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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第三章 カルタゴ奪還戦争編
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STAGE7:二人目の勧誘者

「宴だ!!宴だ!!」


ここはカルタゴ首都のチュニス。かつては西オーレリシア諸国連邦機構最後の国として連邦構成国の難民や軍人、政府関係者の亡命先となり、多大な人口と、それによって流れてきた軍事力と財力によりアガルタ管理局ですらイスパーニア帝国制圧後も侵攻をためらっていた大国だ。


今となってはその面影はなくアガルタ管理局にやりたい放題され、首都であるチュニスはむさぼりつくされたと言っても過言ではない。


だが、それでも、この国を奪還できたのはアガルタ管理局に対しての反攻の序章であり、またA.S内の人々とオーレリシア大陸中に響き渡る希望のニュースである事には間違いない。


衛生環境のひどかったチュニスもNPCと正規プレイヤーの合わせた数十万の都民と軍人によって改善はされ、今日は奪還記念日としてお祭り騒ぎである。


「にぎやかですね」


「ああ」


チュニスに待機していたイリヤはアスガの隣で上から宴を見下ろしていた。


(あれから・・・元気がありませんね)


作戦兵力の70%の兵力を失い帰ってきた。


アスガとしては今まで最強を誇ってきた自分のプライドが傷つけられた気分で仕方がない。


(くそっ!!あんな化け物が二人もいるのか!!)


口に氷を突っ込みボリボリと噛み砕く。


(アイテールであの強さだ。アガルタなんて言ったら俺が勝てる領域じゃない)


アイテールの魔粒子光線に手も足も出なかった。


「どうしたんですか?」


「ん?いや、なんでもない」


「そうですか」


しゅんとするイリヤ。


(顔に出てたか・・・・こいつの前ではそんな顔しちゃいけないな)


あまり心配ばっかかけさせると国民から反感を買いそうだ。そう悟ったアスガは表情を和らげる。


「イリヤ」


「はい?」


「俺だけじゃない。クローデリアもフィオナもユーマもソーマもみんな、みんな心配していたんだからな。帰ってきたらみんなに謝って、その笑顔で元気づけてやれ」


「言われなくても分かっていますよ。アスガさんも辛気臭い顔はやめてくださいね」


「!!」


「どうしました?」


「いや、そんなに俺顔に出てたか?」


「いや、そういうわけじゃないんですけど・・・無理やり作っているのがわかるんで・・」


「そうか・・・」


すこししんみりするアスガだが、そんな顔をいつまでも続けていられるような事態ではなかった。


「大変です!!」


「?」


首都チュニスの警護をしていた兵士が慌てて戻ってくる。


「どうした?」


みんな宴に熱中しており、誰一人耳を貸す雰囲気がないためしぶしぶ話を聞くことにした。


「サ、サルデーニャ帝国女帝・・・・シルヴィア・サルデーニャが・・・・突然の来訪!!」


「は?」


訳が分からなかった。メンティフィスから聞いた話ではサルデーニャ帝国女帝はポートランド皇国との同盟関係構築のためにポートランド城にいるためここにいるはずがない。


「訳の分からんことを・・・」


それ以上の言葉は続かなかった。


“パァン”


