊されるのだ。戦車は最低3人は必要とされる。


人的損害は大きい。


ましてや、この時代のレベルだ。戦車なんてない。だが、ロケットランチャーまでとはいかずとも、大筒とよばれる小型の大砲がある。それを喰らえば、動きの遅い重装甲兵でも低レベルなら一発でドカンだ。さらに、あまり重くもなくかさばらない。


これが、新たなプトレマイオス軍の戦略だ。


だが、国内に不安を残す中央オーレリシアを制した大国は二カ国の軍隊の違いで統一が終わっておらず、指揮系統、作戦系統に支障が起こっている。そのため、冬将軍あけた途端に侵攻してきたアガルタ管理局軍に国境から500km手前まで進行されてしまった。


面積に換算すれば、サルデーニャ=ポートランド帝国の5分の1を取られたことになる。


援軍で駆けつけた二カ国により戦線を保てたが、塹壕戦になり、戦況は泥沼。数百キロにも渡る巨大な塹壕が掘られている。


「というわけだ。わかったか?」


会って早々語られた長ったらしい敗北話。連邦側死傷者2万3千人。あちら側はおよそ1万人。


「俺たちは海を渡らないといけない。だが、奴らの海軍はどの程度なのだ?」


「あいつら海軍なんか目においてねえよ。だがな、上陸したなら死に物狂いで戦わねえと。まだ、あいつら、まだレベル3桁台一人も出してねえ。それに、あいつらの新兵器。マジで厄介だ」


「新兵器?」


戦況がよろしくなくいらつくメンティフィス。


「ああ。やつらの重装甲兵。抱え大筒っていうマッチロックのロケットランチャーを改造した物に背中に背負った大型の魔導機つないで、携帯式の魔粒子砲装備してやがる。しかも、低レベルでも、それ持っているだけで、小型要塞だ。お前みたいに無敵の楯持ってねえ俺らはレベル200代でも致命傷だ」


「致命傷だと?」


「ああ。MET兵器なんて、この世界に本来ないんだ。だからダメージとか設定されているけど、強制ダメージ。防御力無視攻撃なんだよ。しかも光粒子攻撃だから、至近距離で打たれたら避けようなんてない」


「誰か被害でも?」


「一万人の被害はこれだ。そしてサルデーニャの女狐が飛び出し、指揮官助けに出ていったアイツの側近と俺の側近が被害に遭って戦線離脱。後方の病院に運ばれたってわけだ」


「まじか・・・・」


アスガとクローデリア、ウォルダーなら見たことがある。アガルタNo.2のアイテールの武器。国際法上禁止されているMET兵器。


「やるなら、短期決戦だ。そして参戦表明していないお前らに頼みがある。正直来てくれて助かった」


「なんだ?」


「まだ、お前らに言ってないことがある。あいつらの真の目的だ」


「真の目的・・・」


プトレマイオス共和国国王はゆっくりと口を開く。


いままで、誰にも明かさなかったアガルタ管理局の目的を・・・・


誰もが息を飲む。


「現実世界への復讐さ・・・・」


「は?」


アスガにはメンティフィスの言っている意味がわからなかった。



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