STAGE15:VSリリア-前編-
「くっそおおおおおおおおおお!!」
甲高い金属音。交わる刃。
「はあん!!いいわ、本当にいいわ。私感じちゃう!!」
地上ではマドリードで大規模な市街地戦が繰り広げられる中、その真下の地下壕ではレベル140代による激戦が繰り広げられていた。
「リリアの姿して、卑猥なこと言うんじゃねええええええ!!」
「あら?本当のリリアは私よ」
「っ!!」
言い返せないのが辛い。自分が作られた人格を宿した人狩りとひとつ屋根の下、寝食を共にしていた事実。そして、自分が作られた人格だということを何も知らないもう一人のリリアが偽物だということに。
「だ、黙れえええええ!!」
闇雲に大型の剣を振るう。
「すごい筋力値ね。地面が震えるなんて・・・あなたを私の虜にしたぐらい・・・」
「リリアの姿をして話しかけるなああああ!!」
「だからぁ・・・何度も言ってるでしょぉ・・・本物のリリアはわ・た・し♥」
「気色悪いんだよおおおおおお!!」
リリアの振るう剣を大型の剣で受け止める。
「くっ!!」
リリアは余裕だった顔を少し歪める。
アスガの防御力と筋力値を足した数の方がリリアの攻撃力の2倍以上あったのだ。そのため、自動カウンターが入り、リリアにダメージを与える。
「レベル143のリリアはこんなものかああああああああ!!」
自動カウンターによってひるんだリリアに容赦なく攻撃を仕掛ける。剣の先を集中に狙い、リリアから武器を奪う魂胆だ。
「くぅぅ!!」
「どうした?そんなんで、戦争ギルド“嘆きのライオン”最強のアスガを倒せると思ってるのか!!」
「ひゃあ!!」
怒りに任せた攻撃により、リリアから剣が吹き飛ぶ。その隙を逃さず、リリアに突進し、のしかかる。
「捕まえたぜ。どういうことか、きっちり話してもらおうか?」
両腕の手首を片手で掴んで、尋問を始める。
「うっ・・・ぐす・・・」
「泣いたって許さねえぞ」
「ア、アスガさん・・・・ど、どうして・・・そういうひどいことするんですか?」
「!!」
「隙あり!!」
「がはあああああぁぁぁぁ」
リリアがもとに戻った。そう錯覚したアスガはリリアに対しての尋問を途中でやめてしまう。その隙にリリアがアスガの脇に蹴りをお見舞いした。
「危なかったわ」
「ゲッホ・・・ガハ・・・」
「さすがに仮想世界でも人体急所の一つなんだよね。脇の下って・・・」
「くっ・・・・」
アスガは蹴られた右の脇の下を左手で抑えながら荒い呼吸を繰り返していた。
「でも、私はけられるよりも・・・舐められる方が好きかな」
「舐めてんのか?」
「いいえ・・・舐められたいって懇願してるだけよ」
「だったら、お望み通りファックしてやるよ!!」
痛みが和らいだところで再びリリアに食いつくアスガ。吹き飛んだ剣を拾い上げ、迎撃体制を整えるリリア。
一進一退の攻防。だった。まるで決着がつかない。だが、その膠着した状況はアスガの優勢へと傾いていた。リリアのお色気攻撃は元々アスガには効かなかった。過去のリリアを真似ることによって隙は生まれたが、もう効かないだろう。
レベルの差は2。アスガのほうが下だが、そのレベル差を上回る本来のステータスにより戦況は変わりつつあった
「はああああ!!」
「キャアアアアアアア!!」
アスガの振り回した剣によりリリアの剣は、地下壕の壁へと突き刺さり、体ごと吹き飛んでいった。
「はあ、はあ、てこづらせやがって・・・」
「・・・・」
リリアは死を覚悟した。アスガは目を閉ざしたリリアの体に乗り、剣を振り上げる。
「・・・・・・」
死を覚悟したリリアの死は一向に訪れない。
「・・・・」
「どうして・・・殺さないの?」
アスガ本人もわからなかった。自分の手が、剣を持っている自分の手が、リリアの首の近くで止まっていることを。
「・・・・・早く殺しなさいよ・・・できるだけ苦しまずに・・・・」
「・・・・・」
だが、アスガの腕は動くことはなかった。震えている手。顔は歪んでいる。歯を食いしばり、頬を流れる涙がリリアの顔に落ちる。
「殺さないって言うなら」
リリアはアスガが自分を殺さないと悟った上で、アスガを押し倒す。
「私が殺すわ」
「・・・・そうしろ」
「えっ?」
意外な発言に戸惑いを隠せないリリア。
「殺したければ殺せ」
「な、なんで?」
「俺は・・・お前を殺すなんて無理だ。たとえ偽物だったとしても、仲間のお前を殺せるか!!」
「!!」
リリアの戸惑いはさらに加速する。
理解できない。それがリリアの内心だった。
「ほ、本当に殺すわよ?」
「やれ・・・・出来るだけ楽に・・・してくれ・・・」
死を覚悟するアスガ。ただ、楽に死なせてほしい。彼の願いはそれだけだった・・・




