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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第五章 崩れ去る平和
58/71

STAGE2:偽装工作

「撃てええええ!!」


パァン パァン


東砦やアガルタ共和国を覆う城壁から放たれる銃弾。


ボルトアクションライフルから放たれた弾丸は銃身に施されたライフリングにより、回転運動を加えられ、真っ直ぐに進んでいく。


狙った先は連邦の旗とプトレマイオス共和国の国旗が掲げらているところ。


「ぐわあああああああ!!」


次々に当たる銃弾。


「怯むな!!」


負けじと打ち返してくる砲弾。


さすがの城壁も大砲の砲弾には勝てず、石が吹き飛ぶ。とはいえ、貫通させるほどの威力はなく、裏側から補強工事が急ピッチで行われている。


「ったく・・・何考えてるんだ?」


アスガは東砦に来るやそうそうプトレマイオス共和国の国旗を見てある男の顔が思い浮かぶ。


プトレマイオス・メンティフィス


言うまでもなくプトレマイオス共和国の国王である。


イスパーニア撤退戦での裏切り行為により、アガルタ管理局は大打撃を被り、西オーレリシア諸国連邦機構軍とその他亡命政府をカルタゴまで撤退させることに成功した大英雄である。


その人物がなぜ、俺たちに攻撃を?


「理解に苦しむ」


「そんなこと考えている暇なんてなさそうですよ」


「ああ」


アスガとフィオナ、ユーマは東砦を飛び出て、大砲や破壊槌をはじめとする攻城兵器破壊へと軍を動かした。


敵国兵やモンスターを侵入させないために作った城壁といえど、大砲などの攻城兵器には敵わないということぐらい、アスガには分かっていた。ならば先にすること等、すぐにわかる。


アスガ、フィオナ、ユーマの三人での突入により、城門に迫っていた敵を一掃。次の突入部隊のための陣地を確保した。


「城門開門!!」


アスガの一言により城門は開門され、確保された陣地に友軍が飛び出す。


敵軍と衝突している隙を見て、三人は攻城兵器破壊へと移った。


「よほどのレベルがない限り、この城壁を破壊するなど不可能だ。特に危険なのは大砲だ。破壊しに行くぞ!!」


「「はい」」


とはいえ、攻城兵器は大抵後方に置かれ、遠距離で攻撃してくるのが基本である。


つまりは、後方で指揮しているだろうと思われるあの忌まわしき男との勝負をアスガは考えていた。






レベルの上がったアガルタ共和国兵に、徴兵した若手の兵士など、敵ではなかった。


アガルタ共和国城壁周辺から陣地を奪ったアガルタ共和国軍は工兵による野戦陣地が作られていた。


一時撤退したプトレマイオス共和国軍だったが、後方で攻城兵器が大打撃を加えられていたという事実は、降伏後知ることになる。




――――――プトレマイオス共和国軍 後方陣地

「ったく・・・・あいついねえぞ?」


「いくら探してもあの男は出てきませんね」


三人は、大砲や攻城兵器は奪ったほうがお得ということで、扱う砲兵だけを選んで総攻撃。攻城兵器をほぼ無傷で、奪い、指揮官をとっ捕まえ用としたが、どうやら魔導士だったようで、現実世界で言うホログラフィーを魔法で再現。


捕まえることはできなかった。


さらに指揮官はあの男でなかった以上、プトレマイオス共和国の反アガルタ共和国過激派による攻撃なのではとも考えたが、未だ謎のままである。


「仕方がない。とっとと残りの部隊やっつけて、お前らのレベル上げでもするか」


「無益な殺生は良くないですよ」


「降伏勧告っていう考えないんですかね?」


「敵に情けは無用。生きていたら助けてやる」


完全に戦闘モードのアスガ。フィオナ、ユーマ、二人に敵に回したくない男ランキングなるものを作ったとするならば確実に一位にランクインするであろう。


そして、味方に付けておくと安心する男ランキングでもおそらく一位になるであろう。






「攻城兵器による支援攻撃が来ないな」


「先ほど、連絡用の遣いを送ったんだが」


「コイツのことか?」


「ん?」


アガルタ共和国軍兵士は突然の声に振り向く。その声の主は仮想世界で知らぬものはいないであろう、悪名高きアガルタ共和国国王アスガ。


「なかなかいいオブジェクトだろ?」


「ひいぃぃ!!」


手に持つのは首だけになった連絡兵。アスガの歩いた道はその血でぽたぽたと続いている。


「さあ、今から質問しよう。というよりも人生の選択だ。あなたの人生を変えるかもしれないクイズ“アスガ”へようこそ。司会のアスガDEATH」


“ボト”


アスガは手に持つオブジェクトを投げ捨てた。


「今から君たちがする行動は二つだ。俺の降伏勧告に従い、武装解除、そして人質になることだ。もう一つは武器を持って俺たちと戦うことだ。だが、もし戦うことになれば」


“グシャアアアアア”


