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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第四章 つかの間の平和
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STAGE6:連邦構想

「なんで私まで?」


アガルタ共和国軍副指揮官であり、アスガの右腕とも言うべき存在であるLv.144のフィオナは顔を少し赤らめ、恥ずかしそうにつぶやく。


一緒に歩いているのはアガルタ共和国・・・・いや、A.S内で知らない者はいないというべき存在であるアガルタ共和国の偉大なる指導者の国王アスガ。


もう一人は偉大なる指導者国王アスガを支える形式上王妃であり、そしてフィオナの妹であるイリヤ。異母姉妹ではあるが、この世界では常に一緒にいて、支えあっていた。


アスガとイリヤは久しぶりに街に出ているのだ。自分がここにいるのは邪魔なのではないかと思い居心地が悪いフィオナ。


「俺と一緒に外に出るのは嫌なのか?」


「いえ・・・そういうわけじゃ・・」


「良かった。俺のこと嫌いになったかと思った」


「・・・・・・・」


アスガとフィオナ。二人のやり取りを見ているとこの頃思う。


(なんで・・・・王様とそれに仕える剣士というだけなのに・・・)


イライラする。今回だって本当は二人で行きたかった。


(いっそのこと・・・邪魔でも入ればいい)


そう思っていた時だった。


「アスガ様!!」


「ん?」


ここはアガルタ城の城下町であり、アガルタ共和国の首都でもある。その中で、アスガひとりを探し出すには相当な苦労があっただろう。


つまり、それだけ急用な話だというわけだ。


「ユーマにソーマ・・・久しぶりの出演だな」


「そ、そんなことは」


「どうでもいいのです」


ユーマとソーマはうまくセリフをつなげることに成功した。


「で、そこまで息切れをするほどだ。急用な話でもあるのだろう」


フィオナは腰に手を当てて前かがみに顔を突き出す。


「ちょっと近いです・・・ひ、東村の・・・砦に・・・あの男が・・・」


「あの男?」


あの男とは誰だ?


「プトレマイオス共和国国王・・・・メンティフィスです」


(本当に邪魔が入りましたね・・・・これはこれでさみしいです)


「・・・・あいつはほんとに俺のことが好きなようだな」


「そうなんですか?」


イリヤは驚きの声を上げ、アスガを見つめる


「言葉の綾だ。気にするな」


そう言うとアスガは東砦へ走り出した。




――――――東村防衛戦東砦

「久しぶりだな」


砦の真上からある男を見下すアスガ。


そしてアスガを見上げるメンティフィス。


「ああ。話がある」


「またか・・・・」


これで何度目だ・・・そう思いながら、アスガはユーマとソーマに門を開けさせる。


「なんの話だ」


「それは城で話そうじゃないか」


メンティフィスはアスガの肩に手を置く。それを見ていたフィオナはメンティフィスに対して今にも人を殺せるのではないかというほどの殺気を放つ。


「そこの美人さん・・・今ここで戦争を起こす気ですか」


メンティフィスの側近であるフェリム・ローウェンは殺気立っているフィオナをたしなめる。


「少しでも、事を起こしてみろ・・・貴様らを・・」


そこでフィオナの口は遮られた。


「フィオナ安心しろ・・・もし何かあったら殺す役目は俺だ」


「・・・・分かりました」


四人は冷戦状態のままアガルタ城へと向かった。





――――――アガルタ城

「お茶を用意しました」


イリヤはこの国の王妃だというのにも関わらずお客様であるメンティフィスとフェリムに対して、メイド役をやっていた。


「これが噂のさらわれたお姫様・・・・」


「そうらしいな・・・・・・」


メンティフィスとフェリムは目を合わせてはイリヤを見る動作を繰り返している。


「話があるんじゃなかったのか?」


「おお、そうだったな(これがお姫様か・・・・なかなかの上玉だが・・・サーチ)」


メンティフィスはイリヤをサーチし、情報を確認する。


(タイプ・・・魔導士・・・レベル38・・・高くはないが普通だな)


それだけ見てメンティフィスはイリヤの情報を得るのをやめた。


(これといって目立ったものがないのに、アガルタ管理局はなぜさらったのだ?そしてアスガはなぜ助けに行ったのだ?)


