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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第三章 カルタゴ奪還戦争編
46/71

STAGE4:アイテール

―――――旧カルタゴ領北部


「数だけは揃えてきたか」


「そのようだな」


18万まで膨れ上がったプトレマイオス・アガルタ連合軍と、これ以上の連合軍の進軍を阻止するため数だけそろえられたアガルタ管理局軍20万は約5kmの緩衝地帯を挟んで対峙している。


「私はアガルタ管理局中央議会のことはよく知りません。故に、誰を注意するべきか教えていただきたい」


俺とメンティフィスの経緯を話したところ、敵の情報を知りたいとのことで、メンティフィスに聞いているクローデリア。


「俺も今確認とっているところだ。少し待て」


鉄の仮面に首を保護する防具。そしてサイドにはランスと重装備された馬に、全身金属鎧だらけの重装備兵であるメンティフィスは望遠鏡で敵軍を見る。


「特に・・・目立ったやつは・・・いない・・・わけがねえ!!」


「あん?」


「・・・・やべえのがいたぞ」


「誰がいたんだ?」


「アガルタ管理局中央議会No.2・・・・アイテールだ」


「へぇ・・・No.2か。それは面白いな。すぐさまそいつの首を奉ってやるぜ!!」


「No.2ですか!!」


攻撃的かつ、好戦的なアスガとは逆にクローデリアはNo.2という言葉にアレルギー的に反応し、顔が青ざめていく。


「どうした?」


「ア、アスガ殿・・・・あれはアスガ殿と同じ・・・いや、それ以上の正真正銘の化け物です。カルタゴの大地を焼き払った男です」


「ああ。いい勝負しているな。今のレベルはわからんが、あの時はレベル30ぐらいだったからな」


元々アガルタ管理局に籍を置いていたメンティフィスはクローデリアの知らない話をする。

アスガに対して話しをしていたのだろうが、なんのお話だ。と心のうちで突っ込んだクローデリア。


心の中なので反応してくれる人はいない。


「だが、ここで撤退するわけもいかんだろう。早々奴の首を討ち取ればいいんだろう?」


楽観視するアスガ。戦力差は2万。とはいえ、1千対2万1千ではない。18万対20万なのだ。ここまで差を縮めての戦力差2万など、さほど大したことはない。


ここで差が出るのは兵士の合計レベルもあるが、平均レベルである。


基本ステータスが全員一緒ならば、レベルが1違うだけで相手に勝つなど、不可能といっても過言ではない。そして、よほどのことがない限り、基本ステータスで差が出ることはまずない。小学生と社会人であるならば、基本ステータスにそれほどの差が出るのはおかしくないが、MPだけで、数十万円。A.Sでもそこらの家庭用ゲーム機と値段が変わらないのだ。


中学生が買えるような値段ではない。よほどの金持ちしか買うことができない。


しかし、高校生にもなるとバイトでお金を貯めて買うことだってできる。

夏休みに引越しのバイトを毎日して30万近くためて、買ったという話がある。


そして高校生と大人。わずかな基本ステータスの差はあるが、レベルが1違うだけで大人が高校生に勝てなくなる。それほどまでに基本ステータスの意味がなくなるのだ。


「平均レベルなら、俺たちの方が高いだろう」


「そりゃあなあ・・・・」


アスガのレベルは211。


それに続くプトレマイオス・メンティフィスのレベル203。クローデリアのレベル144。ウォルダーのレベル138。メンティフィスの側近フェリム・ローウェンのレベル134。


