STAGE1:出会い
これは、本名赤澄凌雅。A.S内ではアスガと呼ばれる俺のまだギルドにいた時の話・・・
時代は今から3年前に遡る。
―――――西オーレリシア
日が暮れて、漆黒の夜が訪れ、森が不気味に鳴く。
ここはイスパーニア帝国とアガルタ管理局との国境沿い。
「生存者はいるか?」
メガネをかけ鋭い眼光を光らせながら十数人に指示する男。
その男の指示に従い、十数人は辺を探索する。
「エージさん。いません」
エージと呼ばれるリーダーにあらゆるところから報告が聞こえる。
「こちらも・・・人狩りとリアルIRAメンバーの死体しかありません」
「そうか・・・」
アガルタ管理局・・・通称人狩りが手始めに潰した国。
それは西オーレリシアの北西に位置するアイルランド。
アガルタ管理局との戦争に敗れたアイルランド軍は同盟国であるウェールズ王国へ海を渡って逃げ、そこでリアルIRAと呼ばれるギルドを作り上げる。構成メンバーは旧アイルランド軍とその他アイルランド人からなる約1万人の大兵力。
だが、アガルタ管理局の進行が激しさを増すにつれ兵員は撤退と比例するかのように減少。
レオン王国での撤退戦の際にほぼ全滅したと聞く。
増援に来た俺たち戦争ギルドは生存者がいないか探索中だ。
なにせ、少人数になったとはいえ、リアルIRAは実践経験の豊富な少数精鋭ギルドだ。
PMCみたいに戦争を請け負うギルドにとっては喉から手が出るほど欲しい人材だ。
「うっ・・・うっ・・・・」
俺はエージの声が聞こえないぐらい遠いところで探索していた。別に生存者を探すわけではない。これだけの精鋭部隊だったのだ。いい武器でも持っているだろう。人狩りの残りでもいたら狩ろう。そう考えていた。俺の頭には人狩りを潰す。それだけだった。
この状況でリアルIRAメンバーの誰かが生き残っているなど頭にはなかった。まして人を助けるなどそれすらもなかった。
「誰の声だ?」
鳴き声が聞こえる。誰の声かもわからない、儚く、もろい声。
「そこか!?」
真っ暗な森林に飛び込み、ランタンの光をかざす。
「ひっ!!い、命・・・命だけは・・・な、何でもしますから・・・奴隷でもいいですから」
「・・・・・」
なんの話だ?そう突っ込みたかったが、そんな雰囲気ではない。切に願い、泣いている少女を見てそんなこと言えるわけがなかった。
「もう・・・私を追い詰めないで!!!!」
ランタンの光に照らされるボロボロになった装備と、血だらけで震える体。アスガは向こうが怯えているのにもかかわらず、恐怖心に駆られた。
そこに居たのは小さな女の子・・・
「・・・立てるか?」
アスガは右手を彼女に差し伸べた。
「えっ?」
「立てるのかと聞いている」
「・・・は、はい・・・」
彼女は恐る恐るアスガの右手をつかむ。
「俺たちはイスパーニア帝国にある戦争ギルドだ。あんたらを救援に来たが間に合わなかった。許して欲しい」
「いえ・・・そんな・・・」
簡単な謝罪を済ましてから、アスガはギルドマスターのエージを呼んだ。
「エージさん。生存者一名発見しました」
大声でアスガは叫ぶ。それぐらいの声を出さなければ聞こえないからだ。
「よくやった。ほかのものはもういないか確認しろ」
アスガは頭一個分以上ある身長差の少女の手を握り、エージの所へ連れていく。
「こんな子が・・・よく生きていたな」
「この身長だからでしょう。俺も見つけるのが困難でした」
「そうか・・・・お前は先に本拠地に戻ってその子の世話をしてやれ」
「了解!!」
一通り敬礼をして、アスガは馬を拝借した。
「しっかり捕まってろよ」
「・・・はい」
暗い声で彼女は返事をした。これが、アスガと少女の出会いだった。