STAGE:8 測量
―――――――金と銀
両者ともに光り輝き、そしてこの両者は対立、もしくは同等な立場にある。
鉱物においては、金が勝るが、それは人の価値観による物だ。
色に関して言えばどちらが綺麗だなどは個人的価値観による。
そして、此処城にいる二人も、対立の関係と同等な立場を保っている。
「私が護衛をする」
「いーや、私だ」
「・・・・・・・」
はぁ・・・・思わずため息が出る。
別に出したくて出しているのではない。勝手に出てくるのだ。
この目の前の状況に俺はどう対応すればいいというのだ・・・
右は金髪の女剣士フィオナ。レベルはアガルタ共和国2位の144であり、国民からの信頼も厚い。頭もなかなか切れる者で、正直俺も助かっている。そしてこの国の軍隊の最高指揮官である。
左は銀髪の女騎士クローデリア。レベルはアガルタ共和国2位の144であり、共和国軍兵士の半分近くを有する元カルタゴ兵士からの信頼は厚い。彼女が俺に忠誠を誓うと言ってくれたから、8000の元カルタゴ兵は俺に着いてきてくれている。正直助かっている。
だが、今は別だ!!最初はどちらが強いかなどと言い張っていたが、最終的にはどちらが俺の護衛をするかと言ういい争いに発展した。
まず言わせてもらおう。俺に不意打ちをかけたところで、未知モンスター以外に殺される心配はない。
護衛するならイリヤを護衛しろと言いたいところだ。
「俺に護衛はいらん。さっさと自分の持ち場につけ」
「私の持ち場はここです」
共和国軍最高指揮官がその豊満な胸を張る。
「私の持ち場は任命されていません!!」
元カルタゴ軍第二師団長はその豊満な胸を張る。
「・・・・・・フィオナ」
「はい」
「お前に共和国軍最高指揮官の任を解く」
「は、はい!!・・・・・えっ?どういうことですか?」
「そのまんまだ。金銀コンビ」
「「き、金銀コンビ?」」
アスガの謎の発言に少しためらうが、髪の色を例えたのだろうと二人とも察する。
「お前達には共和国軍副指揮官を任命する」
「で、では、最高指揮官は?」
先程まで共和国軍最高指揮官だったフィオナがアスガに向かって問う。
「決まってるだろ?国のトップである俺だ」
「・・・・・・」
二人とも目を見つめあって茫然としている。だが、諸問題はすべて解決した。
二人とも何について口げんかをしていたのか忘れたかのように仲良く帰って行った。
「なんだったんだ・・・・・」
わけわからん・・・・その一言だった
「・・・・・あれが、アガルタ共和国最強の3人か」
「は、はい・・・・そのようですが」
「そんなに強そうには見えん」
敵情視察をしているエレボスと、その部下5人はあることを確信していた。
(余裕だ)
夜戦専門部隊―――――正式名称暗黒部隊
アガルタ軍内部ではDT(Darkness Team)と呼ばれている。
部隊の総員は千人で、そのうち八百人が正規プレイヤーだ。
正規プレイヤーの中でも近接限定で、索敵値、迷彩値が高く、ステルスを手に入れている者が選ばれる。基本高レベルでないと手に入らない能力だが、索敵値と迷彩値だけ上げ続けていればそこまでレベルを上げなくても、ステルスを手に入れることは容易だ。
「今日の夜・・・・アガルタ共和国東部を襲う。しかし、この夜襲は敵戦力を見るためである。よって私を含めたレベル上位5人で仕掛ける。何かあったら、連絡をする」
アガルタ共和国とプトレマイオス共和国との間にある誰も足を踏み入れていない領域。ただの森林なのだが、そこで待機しているDTは約50人。
「ふぁ~あ・・・・眠い」
東村の砦で見張りをしている兵士は大あくびをかく。
「ふぁ~あ・・・」
隣にいる兵士にもあくびがうつっていく。アガルタ最強と言う名は伊達じゃないプレイヤーが国王となったのだ。誰が攻めてきても勝てる。絶大な信頼をおけるからこそか、下の兵たちは気がゆるみきっている。
「ふぐっ!!」
「死ね」
ブシュウウウと吹き上げる鮮血。現実世界ではありえない血の飛び方。仮想世界ならではのシステム上のバグとでもいおうか・・・
「見張りの兵がこれとは・・・・数が増えても使えないも同然だな」
「俺達の任務は見張り番の兵士を殺しに来たのではない。最上級の3人の威力偵察だ」
「了解」
「ここから直線に進めばアガルタ城につく。行くぞ」
「はっ!!」
5人のDTはアガルタ城へと進む。アスガ、フィリナ、クローデリアの実力を測量しに・・・