渇いた銃声。響きわたる悲鳴。宴会はたった数十秒でパニック会場となった。


「なんの真似だ?」


「我が名はサルデーニャ帝国女帝シルヴィア・サルデーニャだ」


そう一言言うと地面に何か丸い塊を投げ捨てる。


「うっ!!・・・・なんだこれ?」


丸い塊は一方に海藻のようなモノをつけて赤色に染まっている。


それを近くの枝でつつくアスガ。


「人間の・・・頭か?」


シルヴィアはこくりとうなづくと、口を再び開いた。


「ああ。そのとおりだ。アガルタNo.2アイテールの生首だ。ついさっき残りの数千の部隊と共に消えていった」


アスガはシルヴィアに眼を飛ばし、下に見られないよう注意する。


「こんな物を持ってきて、俺たちになにしろと?あいにく俺は生首専門の質屋じゃないんでね」


「クックック」


周りから笑いをこらえるような声が聞こえてくる。とりあえず、周りの緊張を少しぐらいはほぐせただろう。


「貸す?まてまて。アガルタNo.2アイテールは貴様たちにとってどれだけの強敵か・・・わからない訳がないだろう。貸すのではなく、私はよこせと言っているんだが」


「ほお、適当に恩を作っておこうと。まあ、敵対する意思はないのが分かった。が、何が欲しい?ペロペロキャンディーでも舐めるか?」


そう言うとアスガは、側にいたイリヤにキャンディーを渡す。


「そうだな。それもいいが、私が欲しいのはあいにく飴ではない」


冗談がきかない奴め。しかし、俺たちから何を取るってんだ?アガルタ共和国の売りといえば、武器と資源だけだ。アガルタ管理局と対等に戦う力は無い。


「簡単に説明しろ」


「そうだな。こんな遠まわしに言うのは私らしくない。単刀直入に言おう。アガルタ共和国国王アスガ・・・私の仲間にならないか?」


「・・・・・・はっ?」


自分の耳を疑った。いや、それは俺だけではない。周りの、周辺の人々も自分の耳を疑っただろう。


「もっと簡単にいえばいいのか・・・私も下へ来い」


「却下する」


彼女が話し終えたコンマ一秒もたったのだろうかという疑問が出てくるぐらいの速さで答えたアスガ。


「ほう。それほどまでにあの貧乏国家がいいのか?それとも、あの無能なお姫様のところがいいのか?」


「!!」


アスガの理性はそこで失った。


「だれが・・・・無能だって?」


「なっ!!」


一瞬のうちにアスガとシルヴィアの間合い10mの距離を移動したアスガ。その移動姿を目で捉えられたものは誰一人としていなかった。


(こ、この距離を・・・・私が確認できない程のスピードで移動したというのか!!)


「あんたが、どれだけ素晴らしいお姫様だか知らないが・・・俺はあいつ以上に素晴らしいお姫様は知らないんでね!!」


「これ以上シルヴィア様に手を出すな」


シルヴィアの側近であるシェリベスはようやく状況を飲み込み、剣の矛先をアスガに向ける。


「今はお取り込み中だってのがわからねえのか!!」


“ベギィ”とハスキーな音をたてて、シェリベスの剣はあらぬ方向へ曲がった。


「・・・・・・」


口をぱくぱくさせながら、今起こった状況を飲み込めないシェリベス。


まだ腕一本で剣を曲げたならわかる。そこそこのレベルの人間なら出来ることだ。

だが、今、アスガのしたことは、利き手ではない左手のそれも小指一本で、いとも簡単に剣を曲げたのだ。


「今は見逃してやる。だがな、次俺の目の前でそのセリフ吐いたら・・・・」


視線をシェリベスとその他シルヴィアの部下に目をやったあと、再びシルヴィアに目を合わせる。


「こいつらとてめえをバグにしてやる」


「・・・・・・・」


周りの兵士はアスガがブチギレたところを見たことがないため恐怖に怯えてしまった。


「ふふふ、ははははは。そうか。そう簡単に私のもとに来たのでは面白くない」


いきなり高笑いをしたシルヴィアを見てこいつ頭がおかしいのでは?と思った兵士も何人かいるだろう。そして側近であるシェリベスでさえ、不思議に思ったのは確かだ。


「ますます、お前が気に入った。かならずや、アガルタ共和国を我が帝国の一部として見せよう。その日まで、待っていろ!!」


高らかに宣言するシルヴィアは負けという言葉を知らないのか・・・・勝ち誇った姿で堂々と凛々しくその場から姿を消した。


「ア、アスガ?」


「な、なんなんだ?あのおかしな連中は・・・」


アスガは一人なぜシルヴィアが笑ったのか悩んでいた。


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