謎は謎を呼ぶ。これ以上考えるのをやめよう。そう考えたメンティフィスはアスガと向き直った。


「これを見てくれ」


メンティフィスはアスガにある紙を提示する。


「なになに・・・連邦構想?」


アスガは紙に書かれている文字とメンティフィスの顔を交互に見ながら疑いの懸念を隠せずにはいられなかった。


「ああ。アガルタ管理局を打倒するため、ここは、国を関係なしとした、国際的な連合体構想を考えるべきではないかと思って・・・」


その言葉に嘘はなさそうだ。


・・・・ただ、何かを隠している。それだけは容易に理解できた。


「アガルタ共和国に参加しろと?」


「ああ。ちなみに、北の大国東オーレリシア帝国、中央の覇者サルデーニャ=ポートランド帝国も参加を表明。お前らの北に位置する新生カルタゴですら、賛成の立場を示した」


「賛成ね。参加ではなくて」


「ああ」


(あのクローデリアとウォルダーだ。奴らを賛成まで説得させるのは時間がかかっただろう)


腕組をして怪訝顔をするアスガは口を開いた。


「こんなものに参加して俺たちに何のメリットがある?」


「軍隊を連邦軍に移籍させることにより、西オーレリシア諸国連邦機構の失敗を防ぐためだ。彼らは連邦とはいえ、経済と通貨の統一だけだ。軍隊は統一化されていないため各国の作戦方針の違いがあの戦いの泥沼を生んだのだ。統一化され高度な組織的行動を取れれば戦局は我らに傾くだろう」


「・・・なるほどね」


連邦構想に参加する国家の軍隊を合わせたら、アガルタ管理局など敵ではないだろう。

アガルタ管理局だけを打倒するならばそれでいい。昔の俺なら加盟しただろう。


ならば、その後はどうなる?アガルタ管理局を倒したら、アガルタ管理局という共通の敵を失うことになる。共通の敵を失えば、残った大国・・・・プトレマイオス共和国、サルデーニャ=ポートランド帝国、東オーレリシア帝国。この三国は次の覇権を目指して争うだろう。


アガルタ共和国やカルタゴ等の小勢力は大国間同士の争いに巻き込まれる。さらに、争うだろう大国が加盟している連邦に加盟していたらそれこそ争いに巻き込まれる可能性は上がるだろう。


まてよ・・・戦後構想まで考えての連邦構想・・・この国が守られるならともかく、いわば、これは武装放棄とおなじだ。連邦という大きな勢力の下に各国がつく。その連邦直属の機関が連邦軍というわけだ。


アガルタ共和国が連邦に加盟したところでアガルタ共和国に就く連邦軍が元アガルタ共和国軍とは限らない。むしろ、東オーレリシア帝国軍等と関わりのない軍隊かもしれない。


そうなれば連邦軍の好きたい放題だ。


連邦の意向に逆らうようならば、連邦軍による抹消も考えられる。国家は丸裸の人間。各国に配備される連邦軍は裸の人間に巻きつけられた爆弾。

連邦の意向に逆らえば爆発する。つまり、それは国家の解体というわけだ。


・・・・考えればわかる話だ。連邦の上層部に位置するのは大国の指導者だ。戦後の世界山分けのための一つとも考えられる。そして連邦上層部・・・各国指導者の下にあるのが連邦軍・・・


俺たちのような新興小国を止めるための鎖だ。連邦と言う名の鎖に縛り付け、これ以上大きくならないようにするためのものだ。


「・・・悪いが断る」


「ほう・・・なぜだ?」


「アガルタ共和国の軍隊を連邦という組織の下に置く。だが、この国を守るために駐屯する連邦軍が、元々この国を守っていた軍人じゃない。だとすれば、確実に俺を縛り付ける鎖だ。俺が何かしようとしたら連邦の駐屯軍は市民を人質にしてまでも俺の動きを止めるだろう。国民を危険な目に遭わせる必要もない」


「・・・・やはりそうきたか。予想通りで面白くない」


「お前の思惑通りで動くのが嫌なだけだ」


二人は互いににらみ合い、机上での冷戦を終えた。


「そうか・・・だが、既に連邦という国際機関は作られた。そして、連邦は加盟していないのはこの世界において国ではないと判断した。よって・・・・お前たちアガルタ共和国とアガルタ管理局・・・この二つは連邦と友好以下の関係だ。それだけは覚えておけよ」


そう言うとメンティフィスは側近のフェリムを連れて帰っていった。


「何がしたかったんだ?」


訳がわからないアスガ。だが、ひとつわかったこと。アガルタ共和国はアガルタ管理局以外にも新たな敵ができたということだった。



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