STAGE12:脱出
「城の隅から隅まで探せ!!」
「はっ!!」
アスガの一言により兵士は一斉に敬礼をして城中へ散開する。
「お、俺のせいだ・・・・」
こうなったのも数時間前・・・
「思い知ったか人狩り共!!」
「真のアガルタは我々なり」
アガルタ管理局No.3のエレボス率いる暗黒部隊精鋭との戦闘はアガルタ共和国軍の死傷者12名という被害で大勝利に終わった。その浮かれた勢いで、全軍はアガルタ共和国へ入場したのだった。
「た、た、大変です!!」
「どうした?」
大急ぎで走ってきたのか呼吸が荒いフィオナとクローデリア。
「イ、イリヤ様が、イリヤ様が・・・・」
「イリヤ!!」
アガルタ城の寝室の扉を勢いよく開ける。もしイリヤがいたとすれば「キャア!!な、なんなんですか!!」という反応が返ってくるはずだ。だが、反応はなく静まった状態だった。
「・・・・・・」
どうなっているんだここは?
綺麗にされているはずの部屋はぐちゃぐちゃに。布団は荒れて土で汚れている。
「・・・・そういうことか」
「どういうことです?」
「前回は俺たちの力量を図ること。勝ち目がないと判断しイリヤを人質としてさらったんだ」
「・・・・・取り戻しに行きましょう」
「・・・したいのは山々だが・・・この国をイリヤ一人で捨てる気にはならない」
「どういうことです?」
「俺の力量を図った。イリヤを取り戻すには俺たちが行けばすぐに取り戻せるだろう。だが、この国はどうなる?俺たちがいなくなり何十万もの大軍を有する人狩りと戦って勝てるか?それに、奴らは俺たちがそれができないと知って、イリヤを交渉材料として使う気だ」
「つまり・・・・」
フィオナの顔が曇る。答えを聞く必要なんてないだろうが。
「人質だ。俺たちが動き出したら即刻イリヤを殺すだろう。交渉内容はイリヤを殺さない代わりに属国。もしくは国家解体からの併合だろうな」
「なら、イリヤ様が帰っきてから反抗すれば」
「属国になると言って、奴らがイリヤを返すと思うか?」
「それは・・・・」
あるわけがない。殺さない代わりに永遠と人質。
「どうすりゃいいんだよ・・・・」
「ア、アスガ様・・・」
アスガは地面に倒れ床を叩いた。手が赤くなり次第に血が滲み、床が粉砕してもなお叩き続けた。
――――――旧カルタゴ領
「ん?ここは?」
「気がついたかい?」
「!!」
「おいおい・・・そんな露骨に警戒しなくてもよお」
イリヤは目が覚めて気がついたことは手足が縛られているということだった。
「私をどうするつもりです?」
「さぁ?俺の知ったこっちゃないぜ」
「知らないのですか?」
「ああ。俺は雇われものでね。エレボスとかいう奴にお前の監視を頼まれているんだ。こっちとしても生きるか死ぬかなんだ。恨むならエレボスってやつを恨めよ」
「そうですか・・・・」
意外に冷静すぎりイリヤを見て驚きを隠せない監視係。
「あんた名前は?」
「イリヤ。あなたは?」
「ウォルダーだ。俺は何も聞かされていないんでね。アガルタ管理局が監視を命じるぐらいだ。どんな立場だ?」
「カルタゴの南に位置するアガルタ共和国ってわかります?」
「ああ。たった数ヶ月で強国すら手足が出せなくなっていう新興国だろ?アガルタ管理局ですら首都でしか回していない電気を国全体に回しているとか・・・ここ最近武器・資源輸出国として名を馳せているって聞いた」
「その国の皇女です」
「へぇ・・・アガルタ共和国皇女ねぇ・・・・・」
しばらくの沈黙。段々と彼女の立場を理解していくウォルダー。
「まじかよ・・・」
「どうしました?」
「いや・・・・・」
(そんな大物の監視を俺に?エレボスとか言う奴・・・頭どうかしてるぜ)
「あなたは何をしているんですか?」
「俺か?俺はなんでも屋だ。ついこの間職業なくしてしまったんでね」
「なくした?」
「ああ。人狩りがこの間行なったカルタゴ侵攻。おれはカルタゴ兵だったんだがな・・・・職をなくしてからはこういう万屋みたいなことしてんだよ」
「カルタゴ侵攻・・・・あの、カルタゴ第二師団って知ってます?」
イリヤはおそるおそるウォルダーに聞いてみる。クローデリアのことを知っているかどうかを。
「カルタゴ兵で知らないものはいないよ。カルタゴ最強師団て言われていたからね。クローデリア率いる第二師団。A.S内でトップ10に入る強さを持つクローデリアの名前なら他国にも知れ渡っているレベルだ」
「第二師団が、カルタゴ崩壊後どうなったか知ってます?」
「知らねえな。カルタゴ首脳部が最後に援軍要請をして動いたってのは知ってるが・・・いくら第二師団とはいえ・・・15万の軍団を倒せたかどうか・・・アガルタNo.2が指揮官をしていたというからな」
アガルタNo.2・・・名前も顔も知らないが、噂だがレベルが200に達しているアガルタNo.1に唯一対抗できる存在。そいつもレベルが200に達していると聞いた。
「その第二師団は今、私たちの国・・・アガルタ共和国軍に編入されています」
「・・・・マジか?」
「マジです」
「なんでだ?」
「アガルタ共和国王であるアスガさんとクローデリアさんの利害が一致したということです。アスガさんはアガルタ管理局を倒すために必要な兵力として。クローデリアさんは失われた郷土を取り戻すため」
「・・・・あのクローデリアがなあ・・・・ひとついいか?」
「なんです?」
「あんたをここから出してやる」
「はい。ってええ?」
いきなりの提案で何がなんだか理解できず追いついていないイリヤ。
「変わりにあんたらの国に亡命させてくれないか?」
それがウォルダーの交換条件だった。