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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第二章 過去編
37/71

STAGE13:裏切り

「334!!」


「ギシャアアアア!!」


「はぁ、はぁ・・・」


剣を杖としてリリアは息切れを起こしている。

背中合わせで戦っているアスガもそれなりに疲労がたまってきている。


「あらあら・・・・もう終わり?」


アルテミスは指の間に挟んでいる3つの召喚石をペロペロと飴のように舐める。


レベルだけならアスガの方が遥かに上だ。だが、唯一負けているところといえば魔力だ。

元々魔法など頼らず、セルファーとしての剣技で勝ち残ってきたアスガ。


召喚士であるアルテミスは無尽蔵にある魔力によって召喚石から次々とモンスターを召喚する。アスガはアルテミスに近づこうとも近寄れない。


「めんどくせえな・・・」






「うをおおおおおお!!」


「ひゃっはー!!」


何度もぶつかる衝撃音。火花。シュージとタナトスは同じ槍騎兵としてランスを振り回し戦っている。


「吹っ飛べ!!」


シュージはランスが混じり合うと同時に擲弾を乱射した。


「ぐええええええ!!」


前回とはことなり焼夷弾ではなく、建物の爆破解体作業に使われる梱包爆薬を使用した威力の高い擲弾。


タナトスは爆発を直で受け吹っ飛んでいった。


「どうだ!!」


「・・・・ケホケホ。いいねぇ・・・いいよ。その感じ」


「梱包爆薬の擲弾が直撃したのだぞ・・・」


これがレベル100代の力か・・・


「お楽しみはこれからだぜ!!!!」





「消化活動急げ!!」


“ドガアアアアァァァン”


盛大な爆発とともに吹き飛ぶ砦の破片。


「くそぉ!!」


アスガ達嘆きのライオンが守る要塞陣地はタナトスが打ち返した要塞砲の砲弾により要塞砲2門爆破からの弾薬庫に引火。爆破は留まらず頑丈で強固な要塞は内側から破壊されていった。


「嘆きのライオンの所にアガルタ18柱が集中している。ここが先に落ちたとなったら、雑兵共が押し寄せてくるぞ!!」


魔法による消化活動も虚しく、炎上と爆破は止められず。燃え広がる一方だった。それにともない、雑兵たちは次々に嘆きのライオンとその他が守る防御陣地へとなだれ込んできた。







「こんなんじゃいくら弾薬あっても足りないよ!!」


ユーリはせっせとボルトアクションライフルを撃ち、雑兵共を仕留めている。


同じ防御陣地の別のトーチカからはガトリングガンやフランキ砲などの大砲で応戦しているが、なだれ込んでくる雑兵を止めるには至らず時間稼ぎにしかならない。


「頑張ってくれ!!」


アスガは近寄る召喚されたモンスターを切りながらせっせとアルテミスに近づいていくが、ちっとも近寄れない。リリアはユーリの直属として、近寄るモンスターを確実に葬っている。


