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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第二章 過去編
31/71

STAGE7:前日

「入るぞ」


俺は2回ほど扉をノックしエージの部屋へと入った。


「アスガか・・・まあ、腰掛けてくれ」


俺はそばにあった椅子に腰をかける。


「で、俺を呼んだ要件は?」


「ああ。今度のイスパーニア国境での起こりうるであろう戦争についてだ」


「俺も大方予想はついていた」


「俺の本質は司令塔だが、今度ばかりは俺も参戦する」


「そうか・・・どういう風の吹き回しだ?」


「俺たちギルドもメンバーが5人になった。俺たちがこれ以上戦争ギルドとしてやっていく力はない。いや、すでに壊滅し、形こそ残されているが既にイスパーニア帝国軍に編入されていると言っても過言ではない」


俺は少佐。エージは大佐。シュージは中佐。ユーリは大尉。そしてリリアは中尉。


「お前は生き残るかもしれんが、ほかのユーリや、シュージですら厳しい戦いになるかもしれん」


自分も戦う。いままで前線から身を引いていたエージが言うぐらいだ。相当な事態なのだろう。


「敵戦力は13万と聞いたが?」


「毎時100人のペースで増えている。一日で2400人ペース。4日でほぼ一万人増えている計算だ。13万と発表されてから1ヶ月が立つ。計算すれば72000人だ。既に20万を超えていてもおかしくない。奴らは確実に西オーレリシアを席巻する腹だ。比べて俺たちの戦力は全軍を合わせても7万人足らず。3倍の戦力にどう立ち向かうというのだ?」


成程。そういうわけか。


「で、俺たちの仕事はなんだ?」


「最強の18人と面切って戦い、全員殺す」


「・・・バカ言ってんのか?」


「事実だ。だから先に言っておく。戦争が始まったら、俺たち戦争ギルドは解散だ。完全にイスパーニア帝国へと編入されるだろう。報酬金は既に貰っている。危なくなったらリリアを連れて逃げろ。お前のほうが年もレベルも精神的にもお前の方が上だ」


「仕事はどうする気だ?」


「仕事よりも命の方が大事だ。今まではなんとかこなしていける仕事だったが、この任務。無理だと判断した」


「・・・・分かった。ならばせめて一つ・・・敵の最強の18人について聞いておきたいことがある」


「なんだ?」


「知っている限りでいい。どのくらいの実力なんだ?」


「・・・詳しいことは知らん。だが、一番低くてもレベル50前半。一番強い奴はレベル172と聞いた」


「172・・・・か」


俺のレベルは本来のレベルプラス40と考えていいと聞いたが、そいつが俺みたいなパターンの奴だったら、敵わない。


「そしてレベル50以上が18人・・・か」


「どれだけひどい惨状かわかったか?同盟国軍の戦力は俺たちを抜けばイスパーニア軍司令官がLv.99で最強だ。一般兵はレベル10~20がいいところだ。彼らは無難にレベルを上げてきたものだ。これぐらいが妥当だ。ましてやお前みたいに永遠にソロで、しかもPHするような高レベルプレイヤーばかり狩るPHHをしてきたんだ。レベルの差は明らかだ」


「それぐらいわかっている」


「一触即発の状態だ。いつ俺たちが招集されるかわからない。今のうちに相方のリリアとは話をつけておけ」


「分かった」


俺はそういうとエージの部屋を出た。


「どうしましたか?」


部屋を出ると近くに腕を後ろに組みながら壁にもたれかかるリリアの姿が目に写った。


「次の戦い・・・予想はできていると思うが・・」


「イスパーニア防衛戦ですね」


「ああ・・・・部屋に戻ろう。そこで話すよ」





「レベル50以上が18人・・・・ですか」


「ああ。エージすらあの重い腰を上げて前線に出ると言っていた」


本来司令塔であるエージが出るということは危険極まりないことだ。司令部がやられたら指揮系等が機能しなくなるからだ。


「俺は戦うつもりだ。もともとあいつらに復讐するためにこのギルドに入ったんだ。奴らを殺し尽くすまで俺は戦い続ける」


「強いんですね・・・私なんかに比べて」


「強いんじゃない。俺は・・・強くはないんだ。自分の弱いところを外見だけの強さで隠し続けた結果がこれだ。強くはない」


たしかに、レベルや、ステータスだけで見たら強いかもしれない。だが、それが本当に強いという意味を持っているのかどうかは不明確なところだ。


あの時・・・健介を守れなかった。あいつらを取り逃がしてしまった。そして復讐だけにこのA.S内をさまよい、力を求めた結果、誰もが認める強さを手に入れた。


だが、心の中は健介が殺されたときに誓った復讐に一心を染めて、何一つ進歩しちゃいない。


「それでもアスガさんは誰もが手に入れることができないほどの力をもっています。あなたが望む強さとは違うかもしれません。でも、それは私たちにとっては心強いのです」


俺はイスパーニア防衛戦でイスパーニアが負けたとわかればエージの言った通りに撤退することができるのだろうか?リリアを連れていけるのだろうか?


俺の心はアガルタ管理局メンバー全員の抹殺。そのことに自我を忘れてリリアを戦場に置いてけぼりにしないだろうか?それだけが心配だ。


「そうか・・・・心強くいられればいいけどな。いつ開戦かわからない。今日この日もこの国が攻められるかもわからない」


「肝に命じておきましょう」


「ああ。おやすみ」


「おやすみなさい」


俺は電気を消して、眠りについた。この時はまだ明日が開戦になるとは知らずに・・・・



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