STAGE8:開戦
「エージ・・・いや、ゲオルク。作戦の方は?」
「順調です。このままいけば全滅も」
「そうか・・・より効率よく戦いを済ませてくれ」
「了解しました」
エージは自室に置かれているMET送還器の受話器を置き、ため息をつく。
「これで終わりか・・・」
その意味深な発言を聞いていたものは誰もいなかった。
――――――サラゴサ
「これが・・・・アガルタ管理局」
イスパーニア帝国と旧レオン王国現アガルタ管理局との国境沿いの城塞都市サラゴサの守備隊へと回された俺たち戦争ギルドは城塞から国境を望遠鏡から覗いている。
「すげえ大軍だ」
貧弱な軽装兵やランスを抱えた騎馬隊、全身鎧に包まれた重装甲兵まで色とりどり。
「あの体のでかいやつ・・・重装甲兵だな」
全身鎧に身を包み、巨大な楯と剣を装備する重装甲兵。
「ありゃあ・・・・アガルタ18柱の一人だな」
「知ってるんですか?」
後ろで仁王立ちしていたシュージは望遠鏡付きヘルメットの望遠鏡を外す。
「ああ。アガルタ管理局が恐れた戦争ギルド“嘆きのライオン”だぜ。何度アガルタ18柱と戦ったことか」
というよりも戦わされたに近いが・・・
「それでLv.99まで上がったんですね」
「Lv.141のお前に言われたくはないな」
「嫌味ですか?・・・ん?」
「どうした?」
望遠鏡を除いていたアスガの様子が気になったシュージはヘルメットに取り付けられている望遠鏡をのぞく。
「アガルタ軍が・・・・・・・」
「・・・・・・動き出した!!」
――――――国境沿い
「アガルタ軍が動き出した。作戦通り退け!!」
国境警備軍の指揮官は戦闘が始まる前に撤退を始めた。
それに続くかのように容赦なく進撃するアガルタ軍。前線指揮をしているのはアガルタ18柱No.1アガルタである。
「進め!!全てを焼き払い、なぎ倒し、我らの地とするのだ!!」
「うをおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
アガルタ軍の雄叫びは国境から40km離れたサラゴサまでうっすらだが聞こえていた。
イスパーニア軍は国境から2kmまで退き、事前に作ってあった塹壕に身を隠す。
そしてそれをおそうかのごとく突き進むアガルタ軍。だが、彼らは知らなかった。イスパーニア軍の作戦を。
「うを!!」
「うわああああああ!!」
「うげええええ!!」
膨大な長さに作られた2.5mほどの落とし穴に引っかかったアガルタ軍は数千人規模。さらに一人でも落ちた瞬間油を塞き止めていた杭は外れ一気に穴に向けて油が流し込まれる。
「弓兵部隊。放て!!」
塹壕から放たれる弓には全て火がついていた。
上から降り注ぐ火の矢は埋もれていくアガルタ兵を突き刺し、油に引火させアガルタ兵を焼き払っていく。
イスパーニアの大地を焼く前に自軍の兵士が焼かれていく姿をアガルタはどう見るのだろうか?
「進め!!突き進め!!味方の屍を超えて行け!!」
アガルタの考えは非情で残酷だった。
「ひでえなこりゃ」
「そうですね」
城塞から眺める俺たちは燃えた自軍の屍を踏んで突き進むアガルタ兵を塹壕で狙撃手や砲兵、弓兵による遠距離攻撃で殺していくイスパーニア兵を見ていた。
だが、異常なほどの物量戦に味方の死骸を楯に進むアガルタ兵の姿は恐ろしいものだった。
「なんだこいつら!!自軍の死を恐れねえ!!」
「く、来るな!!」
何十万もの兵力を有しているアガルタ軍に対し弓矢による攻撃は微々たるものだった。
「魔粒子砲用意!!」
アガルタ軍の後方部隊では魔導機関を応用し小型化に成功した魔粒子砲による遠距離射撃の準備ができていた。
「MET濃度・・・・基準値突破。いけます」
「魔粒子砲・・・・発射!!撃てええぇぇ!!」
“パシュゥウウン”
風を斬るような音が連続して鳴り響き、同時にいくつもの魔粒子砲から緑色の発光体が飛び出されていく。
綺麗な弧を描き飛んでいく発光体は急速に降下し、イスパーニア軍の塹壕陣地へと次々に降り注ぐ。
「うわああああああ!!」
「た、助けてくれええええ!!」
強固な塹壕は現実世界の兵器に対しては役に立たず、次々に破壊され、塹壕は突破された。
「突破された・・・・」
城塞都市サラゴサの外壁からその光景を見ていたアスガは戦慄を覚えた。
「魔粒子砲の小型化・・・・そんな物まで」
「この戦争・・・早く片付くかもな」
「縁起でもないこと言わないでください」
「なかなか現実味があるけどね」
シュージのさりげない言葉にツッコミを入れるリリア。そんなシュージの考えに少なからず賛同するユーリ。
なんとか落ち着いている4人だが、この4人にも招集がかかる。
「イスパーニア軍将校及び西オーレリシア諸国連邦機構軍将校その他オブサーバーは司令部へ集合。繰り返す・・・」
「俺たちオブサーバーの招集か・・・」
「ここまで早く塹壕が打ち破られるとは想定外だっただろうな」
「グダグダ言ってないで早く行くぞ!!」
シュージの一言により3人は動き出す。
司令部を目指して。戦いは近い。