落ちていたオブジェクトはアスガが跡形もなく踏み潰した。

足裏からした垂れ落ちるネバネバした赤い何かと黒い繊維。


「こうなることは覚悟してもらおう。時間は30秒です。ちなみに答えなければ、君たち全員俺の足の裏の何かみたいになるから。そのへんは注意してね」


一瞬にして震え上がる兵士達。


「たたたた、た、たったの一人じゃ、ねえか。俺たちはここに居るだけでも数千人。全軍合わせりゃ、数万はくだらないぜ・・・」


ひとりの男が震えた声で言う。


「確かに・・・そうだな。怯えることはねえ。相手はたったの一人だ。全員でかかれば怖くねえ」


「そうだ!!やっちまおうぜ!!」


声は大きくなり、その数は別の部隊を合流させた分どんどん増えていき、数え切れないほどになっている。


「この手のバカは減らねえんだな・・・フィオナ、ユーマ・・・レベル上げだ。ちょうどいいだろう」


「流石にここまでくれば無益な殺生なんて言いませんよ」


「いいレベル上げですね。行きますよ?」


「かかれえええええ!!」


その声と同時に動き出す数万の軍勢。森林を開拓して作られた簡易陣地だが、逆にこれだけ広いと、アスガ達にとっては戦いやすい。


「まあ、遊んでやるか」


その後の結果は何も言わなくてもわかるだろう。


3対数万


勝利したのはアスガ達3人だった。


レベル220代に突入したアスガにレベル200に近いフィオナ。そしてレベル100代に突入したユーマ。


それに対して、レベル50に満たない敵が数万。基本ステータスがすべて一緒でレベルの差が一あるなら、二人がかりで向かって倒せるかわからないほどの理不尽な設定なのだ。


その上、基本ステータスは現実世界のスペックで決まる。


握力20と40なら、現実世界では20kgの差であるが、仮想世界A.Sでは現実世界の三倍という設定で、握力の差が60と120で割合は変わらずとも60kgの差がでるのだ。


つまり、レベルが一違えば、二人相手で勝てなくなるというのは、基本ステータスが全く同じ場合の話。


基本ステータスに二倍以上の差があれば、レベルが2や3違っても勝てなくなる。


ましてや、アスガみたいに基本ステータスが高く、さらにレベルが220代の人間にそこらの雑魚プレイヤーが徒党を組んだところで、叶う道理などあるわけがないのである。






「本当に雑魚だったな・・・・」


アガルタ城に戻り、なんの疲れもなく戻ってきたアスガ達を見てイリヤは口を開いて唖然としている。


「あの~・・・危なそうな人は?」


「メンティフィスのことか?あいつならいなかったぞ」


「そうですか・・・だからそんなに疲れてないんですね」


「ああ。あいつがいたら、激戦になっていたに違いない。今のレベルはわからんが俺と同程度ということだけはわかっているからな」


「しかし、彼らは何が目的だったんでしょう?ほとんどがNPCによる雑魚プレイヤー。プトレマイオス共和国と連邦の旗を掲げていましたが、装備はまるで・・・この前ぶんどった攻城兵器ですが・・・プトレマイオス共和国のよりもかなり発達したものです」


フィオナはユーマとソーマに調べさせた結果を報告する。


「・・・・・ふむ。聞いてみるしかないだろう。プトレマイオス共和国に電撃訪問だ」


「・・・・あの~おそらく、あの男なら戦場に出ると思います」


今までの経験上、アスガと同様戦場に首を突っ込むタイプだと知ったフィオナ。

ある意味で似たもの同士なのである。


「・・・・・オーレリシア戦線か・・・」


アガルタ管理局・・・通称人狩りと連邦との間に起こった全面戦争。


だから、こんな時期にプトレマイオス共和国がアガルタ共和国に攻めてくることがおかしいと思った。


そうか・・・そういうことか・・・


「何かわかったんですか?」


「ああ。おそらく・・・あいつらはプトレマイオス共和国軍じゃねえ。アガルタ管理局軍だ。あのメンティフィスが、猫の手も借りたい状況なのに、NPCの軍隊を戦場に連れて行かねえわけがねえ。NPC兵が使えなくとも、この攻城兵器だけは使える」


「となると・・・人狩りによるアガルタ共和国とプトレマイオス共和国の対立を望んでいると・・・」


「ああ。しかも3ヶ月前の連邦構想で対立したばっかりだ。せめてくる状況的におかしくないわけでもない。だが、メンティフィスの事を考えればそんなことはしないはずだ。目の前の厄介事から潰すはずだ」


「乗せられる所でしたね」


「まだ、確実とは言えないから、NPCの連中から聞き出すしかねえが・・・真実が暴かれた瞬間、アガルタ管理局にはどでかい花火を撒き散らすことを約束してやる」


アスガはこの時既にこの国を守るため、アガルタ管理局侵攻を頭の中で整理していたのだった。


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