STAGE5:Dirty
「ひゃひゃひゃ!!貴様らの力はこんな物かあぁ?」
「ぐっ、強い!!」
アイテールの指示により、突き進むアガルタ管理局軍。緩衝地帯に一人立つアスガに対して包囲戦で挑む。
だが、アスガにとってはその包囲戦こそ待っていた展開だった。
「俺を包囲してくれるなんて・・・まるで、殺してくださいって言わんばっかりだな!!」
次々に集まってくるアガルタ軍を薙ぎ払うに包囲戦に展開されたほうが良い。そう考えていた。
「ぐわああああああ」
ひと振り。能力も使わず、ただ、闇雲にひと振り。だが、そのひと振りはアガルタ管理局軍に対してレベルの差を見せつけるのには十分すぎる行為だった。
「これが・・・偽アガルタの王か。いいじゃないですか」
メガネをかけて馬に乗る男はニヤニヤしながらアスガへと近づいてくる。
「君がアスガ君ですか・・・・」
「なんだお前」
見るからに「親のすねかじっていた課金プレイヤー」ですよと言わんばかりの体型。身長は170有るか無いか程度。だが、脚の長さ70cmは無いと見える。
体重はよく肥えましたね。と、“大変良くできました”のハンコがもらえるぐらいに太っている。
「・・・・見るからにリアルで職業ニートだな」
「なんだと!!」
「・・・・・(図星ですね)」
「ア、ア、アガルタ中央議会No.9のダーティーをコケにしてくれたなああああ!!」
ダーティーって・・・・昔の言葉で汚い。
意味知ってつけたのかな?
「汚い奴を苔にしてやったんだ。感謝してくれよ。苔に昇格したんだからさ」
馬が可哀想になるくらいの重さを乗せられたまま走らされて、俺に突っ込んできた“汚い”は無闇に剣を振るっただけで、俺は姿勢を低くし、馬を引っ掛けた。
「苔だけにこけたな。そのまんま、コケみたいにおとなしくしてろ」
「うっ・・・・うっ・・・・・」
「は?」
勝手に泣き出した通称“汚い苔”に理解ができず、頭にクエスチョンマークを浮かべざるを得ない俺。
「現実世界ではデブや汚いって言われて、必要されていなかった僕が、この世界では課金のおかげでこの地位を得られたのに・・・・」
金がすべてか貴様は!!
「こんな奴に・・・・・」
なんと言えばいいやら・・・・・
「僕の居場所はこの仮想世界だけなのに・・・・童貞だった僕も・・・親の通帳全部使ったから、金でものを言わせて童貞卒業したのに」
最低な野郎だ・・・・こいつ。
「仮想世界まできて、こんな童貞野郎に・・・・罵られる。僕の居場所返せ」
すいません。もうついていけません。
「いつまで遊んでいるんですか?アスガ殿」
後ろから援軍として来たクローデリアは呆れ口調で俺を見る。
「いや・・・ただ、こいつの話についていけず・・・呆れてしまった」
「呆れただと?」
「???」
なんでこいつ切れたんだ?
「王様になってハーレム作って遊んでばっかいる野郎に言われたくない!!」
「さすがに切れるわ・・・・お前さっき俺のこと童貞って言ったよな。この社会の底辺野郎があああああ!!!!!」
「ぐわああああああああ」
鼻水垂らしながら剣を持って突っ込んできた“汚いデブ苔”はあえなくアスガに退治されバクになりました。
「ダーティー様が・・・・一撃で」
「なんということだ」
ダーティーの部下だと思われる兵達からはざわめきと驚きの声が聞こえてくる。
そしてそのざわめきと驚きの声から知った驚愕の事実。
「さっきの社会の底辺野郎・・・・レベル175だって・・・」
「ほんとですか?」
「あいつらが言っていたんだ。間違いない」
だが、俺は確実に言えること。
A.S序章の[STAGE8:アスガ王]でアスガによってバクになったグラディウスより弱い。
ちなみにグラディウスは死亡時点でレベル104。
“汚い社会の底辺デブ苔野郎”のレベルは175。
レベル71の差があれば負けることはまずありえない。
有りうるとしたら基本ステータスの値がよほどカスか、相手がよほど高いか。それだけである。
「本当に社会の底辺だったんだろうな・・・・」
ついさっきバグになったダーティーの亡骸を見て、直にそう思うアスガであった。