STAGE3:本来のアスガ
「成程・・・・そういうことですか」
「はい」
とてつもない勘違いをしたフィオナに事情説明をしたところ、彼女は赤面をして頭を下げた。
「しかし、あのイリヤ様が・・・・」
「いや、いいんだ。俺から巣立ったのだから。見送ろう」
「はあ・・・・」
この人がそういうのだから何を言ってもしょうがない。そう思い、ダンマリを決めたフィオナだが・・・
「グス・・・・・」
「?」
空耳だろうか?鼻声が聞こえた気がする。
「・・・・グス・・・・グス」
「えーと・・・・アスガ様?」
「・・・・・どうすりゃいいんだよおおおおおおおおおおお!!!」
「お、落ち着いてください!!」
いきなり泣き出したかと思うと叫び出す王様。ちょっとイメージが崩れかけていただけに、崩落するイメージは加速する。
「だって・・・・だって・・・・・俺、あいつに誘われてここにいるのに、あいつに嫌われたらここにいる意味ってなんだよ!!」
「あの~アスガ様、カルタゴ遠征で頭おかしくなりましたか?」
「おかしくない!!」
それとも・・・
フィオナはカルタゴ遠征前のある一見を思い出す。
アスガはフィオナにやさしく包み込みこまれ、胸元で大泣きをした。
(・・・・まさか、あれで!?)
孤独で戦ってきたアスガ。それを優しい空間に連れてきたイリヤ。そして涙腺を爆発させたフィオナ。
彼を塞ぎ込めていた鎖が外れ、感情が豊かになった。
そういうことなのか?フィオナの頭の中では上記の結論が出てきた。
(い、いつもの姿とのギャップが・・・・いや、これはこれで・・・・)
前回以上にかけ離れたアスガの姿に思わず凝視するフィオナ。
「な、なんなんだよ!!」
半泣き状態で赤面するアスガ。
(可愛い~///)
「あの~アスガ様は、イリヤ様のことが好きなのでしょうか?」
「え?」
ほうけた声で返事する。
「いや、だから好きなのかどうか」
「ん~いきなり言われてもなあ・・・・なんか違う。ただ、好きとかじゃなくて、嫌われたら俺終わるみたいな」
「はあ・・・・」
意味が分からない。フィオナの率直な意見。
たしかに、アスガがイリヤのことを好きと思っているならば、イリヤのアプローチを受け入れるだろう。それを受け入れないところを見て、好きとは違う感情ということが再び結論としてフィオナの頭の中で出された。
(好きとは違う感情か・・・・・)
よくわからないが、なぜかホッとするフィオナ。
「アスガ様はおいくつで?」
「俺か?・・・・ゲーム始めたのが高一で王様になったのが高三だから・・・19かな?」
「そ、そうですか・・」
まさかの年下・・・・私より2~3歳程度上だと思っていたんですけど・・・
「あ、あまり女性の年齢を聞くのは好きではないが、フィオナは?」
「・・・・20です」
「・・・・まじか。俺より年上だったのか・・・」
「年上は嫌ですか?」
首をかしげて上目遣いで見つめてくる。金髪碧眼にこれは反則です。
「嫌というか・・・今までのことがあって・・・その、これから扱いが難しい」
「今までどおりでいいですよ。それともなんです?また胸元で泣きますか?」
「恥ずかしいから、思い出させないでくれ」
「冗談です」
段々と本来のアスガの扱い方が分かってきたフィオナは嬉しそうに話を進める。
「アスガ様とイリヤ様の関係を戻すのをお手伝いしましょうか?」
「・・・ホント?」
「ええ。もちろんです」
「お言葉に甘えさせてもらって・・・お願いします!!」
正座をして堂々と頭を下げる。
「俺は口下手だからあんまりうまく気持ちを伝えられないから、手助けしてくれるならありがたい」
「では、フィオナにお任せを」
そう言うと元気よくフィオナは廊下を飛び出ていった。
「あっ・・・あいつの居場所知らねえ」