シュージは前方でタナトスと激戦を繰り広げている。


そしてエージは俺たちに回復魔法を使って体力を回復させてくれている。


「・・・・きりがねえ」


ソニックウェーブを使えば簡単だ。だが、そんなことしたら見方まで巻き添えにする。それだけはどうしても避けなければならなかった。


「応援にきました!!」


トーチカとフォックスホールから湧き出てきた大量の軍勢に、アガルタ軍の雑兵たちは押し返された。


「誰だ!?」


「後方の要塞陣地守備隊です。先程の攻撃により要塞陣地は要塞としての利用価値なしとの判断でマドリード司令部からこちらの防御陣地へと進軍してきたんです」


使われていなかった塹壕からはぞろぞろとガトリングガンやフランキ砲、ボルトアクションライフルを装備した兵士が溢れている。


「司令部はここを最重要拠点と定め、マドリードからも増援が来ます。後方の安全地帯からも多数の男性を徴兵していますので、相当の支援部隊が予想されます」


「ほう。それは心強い。で、そんな報告している場合ではないだろう。何が言いたい」


「司令部からの伝言です。嘆きのライオンをマドリード防衛に使うと」


「つまり、俺たちは引き上げろと?」


「はい。正確的にいえばアスガ殿は確実に連れてくるようにと」


そんなに自分たちの命が大事か・・・・そして、俺に代わって何百、何千の命をここに連れてくると・・・


胸糞悪いぜ。


「俺に拒否権は?」


「実力的に考えればありますが、本来はありません。それにイスパーニア最強の戦士をここでアガルタ18柱に殺させるわけにはいきません」


「アスガ行け!!」


「!!」


不意に聞こえた声はエージの声だった。


「ここは俺たちがなんとかする。お前は生き残るんだ!!」


それに続いてタナトスと戦闘中のシュージからも声が聞こえる。


「ついでだ。リリアもつれて行け!!」


エージは何を考えているのか俺にはわからなかった。

俺がいなくなればそれこそここでの戦線が瓦解するのは目に見えている。なのに・・・


「安心しろ。アガルタ18柱の1番から3番はほとんどこちらに赴かない」


「・・・・分かった。リリア。行くぞ!!」


「は、はい」


俺はリリアの手を掴んで地下壕を進んでいく。






「そろそろ行ったか?」


シュージはボロボロになりながらもタナトスを追い詰めていた。


やはり、試作品とは言え、強力な擲弾を乱射できる武器はタナトスを追い詰めた理由の一つだろう。


「タナトス・・・・貴様もそろそろ逝くんじゃないか?」


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


タナトスは息切れしていた。


さらに周辺はアガルタ軍の雑兵の死体で埋まっていた。タナトス狙いで乱射した擲弾があちらこちらに飛び散り、雑兵の大軍に命中。そして、戦線瓦解を防ぐため、そしてアスガの代わりとしてきた1万もの援軍は後退していた戦線を押し戻した。


「タナトス・・・死ねぇぇぇぇ!!」


“バコンバコンバコン”


ランスから噴き出てくる擲弾。そのコースは全てがタナトス直撃コースだった。


「シールド オン」


「!!」


タナトスの目の前でシュージが放った擲弾はすべて防がれた。


「なんの真似だ・・・エージ?」


「ふっ・・・そのまんまさ!!」


エージはタナトスに回復魔法を使った。


「裏切ったのか!?」


「いや、裏切るも何もない」


「お前たちは騙されていたんだよ」


回復したタナトスはランスを元気よく振り回す。


「俺はアガルタ18柱の6番目。エージ・・・いや、ゲオルグだ。よろしく頼むぜ。シュージ」


「そ、そんな・・・・馬鹿な!!」


どうやって俺たちからステータスを偽装していたんだ?


シュージはすぐさまにエージ・・・ゲオルグのステータスを確認する。

そこにはNAME欄にゲオルグ。Lv.の所に128と書かれていた。


「ば、馬鹿な・・・・こんなことが可能なのか?」


「俺の職業はなんだ?魔導士だぞ?それぐらい朝飯前だ」


「魔導士に・・・そんな力が・・・・」


「そろそろネタばらしもいいんじゃないか?」


「アイテール・・・」


アガルタ18柱の2番目。アイテールまでもが顔を出した。


「そうだな。どうせ死んでいくんだ。それぐらいのことをしてやれ」


タナトスまで口をはさむ。


「どういうこと?」


何一つ理解できていないユーリはパニック状態に陥る。

そして1万の兵も雑兵は居なくなったとはいえ、アガルタ18柱が4人も並んでいる姿にたじろぐ。


「リリア・・・あいつはアガルタ18柱の四番目。本人はそのことを知らずレベルは56だ」


「ど、どういうことだ?」


「人格追加魔法ってのを知っているか?本来のリリアのレベルは143だ。だが、普段は56。俺の魔法が発動した時は本来の姿を取り戻す」


「な、何を言って・・・」


同じ女性であり、リリアと一番仲が良かったユーリは彼らの言っていることに追いついていけなかった。


「なにも疑いもかけずに二人っきりで歩いているとき、人格追加魔法が発動して本来の姿になったリリアをアスガは倒せるのだろうか?」


アスガのレベルは141。リリアのほうが2つも上だ。


「エージ・・・貴様!!」


「悪いな・・・これも戦争だ」


「くそおおおおぉぉぉぉぉ」


嘆きのライオンが守る防御陣地は4人のアガルタ18柱に陥落させられた。

崩れた戦線は戻すことはできない。そこになだれ込む何万もの兵を止めることはできなかった。そしてイスパーニア政府は首都を放棄。イスパーニア南部へ撤退と同時に遷都。


同時にマドリードではイスパーニア政府を逃がすため市街地戦が起こっている。


だが、アスガ達はそれを知らずに今だ地下壕を歩いている。


ただ、ひたすらと・・・


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