「確かに・・・これだけ集めれば、5人だけでも20万の軍勢に勝てそうだ」


「だが、アイテール・・・・・あいつは違う。唯一アガルタと対等に渡り合える実力を持つ」


「ほぉ・・・俺を差し置いてか。いい度胸だ」


「アスガ!!」


18万のきれいに並んだ軍団から一人緩衝地帯へと突撃するアスガ。

周りの兵士は止めても無駄だと誰一人止めようとはしなかった。






―――――アガルタ管理局軍陣営

斜面の地形を活かすように鶴翼の陣でアガルタ管理局軍20万の軍勢は連合軍と対峙している。そしてその中央に立つロングコートにフードをかぶる男は怪訝顔をしていた。


「あいつはなにものだ?」


アイテールの側近であるアガルタ管理局中央議会No.8でレベル104のフリードはアイテールの質問にさっそうと答える。


「おそらく・・・・アガルタ共和国国王だと」


「成程・・・面白い奴だ。命知らずの若造というわけか」


にやりと笑うアイテール。側近のフリードは嫌な予感しかしなかった。


「あの若造・・・・私が葬ってやろう」


アイテールはフードとロングコートを脱ぎ、体中金属だらけの忌々しい身体をさらけ出す。

そして右手をアスガへと標準を合わせる。


アイテールのゴツゴツした金属製の右義手は手のひらに穴があいており次第に緑色に発光していく。


その光はうっすらとしていた光からだんだん濃くなり、エメラルドのような輝きを帯びている。


「消え去れ!!」


右義手の平に空いている穴から一直線に伸びる緑色の可視光線。


“ドゴオオオォォォォン”


アスガが立つ一帯へ向けて放たれた光線はアスガ周辺の広大な土地を吹き飛ばし、焼き野原へと変えた。


「な、なんなんですか・・・・あれは?」


フェリム・ローウェンはその絶大な威力に恐れ、衝撃波で倒れた。


「あれが・・・・アイテールの武器。MET兵器だ」


アガルタ管理局に在籍していたこともあって、元仲間のことをよく知るメンティフィス。


「西オーレリシア大戦での最後の戦いだったイスパーニア撤退戦。あの可視光線でどれだけの軍人と民間人と、彼らにあった生活が破壊されたか・・・」


「MET兵器・・・・国際法上禁止されている武器では?いや、それよりもこの世界で作ることが不可能では?」


小型の魔導機関を搭載し、銃や大砲等の物理的攻撃兵器よりもさらに強力で資源を必要としない兵器。それがMET兵器だ。


そして、千年も前の世界をもとにして作られた仮想世界だ。そんなもの置いてある訳がない。


「あいつは別だ」


「あいつは別だって・・・・それに、MET兵器は通常兵器の効かない悪魔化した人々を処分するデーモンデリーター限定で使用許可された武器で、常人が扱えるような武器では・・・・はっ!!」


デーモンデリーターはある程度のMETを浴びせることによって遺伝子細胞を変化さえ、常人では考えられない身体能力を手にした人々であり、悪魔化した人々を処理する守護者である。


MET兵器に搭載されている魔導機関は出力向上のため、本来あるMET吸収能力はなく、METをエネルギーに変えるだけである。


つまり、MET兵器の弾薬であるMETは体に蓄積されたMETであり、強力なMET兵器を操るには間接的にMETを操る技術が高くないと扱えないのである。


そして、右手の義手がMET兵器だとしたなら、仮想世界A.Sにログインした時点でMET兵器を持ち込んである。


そのことから、フェリムは悟った。


「ま、まさか・・・・」


「そのとおりだ。アイテールはデーモンデリーターだ」


「・・・・」


みんなが息を呑む。


「所属は高須ホールディングスカンパニー。一度悪魔に襲われて体の一部が機械化されている。右手は義手とMET兵器の両方を兼ね備えている。とはいえ、あの魔粒子光線はそう簡単にバカスカ打てないがな・・・」


メンティフィス曰く「アガルタ内でMET兵器を整備できる場所がどこにある?整備のしようがないから何百発も打てない」とのこと。


「それじゃあ・・・・」


「ああ。レベルがいくら高くても、あいつに勝てる奴などまずいない。基本ステータスだけで、常人のレベル100はあってもおかしくない。いや、それ以上かもしれない」


アスガでプラス40と言われているのだ。100ばかりではないだろう。


「だが、あれくらいではアスガは死なないだろう」


緩衝地帯の中央は巨大なクレーターが出来ており、砂煙と高熱の炎で燃え広がっており、命あるものが生きていけるとは思えない生き地獄だった。


そして煙が風に流され、段々と視界がはっきりしてくる。中央に仁王立ちする影。


「ほらな」


誰が何を言おうとアスガだった。






「うそだろ・・・・」


アガルタ管理局軍からは気の抜けた声がちらほら聞こえてくる。


「ア、アイテール様の魔粒子光線を防いだとは・・・」


「・・・くっくっく・・・そうでなくては。面白くない。全軍・・・アガルタ共和国国王を討ち取れ!!奴は緩衝地帯に一人だ。進撃せよ!!」


馬に乗ったアイテールを先頭に鶴翼の陣のまま進軍していく。


ここにカルタゴ奪還戦争が始まって初の・・・いや、A.S内でかつてない大規模な戦いが繰り広げられようとしていた。





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