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A.S  作者: オーレリア解放同盟
第二章 過去編
29/71

STAGE5:威力偵察

「そこを左に進め」


今回威力偵察隊隊長のシュージは背中にMET送還機を背負っており、現地から100km以上離れているエージの声が聞こえる。


俺たちには居場所を知らせるために地図と情報を同調するためのリンク魔法がかけられている。そのため事実上の司令部であるエージのところからは地図上で俺たちの位置を確認することができる。


「了解」


エージの指示に従い森を駆け抜けていく。森林迷彩を施した装備にステルスを保持していることからモンスターは勿論。相当な高レベルプレイヤーじゃない限り俺たちを発見することは無理だ。


「そこから上に何か見えないか?」


「・・・了解」


エージの指示に従いシュージは山頂を見上げる。


「みんな見ろ!!」


シュージは指を山頂へ差し、それに従い隊員は山頂を見上げる。


「あ、あれが・・・」


「アガルタ管理局根拠地・・・」


山頂をまるまる削り取り、何層もの防壁に中央に立つ数十階建てのビルのように高くそびえ立たつ塔。魔導機関により供給される光。掘り出されるMET。


「成程」


「何が成程なの?」


アスガのつぶやきに突っ込むリリア。


「ここはMETベルト地帯なんだ」


「METベルトとなんの関係があるの?」


METベルト・・・METの集合地帯なのだが、MET自体は惑星内部で作られるため、METベルトがあるのは火山ならぬ魔山であり、火口ではなく魔口から出てくるのである。


「大量のMETが噴出するMETベルト地帯ならそこで武器の製造が可能で、電気の供給もできることから、ひとつの街となることもできる。まさに敵にとってはそこに根拠地を作らないわけがない。奴らが現実世界の技術を行使して魔粒子砲などの兵器を開発したとなれば、さらにこの要塞の地理的優位性は向上する」


METを投射する兵器が開発されていたとなれば、弾薬は無制限。そうなるとこの要塞は誰一人落とすことができない」


「・・・・」


俺のお話がそんなに怖かったのか・・・リリアは口を開けてポケェ~としている。


「・・・あれはなんだ?」


ほかの隊員が口を上げていう。


「あの外壁の周りが異常に光っているんですけど」


「どれどれ・・・」


シュージは双眼鏡を手に再び山頂を見上げた。


「外壁の周りに・・・砲台多数。形が現実世界のものにそっくりだ」


「・・・・伏せろ!!」


シュージの言葉を聞き嫌な予感がしたアスガはリリアを抱いて伏せた。それと同時に


“ドガァァァン”と響きわたる轟音。そして吹き飛ぶ大地。とんでくる無数の緑色の発光体。まさしく、魔粒子砲による攻撃だった。


「なんで奴らが現実世界のものを!!」


「話はあとだ。撤退する。エージ!!聞こえるか?」


[プツ━━━━]


帰ってくるのは無機質な音ばかり。


「おい!!エージ!!」


なんども繰り返すが帰ってくるのは先ほどと同じ無機質な音。


「送還機が壊れています!!」


よく見るとシュージの背負っていた送還機は魔粒子砲による攻撃の二次的被害を受け壊れていた。


「くそっ!!」


シュージは背中の送還機を投げ捨てた。


「ぐわあああああああ!!」


「きゃああああああ!!」


次々と魔粒子砲による一斉射撃の餌食になる隊員。そしてシュージは下す。


「生き残るために全員逃げろおおおお!!」


その言葉と同時に“嘆きのライオン”は撤退した。









「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・生き残っているものはいるか?」


何十分走ったのだろう・・・・休む頃になると砲撃地点が小さく見える。


「俺とリリアはなんとか・・・」


「ユーリも生きていまーす」


元気で甲高い声が聞こえた。だが、俺の視界には映っていない。


「ユーリ・・・どこにいるんだ?」


「ここだ!!ここにいるぞ!!」


俺に対し猛抗議をし、ぽかぽか叩こうとするが俺の腕より腕が短いため頭を抑えられて殴ることができない。


「う、うぅぅ~」


今にも噛み付きそうな勢いで唸るユーリ。


「女の子がそんな声を出すんじゃありません」


16歳にもかかわらず身長151cmの小柄ながらも射撃を得意とするLv.64の狙撃手ユーリは生き残っていた。だが、この突然の総攻撃に生き残ったのはたった4名。


「4人か・・・・あれだけの攻撃を受けて4人も生き残ったのだ・・・善しとせねばならん」


たしかにシュージの言っていることは間違いではない。視界が砂煙と埃で埋まるほどのもう攻撃を加えながらも生き残ったのだ。運が良いというほかあるまい。


「だが、俺たち“嘆きのライオン”は事実上完全に組織的壊滅をした」


まだ生きている奴がいるかもしれない。という淡い希望が出てきたが、焼け野原になった場所と、未だにそこに集中的に繰り広げられる魔粒子砲による大規模攻撃は俺たちの希望を打ち砕いた。


「・・・・すまん・・・俺たちはお前らの欠片すら持って帰ることができない。そんな俺たちを許してくれ」


「シュージさん・・・」


「俺は・・・いつか・・・アイツと手を切るかもしれん」


そう言い残すと俺たちはイスパーニアに戻っていった。


「たった5人で・・・何ができる!!」


シュージは自分の無力さを嘆いた。

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