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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第三章 カルタゴ奪還戦争編
43/71

STAGE1:首都奪還前夜

「突撃!!」


プトレマイオス共和国国王プトレマイオス・メンティフィスは声を上げ、15万の軍団へ指示する。


国境沿いをいとも簡単に突破したプトレマイオス・アガルタ連合軍はアガルタ管理局が実効支配するカルタゴへとなだれ込んだ。


人としての扱いを受けられなかったカルタゴ市民は連合軍を歓迎し、多数の協力者を得られたことは、連合軍の進軍をスムーズにさせた。


たったの二日でカルタゴ南部を制圧したのだ。


やはり、カルタゴ第二師団の民衆の心をつかんだ効果が大きいだろう。





「本当か?」


「ああ。噂だと、あのカルタゴ軍精鋭の第二師団までも参戦しているそうだ」


ウォルダーとイリヤはカルタゴ中部の元カルタゴ首都現スラム街と化したチュニスに身を潜めている。アガルタ管理局は戦線維持のため一時後退し、カルタゴ北部での戦線構築に励んでいるため、カルタゴ中部のチュニスにはアガルタ管理局軍は大規模な部隊を置いていない


もぬけの殻のチュニスで二人が聞いた話は、プトレマイオス共和国がカルタゴ奪還を称して、アガルタ管理局に宣戦布告をしたという話だった。


「カルタゴ第二師団・・・」


イリヤは息をのんだ。カルタゴ第二師団が所属している国はアガルタ共和国。


「皇女さん・・・それって・・」


「アスガさん・・・・です。あのアスガさんが・・・動いた」


イリヤはその事実に嬉しくもあり、また複雑な気持ちだった。


「大丈夫なはずなのですが・・・・」


「何か不安でもあるのか?」


「いえ、ただ、アスガさんらしくないというか・・」


「らしくない?」


アスガという人物をイリヤから名前と話だけしか聞いていないウォルダーはいまいちピンと来ていない。


「はい。アスガさんはアガルタ管理局を潰すためにこの身を費やしてきた人です。私を助けるためだけに出兵するとは思えません」


「なんでだ?お前はあの国の皇女じゃないのか?」


「そうですけど、私の役目は肩書きと、国民に対して笑顔でふるまい元気づけることだとアスガさんは言ってくれましたが、実際には利用できる価値がないということです」


「考えすぎじゃないか?」


「私にとってアスガさんは大切な人ですが、アスガさんにとっての私はそこまで重要には思われていません。だから私を助けるためだけに動くなんてありえません」


「そんなに強い奴なら一人で来ても安全だろ?」


「そうもいかないんです。アガルタ共和国は何度かアガルタ管理局による襲撃を受けてきました。アスガさんがたまたまいなければ、今頃この国はなかったでしょう。アスガさんは基本的そこまで遠くまで足を伸ばしません。なぜだかわかります?」


遠くまで移動しない。移動しないのではなく移動できない。移動したいのにもかかわらず・・・


ならその原因は?


何度も受けたアガルタ管理局による襲撃。つまり、アガルタ軍の基地が近くにあった。もしくは、国の中にスパイか国を偵察している兵がいる。


アスガがもしいなくなれば、人海戦術で攻めてくるだろう。


「成程。自分がいなくなれば、アガルタ管理局が攻めて来るだろう。イリヤひとりの命とアガルタ共和国国民の命。国民の命を取るということだな」


「あたりです。だから、ただ単にここにせめて来るなんてありえないです。多分、私を人質として使われることを国の統治の妨げになると思い、仕方がなく動いた。もしくは、・・・」


「もしくは?」


「カルタゴ第二師団だけです。アスガさんは来ていません」


「そうか・・・」


悲しげな顔をするイリヤになんにも声をかけられないウォルダーだった。





「どこだ?どこにいる」


「アスガ殿!!お待ちください!!」


南部での戦いが終わり、南部最大の都市トズールに連合軍は駐屯している。

そしてアスガはクローデリアと共にイリヤを探していた。


「どこだ!!」


「むやみに探しても見つかりません。聞き込みをしましょう」


「・・・・それもそうだな」


感情的になっていたアスガはクローデリアの静止を聞き、深呼吸をしていつもの状態に戻した。


「その調子です。アスガ殿。冷静さを失ったら、アスガ殿ではありません」


「うまいこと言いやがって」


気を遣わせてしまった。アスガはそう一言自分に言い聞かせた。





「そんな奴なら北の方に持ってかれたよ。大事な献上品だとか言って」


「そうですか・・・・」


「やはり、メンティフィス殿の話が一番新しいようです」


あちらこちらで聞き込みを開始したが、得た情報はすでに古い情報で、新しい情報は手に入らなかった。


「脱獄する前のアガルタ管理局中央議会にもっていかれそうになったところまでだな」


「そうですね。しかし、これではイリヤ様の情報が全く手に入りません」


「そうだな。だが、言い方を変えれば今はまだ安全域だ。変な噂が出回っていたほうが、気分が悪かった」


それはごもっともです。と、クローデリアがつぶやくと、近くに巨漢がいた。


「皇女様は見つかったか?」


プトレマイオス・メンティフィスはアスガに飲み物を渡す。


「あいにくさまで・・・見つからねえよ」


アスガは渡された飲み物を一口飲むと、現状説明を始めた。


「そうか・・・・俺の部下のカルタゴの元首都チュニスでの話だ。アガルタ管理局は戦線維持のため北部へと後退し、そこで戦線構築をしている。つまりカルタゴ中部にあるチュニスはもぬけの殻だ。そこで、イリヤ皇女に似た人を見かけたという話がある」


「・・・・」


「信じてないだろ?まあ、俺も聞いた話だからなんとも言えん。しかし、ここまで付いてきた甲斐はあったろ?」


「なんとも言えないな」


「まあ、明日にはここを出てチュニスに入都する。そこで、そこのクローデリアとか言ったな。あんたにはカルタゴ解放軍の代表者として演説してもらう。そのほうが、チュニス都民の統治が楽だ。なんせ軍政を敷くわけだからな。反感を買いやすい。カルタゴ第二師団となれば、皆言うことを聞くだろう」


「お安い御用だ」


「その際に人が集まるから皇女さんも探しやすいだろう」


「成程」


「それだけを伝えに来た。今日はゆっくりと休めよ」


一言付け加えると、メンティフィスは重そうな身体で歩き始めた。


「演説・・・楽しみにしてるぜ」


アスガはメンティフィスから受け取った飲み物を飲み干し、クローデリアに期待を込める。


「アスガ殿の楽しみはイリヤ様の笑顔でしょうに」


「ぶはあああああ!!」


飲み込む前の少しぬるい状態の飲み物を盛大に吹き出す。


「汚いです」


「お、お前が・・・変なこと、いうからだ」


「図星ですか?」


「1%も当てはまらない」


「なら0.1%ぐらいは当てはまっているということですね」


「お前こんなキャラだったか?」


「冗談ですよ。では、私はこの辺で」


「ああ」


アスガとクローデリアは敬礼をして自分の持ち場へと戻っていった。





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